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【全方位考察15万字】闇と鏡像が織りなす湖の螺旋――ALAN WAKE 2クリア記念解説【ネタバレMAX注意】

はじめに(ネタバレなし)

ALAN WAKE2のストアページ概要に
「悪夢の世界に囚われ」云々
とありましたが、

一介のプレイヤーの筆者も数週間の間
その表現に外れることなく、
文字通り取り憑かれていました。

その結果がこの文庫本一冊分を
上回るほどの分量をになってしまった
長大な解説考察です。

公開日時点で
合計文字数が15万ほどのボリュームとなり、
なかなか意味不明な数字です。

おっと……

他のゲームにおいて、
やり込みとはトロフィーコンプリートを
目指してゲーム的に高難度な何かに
励むことを指すところ、
「ALAN WAKE」シリーズにおいてのそれは
果てしない考察の旅に出ることを意味する
かもしれないと思い知ります。

旅の中でなんだかんだで
『Alan Wake』
『Alan Wake's American Nightmare』
『Alan Wake2』
収集要素コンプリートの完全クリアを
達成している上、

それぞれ日本語設定でクリアした後、
英語設定でプレイし直して
全スクリプトを読み通しています。

『Control』『Quantum Break』に含まれる
『ALAN WAKE2』考察に必要な内容と概念も
一通り抑えています。

筆者本人も引くほど
充実な内容になりましたので、
クリア済みの皆さんに
楽しんでいただけたら幸いです。

思いがけない物量になったため、
公開してからも不定期的に見直し、
細々とした修正を行っていきますが、
しばらくは誤字脱字や読みづらい箇所、
日本語ガッタガタの荒い箇所が
多々ある状態と存じます。

なにとぞよろしくお願いいたします。


改めまして、本稿では、
個人的な『ALAN WAKE2』クリア記念として
自分なりに物語にある様々な謎を
気が済むまでさばいておろして、
全方位に整理、解説、考察を行います。

考察に役立つ収集要素探しについての
攻略情報紹介もおまけにつけてあります。

大変長いので、
よろしければ
この後にすぐに出てくる
目次をご活用いただき、
ご興味関心に合った項目を選んで、
お読みいただくのがよいかと思います。

たとえばストーリーがなんとなく
頭に入っているのであれば、
ストーリー時系列まとめ部分を
飛ばしていただいて構いません。

細かい事実関係を確認したいときに
また目次から該当箇所に飛んで
必要に応じて読めば大丈夫です。


最後に念のための注意事項ですが、
全編通して核心までの
容赦なきネタバレが含まれます。
未プレイまたは途中までの方が目にすると
ゲーム体験と物語体験の喜びが
大きく損なわれる恐れがあります。
十分にご注意いただけますと幸いです。


読後のご感想、ご指摘、ご質問、
フィンランド文化の知見や
語りたい気持ちまで、
全部大大大大歓迎ですので、
何かあればどしどしコメントをください。
とても喜びます。

前置きが長くなりましたが、
それではどうぞよろしくお願いします。

目次




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はじめに パート2:『ALAN WAKE』との出会い(1の微ネタバレあり)

始める前のウォーミングアップとして
ほんの少しだけ前作の思い出話を
続けさせてください。

最初の「はじめに」から
ネタバレ要素を排除するため、
ネタバレ部分を切り出して
こちらのパート2にしました。

『ALAN WAKE』と出会ったのは
10年前くらいに筆者がSteamで
「雰囲気」「ADV」タグを
夢中に発掘していた時期でした。

物語のメタ構造の表現の仕方が
かなり好みだったため、
この湖に浸かってみたら
もう抜け出せなくなりました。


こういうのがたまらないです。

人間がギリギリ想像できる
メタ構造は5メタまでと、
カントか誰かが言っていましたが、
この一段落で6メタあります

(ちなみに原文の英語だと
層が増えるたび「その中で(In it,~)」と
後に続くだけで、
よりカウントしやすくなります)

客観的に見て『ALAN WAKE』の
アクションデザインは、
操作性の良し悪し抜きにしても
難ありなところがあります。

コスト不足のためか、
謎解き遊びも、もはや演出未満作業以下と
言われても仕方ないところがあり、

優れた物語体験を超えるくらいに
遊びのストレスが大きいです。

筆者は筆者で
アクションゲームが一切楽しめないような
残念なプレイヤースキルの持ち主である故に

難易度設定がストーリーモードでも
大変でした。

にも関わらず、
あの時は取り憑かれたように、
吸い込まれたように、
夜と昼の境目や
現実の瑣事に霧がかかるほどに
夢中になってあの世界にどっぷり浸って
プレイしていたものです。

しかし、ストレスフルな
ゲームプレイを乗り越えた先の
物語の終わり方が独特でした。

ついに真相へ到達するカタルシスを
最後の最後にキャンセルされたような
意味不明な謎着地が待っています。

続編への期待を煽る謎をチラ見せする
程度のかわいいものではありません。
それまでようやく積み上げられてきた
意味を打ち砕かれるのです。

当時のクリア感想は、
思い出は高揚感とストレスに
引き裂かれる爪痕と共に残る、
でした。

時間が経つうちその爪痕も薄れ、
記憶の隅でおとなしくしていたら、
まさかの続編が13年越しに出たと
遅まきながら知ったとき、
「あるのか、続き!!」
「続く……続けられるのか??」
「説明できるのか?」
「また謎着地で終わるかな」
「饅頭こわ」
と複雑な興奮に見舞われたのです。

即購入するも、おさらいに
過去作をいろいろ通しプレイ。

動画で済ませようと思ったのに
気づけば隅々まで
プレイしてしまいました。
(つらいアクションだ……)

ちなみに『ALAN WAKE2』は
前作未プレイでも
大筋の理解に支障はありませんが、

これまでのことを知らないと、
かなりの数の疑問が残って
もやもやするのではないかと思います。
満足度を考えると、
前作のプレイ推奨派です。

とりとめのない
思い出話にお付き合いいただき
ありがとうございます。

それではいざ、始めさせていただきます。
長旅の覚悟はよろしいでしょうか?

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『ALAN WAKE』ストーリー:時系列まとめ

※見出しはゲーム中の章タイトルではありません

キャビン


主人公はベストセラー小説家の
アラン・ウェイク。その代表作は、
刑事のアレックス・ケイシー
主人公としたシリーズ小説だ。

ウェイクは夜道を彷徨っている夢を見た。
闇に覆われ、支離滅裂な言葉を叫びながら
物騒な武器を振り回して自分に襲いかかる
人の姿した怪物がいる。

空から降り注ぐ光の声が
ウェイクに語りかけ、闇に支配された
者たちとの戦い方を教える。

「私はその港を訪れた」を覚えているか
と光の声が尋ねるが、
ウェイクはピンとこなかった。

ウェイクは光の声から、
フラッシュライトと銃で敵を対処する方法や
光のある場所が避難できる安全地帯などの
知識を習得する。


光の声に導かれ、灯台に到達すると、
ウェイクは妻のアリス
名前を呼ばれて目覚める。
旅の目的地へ向かう車の中で
寝ていたらしい。


旅に出た経緯を思い出すウェイク。

時は2010
ウェイクは最後の作品から二年の間
何も書けずにいる。
スランプに苦しんでいる最中だ。

ウェイクのリフレッシュになればと、
妻のアリスがブライト・フォールズという
ワシントンの田舎町への休暇を企画した。

フェリーでの移動中、
地元のラジオ局のパーソナリティという
パット・メインと会話する。
パットはウェイクを歓迎し、
ラジオのゲスト出演に誘う。
ウェイクはプライベートの旅行を
理由に辞退する。

ブライトフォールズの町に着くと、
ウェイクはダイナーにいるキャビン管理人の
スタッキーから宿泊地のキャビンの鍵を
受け取ってくることをアリスから頼まれる。

ダイナーのウェイトレスの
ローズ・マリーゴールド
ウェイクが来店する姿を見るなり
大興奮する。彼女はウェイクの大ファンと
自己紹介し、応援の言葉を惜しみなく贈る。

熱烈なファンの声かけを苦手とする
ウェイクは会話をさっさと切り上げる。

電球が壊れた暗い廊下の手前にいる
ランプを抱えたお婆さんが、
暗がりが危険だと心配し、
入らないほうがいいと助言する。

お婆さんの言葉を受け流し、
ウェイクは廊下へと進む。
スタッキーがいるかもしれない
奥のトイレのドアをノックしてみたところ、
喪服のような黒服を着た
老女に声をかけられた。

老女は、
スタッキーは体調不良のため来られず、
預かった鍵を渡しに来たと説明し、
ウェイクに鍵と、キャビンへの
行き方が書かれた地図を持たせる。

ウェイクがアリスの車に戻り、
キャビンに向かって発車したあとに
不在だったはずのスタッキーが
鍵を手にぶら下げて
慌てた様子でダイナーから出てきた。

スタッキーは鍵を渡せていないと
後ろから大声で叫んでみたが、
すでに車が遠くまで走っていき、
ウェイク夫婦に気づかれなかった。

宿泊地のキャビンはコールドロンレイク
中央にある離れ島に建っていた。

アリスはこっそり持ってきた
ウェイクの執筆道具を2階の個室に配置し、
執筆部屋を用意してウェイクに見せ、
新しい環境で書いてみることを提案する。

合わせて、アリスはウェイクに
この町にいるハートマンという
アーティスト専門の治療医への
受診を勧める。

どうやらアリスがブライトフォールズを
旅先に選んだのは
ハートマンの著書で読んだからだ。
彼女は端からウェイクのスランプ治療のため
休暇を企画していたらしい。

執筆から離れられるリフレッシュ休暇を
期待していたウェイクが怒り出し、
思わずアリスと口論になる。
喧嘩が激しくなる前に
ウェイクは頭を冷やそうと外に出た。

ほんの少しの間周囲を歩いたところ、
ウェイクはキャビンの明かりが
消えたのが見えた。間もなくして
アリスがウェイクの助けを求める
叫びが上がる。

暗がりを異様に怖がるアリスが
自分で電気を消すはずがないと、
ウェイクが慌ててキャビンへ戻ると、

キャビンの桟橋から、
アリスが湖に引きずり込まれて
沈んでいく光景を目撃してしまう。

ウェイクは迷わず湖へ飛び込んだ。

どういうわけか
ウェイクが次に目覚めたのは
大破した車の中だ。
車を降り、道なりに進んでいく中、
ウェイクは
ディパーチャー(旅立ち、出発)』と
題された小説の原稿ページを
次々と見つけていく。

そのタイトルは、ウェイクが
まだ一文字も書けていない
次回作に使う予定のものだ。

発見された原稿には、
これまでの出来事を正確に描写した内容、
またはこれから起きることを
予知したような内容が書かれていた。

ウェイクは電話で助けを呼ぼうと
遠くに見えるガソリンスタンドの灯りを
目指して進むことにする。

通りかかった材木伐採所で
助けを呼んでみようと中に入ると、
そこには闇に支配され、
怪物となったスタッキーがいた。

この前後で拾う原稿に
スタッキーはウェイクらに
鍵を渡し損ねた直後に
闇に飲まれるシーンが書かれている。

ウェイクはなんとかスタッキーを倒し、
森を抜けてガソリンスタンドにたどり着く。


ガソリンスタンドには
地元のお祭り・ディアフェスト
カウントダウン看板があった。

アリスと町に来た当日は、
まだディアフェストまで2週間だったが、
今は残り7日となっている。

ウェイクに記憶はないが、
アリスの事件から
自分が大破した車で目覚めるまで、
丸一週間経過していると知る。

ウェイクがガソリンスタンドの電話を使って
警察に助けを呼ぶと、
地元の保安官サラ・ブレーカー
迎えに来た。

ウェイクが湖のキャビンで妻が溺れたことを
サラに説明すると、サラは湖のキャビンは
70年代の火山噴火で沈んでおり、
今はもうないと指摘する。

警察の車で署に戻る途中に湖に寄り、
ウェイクは実際に湖には島もキャビンも
存在しないことをその目で確かめた。

スタッキーの失踪について
サラに聞かれたが、怪しまれて拘束されると
アリス探しができないと考えたウェイクは、
森での出来事について沈黙した。


誘拐犯



ウェイクは仮眠の中で二年前の
記憶を夢見る。
ウェイクがスランプに入る前の最後の作品
「アレックス・ケイシー」シリーズの
『サドンストップ(急停止)』の
発売前日のことだ。

ニューヨークのマンションで暮らす
ウェイクとアリスは、
忙しくウェイクの新作の準備をしている。

アリスはウェイクの小説表紙の
撮影とデザインも担当する写真家らしい。
彼女による最新作の表紙見本が仕上がり、
ウェイクに確認を取っているときに
停電が起きた。

停電で怯えたアリスのために
ウェイクはキャンドルを灯し、
安心させるための思い出話をする。

暗がりが怖い子供の頃のウェイクに
その母が「クリッカー」と名付けた
壊れたスイッチをウェイクに渡し、
「暗闇でこれを使えば
 魔法の光が怪物を追い払える」と教えた。
ウェイクはこのことをきっかけに、
闇への恐怖心を克服できたという。

話し終わると、
ウェイクはアリスにクリッカーを手渡す。

ウェイクが夢から覚めると
そこは保安事務局の会議室だ。
目の前には釣りの帰りに
呼び出された町医者のネルソン
自分を診察している。

診察が終わり、
ウェイクが会議室を出ると、
照明の故障を異様に気にする
ランプのお婆さんの姿があった。
彼女はパカパカと署内のスイッチを操作し、
正常かどうかをチェックしていた。
照明の点検らしい。

呆れた窓口の保安官は
ランプおばさんの行動を
ウェイクに説明する。

常にランプを抱きかかえているお婆さんは
シンシア・ウィーバー
若い時は地元紙の新聞記者をしていたが、
老後照明点検に謎の熱が入り、各所を回り
照明や電球をチェックするようになった。
町の名物お婆さんらしい。

サラと署内で会う。
捜索で発見されたウェイクの携帯電話が
ウェイクに返却される。
アリスの捜索は進めているとのこと。

取り戻したばかりの携帯電話が鳴る。
ウェイクが電話に出ると、
アリスが助けを求める声が聞こえたあと、
誘拐犯と思われる口ぶりの男の声が
命令をしてきた。

ウェイクが誘拐犯の指示に従い、
警察にバレないように移動している途中、
ウェイクの幼なじみで親友、
さらにエージェントでもある
バリー・ウィーラーからの
電話がかかってきた。
(エージェントとは、
 アメリカではプロ作家について
 本人の代わりに出版社相手に
 作品の売り込みや仕事の交渉、
 ひいては案件の日程管理などをする
 職業です。役割は芸能人の
 マネージャーに近いのですが、
 企画営業的な側面が大きいです)
 

バリーはウェイク夫妻が
突然長い間音信不通になったことを心配し、
ニューヨークからやってきたらしい。

バリーから居場所を聞かれ、
ウェイクは保安官事務所に
迎えてほしいと答える。

一方、ウェイクは誘拐犯から
ラバーズ峠に来いと言われる。
ウェイクが署から出発するとき、
署に訪れたハートマンの足止めを喰らう。

ハートマンはアリスからの相談で
ウェイクのことを知っており、
相談されていた治療の件で、
ウェイクを迎えに来たという。

ウェイクはハートマンの
知ったつもりで口を叩く話し方に
腹が立ったか、思わず手が出て
思いっきりハートマンを殴ってしまう。

サラが慌てて仲裁に入ったとき、
ちょうどバリーも署に到着する。
バリーは状況が分からないなりに
威嚇してみたところ、
ハートマンはあっさりと引いて、
診療所で待っているとだけ告げて
歩き去る。

ウェイクはバリーに事情を話し、
誘拐犯が待ち合わせ場所として指定した
ミラー峠に向かう。
バリーはあり得ない話だと呆れるも、
ウェイクを信頼し、同行する。

ウェイクらは山のビジターセンターで
管理人のラスティーのところで、
夜に宿泊するキャビン予約の
手続きを済ませ、キャビンに向かった。

ウェイクはキャビンで夜まで待機し、
ラバーズ峠へ発つ前、
バリーに
「朝まで戻ってこれなかったら通報を」と
頼み、単独行動で峠へ向かう。

峠に向かう途中で拾う原稿が
管理人ラスティーの無惨な最期を
予言する。

ウェイクがキャビンと峠の間にある
ビジターセンターに到着した時、
既に原稿と寸分違わぬ形でラスティーが
闇の存在に襲撃され、手遅れだ。

ラスティーが原稿通りの最期の言葉とともに
拾った原稿をウェイクに託してすぐに
闇に支配された者になれ果てる。
なす術もなくウェイクは
ラスティだったものを倒す。

バリーからの電話。
キャビンも闇の軍勢に
襲われているようだ。

バリーに戸締りを念押しし、
ラバーズ峠へ急ぐウェイク。


ラバーズ峠の手前で、
ウェイクは闇の軍勢に囲まれしまい、
ピンチになったとき、闇に支配された者と
戦い慣れている風の誘拐犯が現れ、
ウェイクの援護に入った。

ウェイク、誘拐犯と共闘をしつつ
山を登り、なんとか無事に峠に到着する。

ウェイクがアリスの居場所について
誘拐犯を問い詰めると、
なぜか原稿のことを知っている誘拐犯は
すべての原稿をくれないと
アリスの安全は保証できないと
さらなる条件を吹っかける。

ウェイクは怒って誘拐犯と
揉み合いになるも、誘拐犯に
隙を見つけて逃げられてしまう。

誘拐犯を逃したウェイクは、
原稿のことを気にしながら
バリーのキャビンへ引き返す。

逃走

FBI捜査官
ロバート・ナイチンゲールについて
書かれた原稿を拾い始める。

ナイチンゲールは過去に相棒を闇の存在に
襲われ亡くした経験を持っている。
彼は、偶然見つけたウェイクの原稿に
闇の存在についての内容を読み、
ウェイクが相棒殺害の黒幕と考え、
復讐のためウェイクを目の敵にしている。


誘拐犯から原稿催促の
電話がウェイクにかかる。
ウェイクはせめて一週間は
必要だと交渉したが、
誘拐犯が提示する妥協の限界は
2日後だった。

ウェイクはバリーのキャビンに戻り、
闇のカラスの大群を片付け、
バリーと無事に夜を越える。

翌朝、バリーの携帯電話に
生気のない声のローズから着信が。

ローズは自分の
トレーラーハウスに原稿があるから、
受け取りに来て欲しいと言う。

電話をかけるローズの隣に、
黒服の老女が立っている。
ローズは操られていた。

トレーラーパークに着くと同時に
FBIのナイチンゲール捜査官が
保安官事務所でウェイクを待っていると
サラからの連絡が入る。

ウェイクは急いでローズから
原稿をもらい、その足で署に向かう
段取りを決める。

トレーラーパークの管理人に
案内してもらい、ローズの
トレーラーハウスまでの
道を進んでいる間、バリーは管理人と
コールドロンレイクの噂について雑談する。

湖は黄泉への入り口との伝承があるらしい。

アリスが消えた場所の島とキャビンは
湖底火山の噴火でなくなるまで
有名作家らしいトーマス・ゼイン
という人物が所有者だったらしい。

しかしゼインの著作は調べても出てこない。
有名作家として認識されている理由が謎だ。

噴火の一週間前、ゼインの当時の恋人である
バーバラ・ジャガーが湖に溺れ死ぬ事故が
起きたらしい。

その一週間後噴火が起きたとき、
謎多き作家のゼインは島とキャビンと共に、
火山噴火で湖の底へ沈んでいった。

それらの一連の事故の新聞記事を執筆し、
報道したの地元の新聞記者は、
今のランプおばさん、
シンシア・ウィーバーだ。

シンシアは、当時のゼインとジャガーの
共通の友人らしく、「ランプおばさん」に
転身したのも友人たちの死が
きっかけだと思われた。

ローズのトレーラーハウスに着くと、
ローズはウェイクらを迎え入れ、
淹れたてのコーヒーでもてなす。

バリーとウェイクがコーヒーを一口飲むと、
すぐに意識を失い倒れ込んだ。
大量な睡眠薬が盛られたらしい。

ウェイクがようやく意識を取り戻したのは
12時間後だ。誘拐犯から提示された
原稿締切までの時間が少ないと焦る。

部屋を見渡すとローズとバリーが
意識不明のまま倒れている。


テレビからウェイクの
記憶の断片のような映像が流れる。

記憶の映像の中のウェイクが言うには
ウェイクは黒服の老女・
バーバラ・ジャガーの編集を受けていた。
その中でウェイクは洗脳されていき、
バーバラの編集を盲信するようになり、
最終的には彼女の意のままの
物語を書かされ、ジャンルまでホラーへと
変えられたそうだ。

意識不明のバリーを車で連れ出そうと、
ウェイクは車を探しに
トレーラーハウスを出て駐車場へ向かう。

見つかった原稿を読むと
彼らが長時間ローズの部屋に閉じこもり、
出てこないことを管理人が不審に思い、
10時間ほど前に保安官事務所へ
通報していることが書かれている。

トレーラーパークの入り口につくと、
FBI部隊を率いたナイチンゲールが
ウェイクを逮捕するためあたりを
包囲されている。大変な騒ぎに
管理人が様子を見に出ているものの
状況把握ができず困惑している。

ウェイクは咄嗟に横に立つ管理人を盾にして
逃げだし、崖から転がり落ちる形で
森に姿を紛らわす。
ナイチンゲールは慌てて発砲してしまうが、
幸いにして管理人に当たらなかった。

ウェイクは逃走しながら、
誘拐犯の締切までになんとか指定場所に
向かおうと急ぐ。
FBIがあの手この手で追跡している。

逃走中に拾った原稿に
闇の存在とその目覚めについてのことが
記されていた。

バーバラは、本人ではなく、闇の存在が
バーバラの姿を象ったものらしい。

最初に闇の存在を呼び覚ましてしまった
人物と、封印した人物は、
共にトーマスゼインだ。

そして今度の目覚めのきっかけは
アンダーソン兄弟とウェイクと
書かれている。

逃走中、大破したパトカーの無線から、
サラとナイチンゲールが言い争う声が
聞こえた。
サラはナイチンゲールが
丸腰の民間人に発砲することに
異議を申し立て、ナイチンゲールの
無法行為を止めるため
現場に向かっていると言っている。

逃げているうちに、ウェイクは
番組放送中のラジオ局の前にたどり着く。
中に入ると地元ラジオのパーソナリティ
パット・メインがこちらに気づいて、
ウェイクを放送中の番組へ招待する。

会話の最中にラジオ局が
ナイチンゲールとFBIに包囲された。
サラもFBIに追いかけてやってきている。

パットとサラは銃を持って迫り来る
ナイチンゲールへの説得を試みるが、
ナイチンゲールは無視して発砲してしまう。

発砲がもたらす混乱から
生まれた隙をついて
ウェイクが窓から逃げ出す。

逃走中に電話がかかってくる。
誘拐犯からだろうか。
携帯からアリスの声が聞こえるが、
音声はノイズだらけで、
内容も支離滅裂だ。


引き続き誘拐犯の指定場所へ急ぐウェイク。
道中で拾う原稿で誘拐犯の名前が
モットであると判明した。

原稿によれば、
モットにはボスがいて、
ボスの指示でフェリーの時から
ウェイク夫婦の尾行をしていた。


ウェイクはなんとか時間通りに
誘拐犯の指定場所に着いて
半日以上長い時間待ち続けたが、
誘拐犯は現れなかった。

ウェイクがすべてが嘘だと諦めかけた頃、
誘拐犯から事情により待ち合わせ場所の
変更を要求する連絡が入った。

ウェイクは仕方なく変更された指定場所の
ミラー峠に向かう。
要求された「全部の原稿」は手元にないため
ウェイクはアリスの居場所を無理やり
聞き出すつもりだ。

原稿を拾う。
アリス誘拐はモットの虚言だと示す内容だ。
モットはウェイク夫婦を尾行していたが、
途中で見失った。

ウェイク夫婦のいない車を
湖へ向かう行き止まりに乗り捨てられており
スタッキーのどのキャビンを探しても
ウェイク夫婦がいなかった。

ミラー峠の展望台で、モットは跪いて
アリスの誘拐虚言でウェイクに
原稿を書かせようとしたことを
電話で誰かに必死に詫びていた。

闇の存在が操る暴風がモットを襲う。
モットはあっけなく崖の下へ落ちる。
バーバラの姿が横でチラついた。

闇の存在がやってきたウェイクに気づくと
ウェイクも闇の暴風に崖下の湖へと
振り落とされた。

診療所



次にウェイクが目覚めると、
自分がハートマンの診療所の
入院患者となっていた。

ハートマンによれば、
目覚める前にウェイクはまた
発作を起こしていたそうだ。

また、ハートマンから
ウェイクが妻を亡くして以来
さまざまな心の病を抱えるようになり、
しばらく入院している経緯も説明される。

ウェイクはアリスの死は嘘だと直感し、
心の中でハートマンに強い嫌悪感を向ける。

ハートマンに鎮静剤を打たれて
ウェイクがしばらく眠った後、
様子を見にきたハートマンに
記憶の整理がてらに院内散策を勧められる。

院内を回りつつハートマンの話を聞く。

ハートマンはアーティスト専門の
精神科医だ。この診療所では、創作活動は
治療の一環と考えられており、
ウェイクも入院中自室のタイプライターで
小説を書いていたそうだ。

ハートマンによれば、
ウェイクは光や闇の戦い云々
妄想の精神症状を持っており、
アリスを失ったトラウマが原因と思われる。

ハートマンはウェイクに喪失の事実を
受け入れて治癒のプロセスを
進めるべきと諭す。


患者の挨拶回りで、元ロックバンドで
認知症が進んでいるという兄弟、
トール・アンダーソン
オーディン・アンダーソンと会う。

アンダーソン兄弟はバンド解散後、
しばらく近くの農場で暮らしているそうだ。

自家製密造酒を公然と話題に出して絶賛し、
一見支離滅裂な言葉を口走る
アンダーソン兄弟だが、その言葉から
湖やゼインにまつわる重要な真実について
何か知っていると感じさせるものがあった。

ウェイクがハートマンの提案で部屋に戻り、
タイプライターの席についてみたが、
調子が悪く書けそうになかった。

下の階で騒ぎが起きている。
トール・アンダーソンが
ハンマーでナースを殴り気絶させたのだ。

騒ぎに乗じて脱走を企てるウェイク。

脱走中、診療所の中でアリスが過去に
ハートマンに電話相談した際の
録音テープが見つかった。

テープの内容で、
ウェイクはこれまでの虚言誘拐犯モットの
電話から聞こえたアリスの声が、
このテープの音声の切り抜きだと気づく。

また、モットに指示するボスの正体が
ハートマンであると証明する
写真や原稿も見つかった。

ウェイクはハートマンのオフィスの
隣室に閉じ込められた
バリーを発見し救出する。

ついでにハートマンのオフィスを調べると、
そこにウェイクが収集した原稿と
その続きを発見できた。


オフィスにハートマンが現れる。
ウェイクは彼の欺瞞に怒りの銃口を向ける。
しかしハートマンは悪びれることなく
熱心にウェイクを説得する。
「2人で手を組めば
 最高の芸術が生み出せる」と。
そのとき、闇の存在が襲いかかる。

ウェイクはつい先ほど読んだこの場面の
原稿通りに逃げ出し、ハートマンと闇を
ドアの向こうに閉じ込め、
激しさを増していく闇の襲撃を潜り抜け、
バリーと診療所を脱出する。

脱出中に拾った原稿で、
ハートマンはウェイクを
トム(トーマス・ゼイン)以来の
「有望の被験体」と見ていると分かる。

農場


ウェイクはアンダーソン兄弟の
農場のシーンが書かれた原稿を拾う。
アンダーソン兄弟の会話を思い出し、
農場に真実への手がかりが残されていると
望みをかけ、次の目的地を農場と定める。

向かう途中、ウェイクは光の原稿が
落ちてくる瞬間を目撃する。
その光は戦い方を教えてくれた
導きの声と共に差し込む光と同じだ。

ウェイクは行く先々に原稿を置いて
自分を導いてきた存在が光の声だと知る。

今回の原稿に
闇の存在の法則が書かれている。
闇の存在は物語に沿って次第に力を増すが、
物語の結末に到達するまでの間、
闇の存在は筋書きに逸脱できない。
そして結末に到達すると、
闇の存在が完全に解き放たれる。

道沿いのキャビンで見つかる
ウェイクの記憶の断片映像が
流れるテレビで、
過去のウェイクの作戦が明らかになった。

ウェイクがバーバラの姿の闇の存在の
編集のもとで小説を書いていたのは、
書くことでアリスが救われるとの嘘に
騙されたためだ。ウェイクは、
ジャンルがホラー小説になった世界では、
アリスは助からないと執筆途中で気づいた。


ホラー小説からアリスを救うため、
ウェイクは危険を冒して自身と
自身をサポートするトーマス・ゼインを
小説に書き込むことにした。

ウェイクらはアンダーソン農場に到着し、
探索する。見つかった原稿に
密造酒の秘密が書かれていた。

無濾過のコールドロンレイクの湖水を
使って作られた密造酒は狂気を招くそうだ。
アンダーソン兄弟は、
その密造酒を初めて飲んだ1976年から
狂気を身に宿した。

ウェイクらがアンダーソン兄弟の
自宅を調査すると、
重要なメッセージが歌われた
アンダーソン兄弟による楽曲の
レコードを発見する。

歌詞が「レディー・オブ・ライト」が
異変解決の鍵であると言っている。
ランプおばさんのシンシアのことだ。


シンシアを探しに行く前に
ウェイクらはアンダーソン宅で
一晩休息を取ることにした。

バリーが家の中で見つけた密造酒を
そうと意識せず持ってきてウェイクと飲む。
二人は酔い潰れて眠りにつく。

湖の水で作られた密造酒の効果か、
ウェイクは夢の中で
潜在意識にアクセスできるようになり、
アリスと湖のキャビンに訪れた初日の記憶の
隠された部分が浮かび上がる。

あの時、ウェイクがアリスを追って
湖に飛び込んだ後、
アリスを見つけることができなかったため、
一度諦めて桟橋に戻っている。

桟橋でアリスを助けられない悲しみに
泣き崩れるウェイクに、
バーバラの姿の闇の存在の
声がささやく。

闇の存在はウェイクに教える。
溺れたアリスを取り戻す唯一の奇跡が
湖の力であり、その力を使うためには
原稿を書かなければならないと。

それから一週間、ウェイクは
バーバラの姿の闇の存在に操られながら
『ディパーチャー』の原稿を書き続けた。
途中で罠に気づき、アリスを助けるため
自分やトーマス・ゼインを原稿に書き込み、
キャビンから脱出する布石も書き込んだ。

原稿を書き終えると、
ウェイクは原稿に登場させた
トーマスゼインの協力を得て、
闇の存在に気づかれずに
キャビンから逃げ出した。

ゼインはウェイクを逃した代償で、
湖の闇のより深くへと幽閉された。

これでウェイクがなくしていた
空白の一週間の記憶を
すべて取り戻す。


ダム

ウェイクが目覚めると、目の前は
銃口を向けてくるナイチンゲールだ。
いつの間にか居場所を突きつけられた。

原稿を含める持ち物が没収され、
ウェイクとバリーは
ブライトフォールズの
保安局事務所の監房に閉じ込められた。


監房の前にナイチンゲールと
ナイチンゲールへウェイクの逮捕に
抗議するサラがやってくる。

ナイチンゲールは自身の死が
書かれた原稿を発見し、原稿を
ウェイクによる殺害予告と捉えている。
ナイチンゲールがウェイクを
犯人として問い詰め、発砲しかけるたとき、
停電が起きた。

今起きている急な停電と会話の内容が
まさに原稿で読んだ内容と気づき、
ナイチンゲールは急いで原稿を読み返す。
その次の瞬間ナイチンゲールは
闇の暴風に飲まれて消えた。

ナイチンゲールが落とした原稿を拾うと、
そこには答え合わせのように、
先ほど彼が闇に襲われたワンシーンが
ナイチンゲール視点で書かれていた。

サラと署の電気を復旧した後、
サラはウェイクたちに協力すると
意思表示し、行動を共にする。

サラはシンシアが
廃棄されたダムに住んでいると
ウェイクらに教え、
向かうためのヘリコプターを用意した。

また、サラが自身も所属する
町を守る秘密結社「ナイトスプリングス」の
メンバーにも召集をかけた。


ウェイク、バリー、サラは
闇の存在に襲われる町を抜けたところの、
ヘリポートでヘリに乗り、ダムに向かう。

ダム付近に
物語の結末についての原稿があった。
闇の存在に操られて書いた
ホラー小説は未完であり、
最後のページの結末が欠けている。

これからウェイクがキャビンに戻り、
アリスを救うための結末を
正しく書き上げるのだと記されている。



ウェイクはダムの下流にある
発電所の空間を改造した
シンシアの基地に到達する。
トーマス・ゼインの名前と
「レディ・オブ・ライト」と
伝えると、シンシアは仲間だと
信用してくれた。

シンシアは、
この時のために守り続けていた
秘密兵器があるとウェイクらに教える。

一同はシンシアと共に秘密兵器の隠れ場所
ダムの「照らされた部屋」へ向かう。

当時の出来事をシンシアから語られる。
シンシアは70年代に起きた一度目の
闇の存在の覚醒の時の唯一の当事者だ。

再びくる異変に備え、彼女は秘密兵器を守り、
メッセージや隠し物資を地域に用意し、
町の施設の照明点検を行い、
1人で孤独に戦ってきた。

シンシア、ゼイン、バーバラは友人同士で、
シンシアはゼインに恋心を抱いていたが、
ゼインはバーバラに首ったけだった。

バーバラが湖に溺れたあと、
ゼインは闇の存在が化けたバーバラに
騙され、闇の存在が望む創作を
していく姿を、シンシアはそばで見ていた。

ゼインが闇の存在に騙されたと
気づいたときにはすでに手遅れだったが、
ゼインは自分が書いてきたすべてに
存在しない扱いができるよう、小説を書く。


現実として残った歴史では
ゼインの作家としての地位は残ったものの
それを支える著作がすべて消えた不整合の
背後にはこのようなわけがあったらしい。


拾う原稿から分かる追加情報として、
ゼインは闇の存在の復活を危惧したため
その対策に自分の創作物に
唯一の例外を設けた。

ゼインが靴箱にあると書いたものだけは
他の著作内容と同じ扱いが適用されず、
例外としてそのまま現実となり世に残る。

照らされた部屋にある、隠された秘密兵器は
靴箱にしまわれた原稿とクリッカーだ。

原稿はトーマス・ゼインが当時
書いたもので、内容はウェイクの
クリッカーにまつわる思い出
「魔法の光で怪物を追い払ってくれる」
という母が作った御伽話だ。
ページの最後の一文で、
これからウェイクがクリッカーを手に
湖に飛び込むことを予言している。

ウェイクが書いた物語の中で
自分を書いた物語を見つけたことで
目眩を覚え、原稿に従い
クリッカーを手に湖へ向かう。



ウェイクが2年前の
ある日のことを思い出す。
休みのウェイクは自宅のテレビで
当時の最新作『サドンストップ』の
宣伝に出演したトークショーの録画を見る。

『サドンストップ』は人気シリーズ
「アレックス・ケイシー」7部作の最終作で、
ケイシーは物語の中で突然の死によって
刑事生涯の終止符を打たれる。

番組の中で司会から
ケイシーを死なせた理由について
質問されたウェイクは
「新しいテーマを書きたくなった」
「過去からの旅立ち(ディパーチャー)」
と語った。

記憶の中のアリスとの会話から、
ウェイクは新作宣伝で忙しくしているが、
すでに次回作が書けずにスランプに
陥っていたと分かる。
「終わったら2人での休暇旅行を」と
アリスに話すウェイク。


記憶を反芻したあと、
ウェイクは自分のなすべき決着をつけるべく
引き続き湖へ向かう。

向かう途中に拾う原稿に
トーマス・ゼインが闇の存在を
呼び起こす事件の流れが補足される。


ゼインが過ちに気づいたあと、
原稿を処分し、愛するバーバラの姿の怪物の
心臓まで抉り出したが、
それでも闇の存在は絶命しなかった。

ゼインは闇の存在を封印するため、
潜水服を着て闇の存在を抱えて
一緒に湖に沈んだと書かれている。

他にゼインが最初に語りかけてきたとき
口にしていた「私はその港を訪れた」
原稿もあった。

それはゼインのキャビンに置かれた
詩集にある、ウェイクの訪れを予言した
詩の最後の一文だった。

現在キャビンと島は実在しないが、
ウェイクが拾った原稿には、
自分が概念を足がかりに
キャビンに通ずる道を
具現化させるシーンが書いてあった。


原稿を信じ、闇の存在の妨害を切り抜け、
湖を囲む崖に立つウェイクは
キャビンと島と念じながら湖へ飛び込む。

道が現れなかった。
ウェイクは湖に溺れて
闇の世界に囚われる。

闇の世界でトーマス・ゼインが
潜水服の姿で現れ、ウェイクを導く。
ゼインはバーバラの胸の空洞を光で満たすと
闇が追い払われることをウェイクに教える。

また、ゼインはウェイクがいなくなったあと、
地上に残された彼の友達のため用意したという
スクラッチ」と名づけたウェイクの
そっくりさんを見せた。


ウェイクが闇の精神世界で
ゼインの導きに助けられつつ、
道を作る概念を光で照らし道を作り出した。


その先のキャビンに入ると、
バーバラの姿の闇の存在がいた。

ウェイクは、バーバラの胸の空洞に
クリッカーを起動すると、
闇の存在が光に満たされ消散した。
最後に闇の存在が呟いた。
「また次の仮面を見つけるわ」


ウェイクはキャビンの
タイプライターの前に腰掛け、
欠けていた最後の1ページを書き上げる。
ゼインの過ちを繰り返さないように、
救いのために代償を用意し、
因果の均衡が保たれるような結末を書いて
アリスを救おうと心に誓いながら。

物語が完成し現実化された。

アリスは水の中で目覚め、
泳いで桟橋まで戻った。

助かったアリスは
声を上げてウェイクを呼ぶが、
返事はなかった。

ディアフェストは無事開催された。
賑やかな町の光景だが、
ローズは虚ろな目のまま、怯えるように
光るランプを両手で持っていた。
ローズの後ろの暗い窓から、
ナイチンゲールが
ローズのほうを不気味な目で見つめている。

タイプライターを叩くウェイクが
小説の最後の一文を書き上げる。
「湖じゃない。海だ」


『ALAN WAKE2』ストーリー:時系列まとめ



『リターン1:招待状』



物語は、2010年の
アラン・ウェイク失踪事件の13年後
2023年に始まる。


相棒であるFBI捜査官の
サーガ・アンダーソン
アレックス・ケイシー
関連性ある複数の殺人事件を
追っている中、
新たな被害者の遺体発見の報告を受け、
ブライトフォールズに訪れる。


複数の殺人事件の関連性とは
被害者のいずれも2010年に失踪した
ブライトフォールズの住民であり、
数年越しにブライトフォールズ周辺で
遺体が発見されていることだ。

コールドロンレイクの現場に向かう途中、
ベテラン刑事のケイシーは
相棒サーガに本件の担当を任命し、
自身はサポートに回る意向を伝える。

サーガは捜査のため構築された
マインドパレス風の精神世界を持っている。
状況整理と推理をする(推理ボード)ほか、
シャーマンのように人物の痕跡から
心の声キャッチし手がかりとすること
(プロファイリング)も可能だ。

事件現場付近に到着すると
マリガン保安官代理と
ソーントン保安官代理が
現場への道を案内してくれた

立ち入り禁止区域のはずなのに、
気にせずハイキング中の雰囲気の
現地住民のイルモ・コスケラから
挨拶される。

サーガらが現場について
新たな被害者の遺体を調べると、
心臓が取り出されていることや、
胸部の膨張など奇妙な点が認められる他、
遺体の身元は13年前に失踪したFBI捜査官
ロバート・ナイチンゲールと特定する。


また、いくつかの状況証拠により、
被害者のナイチンゲールは湖から
現場まで歩いてきたと判明する。

湖方向の道を調査すると
道は途中で木に塞がれており、
その中から小説の原稿ページが見つかった。

原稿では、
サーガらがまさ今この瞬間に
経験していることが描写されている。


原稿をきっかけに
サーガはナイチンゲールの体内にも
手がかりがあると直感する。
検死を依頼すると、
マリガンとソーントンが
遺体搬送の手筈を整えてくれた。


サーガとケイシーは町に戻り、
検死の前に、オーディアダイナーに向かい
目撃者である観光客のブッカー夫妻に
聞き込みを行う。

ダイナーの前で、サーガとケイシーは
本件の担当保安官ティム・ブレーカー
顔合わせをした。

ダイナーに入ると、勤務中のウェイトレス
ローズ・マリーゴールド
サーガを姿を見るなり
久しぶりの懐かしい知人のように喜び、
親しく挨拶をする

ローズとは初対面だと思っている
サーガが応答に困っていると、
ローズの口からサーガの認識と
食い違っている衝撃の過去が語られた。

ローズの話では
サーガは昔、娘のローガン
ブライトフォールズで暮らしていたが、
ローガンが亡くなった事故のショックで
ここを離れたらしい。

一方、サーガの認識では
娘を含める自分の家族は
バージニア州に住んでいるかつ、
これまでにブライトフォールズに
訪れたこともない。
さらに今日車で現場に向かう途中にも
娘ローガンと夫のデビットと電話で
直接話したばかりだ。


ローズとサーガの話がかみ合わず、
気まずい空気の中で会話が終わる。

(バージニア州はアメリカの最東端にあり、
 ワシントン州は西海岸の最北部にある
 という沖縄と北海道以上に離れた
 位置関係をイメージすると、
 彼女らの気持ちをよりよく
 共感できます)

サーガがブッカー夫妻に話を聞く。
彼らの証言と、これまでの状況証拠を
総合して考えた結果、
サーガらは、犯行が
単独犯によるものではなく、
樹木の教団という
シカのマスクを被った
カルト団体の儀式と仮定し、
教団について捜査を始める。


その後サーガらは、
ティム・ブレーカー保安官の立ち合いの下、
保安官事務所の地下解剖室にて
ナイチンゲールの解剖を行う。

サーガが遺体の膨張した胸部を切開すると、
中から紙が出てきた。
またしても小説の原稿ページだ。

サーガが原稿に記された、直後に起きる
出来事を予言した内容を確認している間、
保安官のティムも「関連性はなさそうだが、
前に似たような原稿を見つけた」と言って
該当の原稿を探し出す。

ティムがサーガに原稿を
渡すまでの僅かの間、
突如異変が起きる。
停電が起き、明かりの点滅とともに
スーツ姿の黒人のビジョンが
ティムの目の前を過ると、
ティムは手に持っていたファイルから
落ちる別の1枚の原稿のみ残して
姿を消した。

ティムの消失とともに、
サーガが読み終えたばかりの
原稿通りの異変が起きる。

心臓が発見時からすでに取り出された
紛れもない死者であるナイチンゲールが
起き上がり、「クリッカー」と叫びながら
サーガらに襲いかかる。

原稿で読んだ光の役割と戦い方で、
サーガはフラッシュライトと銃で
ナイチンゲールを迎え撃つ。

サーガがナイチンゲールを撃つと、
それは跡形もなく消えた。
心臓もそれに持ち去られてしまった。

ティムが消える前に落とした原稿を拾う。
内容は、ナイチンゲールを倒すべく
サーガはコールドロンレイクの境界域に
入る術を見つけなければ、というもの。

現場に駆けつけたマリガンとソーントンに
後を託し、サーガとケイシーは
再びコールドロンレイクへ向かう。

『リターン2:心臓』


コールドロンレイクで
サーガはケイシーと手分けして
捜査を続ける中、
森で見つけた複数の原稿に
さらに導かれていく。

サーガは原稿にしたがい、
ナイチンゲールの心臓を見つけ、
心臓を使った境界域の儀式を行うと、
魔女の伝承が残された
「魔女のひしゃく」と呼ばれた巨木にある
境界域(overlap)の入口を開くことに
成功した。

境界域の奥まで進み、
中にいるナイチンゲールを討伐すると、

サーガは僅かの間、
見知らぬ男(ウェイク)と
精神的に繋がり、
彼とのコミュニケーションを試みる。

しかし両者間の通信は安定せず、
互いに伝える内容は
ところどころ抜け落ちた状態だった。

(ウェイク視点とサーガ視点をそれぞれ
 プレイすることで、境界域の会話全容が
 分かるようになる)

ウェイクとの通信が終わると、
境界域の異空間は消失した。
境界域付近一帯の、近頃の大雨で
冠水した地域の水が一気に引く。

さらに、13年間失踪していた
作家アラン・ウェイクが、
岸辺に打ち上げられていた。

ケイシーとサーガは
知識としてウェイクの作家活動と、
13年前の失踪事件を知っていた。

特にケイシーは、偶然にも
ウェイクのベストセラーシリーズ小説の
主人公と同名同姓で、刑事とFBIと
職業まで類似性があるため
よく揶揄われていただけでなく、
数年前にニューヨークで発生した
ウェイクを崇拝するカルト教団による
連続殺人とウェイクの関連性を
個人的に調査しているらしい。

サーガと合流してきたケイシーは
混乱状態のウェイクを保護し、
臨時捜査拠点に戻り、
ウェイクの聞き込みを続ける。

車で移動している間、
サーガは家族からの連絡を受ける。
娘のローガンは
足を滑って浴槽に頭をぶつけたそうだ。
幸いにして夫のデビッドはすぐに事故に
気づきローガンを病院に送ったおかげで、
浴槽で溺れ死ぬことなく
軽い怪我で済んでいる。

サーガとケイシーの臨時捜査拠点は、
捜査のため、ブライトフォールズの
町にあるロッジハウスから
借りた大部屋だ。
サーガの精神世界のモデルにもなっている。

ウェイクは落ち着きを取り戻したものの
記憶が曖昧で、サーガとケイシーからの
質問をうまく答えられずにいる。

ウェイクが頭を抱えていると、
不意にロッジハウスの用務員休憩室の
空いたドアの隙間から覗ける、
モップしぼりバケツから
漏れ出す黒い水たまりが視野に入った。

バケツの水たまりが記憶を呼び戻す
きっかけとなり、
ウェイクはこれまで闇の世界で
経験した出来事の大半を
断続的に思い出す。

【闇の世界の記憶 回想開始】

『イニシエーション1:深夜』

ウェイクが思い出せる最初の記憶は、
闇の世界のトークショーへの出演だ。

それはワーリン・ドアという人物が
パーソナリティを務めるトークショー
In between with Mr. Door
(ミスター・ドアと一緒に
 物事のあいだで)』だ。
幕間の生演奏は、アンダーソン兄弟
若いときに所属していたバンド
「オールド・ゴッズ・オブ・アースガルズ」
が担当している。
バンドは若いときの姿で生演奏をしていた。
現実世界では亡くなっている三人目の
バンドメンバーもいた。

トークショーでは
ウェイクの新作のインタビューが行われた。
ウェイクの記憶にない新作
『イニシエーション』の本を片手に見せ、
次々と質問をする司会者のドアに
ウェイクが当惑するばかりで、
何もうまく答えられないまま番組が終わる。


トークショーの記憶映像が終わると
スタジオは無人の空間に戻る。
ウェイクはスタジオ内で
出口を探そうとするが、
すぐに闇の存在に妨害され
最初のトークショーに巻き戻ってしまう。


今回のトークショーのテーマは、
ウェイク作品の初映画化作品の宣伝だ。


ウェイクはこれまで、映画化しない主義を
貫いているにも関わらずに。
トークショーでは
ドアから映画化を承諾するにあたり
ウェイクの心境の変化は聞かれるわ
映画のティーザーは公開されるわ、
主人公のアレックス・ケイシーを演じる
俳優も登壇して宣伝トークをするわで、
ウェイクの困惑が深まるばかり。

トークショーが終わると再びスタジオは
無人の迷宮になっていた。

たったひとり、フィンランド語混じりの
訛った片言で話す
年配の男性用務員を除いて。

ウェイクが用務員に出口について訪ねると
地下室にそのための道具があると
教えられる。


ウェイクは地下室の靴箱に入っている
天使の飾りが施された
卓上ランプを見つけた。

天使のランプを利用して照明の光を
吸い取り、別の照明ポイントに
移し替えることで、周囲の環境を
変化させることができると
学ぶウェイク。

周囲の環境が変化すると、
出口や入口が出現することがある。

ウェイクは天使のランプで出口を作り、
無事トークショースタジオの外に脱出する。

外に出ると、
そこはウェイクの記憶にある
ニューヨークの市街地を切り取り、
暗い想像で歪ませた形の闇の世界だ。

公衆電話が鳴る。
取るとウェイクを知っている口ぶりの
正体不明の男の声(ゼイン)が
ウェイクに次に取るべき行動を教えた。


記憶にない『イニシエーション』は
スクラッチの仕業だろうか。

ウェイクが精神世界で再現された
執筆部屋を確認すると、
草稿のプロットがすべて創作ボードから
消されている。

ウェイクは脱出のため、スクラッチに
気づかれずに『イニシエーション』の
草稿の書き直しを始める。

ウェイクは精神世界の創作ボードを使い、
アイディアとシーンを組み合わせ、
物語に書き足し、または書き換えることで、
物語の舞台の空間を物語の形に
変化させながら、草稿を書き上げていく。

『イニシエーション2:ケイシー』


ウェイクが電話の指示に従い
カルデラ駅に向かう途中、
裏路地でケイシーと遭遇する。

裏路地のケイシーは、
容姿こそ先ほどトークショーで
共演した俳優と同じだが、
鬼気迫った様子で、
ウェイクへの態度も別人のものだ。

そのケイシーはFBIの者と名乗り、
ウェイクを殺人カルトのリーダーと疑い、
敵意を露わに問い詰める。
これはウェイクの小説の主人公である
架空人物のアレックス・ケイシーだと
ウェイクが気づく。

ウェイクが答えを口にできる前に、
架空ケイシーが形のない闇の暴風に襲われ
あっけなく絶命する。

絶命した架空ケイシーの
フラッシュライトと銃を拾い上げ、
ウェイクは架空ケイシーが絶命するまで
追ってきた案件の残影を追体験し、
その内容を草稿に書き入れ、
自身を脱出へ導く物語を創作する試みを
始める。

以降、ウェイクが架空ケイシーが
カルト殺人の捜査過程中訪れた場所で、
架空ケイシーが経験した場面の
断片的なビジョン(エコー)を
発見するたび、アイディアとして
原稿に取り入れていく。

ウェイクはカルデラ駅を探索し、
架空ケイシーのビジョンと、場所から得た
インスピレーションで
『イニシエーション』のカルト殺人事件の
第一稿を書き上げる。

カルデラ駅を舞台としたカルト殺人事件は
架空ケイシーの視点で展開される。

架空ケイシーは「言葉の教団」という
カルト教団によるウェイク小説
模倣殺人事件を追っている。

カルトのリーダーは
ミスター・スクラッチとの噂だが、
それはウェイクの偽名と考えられた。

架空ケイシーがカルデラ駅に来たのは
同じく殺人カルトの調査で潜入した後
失踪した別のFBI捜査官の消息を
調べるためだ。

架空ケイシーは駅内を調査することで、
失踪したFBI捜査官は、信者の罠にかけられ、
小説を模倣した陰惨な召喚儀式で、
超常現象を目撃した後絶命したことを知る。

また、信者らが小説の内容を模倣して、
廃駅のトンネルに住んでいた
トーチベアラーを列車に閉じ込め、
ガソリンで焼き殺した現場も見つかった。

奇しくもトーチベアラーが生前残したと
彼らの組織のシンボルの絵が、
現実世界でサーガらが捜査することとなる
樹木の教団と同じ木のモチーフだ。

怪しいニューヨーク市警の二人が
駅に出没する姿があった。
彼らはカルト教団の味方のような口ぶりで、
嗅ぎ回わるFBIはそのうちカルトの罠に
かけられ破滅するだろうと嘲笑う。

ウェイクはカルデラ駅の殺人事件の物語を
完成させると、怒り狂う闇の存在が
形のない暴風となり、殺人現場に
近づこうとするウェイクを襲い、
境界域の場所を守ろうとする。

ウェイクは闇の存在を逃げ切り、
境界域になっている殺人現場に入ると、
駅とつながる鍾乳洞の峡谷で
カルト殺人に遭ったFBI捜査官こと、
ナイチンゲールの亡骸を発見する。

ウェイクが脱出の鍵と感じた
心臓を取ろうとすると
それは既に奪われた後の残像で
触れる前に消えた。
間に合わなかったと呟くウェイク。


殺人現場で言葉の教団が
儀式の一環で岩壁に書き残した、
『イニシエーション』からの引用と
思しき詩文の断片がある。
詩の最後は
これはお前を導くための儀式だ。
 お前がいなくなれば、
 お前の仲間が彼に会う
」との一文で
締めくくられている。

境界域の深部で、
ウェイクはサーガの精神とつながり、
断片的な会話を交わす。

『イニシエーション3:呪い』

駅から出ると、例の謎の男から
公衆電話への着信が鳴る。

謎の男がウェイクの進捗を確認し、
進んでいると褒めた。
また、アリスが心配なら
「パーラメントタワー」で
確認したほうがいい
とアドバイスする。
途中で電話が切れる。

ウェイクはアリス安否を確認するため、
闇のニューヨークにも投影されている、
2010年まで二人で暮らしていた
高級タワーマンション
パーラメントタワー」の自宅に行く。

そこにアリスの姿はない。
スクラッチまた彼に奪われた
原稿の置き場になっている
可能性の高いウェイクの執筆部屋の
ドアも開かない。

自宅内で見つかる
その後のアリスの生活を物語る痕跡や
アリスが過去を振り返る独白が撮影された
ドキュメンタリービデオの一部が
確認できた。

2010年のコールドロングレイク事件で
失踪したアラン・ウェイクは
世間では湖に溺れたとされた。

その後アリスは一人で
苦しい精神状態でもがいていた。

ウェイクが失踪した6年後に、
アリスは自宅でタイプライターの音や
人の声が聞こえはじめる。

それは「いつも怒りがあった」
ウェイクの姿をした「暴力的な」「怪物」と
アリスは形容した。


アリスは写真家である自分が
得意とするアート的アプローチで
対抗を試み始める。

アリスは物音に反応するセンサーを
撮影セットに取り付け、
ウェイクの怪物を自動撮影する
仕組みを作り、怪物の写真を撮り続けた。

アリスは、次の写真展示会のテーマを
『闇の世界』とし、そこで怪物の写真を
展示する予定を語る。


ウェイクはアリスが言う「怪物」は
スクラッチだと考え、
脱出を急がねばと改めて決意する。

アリスのドキュメンタリーがきっかけで
ウェイクの記憶の断片が蘇る。

記憶の中でウェイクは闇の世界のループから
脱出するため『イニシエーション』の物語を
書きつづけた先、ようやく執筆部屋に
入れるようになった。

タイプライターの前で
脳天を銃で撃ち抜かれて死んでいる
自分と同じ姿の男がいる。

机に残された原稿は
『リターン』と書かれた表紙の1枚のみ。
タイトルの下の作者の署名が
塗りつぶされている。

その前後で執筆部屋を背景に
闇の存在が暴れる光景の微かな断片が過る。

『イニシエーション4:我ら、歌う』


気がつくとウェイクは再びトークショーへ
逆戻りした。失敗しただろうか。
創作ボードに書いた第一稿も消えた。

今回のトークショーは
トークショーではなかった。

ステージに出ると、
複数の巨大モニターから
ミュージカル風のビデオが
流れ始める。

ウェイクはモニターの森を
くぐり抜けてステージの迷路を進む。


ビデオの中で、
ウェイク、司会者のドア、若い頃の
「オールド・ゴッズ・オブ・アースガルズ」
がノリノリの姿で情緒豊かに歌い踊る。

クライマックスになると、バックダンサーに
闇に支配された者や、ケイシーの俳優なども
登場し、夢の豪華共演となり、
大いに賑わっていた。

歌われている内容はウェイクの現状や心情、
創作やこれまでの戦いへの賞賛などである。

ウェイクは天使のランプと
創作ボードを使って道を作り出し、
無事ステージの迷宮を脱出する。

ステージを出ると
いつもの謎の用務員しかいない
空のトークショースタジオだった。

ウェイクは先ほどのミュージカルのサビを
口ずさみながら床掃除する
用務員の横を通って、スタジオを出る。

『イニシエーション5:665号室』



闇の世界のニューヨーク市街に戻り、
鳴り出す公衆電話を取る。
今度も例の謎の男の声だ。

声の主はウェイクがどこまで覚えているか、
どこまで進んだかを聞いてくる。
ウェイクが記憶で『リターン』の原稿を
見たと言うと、謎の男はそれが
何よりも重要だと強調し、
すぐにホテルにある自室に
会いに来いと言った。

今回のループも始まってすぐ、
裏路地でカルトのリーダー探しの
架空ケイシーに遭遇する。

剣幕で詰問する架空ケイシーを目の前に、
ウェイクは自覚がないまま手に握られている
銃が発砲したと気づく。
撃たれたケイシーはよろめいて絶命する。


電話の指示に従い、闇の世界の
「オーシャンビューホテル」の
声の主の部屋を訪ねると、
ウェイクは謎の声の主
――トーマス・ゼイン――と
数多のループの中で
この部屋で過ごした
記憶の断片たちに触れる。

(2010年のゼインは潜水服姿で
 顔を見る機会がなかった)

ゼインはウェイクと性格も服装も
かなり違っているように見えるが
容姿は瓜二つだ。
ウェイクは驚いてなぜだと質問した。

しかしゼインは終始病的な
ハイテンションで、
ウェイクの質問をはぐらかし、
支離滅裂気味な言葉を一方的に捲し立て、
一方的に会話を切り上げる。


ゼインは自分のことを映画監督と紹介した。
ウェイクが知っている
詩人でダイバーのトーマス・ゼインを
自身が演じているとある
映画の登場人物だと認識しているようだ。

他のゼインとの会話内容について

二人の容姿について、
ゼインは「君のほうが
 私にそっくりなのではないか」と返した。

ウェイクとの関係について、ゼインは
「私たちは運命共同体だ」
「この部屋で共に卓越の芸術を作り、
 そして魔法が起きた」と語った。

そうゼインに言われると、
実際に数多のループの中で
この部屋の中で過ごした時間の
断片が浮かんで見えた。

ウェイクとゼインが
酒の力で大いに騒ぎ、楽しみ、
『リターン』の着想を語り合い、
共同創作していいたように見える
光景の断片たちだ。


アリスについて、ゼインは
「スクラッチはアリスを
 境界域から狙っている」と
ウェイクに警告する。

『リターン』について、ゼインは
「『リターン』こそ脱出の鍵だ」と
その重要性を強調する。

次の殺害現場について、ゼインは
このホテルにあるとウェイクに教えた。

ウェイクは、オーシャンビューホテルで
架空ケイシーのビジョンを拾い集め
カルト殺人の第二稿を執筆する。


架空ケイシーは殺人カルトによる犯行の
現場調査でホテルにやってきた。
噂で教団リーダーの正体が失踪した
ウェイクと囁かれている中、
架空ケイシーはその手がかりを
掴みたいと考えている。

ホテルで殺人教団がテーマの
神秘的なイマーシブシアター演劇
『カルト』の公演が行われていた。
その中で演劇の内容に沿って
演劇と見せかけた本物の殺害が起きた。

犯人は、演劇の中で
現実を書き換えられるという正体が
悪魔の脚本家を演じる、
主演男優・スクラッチは、
オフタイムでも素顔を見せず、
常に劇中のカルトのマスクを被る
正体不明の人物だそうだ。


劇の内容に沿って行われた殺害の内容は、
クライマックスでホテル中を血の海に
染め上げる殺戮を尽くした最後に
主演男優が脚本家のミューズ役の
主演女優を殺害する、というもの。

殺害動機は、主演女優が
口承でのみ伝えられた本演劇の
幻の原本を見つけ、演劇の作者にも
会ったと主張したことと関連すると思われた。

今回も現場付近にカルトの味方風の
ニューヨーク市警コンビがいた。
彼らは今回の殺害の重要証拠を
FBIに掴まれないよう、職務を濫用し
巧妙に隠滅できたと得意げに話している。


ウェイクは核心に迫ると激怒して襲ってくる
闇の存在から逃げ切り、第二稿を書き上げ、
殺害現場に到達する。
現場である浴槽に沈められた
脱出の鍵であるレコードに手を伸ばすと、
今回も触れる前にそれが残像となって
消えた。間に合わなかった。

今回も殺害現場の境界域では、
小説から引用され、最後に
これはお前を導くための儀式だ。
 お前がいなくなれば、
 お前の仲間が彼に会う
」と書かれる
闇の詩が飾られていた。

ウェイクは再びサーガの精神とつながり、
断片的なコンタクトを取り、現場を離れた。


『イニシエーション6:リターン』


ウェイクは
再びパーラメントタワーの
自宅に行く。

執筆部屋は依然として開かない。
アリスのドキュメンタリーの続きが
見つかった。

アリスはウェイク「死後」、
抑うつ状態に陥り、苦しんでいた
時期を振り返る。

ウェイクのエージェントをしていた
バリー・ウィーラーはウェイクの失踪後も、
プライベートでアリスの様子を
見に訪ねてきたり、ご飯を作ってあげたりと
見返りを求めず世話を焼いてくれたことに、
アリスは感謝の念を述べた。

少し回復すると、
アリスはニューヨークから
別の場所へ引越した。

引っ越し後もバリーは時々
アリスへメールを送り、
元気かどうかを気にしていた。


アリスのPCのメールボックスから、
数年前から半年前までの間、
バリーから届くメールの履歴が確認できる。

メールで綴られたバリーの近況で、
バリーはウェイクのため
アリスの様子を気にしていただけでなく、
ウェイク従来の考えを尊重し、
ウェイク作品が勝手に映画化されないよう、
一人で奔走していた様子も伺えた。

アリスは引っ越しの後も、
闇を写真で捉えようと、闇の正体について
自分なりの答えを出そうと、
問題意識を深め、
ウェイクの怪物の撮影や
闇についての探究に励んでいたと語る。


今回もウェイクは、アリスの
ドキュメンタリーに触発され、
『リターン』についての記憶の断片を
取り戻した。

ウェイクがある日『リターン』の
完成原稿を発見したときの記憶だ。

ウェイクはそれを書いた覚えがなかった。
内容を読むと、スクラッチが
『リターン』の筋書きで
現実世界のブライトフォールズを
乗っ取る魂胆が見えた。

スクラッチが現実に放たれれば、
アリスも再び危険に晒されると
危惧したウェイクは、

『リターン』を書き換えるため、
すでに物語の中で登場している、
物語に抗う動きを見せたサーガを
戦うヒーローに仕立てていくことに決めた。


しかしまだ原稿修正が終わらないうちに、
ウェイクを止めようと執筆部屋に
駆け込んだスクラッチに見つかってしまう。

ウェイクは撃たれてしまい、
またループの最初に引き戻された。

『イニシエーション7:マスク』


新たなループ。

トークショーもパフォーマンスもなかった。
消灯された空っぽのトークショーの
ステージの上、司会者を演じなくなった
ドアが厳粛な態度でウェイクを咎め、
なすべき行動するようにと促した。

しかしウェイクは
ドアが言っていることの意味を
理解できずにいる。

ドアはこれまでのトークショーは、
ウェイクのために繰り返してきたもので、
もうこれ以上はしないと宣言する。

また、ドアはウェイクが物語づくりに
課した煩雑なルールで自分を苦しめたこと、
大勢の人に助けられている幸運の事実への
感謝を忘れていることを咎めた。

さらに、ドアは、
ウェイクのせいでアリスだけでなく、
ドアの大切な人まで巻き込まれ、
危険に晒されていることへの憤りを見せる。

最後に、ドアはウェイクに
次に会うときには、
状況が一変しているはずだと伝え、

ウェイクがそれまでに
なすべきことをするか、
せめてドアの邪魔しないでほしいと
釘を刺し、会話を終わらせた。

ウェイクは落ち込んで
スタジオの用務員と話す。

用務員は
ドアは自分の役割を演じているから
仕方がない、気を落とすことはないと
ウェイクを励ます。
続けて、用務員は冗談半分で、
「役を演じているといえば、
 ドアを映画に出してみたらどうだ、
 俺があんたの映画に出されたみてえに」
と不思議なことを言う。

前からウェイクを
トーマス・ゼインの愛称「トム」と
呼びつづける用務員は、やはりウェイクを
ゼインと認識しており、
話の流れでゼインの映画についての
感想や賞賛を語ったあと、
地下室に脱出のヒントがあると教えた。

ウェイクは用務員に教えられた
ヒントにしたがい、
スタジオの地下室の靴箱から
アリスが撮影した2枚の写真を入手する。
クリッカーの写真と、光の弾丸の写真だ。

『イニシエーション8:ゼインの映画』


ウェイクが闇のニューヨーク市街地に出て、
次の殺害現場を教えてもらうため
ゼインの部屋を再訪する。

ゼインの部屋でゼインとの記憶に触れる。

ゼインがウェイクに銃を向けられ
スクラッチに騙されたと告白する場面だ。

ゼインが言うには、
ウェイクが書くことをやめていたときに、
スクラッチが現れ、
『リターン』を書き始めた。


ゼインはスクラッチから、
『リターン』が完成されれば、
ゼインが闇の世界から脱出できるとの
嘘を信じて協力した。

しかし物語が完成すると、
スクラッチはゼインを置いて
『リターン』の原稿と共に消えた。
ゼインは騙されたと気づくも、闇の世界に
取り残されるほかなかった。


ゼインはウェイクならまだ
スクラッチを止められるといい、
ウェイクに復讐してほしいと懇願し、
次の殺人現場がゼインの映画作品が
上映されている映画館と教えた。

ここから
記憶の映像が数多のループの中の断片が
重なった結果不安定なものとなった。
銃を持つ人と向けられる人の
さまざまな差分の断片がチラついて乱れる。

記憶の映像が落ち着くと、
ウェイクが銃を持ち、ゼインを撃ち殺す
記憶に収束した。

と思いきや、ゼインは「カット」と言って、
これをも映画のワンシーンにして
ケロッとしていた。

記憶を見終えると、
ウェイクはゼインが話した映画館に向かい、
架空ケイシーのビジョンを拾い集めて
カルト殺人の第三稿を書き上げた。

架空ケイシーは映画館で
起きたカルト殺人を追って、事件発生時に
映画館で上映された映画を手がけた
謎多き映画監督トーマス・ゼインを
手がかりとして調べ始める。

ゼインは過去に行方不明になっている。
映画館で上映されていた『白夜の夜』という
ショートフィルムは、ゼインが渡米前に
フィンランドで撮影した初期作品で、
今や失われた幻の作品とされている。

言葉の教団は『白夜の夜』を
聖杯的な存在と見なし、
崇拝しているそうだ。


架空ケイシーは映画館で
『白夜の夜』を観る。
過去に作られた作品のはずなのに、
主人公は今の自分の名前と容姿が一致する。

ケイシー以外、用務員のアーティ、
バーバラ・ジャガー、アラン・ウェイクも
映画に登場している。

「これはお前を導くための儀式だ。
 お前がいなくなれば、
 お前の仲間が彼に会う」が
劇中セリフで登場する。

映画の最後で
映画ケイシーは
猟奇的なカルト儀式に巻き込まれ、
召喚の生贄としてフオタリの井戸の近くで
殺害される。
儀式の成功により映画ウェイクが召喚され、
ケイシーはループの最初に戻され、
狂気の出来事に叫びを上げる。


映画館で起きた殺人の被害者は、
これまで書いてきた殺人事件の現場に
現れていたカルト教団の味方風の
ニューヨーク市警のコンビだった。

ニューヨーク市警コンビの二人は
これまで裏で教団のためにいろいろと動いて
不都合をもみ消してきたことを土産に、
カルト教団に入信の願いを出した。
教団に入れば何かの頂点に達すると
信じていたようだ。

その結果市警コンビは、
教団に行われた猟奇的な入会儀式で
殺害されてしまう。

架空ケイシーは現場で教団員や
グランドマスター(師範)に
直接尋問を行うことができたが、

強気の態度を崩さない教団員から
教団リーダーについての情報を
引き出せないばかりか、

『白夜の夜』の内容と彷彿させる
儀式にまで巻き込まれる。

グランドマスターは架空ケイシーに、
ケイシーという架空の人物を
演じきったと労い、作者のウェイクを
連れてくる儀式が果たされ、
もう行っていいと告げた。

正気を失いかけ呆然とする
架空ケイシーを横目に、
グランドマスターは
ウェイクの到来を歓迎し、
「ケイシーは架空の登場人物なら、
 彼から捜索の役割を引き受けた
 君も架空ではないだろうか」と語る。


架空ケイシーはいよいよ
自身の運命はこれからも
この解明されることのないミステリーに
囚われ続けることと悟り、
街の暗闇に歩き出す。

ウェイクは物語を書き上げ、
映写室にある殺害現場に到達する。
フィルムが巻き付かれた吊り下げ死体二名の
顔はマリガンとソーントンに見えた。

これはお前を導くための儀式だ。
 お前がいなくなれば、
 お前の仲間が彼に会う
」の詩も
壁にペンキで書かれている。

脱出の鍵は死体に被せられた
ヘラジカの頭蓋骨だが、
今回も間に合わず残像と消えた。

境界域でウェイクがサーガとつながり、
三回目の断片的交信を行う。

『イニシエーション9:消滅』


ウェイクがパーラメントタワーに
向かう途中、公衆電話が鳴り出す。

ウェイクが電話を取ると、
それはゼインではなく、
「物語の別の位置にいる」と説明する
ウェイク自身だった。

電話がウェイクに取るべき行動を指示する。
パーラメントタワーに行く前に
アリスの写真を広場の
靴箱に入れるようにと。

ウェイクが、外に出られるかについて
電話のウェイクに質問すると、
電話のウェイクは
「出られる。いや、出られもしない。
 それは、お前自身が
 どう選ぶかによるんだ」と答えた。

ウェイクは靴箱にアリスの写真を入れてから
パーラメントタワーの自宅へ行く。

自宅でアリスのドキュメンタリーの
最後のパートが見つかった。

ビデオの中で、
アリスは疲れ果てて思い詰める様子で、
写真にウェイクの姿の怪物を封印する作戦が
うまくいかず、怪物から逃げられない
苦しみを語った。

アリスは「視点を変える時がきた」
「アーティストからアートへ」と
コンセプトらしきものを語り、
自身の自殺でそのコンセプトを表現した。

ビデオの最後に、
アリスが湖の崖から飛び降り自殺を行う
一連の様子をコマ撮りで記録した
写真のスライドショーが
再生された。アリスの遺作だ。

ウェイクは怒りのまま
執筆部屋に駆け込んだ。
はじめて執筆部屋のドアが開けられた。
ウェイクは中で机に向かって
原稿に手を入れている男の頭を
迷わず銃で撃ち抜く。

しかし、男を撃ち殺した後
よく周囲と状況を確認すると、
ウェイクは自分が
撃ち殺したのはスクラッチではなく、
少し前のループでスクラッチの原稿を
急いで直している自分だと気づく。


ウェイクはこれまで
自分がスクラッチが書いた
『リターン』原稿を修正している最中に
鬼の形相で部屋に駆け込んだ
スクラッチに撃ち殺されて
ループの最初に戻ったと
記憶していたが、

実際は過去の自分が
未来の自分に殺されることで完成された
ループを繰り返しているだけだった。


アリスを死まで追い詰めた「怪物」は
ループの中で狂気と怒りに侵された
自分自身だと知り、絶望するウェイク。

先ほどまで過去のウェイクの身体に
宿っていた闇の存在は、命を失った身体から
抜け出て背後からウェイクを襲い、
入り込んだ。


闇の存在を宿したウェイクは
憑依の衝撃で床に倒れ込んで意識を失う。

倒れたウェイクは、
『リターン』表紙以外の原稿と共に消えた。

「これはお前のための儀式だ。
 お前がいなくなれば、
 お前の仲間が彼に会う」

最後の一文まで到達した。
これにて『イニシエーション』が完結し、
ウェイクの召喚儀式は果たされた。

【闇の世界の記憶 回想終了】


『リターン3:地元の少女』


ウェイクはサーガとケイシーに
覚えていることの中から
重要な事柄を選んで
優先的に伝えた。

小説が闇の世界を介して現実化すること。

闇の世界に触れられた
フィクションは
現実を変容する力があること。


13年前に闇の存在が引き起こした異変では、
ウェイクは一度闇の存在に勝利し、
現実を守ったこと。

それ以降ウェイクはずっと
闇の世界に囚われており、
闇の世界から脱出するため
物語を書いていたこと。

闇の世界は闇の存在の領域であること。

闇の存在がウェイクの姿を取る時に
それをスクラッチと呼んでいること。

闇の存在ことスクラッチの目的は
世界全体を悪夢のようなホラー小説に
書き換えることであること。

物語による書き換えは
一度に行われるのではなく、
段階的に行われ、徐々に
現実を改変すること。

物語が結末を迎える時に
スクラッチがクリッカーを持っていると
悪夢は永久的に現実になる。
逆にその前にクリッカーを手に入れれば、
クリッカーを闇の世界に送り返せること。

現在進行中の悪夢は、
スクラッチが創作したもので、
それをウェイクは書き直そうとしたが
間に合わなかったこと。

ウェイクからもらった原稿から、
サーガがクリッカーは
どこかのトレーラーで
見つけることが予言されている。

クリッカーを取り戻すことが重要との
ウェイクの主張を聞いたサーガは
ウェイクの見張りをケイシーに任せ、
原稿を手がかりに
トレーラーを探しにいく。

トレーラーの在処は
ウォータリーにあるトレーラーハウス団地
「ウォータリー・トレーラーハウス・
 トレーラーパーク」だとすぐに分かった。

その所有者は地元のCMでよく見かける
コスケラ兄弟
――――イルマ・コスケラ
    ヤッコ・コスケラ
――――だ。
サーガはウォータリーで見かける
コスケラ兄弟と話してみると、
サーガの過去について
コスケラ兄弟もローズと同じ認識を
持っていることが分かった。

コスケラ兄弟曰く、
サーガは
娘の死亡事故で引っ越すまでに
トレーラーハウスで
幸せに暮らしていた。

自分の旧居であるトレーラーに再訪したいと
話を合わせたサーガに、
コスケラ兄弟は快く承諾し、
サーガのトレーラーの鍵は
コスケラ兄弟プロデュース・
コーヒーがテーマの遊園地
「コーヒーワールド」の
ギフトショップに保管してあると教える。


公道の橋が大雨で壊れており、
サーガは山道で
コーヒーワールドへ向かう。

コーヒーワールドに着くと、
道路の冠水でアクセスが悪くなったためか、
遊園地は半荒廃状態で放置されている。

サーガはギフトショップから鍵を見つけ、
トレーラーパークに行くと、

アンダーソン兄弟――――
 トール・アンダーソン
 オーディン・アンダーソン
――――が
昼間から密造酒を呷りながらサーガが
来るのを待っていた。

初対面のアンダーソン兄弟は
サーガに自分たちは血の繋がった
家族であると教えた。

具体的にはトールがサーガの祖父で、
トールと兄弟のオーディンは
サーガの大叔父に当たる、とのこと。


さらに、アンダーソン一族だけは
他の者と違い、現実を改変する物語に
記憶を影響されないという
特殊体質の持ち主であることも
アンダーソン兄弟から教えられる。


サーガにとって
アンダーソン兄弟が主張する
血縁関係は完全な初耳だ。

しかしサーガの母はサーガの父や
祖父母のことについて
一切話さないようにしていたため。
サーガの記憶には
アンダーソン兄弟の主張と矛盾する材料が
存在しない。

サーガは自分が住んでいたとされた
トレーラーを調べ、
自分の身の上についての
真実と物語による改変を
見極める作業を開始する。


トレーラーではサーガとローガンが
生活していた痕跡や、
サーガとアンダーソン兄弟やコスケラ兄弟と
親交を持つ痕跡などが確認でき、
ローガンが5年前(2018)に溺死した事故が
載る顔写真つきの新聞記事も発見できた。


ローガンの死によるショックで、
サーガが一時的にFBIを休職したことを
証明する上司とのやりとりの手紙も
確認できた。

サーガは目の前で次々と見つかる
真実味のありすぎた物語に目眩を覚える。
不安をなくそうと家族へ電話をかけるが、
ローガンは出ず、夫のデビットは留守電。

また、トレーラーハウスで
アンダーソン兄弟と、
鹿のマスクを被り、「カレバラ・ナイツ」の
ロゴ入りのジャンパーを着て、
手にクリッカーを持つ
樹木の教団の者との記念撮影が見つかった。

サーガはアンダーソン兄弟と教団の繋がりを
さらに捜査する必要があると考え、
次の目的地はアンダーソン兄弟が
住んでいる
老人ホーム・ヴァルハラに決めた。

突然、サーガの前方に
保安官代理のマリガンとソーントンの姿が
見えた。彼らは教団員のマスクを被り、
闇に支配された者のようなうわ言を
口にしながらふらふらと歩いていく。

サーガはその後を追うと、
カレバラ・ナイツの作業場にたどり着く。


カレバラ・ナイツの作業場はテーマパーク
「コーヒー・ワールド」の隣に位置する。
そこは、コスケラ兄弟主宰の
モーターサイクルクラブ拠点であり、
地域活性化のために建てた遊園地の遊具や
パレードのフロートの制作・整備なども
引き受けている。

作業場の中はサーガが
トレーラーハウスで見つけた
クリッカーを持つ信者の写真の
背景と一致している。

サーガはマリガンとソーントンを追って
作業場のオフィスの奥に侵入すると、
そこに樹木の教団の本拠地と思われる
事務所が隠れていた。


教団事務所の
パソコンや掲示板を調べると、
ナイチンゲールの一件をを含める
樹木の教団の儀式の全貌が見えてくる。

教団はある時コールドロンレイク湖岸で
クリッカー見つけ、以降それを重要な
儀式道具として使用しているらしい。

樹木の教団の儀式の中心となる手順は、
ターゲットの心臓を取り出し、
残された胸の空洞にクリッカーを埋めて
スイッチを2回入れることと
掲示板のマニュアルで書かれている。

ナイチンゲールだけが怪物になった理由と
関係することとして、
ナイチンゲールの儀式は
クリッカーを胸部に埋め込む前に、
目撃者のブッカー夫妻が現場に現れたため
儀式中断を余儀なくされたと、教団のメモで
反省と改善策と共に書かれている。


サーガが教団事務所の地下へ降りると、
教団の集会所を見つける。
集会所の小さなステージの上、
マリガンとソーントンが何かをしている。
サーガに気づくと二人はその場から
跡形もなく消えた

マリガンとソーントンの残像があった
舞台の上に祭壇があり、
クリッカーがそこで祀られていた。

サーガはクリッカーを手に取ろうとすると、
クリッカーは触れる前に消えた。
物語による段階的な現実改変の瞬間に
僅差で間に合わなかった。
マリガンとソーントンが一歩先に
クリッカーを持ち去ったことになっている。


サーガは近くに見つけた原稿にしたがい、
カレバラの作業場の庭にある
制作途中のパレードのフロートを完成させ、
フロートを使用した儀式を行う。

儀式の成功により、
水妖の伝承があるフオタリの井戸が
境界域の入り口として開かれた。

サーガは井戸に降り、
深部にいるマリガンとソーントンを倒し、
クリッカーを手に入れる。

拾った複数の原稿から、
マリガンとソーントンが
闇に支配されるに至った経緯が補完される。

マリガンとソーントンは
教団の構成員だった。
教団の夜警中に、遊園地で一般人の店員を
闇に支配された者と見間違い、
射殺してしまう。

過ちを隠そうと、マリガンとソーントンは
射殺死体をフオタリの井戸に投げ込んだ。
罪が暴かれることはなかったが、
膨れ上がる罪の意識が闇が生長する
条件を整えた。やがて二人は闇に支配され、
クリッカーを奪い、境界域へ入り込んだ。

『リターン4:絶望』

サーガは手に入れたクリッカーを
ウェイクに渡そうと
ブライトフォールズのロッジホテルの
臨時捜査拠点に向かう。

このとき、ブライトフォールズの
臨時捜査拠点で
ケイシーはウェイクを問い詰めていた。

ウェイクが書いてきた架空のケイシーには、
実在するFBI捜査官のケイシー本人しか
知り得ないような生活のディテールが
多分に含まれており、
「見られているようだ」と
ケイシーは不快に感じていたことを
訴え、ウェイクに理由を問い糾した。

他人の真実を何らかの形で盗み取り、
恣意に物語に入れて、他人と現実を
思いのままに操作しているのではないかと
追及する。

ケイシーの質問にウェイクが答える。

闇の世界では時空に縛られない
現在や未来のビジョンを観ることがあり、
それらを深く考えずに
小説のアイディアとして使っていた。

しかし、現実由来のビジョンを使う危険性に
途中で気づき、書くのをやめていた。
しかしやめたにもかかわらず
気づいたとき原稿はすでに書かれていた。
と答える。

なぜ原稿が書かれたか、
今の記憶があやふやの状態では
原因が思い出せそうになく、
ウェイクは頭を抱える。

突然のことだった。
樹木の教団がロッジを包囲し、
「作家を出せ」と叫びながら襲撃してきた。

ケイシーはウェイクを守るため応戦する。

ウェイクはスクラッチの接近を感じ、
その影響で苦しみ、しばらくの間気絶する。

ウェイクが意識を取り戻すと、
すぐにロッジの外で信者と戦う
ケイシーの声が
聞こえてるほうへ駆けつけた。

しかしそこにはケイシーの姿がおらず、
ウェイクはスクラッチの接近を感じ取り、
スクラッチの力による頭痛で昏倒する。


まもなくサーガも到着し、
教団の残党と戦闘する。

サーガが撃ち損ねた一人の信者の
マスクが外れた。
その素顔は、イルモ・コスケラだ。
サーガに顔を見られ、イルモは
「あんたは分かってないんだ、サーガ」と
悔し紛れに言葉をこぼす。

突然、FBCのキラン・エステベス捜査官と
名乗る者が部隊を引き連れてやってきて、
現場を制圧する。

エステベスはこれより本件の捜査権は
FBCに移行されると宣言し、
サーガを捜査から締め出す。

意識を取り戻したウェイクも
FBCに連行されてしまい、
クリッカーは渡せなかった。

『リターン5:オールドゴッズ』


捜査権を失ったサーガは、
アンダーソン兄弟との
血縁関係を利用することで
怪しまれずに彼らと信者とのつながりを
調べる作戦を思いつき、
老人ホーム・ヴァルハラへ向かう。


向かっている途中、
サーガに祖父のトールからの
電話がかかってきた。

トールは電話でサーガに助けを求めた。
また、「クソババァ」と叫び、何かと
戦っている様子が電話越しに伝わった。

サーガが老人ホームに到着し、
ベルを鳴らすと、
老人ホーム職員のローズが
応対してくれた。


ローズとは記憶の相違の件で気まずい空気が
残っているが、ローズは昔なじみのサーガに
対して友好的な態度で接する。

しかしなぜかサーガがアンダーソン兄弟に
面会したいと言うと、ローズは露骨な
言い訳を並べ、会わせまいと誤魔化す。

ウェイクが闇の世界で会っていた
用務員はここではアーティと呼ばれ、
職員ウラジミールの作業着を盗んで
掃除する癖がある入居者の一人のようだ。

サーガは他の方に挨拶すると言って
ローズの許しを得て
老人ホーム内を調査する。

入居者の噂によれば、
トールはハンマーで
暴れていて事故を起こしたそうだ。
トールの名札の部屋の中を見ると、
ひっくり返ったように荒れ具合だ。

オーディンは自室のベッドで
具合悪そうに寝ており、
話できそうになかった。

しかしサーガはすぐに
自分が精神世界でいつも使っている、
精神読み取り能力(プロファイリング)で
オーディンと話せるようになることを
発見する。

精神世界でオーディンとの会話で
サーガはこの他人の精神を読み取る能力は、
ただの直感ではなく、アンダーソン一族の
特殊能力であると知る。

オーディンとの情報交換で、
アンダーソン兄弟は教団から
勧誘されているが、入信してはいないが
明らかとなった。

またトールに関しては、
闇に狙われ危険な状況に陥っており、
健康センターにいる。
シンシア・ウィーバーから
トールを救出してほしいと、
オーディンがサーガに頼む。

オーディンの自室の壁にある絵画に
アンダーソン農場を背景に、
生まれたばかりのサーガとその母、
アンダーソン兄弟の姿が描かれている。


アンダーソン兄弟、
フレイヤとサーガが描かれた絵

廊下に窓際に闇に取り込まれた
シンシアの残像があった。
これまでの経験で境界域が近くにあると
直感するサーガ。


トールの居場所が健康センターと
言い当てられたローズは、
サーガに健康センターの調査を許した。
しかしローズはまだ隠し事を
しているように見える。


健康センターは
封鎖されしばらく経っている様子だ。

センター内を調査すると、
トールの身に起きていることが判明する。

トールは闇に侵されたシンシアに惚れて、
闇に浸食され始める。

闇の計略に気づいたトールは
支配されまいと所構わず暴れ回っていた。

トールの怪我の治療と、周りへの危険を考え
従業員のローズとウラジミールは
彼を健康センターに運び、中に閉じ込んだ。

健康センターで見つかる
書類やウラジミールの職員室を調査すると、
ウラジミールは比較的最近に教団に
加入を認められた教団員であると分かる。

申請書に承認のサインをした
教団リーダーの署名は
イルモ・コスケラだ。

サーガはトールの後ろ姿を追いかけるが、
トールは闇に誘われて裏口から
健康センターを出て、ふらふらと
境界域の入り口になった中庭の池に
入り込んだ。

異変に気づいたローズも中庭の池まで
やってきて、懸命にトールを
呼び止めようとするが、手遅れだった。


事情を隠すローズの心の声を
サーガが精神世界の能力で探る。

どうやらローズはこれまでに
ウェイクからのさまざまな
メッセージを受け取ってきた。

ウェイクからのメッセージによれば、
これらすべての異変はウェイクの帰還の際に
必要な物語だとローズは考えている。

ローズはウェイクのメッセージに従い
ウェイクが書いた物語のヒーローだけを
サポートするための秘密任務と
隠れ物資の準備(ランチボックス)を
怠らなかった。


サーガはローズの精神から読み取った
ヒーローの合い言葉をローズに伝え、
自分がウェイク帰還の物語のヒーローだと
話を合わせることにした。

ローズはサーガがヒーローだと分かると、
ワクワクして協力するようになり、
隠し事もすべて語り出した。

サーガはローズから境界域へ入る
儀式が記された原稿ページをもらう。


サーガは原稿にしたがい、
トールが残した、サーガとその母への
詫びと後悔の気持ちを綴った歌のレコードを
シンシアの部屋の浴槽から見つけ、
ジュークボックスでかけると
境界域が開かれた。

レコードを探す途中に停電が起きて、
復旧作業を行うため地下室に入ると、
闇の存在に襲われ事切れた
ウラジミールの死体が確認できる。

サーガは池から境界域に入り、
最深部でシンシアを倒す。

ウェイクとの三回目のコンタクトのあと、
サーガはトールを無事に連れ戻す。

原稿やシンシアの部屋の調査要素などから、
シンシアが闇の存在に蝕まれ支配された
経緯が確認できる。

シンシアは高齢のため
次第に闇から身を守る電球やランプの管理が
思うようにできなくなっていた。

光の守りが不完全の中で
物語の書き換えが進行し
闇の力が強くなるにつれ、
シンシアが物音や影に怯えることが増えた。

シンシアの記憶の中では詩人だった
トーマス・ゼインが映画監督になっている
事実もこの頃に徐々に見つかり始める。


シンシアの心の堤防を
徹底的に決壊させたのは
天使のランプの紛失事件だ。

ウェイクからのメッセージを
信じて行動するローズはある日、
ウェイクから天使ランプを渡してほしいと
頼む夢を見た。


ローズはシンシアの部屋に忍び込み、
夢に見た天使のランプを盗み出す。
メッセージにしたがい、天使のランプを
靴箱に入れ、池に沈めてウェイクへ送った。

ローズはランプを数多く所有している
シンシアなら、ひとつなくなっても
困らないはずだと考えていたが、
そうではなかった。

天使のランプは壊れて
使えなくなっていたものの、
ゼインのお気に入りのものだった。
老いたシンシアにとって、天使のランプは
ゼインとつながる思い出の品であり、
心を守る支えだった。

迫り来る闇に弱ったシンシアは
ゼインのランプまで失い、
悲しみに圧倒され、闇に抗えなくなった。

闇は彼女の負の感情、挫折した願望、
恐怖などを利用して彼女を蝕み、
やがて完全に彼女を支配した。


闇はシンシアに、
トールがゼインの敵だと思わせることで
彼女を操作した。支配されたシンシアは
トールを誘惑し、境界域に閉じ込め、
殺害しようとしていた。


サーガは救出されたトールと
闇の存在に盗聴されないよう
精神世界で会話する。

家族史についてトールに確認すると
サーガは父と関連する確執で
母とトールは疎遠になった背景を知る。

サーガは改めて自分とトールとの関係は
物語による影響ではなく、
元より血のつながった家族だと確信する。

物語に影響されないという
アンダーソン一族の能力に対する認識と、
トールからの励ましに背中を押され、

サーガは改めて娘のローガンの命を
間違った物語から守れる勇気を得る。

サーガは、
必ず物語を娘が生存する現実に
書き直すことを、ウェイクにクリッカーを
渡す交渉条件と決め、
FBCがウェイクを拘束している
ブライトフォールズ保安官事務所へ向かう。

『リターン6:スクラッチ』


ブライトフォールズ保安官事務局に入ると
目の前は闇に支配されたものの襲撃に遭い
警報で駆けつけたFBCと現地保安官が
全滅しかける惨状だ。


負傷したFBC捜査官エステベスから
状況説明を聞く。

エステベスによれば、
FBCがブライトフォールズへやって来たのは
ブライトフォールズ地方で繰り返し発生する
変貌世界事象の調査と対処のためである。

現在ウェイクは闇とのつながりを疑われ、
監房に入れられている。
ケイシーは森で倒れているところを
FBCに保護された。ケイシーに
闇に触れられた痕跡があるものの、
異状がないため観察中である。

襲撃で停電になった署内の電力復旧のため、
サーガはエステベスに頼まれて地下に行く。
死体安置所で負傷したケイシーと再会し、
ケイシーの話を聞く。

ケイシーは襲撃で負った怪我以外
異状が見られず気丈に振る舞っている。
しかしサーガは鋭い精神能力から
ケイシーからもう一人の深く傷ついた
ケイシーのビジョン(闇の世界の
架空ケイシー)をキャッチする。

ローガンの話になると、
これまでサーガと同じ認識を共有していた
ケイシーの反応が変わった。
他の町民と同様に、ケイシーの記憶も
ローガが死んだ物語に修正されている。


今のケイシーの記憶では、
サーガが過去に元夫のデビットと
離婚した際に、娘のローガンと
ウォータリーに引っ越したが、
そこでローガンが湖で溺死してしまった。
時間はかかったが、
サーガは娘の死を乗り越え、FBIに復帰した。

ケイシーはブライトフォールズでの
事件捜査は、何かしらサーガの心の回復に
寄与すると考え、
調査担当をサーガに譲ったと振り返る。

サーガはケイシーが拾ったヒューズを使って
電力を復旧する。電力が戻ることで、
監房の電子ロックが解錠できるようになり、
サーガは収監されたウェイクに
クリッカーを渡しにいく。

ウェイクの隣の監房に
教団リーダーの容疑で
コスケラ兄弟が収監されている。
FBCを「よく知らないくせに」と罵り、
悔しがっている。


サーガはウェイクを見つけ、
クリッカーをあげる代わりに
ローガンを救ってもらうと
約束を取り付ける。

ウェイクが承諾したあと、
サーガがクリッカーを渡した瞬間、
ウェイクだったものが闇を纏い、
スクラッチになった。


スクラッチは鉄格子をすり抜けて
横の監房のヤッコ・コスケラを
握りつぶすように殺害。
兄弟の突然すぎた死を目撃し
呆然とするイルモ。

フラッシュライトと銃では効果がないため
サーガは逃げながら通信で
エステベスに相談する。

エステベスはサーガに、FBC準備中の
闇の存在対策用強力照明が
保安官事務局の庭に置かれていると
教える。

エステベスの指示を頼り、
サーガはかろうじてスクラッチの猛攻の中
照明用のパワーコアを起動する。

FBC特製強力照明に当てられ、
スクラッチは姿を消して一時撤退した。

サーガはこれまでウェイクをスクラッチと
見破れなかったと後悔の念に苛まれる。


保安官事務局の廊下で
片割れのヤッコをなくしたイルモに
哀悼の念を伝えると、
彼から改めて樹木の教団の真実についての
説明が受けられる。

樹木の教団は宗教団体ではなく、
湖からやってくる闇の怪物と戦うために
結成された秘密組織だった。

湖の危険性は古くから認識されており、
樹木の教団以前にも、
湖の怪物から人々の安全を守る
トーチベアラーと呼ばれた団体がいた。


コスケラ兄弟がトーチベアラーから
組織を引き継いだ時、組織のイメージを
リニューアルすることにした。


教団と名乗るという奇抜な
アイディアを実行したところ、
それは森に怖いイメージを
人々に有効的に植え付ける効果があると
気づいたコスケラ兄弟は
森を怖がらせる
教団のイメージ戦略を採用しつづけた。

というのも、
人々が森を怖れ、森に近寄らなくなれば、
湖からやってくる闇の怪物に
襲われる確率が減るからだ。

イルモは2010年の異変を
ウェイクのせいだと認識している。

2010年の事件が収束したあとも
湖から原稿が浮かび、闇に支配された怪物が
湖からやってくることを度々目撃したため、
そもそもウェイクに全ての原因がある確信が
一層深まった。

それがロッジホテル襲撃の動機だ。
根源のウェイクを倒せば、
湖の異変が止まると
樹木の教団が考えていた。


FBCが湖を中心に発生した変貌世界の
研究調査のためコールドロンレイク周辺の
土地を収用し、研究所を設置したとき、
湖の闇の調査だとすぐ勘付いた
コスケラ兄弟は、FBCの研究施設に潜入して
書類を山ほど盗み出して研究した。
奇しくもFBCの書類にまとめられた仮説や
ハートマンの証言などが教団のこれまでの
素朴な考えを裏付ける論理となった。

教団は見つけた原稿、FBCの資料、
FBC施設の警報のおかげで湖岸で
拾ったクリッカー、教団の活動経験など
さまざまなことを吸収した先に、

樹木の教団は湖からやってくる闇の対策法を
確立し、儀式の形へと洗練させていった。

クリッカーを使った儀式で、
樹木の教団は地道に活動し、
闇に支配された者を捕らえ、
消滅させることに成功してきた。

ナイチンゲールの儀式は、
目撃者が現れたことで
中断を余儀なくされたため、
トドメが刺せなかった。

消えたティム・ブレーカーのオフィスで
サーガはケイシーとエステベスと
現状整理を行った。

これまでの出来事、エステベスに閲覧を
許可されたFBCの資料の内容、
アンダーソン兄弟と精神世界での相談で
得られた気づきなどを総合し
サーガはこれからの作戦を考えた。

本物のウェイクはまだ
闇の世界に囚われている。
ウェイクを連れ出す境界域の入り口は
コールドロンレイクと考えられた。

ウェイクを呼び出すため、
まずサーガ自身がクリッカーを使って
効果が増幅されたアートの儀式を行い、
湖の境界域を開く必要がある。

開かれた境界域から本物のウェイクを
闇の世界から連れ戻せば、

後はウェイクに物語を望ましい形に直させ、
彼の手によるクリッカー発動で、
修正後の物語を現実化すれば、
ローガンは助かるはずとサーガは考えた。

『リターン7:召喚』


サーガはケイシー、エステベス、
アンダーソンの兄弟の協力を得て、
コールドロンレイクで儀式を行う。

今回の儀式となるアート活動は、
アンダーソン兄弟に頼んだ
書き下ろしウェイク召喚ソングの
野外ライブだ。

儀式で使うクリッカーが
スクラッチに狙われる事態に備えて、
エステベスからFBCの闇の存在対策用
強力照明と拘束装置も借りて
湖岸に配置した。

アンダーソン兄弟の召喚ソングのライブが
無事終了したタイミングで、
サーガはクリッカーを起動してみたが、
予想に反して何も起こらない。

サーガはふと気づく。
召喚は成功したのだ。
ただ時空に縛られない闇の世界の影響で、
原因と結果が線形的な時間の流れに
則していないだけだと。


過去に湖岸で発見したウェイクは、
今の召喚の結果だった。

とすると、
想定されていた
「闇の世界に囚われたまま」のウェイクなど
存在しない。
最初から湖岸で発見したひとりの
ウェイクしかおらず、
スクラッチは、湖岸の時から
ウェイクの身体に宿り、
別人格のようにウェイクと共存していた。

ちょうどクリッカーに引き寄せられた
スクラッチが登場する。

スクラッチの中にウェイクがいると
気づいたサーガは作戦を変更させ、
ケイシーとエステベスの
援護を借りつつ、
FBCの照明と装備を使い、
スクラッチを拘束装置に誘導し、
強力照明を一斉に浴びせる。

スクラッチは光に堪え
ウェイクの身体から追い出された。
しかし次の瞬間、追い出されたそれが
FBCの装置を壊し、その場にいる
ケイシーの身体に入り込んだ。

ケイシーを乗っ取った闇の存在は
サーガを湖から通ずる闇の世界に投げ込み、
クリッカーを奪い去る。

アンダーソン兄弟はサーガを助けるため
後を追って湖に入り、
開かれた境界域から闇の世界へ沈んでいく。

身体から闇の存在を追い出された
ウェイクは正常の精神状態で目覚め、
一連の災難を見守ったあと、
エステベスに
スクラッチを止めてみると伝え、
ブライトフォールズへ出発する。

ウェイクはこれまで
自分の身に起きたことについての
理解を再整理し、これからの
スクラッチの行動を予想する。

湖岸に召喚されたときのウェイクは、
スクラッチを宿したままの状態だった。
境界域を超えたことでスクラッチは
一時的に弱体化したが、
その影響でウェイクが闇の世界いた頃の
記憶も失われた。

その後『リターン』の物語が進むことで、
スクラッチは次第に力を取り戻していき、
最終的にはウェイクを完全に乗っ取るのに
十分なほどの力を持つようになった。

これかのスクラッチは、
最後の章まで物語を進行させ、
奪ったクリッカーで悪夢を永久的に
現実化させるつもりだ。

ウェイクは事態を招いた自身の責任を感じ、
『リターン』が結末を迎える前に
原稿とクリッカーを奪い、
物語を書き換える使命を
果たそうと決意する。

『リターン8:ディアフェスト』


豪雨の夜だ。
ラジオで悪天候のためディアフェスト中止の
お知らせがアナウンスされた。

ウェイクが闇の妨害をを潜り抜けて
ブライトフォールズに戻ると、
町の時空だけが悪天候から切り出され、
美しい晴れ空の下で、中止されたはずの
ディアフェストが予定通り開催された
大盛況の光景が目の前に広がっていた。

しかもお祭りの中心は
鹿や町の祝い事ではなく、
もっぱら『リターン』だった。

人々は『リターン』を熱狂的に熟読し、
口々に『リターン』に心酔し絶賛する。
町中『リターン』の感想でもちきりだ。
スクラッチが書いた最終章による改変だ。

ウェイクは、
スクラッチの目的は
『リターン』の最終章で
自身の作品に充満された世界を
ブライトフォールズから地上全体へ
広げていくつもりだと分析する。


ウェイクは現在の結末を確認し、
書き換えるため、ディアフェストで
展示された『リターン』新刊を
一冊盗み出す。


本となった『リターン』を確認すると
裏表紙には作者近影が載っている。
写真の背景にある老人ホーム・ヴァルハラの
屋根裏部屋の特徴的な二つの丸窓は、
ウェイクが囚われていた闇の世界の
執筆部屋の内部にあるそれと合致した。

闇の存在の襲撃から逃げながら
執筆部屋を目指すウェイクは
亡くなったはずのアリスのビジョンに
導かれながら、無事に老人ホームの敷地から
母屋にたどり着く。

母屋の入り口にローズがいて、
ウェイクを手際よくサポートし、
執筆部屋へ案内する。

ローズはこれまでのウェイクからの
メッセージで、
今の展開をよく理解した口振りで話すが、
ウェイクはローズが言う
自分からのメッセージに
心当たりがなかった。

執筆部屋の前にこれまで
トークショースタジオで会っていた
用務員アーティが待っていた。

アーティから餞別の言葉を送られ、
ウェイクは結末へのドアを潜る。

ウェイクは『リターン』の現在の
エンディングの後に、全員が救われる章を
書き足す作戦を思いつくが、
元の作品に継ぎ足す関係で
ホラーのジャンルを守らなければならない。

すなわち、救いがもたらされるなら
相応の犠牲を用意し、ジャンルにおける
均衡が保たれるようにすることである。

ウェイクは解決案が思いつかず
悩んでいると、執筆部屋の床に
用務員アーティが用意したと思われる
モップ絞り機から漏れ出す
汚い水溜りが見えた。


そのためか、
サーガとウェイク自身が結末について
相談している場面のビジョンが
アイディアとしてウェイクに降りた。

ビジョンの結論にしたがい、
ケイシー、ローガンをはじめとする
すべての物語に巻き込まれた現実の人々が
救われるよう、
ウェイクがヒーロー(主人公)が
相応の代償を支払う結末に方向性を定め
筆を進ませる。

『リターン9:カム・ホーム』


一方、湖に沈められたあとのサーガは、
自身の精神世界の捜査部屋を象った
闇の世界で目覚め、脱出の道を探っていた。


闇はサーガが持つ後悔、不安、恐れ、
自責の念などの負の感情を利用し、
捜索部屋にある精神機能で
サーガを追い詰める。

サーガは愛や許し、仲間と家族の
承認と信頼などを思い出すことで、
自身の中の光の力を回復し、
閉ざされた部屋の出口を作り出す。


サーガが部屋の外に出ると、壊れかけの
闇のニューヨーク市街地で目覚めた。

市街地は闇の迷路になっている。
迷路から抜け出すヒントになる、
ワーリング・ドアに関する原稿を
サーガがたまたま広場近くに居合わせた
ティム保安官から受け取る。


公衆電話が鳴る。
サーガが受話器を取ると、アリスの声が
サーガに今取るべき行動を伝えた。

アリスの導きに従い、
サーガは書き換えた物語の現実化に
必要なクリッカーと光の弾丸を
広場の噴水にある靴箱から受け取る。

再びアリスからの公衆電話。
アリスはサーガに、結末の書き方で
悩んでいるウェイクの
相談に乗ってほしいと言う。

サーガは闇の世界によって力が増幅された
精神世界の交信能力を使って
ウェイクとつながり
結末について打ち合わせる。

ウェイクとサーガの会話の中で出し合われた
あるべき結末についての
主要アイディアは以下だ。


これまでのストーリーに沿うようにする。

ケイシーやローガンをはじめとする
多くの被害者を助ける。

『リターン』に名前が書かれておらず、
純粋に引き寄せられた現実の人間の
ケイシーは、闇に完全適合しないため
彼を結末に登場させその特性を利用する。

物語の主人公の両名が最後の結末で
執筆部屋に戻って共に結末を作り上げる。

結末を起動させる人物をサーガにする。

主人公が代償を支払うようにし、
物語の均衡を担保する。

サーガの精神世界が場となって行われた
相談の会話がビジョンとなって、
向こうのウェイクの執筆部屋に届けられた。

サーガは結末のため現実世界に戻って
ウェイクと合流すべく、
原稿で読んだワーリング・ドアの扉を潜り、
執筆部屋の水溜りに通じる
黒い噴水に到達する。

(最後のループのみ)
噴水の横でサーガを追いかけて湖に入った
アンダーソン兄弟の元気な姿がある。

(これまでのループで会わなかった
 説明として)
アンダーソン兄弟は、闇の世界に来た後、
しばらくドアのトークショーで
生演奏していてサーガを会いにここへ
来られなかったと説明し、
ようやく仲直りできた、と言う。

アーティが噴水に通路を用意したことも
知っているようだ。

サーガは二人と一緒に帰ろうとするが、
二人は現実世界でもうやることがないことを
理由に断る。

落ち込むサーガに、アンダーソン兄弟は
ウェイクに口止めをされているから
これからのことは言えないが、
きっとまたサーガに会えると力強く断言し、
噴水へ入るサーガを見送った。

サーガが噴水から執筆部屋に戻ると、
ちょうどウェイクが結末を書き上げる頃だ。

今では物語の作者の一人にになったサーガが
原稿を受け取り、クリッカーを手に持って
起動のタイミングを待った。


(最後のループのみ)
原稿が完成しサーガに手渡す場面は
初めてではなく、何度も繰り返したと
ウェイクが思い出す。

まもなくしてケイシーに取り憑いた
闇の存在が怒りの形相で
執筆部屋に入ってくる。

「今だ」とウェイクがサーガに合図を送る。
サーガがクリッカーを起動すると、
闇の存在がケイシーの身体から追い出され、
ウェイクに戻ってきた。

ウェイクに闇の存在が入り込んだことを
確認し、サーガはウェイクの脳天を
光の弾丸で撃ち抜いた。

Ending:最終回以前のループ


撃たれたウェイクは意識を失う寸前、
自分が考えた結末で本当にうまくいくかと
やはり疑念と不安に襲われた。

ウェイクの意識が途絶えたあと、
ウェイク宛の秘密のビデオクリップの形の、
アリスからのメッセージが、
直接ウェイクの精神の中で再生される。

ビデオの中でアリスは
ウェイクに自分についての真実を明かした。

ウェイクの怪物の物音がし始めた時期に、
アリスはFBCとコンタクトを取り、
FBCに出向いて調査に協力した。


FBCのオフィスの何がきっかけになったかは
不明だが、アリスが帰宅すると、
消えていた2010年の出来事の記憶が
すべて蘇った。

アリスは湖に囚われれいる間の
自身の闇の心象世界で経験したループや、
光を携えてやってきて自分を救い、
代わりに湖底の闇に飛び込み、
闇のループに囚われたウェイクのことも
思い出した。

闇に触れられたため、アリスは救出後も
闇にいるウェイクとのつながりを持てた。

怪物の正体は、闇とのつながりを通して
アリスが感じ取れるようになった
闇の世界にいるウェイクの痕跡だった。

ウェイクの怪物は、ウェイクが闇の世界の
ループに囚われたと理解し、
アリスは闇の世界に戻って
ウェイクをサポートすると決意した。

アリスが自身の自殺を偽る
写真展とドキュメンタリーを用意したのは
ウェイクがミスリードされると、
到達すべき場所へ行けるようにするためだ。
(重要な記憶はいつも
 アリスのビデオで触発されていた)

ループから解放されるには、
消滅と上昇が必要だと語るアリス。


消滅は、今回も迎える結末であり、
これまでもループでも無数回繰り返してきた
展開だ。これからも繰り返されていく。

しかし消滅に終えたループでも
少し上昇が含まれている。
ループを繰り返していくうちに、
やがて終わりへの条件が整うところまで
上昇する。

アリスは約束する。
ループを終わらせる条件が整うその時まで、
闇の世界からウェイクにその時々に
必要なビジョンや光を見せると。

ウェイクはハッと意識を取り戻し
目を見開くと
ループの最初に戻った。
額の弾痕は消えた。

思わず呟いた言葉は
「これはループじゃない。螺旋だ」


Ending:最後のループ


(ウェイクのナレーションが難解のため
 理解が分かれる可能性が高い。
 英文スクリプトも参考し、
 個人的の理解に基づく内容の大意を
 下記にまとめている)


撃たれたウェイクは、
薄れゆく意識の中、
これまでの出来事への理解に到達した。

毎回のループの終わりに、
ウェイクの中に入り込んだ闇の存在が
撃たれた瞬間に吹き飛んだが、

その場に残された闇の残滓は、
再び周囲の恐怖を糧に成長した。

残滓から成長した闇が
再びウェイクに入り込み、
ウェイクの精神を影響し、やがてウェイクを
作品の中で自分自身を失わせた。


ウェイクが『リターン』を書き終え、
撃たれるエンディングを迎えるとき、
ウェイクと闇の存在の間のつながりは
一度絶たれているが、

残滓側は餌に飢え、より多くの
恐怖を求めるため、
ウェイク側は闇の残滓に
育まれた自分の欠片を取り戻したいため

闇とウェイクが互いを必要とし、
互いを引き寄せる関係性となった。

アリスとウェイクとは無数のループの中で
互いをループから解放するために、
皮肉にも互いをひどく傷つける行動を
取らざるを得なかった。

それでもアリスが力を貸してくれたからこそ
たどり着くべきこの場所まで到達できた。
ウェイクは心から感謝する。

光の弾丸によって空けられた
ウェイクの額の穴から光が放たれ、
また消えた。

闇から解放されたケイシーは無事に目覚め、
ローガンの無事もサーガの電話で
確認できた。

結末が書き換わった。
ウェイクの額の弾痕が再び光り出す。
光が戻ると共にウェイクの意識も戻った。
すべてのループの終わりだ。

ウェイクはスクラッチはもういない、
うまく行ったと直感し、
その場にいるサーガとケイシーに伝えた。

闇の世界の別の場所で見守っている
アリスが「やっとね」と喜ぶ姿も
ビジョンとなって届く。



ウェイクのモノローグで最後の一文が書かれ、
『リターン』が真の終わりを迎えた。


「こうして俺は戻ってきた(リターン)。
 そして俺の手には知識の松明がある。
 その光が奇跡を照らし出す。
 二つの世界の主、
 いや、数多の世界の主だ」



『ALAN WAKE』&『ALAN WAKE2』:真相解説


闇の存在


『ALAN WAKE』の物語は一言で言えば
小説を現実に変える超自然現象に、
作家が抗う話です。

オカルト×メタフィクションです。

この世界の中心と、
世界のユニークな法則を
生み出しているのは
他でもなくこの超自然現象であるため

超自然現象こと、闇の存在の特性から
整理をしていくことが、
全体像把握の近道になると考えられます。

それではまず、
闇の存在の性質をプロフィール形式で
振り返ってみましょう。

お名前     :闇の存在
種族      :超自然存在
出生時期    :不明。古い伝承あり
地球のご住所  :コールドロンレイク
異次元のご住所 :闇の世界
闇の世界の特徴 :時間と空間が流動的で不定形/
         囚われる者の記憶を利用し、
         精神世界に融合する/
         囚われる者の負の感情や
         心の闇を利用する/
         囚われる者同士が中で
         接触することがある
好きなもの   :芸術、闇、恐怖、悲劇、犠牲、不幸
苦手なもの   :光、特に強い光
夢と目的    :湖からの解放されて自由になること/
         自分の支配領域を地球全体に広げること
特技      :洗脳、操り、欺き、取り憑き、ポルターガイスト
         文芸創作物の編集、検閲、監修、文芸創作物の現実化
得意ジャンル  :ホラー
強化方法    :闇の物語の現実化に応じて影響範囲と力が増幅する
現実化の制約  :完成された物語を現実化する/
         監修済み物語の筋書きは守られる/
         現実化は物語の進行に沿って段階的に行われる
できないこと  :自分で0から創作すること
解放条件    :自身が支配する物語が結末まで現実化すると、
         湖から自由になる
取り憑き時の特徴:目的のため必要最低限の演技をこなすが、
         欲望が漏れることが多い
出生理由    :不明
消滅条件    :不明

特徴的な点として、
コールドロンレイクに棲まう
闇の存在は芸術を好み、芸術を現実にする
力を持っていることが挙げられます。

一方で、闇の存在は「闇」らしい性質も
一通り持ち合わせています。

その芸術のテイストはダークでありますし、
妖怪や神話生物といった類いらしく、
本能的に領土の拡張と力の増幅を志向し、
人類世界の破壊や征服に精を出していると
来ています。

闇の存在は非力の人類の間には
圧倒的な能力差があるように見えますが、
非力の作家との戦いを成り立たせる
弱点も設定されています。

ひとつは分かりやすい光弱点。
「闇らしい」性質から来る弱点ですね。

もうひとつが
これまでの人間とのドラマを生む
ユニークの制限になります。

闇の存在は0から創作できません。

したがって闇の存在は
自らの目的=ダークなフィクションの
      現実化で世界征服
を達成するため、芸術家を求めていました。

闇の支配

闇の存在が芸術家を捕らえると、
多彩な能力を駆使して、
芸術家を操り、支配しはじめます。

その場合、闇の存在が自らの意図に
沿った創作を標的にさせるため
高度な知的活動ができる
程度の知性を残しつつ洗脳する、
という複雑な支配活動をするようです。

一方、高度な支配が必要がない、
兵卒扱いの人間に対しては、
単にゾンビのような存在に作り替えて
使役しています。

闇の存在に飲み込まれ、
死亡後ゾンビ化した人間が、
闇に支配された者(The Taken)」と
作中で呼ばれています。
闇のゾンビに闇の光弱点が継承されます。
フラッシュライトと銃で対処できますが、
闇の存在との関係性、状態により、
徹底討伐に至らないケースも存在します。

ゾンビ化と高度洗脳の間にも
さまざまな度合いと形の
支配状態が確認されています。

湖底の異次元こと闇の世界に監禁、
人間に取り憑いて地上の他者を洗脳、
闇の自然現象で襲って者を飲み込んだ後、
ゾンビにして吐き出す、
などが挙げられます。

闇の法則:現実化のルール

闇の存在が物語の現実化の際に
守るルールや受ける制約が、
すなわち物語で戦う作家の武器になります。

闇の存在のプロフィールの内容と被りますが、
整理すると主人公の行動が
分かりやすくなるので、
一度整理してみましょう。

  • 闇の存在は芸術家に物語を作らせる

前項「闇の存在」「闇の支配」で見てきた通り、
闇の存在は物語を現実にできますが、
物語を作ることはできないため、
自分好みの物語を作ってくれる
芸術家を探して支配する必要があります。

  • 物語の完成時に現実化が始まる

ハッキリとは作中で語られていませんが、
このルールが前提にあると考えないと
途方もなく破綻が押し寄せるので、
個人的にはこのルールを
重要な前提として考えています。

完成された物語でない、
断章やアイディアのみのものは
現実化されません。

物語として成立しないものも
現実化されません。

行単位で書きながら現実化することも
ありません。

流れで闇の創作プロセスを説明しますと、
まずは芸術家が闇の存在の
編集と監修を受けながら、
創作活動に励みます。

この時点では、何も現実に反映されません。

次に作品が完成すると、
闇の存在の監修OKをもって
現実化スタートです。

次項に続きますが、
現実化は物語に沿って段階的に進むので、
スタート時点で物語のすべてが
現実になるというわけではありません。

  • 現実化は物語の進行に沿って段階的に行われる

物語の完成をもって現実化がスタートすると、
ストーリー展開に沿って物事が進み、
必要な現実と人々の記憶の書き換えが、
必要な分だけ行われていきます。

書き換え途中の現実と記憶の
競合や不整合は多少あるようです。

闇の存在の力も、書き換えた
現実の影響範囲も
物語の現実化の進捗に応じて
増長していきます。

結末を迎えると
現実が書かれた物語の結末の状態で確定し、
闇の存在はコールドロンレイクから
解放されます。
クリッカーのような増幅アイテムは
現実改変の結果と影響を強化するようです。

逆に言うと、結末の前であれば、
現実化が行われていない部分の
現実はまだ未確定です。

このときに
影響範囲外の人間が持つ記憶と認識と、
影響範囲内の人間が持つそれらと
矛盾することや、
書き換え中に影響された人物の
一時的な記憶の混乱と不整合などの現象が
確認されています。


闇の存在の拠点が
コールドロンレイクにあるため、
物語とその現実化はまず湖を中心とした
ブライトフォールズ地域で始まる
必要がありました。

物語の進行で
闇の力と、闇の現実の影響範囲が
徐々に広がっていき、
最終的には地球上のすべての人が
共有する悪夢になるまで
闇の存在は活動をし続けるでしょう。


  • 監修済み現実化途中の物語の筋書きは守られる

こちらも大事なルールですね。
現実化が始まった時点で、
原稿は監修OKのFIX状態です。

闇の存在は一度現実化をスタートさせた
物語の後出し編集をしません。
原稿の通りに現実改変が行われます。

推測が含まれているため
ハッキリとしたことは言えませんが、

作家側は、
現実化がすでに
追いついた原稿を書き換えて
過去の改変を撤回するのは厳しそうですが、

現実化がスタートしても
多少の後出し書き換えは
条件付きで出来ている感じがします。

ただ結末まで進み、
クリッカーのような増幅器が
闇の存在に使われると
完全に打つ手がなくなります。



闇の覚醒:1970年代、第一次異変


闇の存在に訪れた最初のチャンスが、
詩人&作家のトーマス・ゼインによって
もたらされました。

まずは1970年代に起きた、
すべての始まりとなる出来事を
見ていきましょう。

1970年代に、
トーマス・ゼインは、
恋人のバーバラ・ジャガー
コールドロンレイクの湖の島に
キャビンを建てて居所としました。
(第二次異変当時、
 第一次異変の発生時期についての
 人々の証言は概ね「1970年代」でしたが
 DLCや続編からだんだんと
「1970年その年」と表現されることが
 増えていきます)

ゼインは、バーバラ・ジャガーに
湖に沈んだ宝物のお話を語ったことを
きっかけに、バーバラは宝探しに湖に潜り、
溺れて命を落とします。
(ここのあたりの出来事は
 主にアンダーソン兄弟の歌
 『詩人とミューズ』で補完されています)

バーバラが湖に行ったところまでは
偶然ですが、湖に溺れたのは事故ではなく、
ゼインのことを利用しようと考えた
闇の存在による犯行の可能性があります。

いずれにしても、バーバラの溺死後、
ゼインは闇の存在の幻影に唆されたか、
ゼイン自身が湖の伝承を
信じてみようと思い至ったか、
助手のハートマンが湖の実験を促したことも
意思決定に影響して

ゼインは小説を書けば
湖の力でバーバラを蘇らせることが
できると考え、バーバラが生き返る筋書きで
創作を始めました。

ゼインの創作で力を得た闇の存在は、
湖に溺死したバーバラ・ジャガーの
肉体に入り込み岸に上がり、
バーバラの姿でトーマス・ゼインへの
洗脳支配を開始します。

トーマス・ゼインは
書き始めて一週間ほどで、
バーバラの姿の者の正体と陰謀、
唆されて書いてきた作品は
闇の存在を解き放つのためにある
と気づきました。

ゼインがそのときに取った行動は
・闇の存在に書かされた作品を非存在化する
・バーバラの姿の闇の存在を封印する
・闇の存在の再来に備える

の三つです。
これらの行動は
ウェイクの時代の因果を形成させたと
言っても過言ではありません。
(当時の出来事や経緯の現実を作ったのは
 ウェイクの原稿にはなってしまいますので
 この上なくややこしいのですが……)

詳細を展開してみましょう。

・闇の存在に書かされたものを非存在化する

日本語訳は「処分」ではなく
「取り消し」という微妙な表現ですが
原文のコンテキストを見るに、

ゼインが実際したことは
紙を破って原稿を処分することではなく、
むしろ上塗りの形でさらに
現実改変の内容を書き、
自身の存在、バーバラおよび
 自身が書いたすべての作品が
 存在しない現実
」を現実化したと
分かります。


He tried to undo it,
wrote himself, her,
everything he'd ever written
out of the world.

『ALAN WAKE』シンシアのセリフより

「特定存在が存在しない現実」の現実化、
というややこしいことをしたのです。

後述のひとつの例外を除いて、ですが。


ゼインの過去についての事実に
不整合が見られるはこのためです。

このややこしい設定に
矛盾は見つかると思うのですが、
ある程度までは説明できます。


具体的には、
ゼインが著作の非存在を現実化したため
小説作品が世にない事実と
知名作家としての地位が
釣り合わなくなりました。

ウェイクがキャビンで見つけた
ゼインの詩作資料は、靴箱に収納されたため
残りました。

バーバラやゼイン自身の「非存在」は
複数の説が唱えられそうです。

ひとつは、
ゼインとバーバラが
生まれていないという
「非存在」の形ではなく、
それぞれ溺水と、一週間後の
カルデラ噴火によって「死亡した」
という形に書いたという説。

もうひとつは、
本当にゼインとバーバラが生まれていない
という形に書いたのですが、
ウェイクが2010年に
ゼインとバーバラが存在した物語を
書いて現実化させたため、
今の中途半端な不整合の現実が残った、
という説。

個人的は一番目の説がより
しっくりきます。
島とキャビンがなくなる
火山噴火の説明がつくためです。
ウェイクが火山噴火を書いたとすると
やや必然性が薄く感じられます。


いずれにしても
ゼインは1970年代の創作によって、
災厄の覚醒を招き、災厄をめぐる因果を
生んだ人物と言えます。

・バーバラの姿の闇の存在を封印する


問題の原稿をギリギリ取り消しても
問題の原稿の原因を作った怪物がいては、
事態は解決しないので、

ゼインは断腸の思いで恋人の姿の悪魔を
手に掛けることにしました。


しかしバーバラの心臓を抉り出しても
それは動き続けました。

死して闇に取られたバーバラの肉体は
ある種の上級ゾンビ状態にあり、
人間の生命活動の理屈で
トドメが刺されるわけではないと

悟ったゼインは、ウェイクの原稿によれば
バーバラの身体を椅子に縛り付け、
自身は潜水服を着てそれに抱きついて
湖に身を投げたそうです。

封印の結果、闇の存在の消滅こそ
叶いませんでしたが
バーバラ姿の闇の存在は
湖底の闇の世界に戻り、
ゼインも同様闇の世界に
囚われるようになりました。

・闇の存在の再来に備える


ゼインは、闇の存在が
消滅するわけではないと気づいており、
闇の存在の討伐を実現するための
因果を後世に残すことにしました。

ゼインが非存在化の適用における
例外を作ったのがこのためでした。

「(1970年代のゼインの創作物の中で)
 靴箱に入れたものは
 (非存在化の全体ルールが適用されず)
 現実に残る」
というルールが現実化しました。

ということは、
そうと書いた内容の原稿こそ
残っていませんが、
同様に例外として現実化したと思われます。
どこかの靴箱に入っているかもしれません。

ゼインが生前用意した靴箱の中身が、
闇の存在討伐のための武器と
関連する設定が書かれた原稿です。

武器とは「クリッカー」と名付けた
壊れたスイッチで、

関連設定の原稿には、
「クリッカー」の使用者であるウェイクが
母のおとぎ話を聞いてクリッカーに
闇を追い払う力があると信じるようになった
経緯と、ウェイクがクリッカーを手に
闇の存在を討伐に湖に飛び込む運命が
書かれています。

この原稿とクリッカー入りの靴箱は
シンシアに託され、
2010年ウェイクが訪れるまで
ダムに保管されていました。

創造の円環:ウェイクが書いた物語の中でゼインがウェイクを書いた問題

さて、ダムの靴箱の中身に触れると、
避けて通れないパラドックスが出てきます。

一回寄り道してこれを
少しだけ片付けましょう。

先ほども触れましたが、
そもそも1970年代の出来事についての情報の
大半は、2010年にウェイクが
書いて現実化させた『ディパーチャー』の
内容です。

物語の書き換えが効かないという
アンダーソン兄弟以外の
当事者の記憶や証言でさえ、
ウェイクの創作に影響されている
可能性があります。

とは言え、貴重な当事者のひとり、
シンシアの証言を真実と考えた場合、
ゼインが一度自分の存在そのものを
現実から取り除くという規模の
現実改変を試みたため、

ウェイクは相当の分量の、
1970年の出来事や
闇の世界に囚われたゼインの
性格と行動を創作したことになります。

となると、
湖の力で、過去のゼインは
自分の存在を消しましたが、
2010年のウェイクはまた
ゼインを作りました。
しかしウェイクの存在は
過去にゼインが作ったものです。

これではウェイクが原因で
現実化したフィクションに
登場するゼインが
ウェイク自身の存在の原因を作るという
因果の循環が発生します。

このようにウェイクとゼインが
互いが互いを創作しているような
ややこしい構造にある上、

2010年~2023年の間ウェイクが
闇の世界で会ったゼインは容姿まで
同じだったりと、謎が追加されていますが、

容姿については別項でまた考えるとして、
ウェイクの因果を作ったのは、
主にゼインのこの原稿と、
ウェイクが2010年に
湖のキャビン(に見えた闇の世界)で見た
ゼインの他の詩で間違いないでしょう。

それを示唆する情報のひとつに、
照らされた部屋で保管された
ゼインの靴箱の原稿の内容で割り出せる
ウェイクの生まれ年が、
おおよそ第一次異変の時代と一致することが
挙げられます。

ゼインの原稿では、
ウェイクが母から
クリッカーをもらったのは7歳のとき、
クリッカーを持ってコールドロンレイクに
飛び込んだのは「(7歳から)
30年弱の歳月が経った」頃にです。

第二次異変は2010年に起きた出来事で、
その30年で1980年、
「弱」を1~3年くらいと見て、
ウェイクが7歳だった年は、
1980~1983年の間になります。

生まれた年は-7で
1973~1976の間です。
第一次異変が起きた直後の
数年間と思われます。

第二次異変に間に合えばいいのですが、
なぜウェイクの出生年代が
1970年代に結果的になったのでしょうか。
偶然なのか、それとも。

ウェイクが父不在の過程に育っており、
出生の謎を仕込むのに最適な環境であるため
今後明かされる真実に期待しましょう。


ゼインが書いたウェイクに戻ります。

ウェイクの設定ですが、
ウェイクの存在について、
別のウェイク設定の靴箱が
見つからない限り、

ゼインが書いて現実化させたのは、
あくまでも名前、存在、
クリッカー所持者という属性、
闇の存在に挑む運命という
最低限必要な事項のみで、

ウェイクの人物像のすべてを
規定しているわけではありません。

ゼインがウェイクについて書いていない
空白の部分は、書かれた部分に向かって
収束しさえすれば、何でもOKの、
自然発生の現実となります。

例えばパパラッチを殴ってしまう
短気の性格や、
クリッカーと関係しない
これまでの人生、職業、
人間関係や配偶者などが
自然発生の現実です。

逆に、靴箱の中身による
ピンポイントな現実改変は、
それと競合するすべての
自然発生の現実に優先されると思われます。

たとえば、2010年のクリッカーの移動
(アリスが保管した場所→
 照らされた部屋の靴箱)が
その結果と考えることができます。

2008年にウェイクがアリスに
クリッカーをあげたことは、
競合しない自然発生の現実です。

そのときのクリッカーの状態は
靴箱にも、アリスのところにもに
それぞれ存在しますが、
観測されないため問題ない、収束しない、
シュレディンガーの猫の箱が
開けられる前のような
世界といったところでしょうか。

しかしウェイクが
『ディパーチャー』の進捗で
照らされた部屋の靴箱を開けた途端、
「1970年代にゼインが入れた
 クリッカーが入っている」現実に
収束します。

ゼインの原稿の設定によって
クリッカーはウェイクの私物として
生まれたため、
その後ウェイクからクリッカーが
どこに流れて誰に渡っても
靴箱にあらかじめ入っているものとは
100%競合します。

ゼインがこのクリティカルな
秘密兵器が絶対になくならないように
この競合を許容した上で、
靴箱にしまっておいたのでしょうか。

話を戻しましょう。
言い方が難しいのですが、
ウェイクは局部的に作られた存在で
部分的に運命が定められていますが、
とは言えきちんと作り込まれた
完全架空の人物とは言えないと思います。

どちらかというと、
ざっくりとした絶対予言を背負った、
いうとなればオイディプス王的
ポジションと思った方が
話が分かりやすい気がします。

闇の休眠:第一次異変の当事者のその後 シンシア/ハートマン/アンダーソン兄弟(1970s~2010)

渦中にいる
トーマス・ゼインと
バーバラ・ジャガー以外に
4名ほど彼らと共に異変の全過程を
見届けた当事者がいました。

彼らはそれぞれ
2010年の第二次異変以降に
重要な意義と影響を持つようになります。

ここで一度整理しましょう。

まずはゼインとバーバラの共通の友人で、
地元の新聞記者をしていた
シンシア・ウィーバー

次はゼインの元助手で
その後精神科医となったエミル・ハートマン

最後にロックミュージシャンの
アンダーソン兄弟、の4人です。



  • シンシア・ウィーバー

シンシアは、
バーバラが溺れてから、
ゼインが闇の存在を封印するまでの全過程を
見届けたのち、

バーバラの溺死事故と、
カルデラ噴火による島の沈没と
ゼインの死亡を新聞記事に作成ました。

その後、シンシアは闇の存在から
自分の身と、地域の人々の安全を守るため
「ランプおばさん」
(=レディ・オブ・ライト)となり、
町の照明点検、ランプや電球集め、
廃ダム近くの発電所に
明るく照らされた基地を作り、
闇と戦う同士をサポートするための
隠し物資を各地に用意してきました。

生前ゼインに託された靴箱は、
廃ダムにある戦時中の防空壕のような空間を
大量の電球で眩しく照らすように改造した
「照らされた部屋」に保管し、
ウェイクが来るまで守り続けていました。

闇の存在と、異変の全容の概略については、
4名の当事者全員が知っていると
思われますが、

ゼインの靴箱と非現実化例外のことを
知っているのはおそらくシンシアのみです。
(アンダーソン兄弟はゼインが秘密兵器を
 シンシアに残したことまで
 ふんわり知っていて、具体的なことまでは
 知らないと思われます)

また、
シンシアは1970年代の異変で
闇に触れられたことをきっかけに
闇の世界のゼインとのつながりができ、
以降ゼインからのメッセージ
――――闇との戦い方や必要な備え、
闇の存在についての知識や、
やがてくる闇の再来などについての――――
をテレビやいろいろなところから
受信するようになったと
語っています。

余談ですが、
この「レディ・オブ・ライト」の受信体質は、
後に二代目「レディ・オブ・ライト」の
ローズにも継承されたように見えます。



  • エミル・ハートマン

ハートマンはゼインの助手時代から
湖の力推奨派です。

闇の存在と同じく0から
作り出す能力がないものの
優れた芸術作品を
プロデュース=現実化できるところに
シンパシーを覚えたでしょうか。

ハートマンは湖の力で
バーバラを蘇らせてみることを
ゼインに促した結果、
大惨劇を引き起こしたにもかかわらず、
その後、彼はむしろ
湖が持つ現実化の魔力に
より一層心酔するようになり、

精神科医に転身し、
芸術家の被検体を集める診療所を湖畔に開き、
熱心に研究と実験を続けていました。



  • アンダーソン兄弟

アンダーソン兄弟は
ゼインが起こした異変とは別に

1976年湖水で作った密造酒で
闇の成分を摂取してしまった
事件を起こしています。

その結果特殊能力と狂気の両方を
身に宿すことになりました。

彼らもゼインに託されたことがあり、
以降の闇の異変の主人公を
サポートする役割を引き受けました。

1976年の密造酒の効果について
すこし寄り道して整理すると、

アンダーソン兄弟は密造酒を飲むと、
同名の神になれたと感じたか、
オーディンは発狂して片目を抉り出し、
トールはハンマーを振り回しはじめる始末。
認識能力や言動もおかしくなりました。

代わりに与えられた特殊能力はいくつあり、
現時点確認されているのは
・闇との戦いで意味を持つ音楽
 (真実を音楽に書き残して
  主人公を導くことや、闇の境界域を
  開く儀式で機能することなど)
・闇の支配への耐性
 (比較的に支配されにくい)
・闇の現実改変に記憶を影響されない
・名前の通りに北欧神話の神々と
 何らかの形でつながる
・(精神世界で会話する
  能力との関連性は不明)

闇の再来:2010年、第二次異変


第一次異変から40年弱ほど経ち、
2010年に、コールドロンレイク
二度目の異変が発生します。



  • 異変の始まり:ハートマンの思惑

闇の存在と接触し、
渦中の人物となったのが、
アラン・ウェイクです。

不幸のきっかけを偶然
引き寄せてしまったのは
ウェイクの妻のアリス・ウェイクです。

ウェイクは名だたる小説家ですが、
長くスランプに陥ってしまっており、
それを心配して調べるうちに
アリスはアーティスト専門精神科医の
エミル・ハートマンの著書に
たどり着き、コンタクトを取り始めます。

このときのハートマンは
コールドロンレイクの畔の診療所で
湖のアート療法と称した
実験に没頭しています。

ハートマンは再び
芸術家の作品と湖の魔力のかけ算で
現実を超えた創造を行いたいと望んでおり、
有名小説家を被検体とするチャンスは、
まさに願ってもない好機と考えました。

ハートマンが研究で到達している結論や、
行っている具体的な実験内容は
ハッキリと語られていませんが、

彼がやりたいことの方向性は、
有望の被検体を湖の診療所に入居させ、
湖の闇の力を引き出せるように、
ハートマンがうまくコントロールして、
作品を創らせる、と読み取れます。

モットの独断が入り込んだ誘拐事件により
本来の計画の全容も判然としないものには
なりましたが、

個人的な解釈で整理させていただきますと、
おそらく本来ハートマンはただ、
ウェイクをいち早く診療所に招き入れて、
うまいこと言って軟禁状態にし、
実験を始めたかっただけでした。

アプローチしてきたのは
ウェイクの妻というのもあり、
強硬手段を取る必要はありませんでした。

ただ、想定外の異変や問題が起きないよう、
ハートマンは保険をかけ、
ウェイクがブライトフォールズ到着する
瞬間から自身の監視下に置き、
タイミングを見て極力急いで
コンタクトを取るつもりでいました。

ウェイクの様子を監視するために、
ハートマンは部下のモットを派遣し、
ウェイク夫妻を到着の瞬間から
尾行させました。

しかし、到着の瞬間から動き始めたのは、
闇の存在も同じです。
封印の中で弱まり、飢えていた闇の存在は
ウェイクの到来の気配で目覚め、
ウェイクの後をつけ、
襲うチャンスを伺いました。

ウェイクとアリスが
借りたキャビンの管理人から鍵を受け取りに
立ち寄ったダイナーの暗い廊下に
闇の存在の魔の手が伸びてきました。

暗い廊下の入り口に、
シンシア・ウェーバーがいました。
第一次異変からの40年ほどの間、
闇の存在への警戒を緩めることなく
町を明るい光で防衛しつづけてきた
シンシアは、誰かが暗闇に潜む危険に
襲われないよう、注意喚起をしていました。

暗闇が危険だ、の意味合いを
まだ理解できないウェイクは
シンシアを相手にせずに廊下に入ると、
バーバラ・ジャガーの姿の闇の存在が
ウェイクに話しかけ、ウェイクとアリスを
闇に閉じ込める場所を目的地として伝えた。



  • 闇の世界で書かれた『ディパーチャー』

闇の存在に誘導され、
第一次異変当時トーマス・ゼイン
バーバラ・ジャガーが住んでいた
湖の島があった場所の近くへ、
ウェイクとアリスが車で向かい、
共に闇の世界に囚われます。

この間もモットは尾行を続けていましたが、
闇の存在に先手を取られ
「湖へ通じる行き止まりに空の車だけ残っている」
「すべての宿泊キャビンを探してもいない」
と、標的を見失ってしまいます。

ゼインが暮らしていた湖の島とキャビンを
象った闇の世界にさらわれた
ウェイクは、闇の存在に
湖に溺れて沈んだ
アリスの姿を見せられます。

絶望するウェイクに、
バーバラ姿の闇の存在がささやきます。
アリスを救うには、小説を現実にする
湖の力を借りるしかない、と。

それから、
ウェイクは『ディパーチャー』
題された小説を書いていました。

ウェイクはアリスを救うための
現実改変小説を書くつもりでいましたが
闇の存在に操られ、
闇の存在の編集と監修を受けているうちに、
いつのまにか闇の存在が望む
ダークなホラー小説が
出来上がっていきます。

ホラー小説は、犠牲者と怪物しか登場しない
ジャンルだと定義するウェイクは、
この物語ではアリスは助からないと気づき、
闇の存在にバレずにアリスを救う物語を
書く方法を思案します。

ウェイクがたどり着いた作戦は、
物語の中に入って
物語を書き換えることで、
物語の外側の検閲を
逃れるというものでした。



具体的には、
物語の終わりを、主人公自身が
書き上げるシーンにすることで、
体裁上終わりはあるものの、
実際は変更余地のある
未完の物語の構造を立てておきます。

次に自分自身を主人公に設定し、
物語に書き込み、
最後のシーンまで現実化した際に
自分がアリスを救う結末を書き足せば、

すでに監修済み現実化がスタートした
『ディパーチャー』の一部として、
最後のシーンで書き足した内容が
無監修で現実化します。

アリスを救うために
闇の存在の討伐も必要となってきます。

闇の存在の支配から脱出し、
討伐のための武器を手に入れ、
闇の存在と対決する布石を
小説に仕込む際に
ウェイクが使ったのは、
闇の世界のキャビンで見つけた
靴箱に保管されたゼイン作品でした。

ウェイクはゼインの作品から着想を得て、
第一次異変を経験したのち
闇の世界に囚われたガイド役として
ゼインを登場させます。

ストーリーゼインが登場したことにより、
ウェイクは闇の世界のキャビンから
脱出し、闇の存在に対抗するための知識、
情報や関係者に辿っていく
筋書きを書くことに成功します。

『ディパーチャー』の現実化の始まりです。
ゼインは原稿を持ってウェイクを
闇の世界から逃します。

その代償で、ゼインは
湖の闇のより深くへと幽閉されますが、
光の場所から現実世界のウェイクに
声と原稿を届け導くことができます。

ウェイクは無事闇の世界から脱出したとき、
闇の世界での記憶がほとんど消えた状態で
脱出で大破した車の中で目覚めます。

闇の世界という異次元では
時間の流れは現実の尺度では測れないため、
ウェイクが実際囚われた期間は不明ですが、

現実世界では、ブライトフォールズに
到着してから一週間ほど経っていました。

ウェイクはゼインの導きで
闇に支配された者との戦い方を教わり、
記憶が失われたことで、
自覚がないまま、物語を進んでいきます。



  • アリス誘拐事件

このとき、
ハートマンは一週間もウェイクの行方を
掴めずにいて焦っていました。

ウェイクが森で
地元保安官のサラ・ブレーカーに保護され、
町に戻ったとの知らせを聞くなり、
ハートマンすぐに車で
ウェイクを迎えに行きました。

ハートマンがウェイクに
診療所に来て治療を受けてほしいと
表向きの来意を説明すると、
機嫌の悪いウェイクに
初対面で殴られたため、
もう少し様子を見ようと引き返しました。

そのとき、ハートマンの部下のモットは
……こじらせています。

ウェイク尾行失敗から来る挫折感や、
ウェイク本人に対する劣等感や嫌悪感、
ハートマンに認められたい
くすぶった気持ちなどが
重なり、ハートマンが把握していない
独断行動を始めます。

モットは誘拐犯と偽り、
アリスを誘拐したと
ウェイクの携帯に連絡を入れます。

その際、モットは診療所にあった
アリスがハートマンに
電話相談した際の録音テープを
人質に取られた風に聞こえるように
切り抜き加工して
電話のウェイクに流して聞かせ、
誘拐の事実を工作しました。

ウェイクは誘拐犯に会いに行くが、
モットは優越感を味わいたいがために
二日以内にすべての原稿を持ってこいと
さらなる要求をウェイクに突きつけます。

しかし、これらの勝手な行動は
やがてハートマンにバレてしまいます。
モットが湖を見下ろす峠で
電話の向こうのハートマンに
謝罪を述べているうちに、
闇の存在に飲まれてしまいます。



  • 操られたローズ

ウェイクがモットに原稿を強請られたとき、
まだごく一部のページを
拾得できていませんでした。

ちょうどそのとき、
バーバラ姿の闇の存在は
ダイナーのウェイトレス、ウェイクファンの
ローズ・マリーゴールドを洗脳操作して、
ウェイクらの足止めをはじめます。

ローズは操られて、原稿があるとの嘘で
ウェイクとバリーを自宅に誘い込み、
睡眠薬入りのコーヒーを飲ませたのち、
自身も意識を失います。

原稿を読む限り闇の存在は意図的に
ローズを完全に支配された者にせず、
知性や意識を残して
電話や睡眠薬の投入など一連の行動を
操作したと読み取れます。

ウェイクを攻撃する方法は無数にある中
曲がりくどくローズを操り、
殺害するわけでもなく眠らせることは
闇の存在にとって何の得になるかと
疑問が残ります。
(もちろんウェイクがそう書いたから
 守ったというのもあるのですが、
 ウェイクは筋の通った小説を書く
 前提を守るはずだと考える場合、
 やはり闇の存在に利得がある
 行動でなければなりません)

強いて合理的な理由を考えるならば、
闇の存在は今後もウェイクを利用して
勢力を伸ばしていたいため、
この時はウェイクを生かしておいて、
ただし現実化のプロセスを妨害されないよう
足止めの戦略を取った、
といったところでしょうか。



  • ナイチンゲールからの脱走


ウェイクらがローズのところで
12時間眠り込んだあとに、
ウェイクを逮捕しにきた
FBI捜査官のロバート・ナイチンゲールからの
脱走劇が始まります。

ナイチンゲールは仕事の相棒フィンを
亡くしており、その死は闇の存在の襲撃と
関係する手がかりがいくつか
ナイチンゲールに残されたようです。

ナイチンゲールが業務外で
独断にフィンの死の真相追究に
ブライトフォールズにやってくると、
『ディパーチャー』の原稿を拾いはじめ、
中に予言された出来事や、
闇の存在に関する記述、
さらには自身の死のシーンを読み、
作者のウェイクがこれらの
事象を生み出した犯人と確信するようになり、
以降FBIの軍勢を引き連れて
ウェイクを追いかけ、
復讐を遂げようとします。

ナイチンゲールは最終的には
サラをはじめとする
地元保安官の反対を押し切って
ウェイクを監房に閉じ込めることに
成功します。

しかしナイチンゲール本人が事前に
拾った原稿も予言されたように、
この場面でナイチンゲールが
闇の存在に飲まれて消えるという
出来事が発生します。

闇に飲まれたナイチンゲールですが、
2010年異変終了時のディアフェストで
姿が確認できますので、
その後は闇から解放され、
闇に触れられた状態で
少しの間生存していたことになります。

ナイチンゲールは相棒を失ったことを境に、
独断行動だけでなく、
アルコール中毒にもなり、
ウェイクをはじめとする民間人への
発砲を衝動的に行う場面も散見されます。

2023年のケイシーの認識によれば
ナイチンゲールはこの頃の問題行動で
後にFBIから懲戒免職になりました。

2023年の異変の一環で、
2010年の間にナイチンゲールは
再度闇にさらわれ、支配された者に
成り果てたのち討伐されることになります。

まとめると2010年のナイチンゲールは
ウェイクを追いかけるうちに
闇に飲まれたのち免職され、
その直後再び闇にさらわれるという
慌ただしいにもほどがある
人生の転落期を迎えていました。



  • ハートマンからの脱走

モットが闇の存在に飲まれたとき、
彼はウェイクに指定した
待ち合わせ場所にいました。

ちょうどそのとき
ウェイクも指定場所に到着し、
闇の存在に気づかれ
一緒に湖に振り落とされました。

モットの電話で状況をある程度把握した
ハートマンがその後ウェイクを救助し、
診療所に入れます。

ようやくウェイクを迎え、
念願の実験を始められると考える
ハートマンは、
非常に説得力のある嘘をウェイクに
並べ立てましたが、全然通用しない上、

すぐにウェイクの気配を感知した
闇の存在が診療所を襲います。

襲撃の混乱に乗じて
ウェイクは脱出に成功します。

ハートマンは
このときに闇の存在から
逃れられましたが、
異変が終了してしばらく経ったとき、
やがて湖の闇の力ほしさに
自分で湖に飛び込み、
怪物に成り果てます。

その時期にハートマンの研究を調査し、
ハートマン本人にもインタビューなどを
行っていたFBCが怪物のハートマンを
討伐しました。



  • 第一次異変関係者との接触

ウェイクは診療所で
アンダーソン兄弟と出会い、
(初登場はダイナーですが)
彼らが暮らしていた農場に残された
異変解決のヒントを求めて、
アンダーソン農場に訪れます。

ウェイクは
アンダーソン兄弟が残した
第一次異変を歌った
レコードで「レディ・オブ・ライト」の
シンシアがキーパーソンだと知り、
アンダーソン兄弟の密造酒で
『ディパーチャー』執筆中の
記憶を取り戻します。

次にウェイクはシンシアが暮らすダムで、
トーマス・ゼインが残した
秘密兵器ことクリッカーと原稿を手に入れ、
いよいよ大詰めです。

闇の存在を倒し、アリスを救う結末を
書き上げる作戦の時です。



  • 第二次異変の結末

クリッカーを手に湖に飛び込むウェイク。

ゼインに導かれ、
ウェイクは闇の世界の中で
キャビンと島へ通ずる道を作り、
キャビンに戻ります。

ゼインの言葉にしたがい、
当時心臓をゼインに抉り出された
バーバラの胸の空洞にクリッカーを入れて
起動すると、闇の存在は
光に満たされ撃退されました。

最後に次の宿主を探す、と言い残した
闇の存在は、完全消滅を迎えていません。

ウェイクはアリスが
ディアフェストが無事開催され
アリスが目覚めて湖岸に戻り、
救われる結末を
『ディパーチャー』のエンディングとして
書き上げます。

ウェイクの物語論では
ホラー小説のジャンルが変わらないため、
救いがあれば相応の代償を用意しないと
ゼインの轍を踏んでしまうらしいので、

ウェイクはそのまま闇の世界に残り、
その後の現実を支えるために
物語を書き続けることにします。

ゼインは地上に残されたウェイクの
知人友人の代用品として、
ウェイクのそっくりさん
「スクラッチ」を創造したと言って、
「スクラッチ」を地上に
解き放ったと思われます。

(このときのゼインは
 なぜこれをやったか、
 どうやって作ったか、
 スクラッチはその後
 本当はどのように行動したか、
 不明な点が多くあります。
 現時点完全には解明されませんが、
 別項で可能な範囲での考察を行います)

闇の世界:特徴と性質


2023年の第三次異変は
闇の世界と現実世界の相互作用で
成り立っている部分があり、

その整理にあたって、
闇の世界の基本的な性質を先に
振り返っておくこととしましょう。

闇の世界とは、
闇の存在が支配する異次元です。

入り口は闇の存在が棲まう
コールドロンレイクです。

対象がコールドロンレイクの中に潜む
闇の存在に連れ去られてその内部に
囚われた状態になると、
対象の精神が闇の存在に変容させられた
負の感情が色濃く現れる
悪夢のような心象世界が立ち現れます。

この、闇の存在に囚われた対象が
異次元で見ている悪夢の心象世界が、
当事者たちの間で
「闇の世界(Dark Place/暗き場所)」と
呼ばれるようになりました。

この闇に支配されて
悪夢を見続ける異次元には、
いくつか特徴があります。



  • 闇の世界は幻であり、現実ではない

まず、闇の世界は
当事者にはリアルに感じられますが、
闇の世界の出来事は、
そのまま現実になることはありません。

(現実化の条件については
 「闇の法則:現実化のルール」を参照)

ただ、対象の存在は幻ではありません。
対象が闇の世界に居る間に
身柄が湖の異次元に
拘束されていることは確かです。
現実世界にいながら
闇の世界の夢を見ることは通常ありません。

例外として、現実世界にいる者が
闇の存在に触れられた経験者である場合、
或いは特殊な異次元研究を行っている場合、
闇の世界に囚われた者と間に
精神的なつながりができます。
闇の世界に居る者とのつながりから、
断片的なイメージやビジョンを
受け取ることはあります。
(シンシア、ローズ、アリス、
 ダーリング博士など)



  • 闇の世界はループする


闇の世界にいる間見ている
心象世界の形はかなりの
個人差がありますが、
当事者がそこで経験する
出来事、イメージ、光景はすべて
ループするという特徴を持ちます。

闇の存在に
命と精神を完全に刈り取られず
生き残ったまま闇の世界に囚われた者は、
ループの中で闇の存在から襲撃を逃れると
ループの最初に戻ります。

闇の世界で完全な死を迎えると、
闇に支配された
ゾンビ的存在(The Taken)となる、
または本人に入り込んで、
そのうち現実世界に放出されます。

スクラッチの場合は、
別の身体とルールを持っていたため、
ウェイクが死亡すると、
その死体を着るではなく、
そのまま自分の身体で地上に上り、
ウェイクの生活を乗っ取る形です。

ただ、生存と死亡の
どちらのケースにおいても
当事者は断片的な闇の心象を
繰り返し見ている意識状態です。

闇に支配された
ゾンビ的存在(The Taken)は
地上に放り出されたあとも
原稿の断片やわずかな記憶の断片を
繰り返し叫び続けることから、
死してなおループに囚われ続けていると
分かります。もう意識がありませんが。



  • 闇の世界は現実世界の時空を超越する


闇の世界は夢のような異次元です。
そこでは、空間や物質も実体を持たず

流動的に変幻しつづけるし、
時間も現実な線形をなぞっておらず、
現実の時間に対応していないことが
分かっています。

原因と結果の連関は、
過去から未来に流れる線形的時間構造に
基づくものであるため、闇の世界の因果も
現実世界的感覚で見た場合錯乱しています。

闇の世界の時間の流れ方について
なんとなくですが、
逆浦島太郎タイプではないかなと
イメージしています。

要は、現実の時間のほうが遅く、
闇の世界の方が早い、
というイメージです。

闇の世界は現実より
数千数万倍規模の
膨大な事象が生起しています。

根拠は、
1970年代の第一次異変と
2010第二次異変の当事者は、
共に異変前に闇の世界で
過ごした執筆期間が
現実世界の1週間に相当することです。

小説一冊分と、
罠に気づいてからの
書き直しやらもがきやらが
あるので、1週間の何倍の
体感時間はあったと思われます。

2023年の第三次異変は
第二次異変から13年経っていると
長い期間に見えますが、
ウェイクが経験している
ループ時間の長さイメージは、
おそらく13年の数千数万数億と
気が狂う規模の長さになります。

基本的なところは以上です。
第三次異変ではいくつかの
応用形が登場しますが、
また該当する別項で解説します。

闇の懐胎:第三次異変前夜 ハートマン/ナイチンゲール/ローズ/アリス/バリー/スクラッチ(2010~2023)

2010年に第二次異変の終わりに
ウェイクが闇の世界に身を投じたあと、
2023年第三次異変顕在化までの間に、
起きた出来事を整理してみましょう。



  • エミル・ハートマン

第二次異変ですでに触れた通り、
ハートマンはその後湖に飛び込んで
怪物(第三のモノ)と成り果て、
大事になる前にFBCに討伐されます。



  • ロバート・ナイチンゲール

ナイチンゲールは一度
現実世界に戻れたものの、
まもなく再び闇の存在に連れ去られます。

ナイチンゲールが闇の存在に殺害され、
闇に支配された者(The Taken)になったのが
『イニシエーション』以前か以降かは
ハッキリと分かりませんが、
どちらの場合も闇の存在の意思によって
もたらされた末路です。
微妙にウェイクのせいとは言いづらく、
そのため救いの可能性もなかったと
思われます。

(『ディパーチャー』のときは
 ハートマンもナイチンゲールも
 ウェイクによって死ぬところまで
 運命づけられていないことを考えると、
 ラスティーやスタッキーにまだ
 温情があったな、と思えてきます……)



  • ローズ・マリーゴールド

2010年第二次異変終了時に、
「レディ・オブ・ライト」の役割は
シンシアからローズに移行し、
ローズはそのときから
二代目ランプおばさんになり、
第三次異変に必要な準備を行っていました。

ローズが具体的に
取った行動は主に三つです。

一に、
異変の中心人物をサポートする準備、

二に、拾ったウェイク原稿の断片を
異変の中心人物の支援物資として
各所に配置すること、
(=武器強化要素「ランチボックス」)

三に、トーマス・ゼインの天使のランプ
(=闇の世界で道を作るメインアイテム)を
靴箱に入れ、湖の闇の世界と通ずる池に
沈ませて闇の世界のウェイクに
配達することです。

「レディ・オブ・ライト」の性質と
世帯交代については別項
「『レディ・オブ・ライト』の世帯交代」にて
詳述します。



  • アリス・ウェイク

アリスは第二次異変終了時に
ウェイクに助けられますが、

闇の世界に囚われたウェイクは
現実世界から失踪したため、
アリスはウェイクが他界したと
受け止め、独りで暮らしていました。

ウェイク作品の知的財産権は
アリスに帰属されます。

アート活動としては、
アリスは2012年に
ウェイクとの昔の思い出をベースに
制作した短編映画『サンライズ』を制作し
ビジュアルアーツ芸術祭の展示会に
上映しました。

2016年にアリスは
ウェイクが生きており
闇の世界に囚われていると気づきます。

その後アリスは自らの意思で
闇の世界に戻り、
ウェイクをサポートし続けます。

2016年以降のアリスについては
別項「アリス、闇の世界へ」にて
詳述します。



  • バリー・ウィーラー

ウェイクの幼なじみにして大親友、
仕事の相棒でもあるバリーは、
2010年の第二次異変で
ウェイクがいなくなったあとも
親友のために行動しつづけました。

バリーはウェイクが湖に飛び込んで
溺死したとは信じられず、
ある時期まで
定期的にブライトフォールズの
サラ・ブレーカー保安官に連絡を取り、
失踪したウェイクは死んでいないはずだと
主張し、情報収集をしていました。

しかし時間が経っても
ウェイクがいなくなった事実が
覆されないため
やがてバリーの
トラウマとなってしまいます。

バリーは精神科医に通い、
苦しい過去を症状としての
妄想として扱い、
薬を服用して抑えていました。

また、ウェイク作品の知的財産権が
帰属されたアリスをサポートし、
印税収入などを含めるウェイク作品の
ビジネス管理を続けただけでなく、

ウェイク従来の意思を尊重し、
ウェイク作品が勝手に映画化されないよう、
一人で奔走していました。

プライベートにおいて
バリーはこれまでアリスとの
相性の悪さを乗り越え、
彼女が喪失の苦しみに
苛まれている時期に
親身に生活の面倒を見つづけ、
元気かどうかを気遣う
メールも欠かせません。

アリスはバリーに感謝し、
二人はウェイクがかつてから
願っていた良好な関係を築きます。

エージェント業では、
バリーは2010年に
出会って感銘を受けた
アンダーソン兄弟の音楽活動を
サポートするマネージャーになります。

バリーはアンダーソン兄弟に
バンドを再結成させ、
ニューシングルや
ツアーを見事にプロデュースし、
成功を収めます。

しかし次第にアンダーソン兄弟が
手に負えなくなります。

行き過ぎた酒癖、老齢による
体調と生活の破綻の兆し、
一向に改善されない問題行動などが、
バリーを悩ませます。

なんとか問題をカバーしてきたものの、
このままでは自分の目の前で死んでしまう、
という恐怖にバリーが勝てませんでした。

これまでの担当してきた親友のウェイクが
いなくなったトラウマが再び起こることに
耐えられないからです。

死の予感に耐えきれなくなったバリーは
アンダーソン兄弟のライブツアー
(ツアー名は『リターン』)を途中で中止し、
彼らを預ける老人ホームの設立を急ぎます。

バリーはアンダーソン兄弟名義で
最もヒットしたアルバムの
収益全額を注ぎ込み、ブライトフォールズの
曰く付きの古い屋敷を買い取り、
介護施設に改装します。

施設運営とアンダーソン兄弟の入居の
手筈を整えると、改装の工事も
終わらないうちに、バリーは逃げるように
ニューヨークに戻ります。

そのせいで、改装工事を請け負った
悪徳建築業者に報酬持ち逃げのチャンスが
与えられてしまいます。
ずさんな工事が中途半端に切り上げられた
老人ホームは、雨漏りが続きます。

バリーのその後は語られていません。
2013年の近況も不明ですが、
闇の危険からは守られているようです。



  • スクラッチ

別項
「スクラッチの誕生」
「スクラッチの悪夢」
「闇の新生:ウェイクとスクラッチ」にて
詳述します。

「レディ・オブ・ライト」の世帯交代


2010年第二次異変終了時に、
レディ・オブ・ライト」の役割は
シンシアからローズに移行し、
ローズはそのときから
二代目ランプおばさんに
なったと思われます。

シンシアとゼインの時同様、
ローズも闇に触れられた経験者として、
闇の世界に囚われたウェイクとの
一方的なつながりが形成され、
ウェイクのメッセージを
受信できるようになります。

シンシアとの間で
実際どういう交代が行われたかは
分かりません。

想像にすぎませんが、

シンシア目線でゼインの
メッセージを受信して、
ローズを二代目に引き継ぐべきだ、という
考えになった可能性もありますし、

シンシアはゼインの靴箱を
ウェイクに渡したことで
役割を果したたと考えていて、

ちょうどローズがその頃から
ウェイクのメッセージを受信し、
自分が引き継ぐのだと知り、
シンシアに話しに行ったのかもしれません。

「レディ・オブ・ライト」と、
異変の中心人物とのつながりは他と比べて
奇妙なところがあり、興味深いです。

共通点を見ていきましょう。


  • 「レディ・オブ・ライト」の女性の共通点

1.一方通行の好意

まず、レディ・オブ・ライトとして
選ばれる女性は、異変の中心人物に
一方的な感情を持つ女性です。

シンシアは、
バーバラと恋人のゼインに惚れていて
ゼインに片想いする関係です。

ローズは、
ウェイクに恋愛感情を
持っているわけではないのですが、
一途でガチなウェイクファンとして、
高いレベルの推し活を続けています。

そのためか、
2010年に闇の存在がローズを
誑し込むときに使った殺し文句も、
「これであなたはウェイクの
 ミューズになれる」というものでした。
(「ミューズ」という表現は、
 異変の中心にいた
 ゼインとウェイクが奇しくも共通して
 パートナーに捧げる賛辞です)

2.一方的な受信

最も興味深い特徴ですが、
レディ・オブ・ライトの女性は、
闇の世界にいる憧れの人から
夢や白昼夢などから
一方的にメッセージを受け取り、
メッセージにしたがって
きたる異変のための
大変な準備に文句一つ言わず
甲斐甲斐しく励みます。

一方的というのは、
ゼインもウェイクも、
メッセージを送ってもいなければ、
準備を頼んでもいません。

しかし、
闇を介してできた精神的つながりから
彼ら本人が
必要または重要だと考えていることが
レディ・オブ・ライトの女性に
勝手に伝わるようです。

3.妄想つきメッセージ

闇の存在を介したつながりのためか、
レディ・オブ・ライトの女性が
つながっている憧れの中心人物から
メッセージを受信する時、

憧れの人が自分たちにとって
都合の良い言動を向ける
妄想の形を見ています。

もちろん本人達は、
そうとは気づけないので、
実際に好意的な感情を向けられたと思い、
どのように大変なミッションも
生き生きと顔を輝かせて
成し遂げていくのでした。

シンシアもローズも、
異変解決にとって決定的と言っても
過言ではない役割を担い、
膨大な努力をしています。

……のにもかかわらず、
彼女らがレディ・オブ・ライトの
任務を遂行する間、
常に少しの気持ち悪さがにじみ出ているのは
この闇のつながりの特殊性ゆえです。
仕方がありません。

特にローズの
推し活がひたすら充実してキラキラする
愛されキモオタ感が絶妙です。

ローズの夢小説風二次創作は必見

『ALAN WAKE2』を
ぜひ何度もプレイしてローズの推し活を
ご堪能いただきたいと思います。



  • 共通点から考えられること

これまで見てきた通り、
レディ・オブ・ライトの女性は、
異変解決の鍵を握り、戦いの全過程を
裏でサポートする重要な役割を果たす一方、
彼女らの行動理由となった渦中の芸術家との
つながりそのものは勘違いで歪まされたもので
奇妙で危ういものです。

誰がこの奇妙なつながりを
作ったのでしょうか?

トーマス・ゼインが原因の多くを
作っていると思われます。



  • 「レディ・オブ・ライト」が生まれた理由

2010年ウェイクがアンダーソン農場で
見つけた、異変の全容を歌った
アンダーソン兄弟の歌
『詩人とミューズ』に、
レディ・オブ・ライトが登場する一文を
改めて見ると、
「夜闇に狂わされたレディオブザライト」と
描かれています。

You will need the witch's cabin key
Find the lady of the light gone mad with the night
That's how you reshape destiny

『The Poet and the Muse』

闇に触れられた、闇に飲まれた、
闇に傷つけられた、闇に連れて行かれた、
など、他にもあり得る闇の生還者に対する
説明の仕方ではなく、
「狂わされた」「おかしくなった」です。

レディ・オブ・ライトは
闇に触れられた狂気を後遺症を持つ女性で
その女性が次の異変解決の鍵を持つ
設定を加え、現実化したという風に
解釈できます。

闇に触れられたところまでは
すでに起きた現実で、
鍵を持っている、という加えられた部分が
書き足した虚構の現実化です。

レディ・オブ・ライトが登場した
歌の全文が『ディパーチャー』原稿に
書かれており、2010年のウェイクに
拾われます。

また、歌は第一次異変の出来事と
第二次異変の解決の糸口が
描かれたものです。

これはトーマス・ゼインが第一次異変時の
経験した出来事と彼が未来に残した対策と
符合します。

アンダーソン兄弟は
闇の存在に支配されていなかったため
この歌が現実化と
考えると矛盾が出てきます。

そうではなく
第一次異変時に、物語に影響されない
アンダーソン兄弟が、
ゼインから第二次異変の作戦を
共有されている可能性が大いにあると
考えたほうが筋が通ります。

次の異変の中心人物を
サポートするために
アンダーソン兄弟がゼインの作戦を
歌に残したと思われます。

ウェイクが『ディパーチャー』に
アンダーソン兄弟が残した歌を
書き入れたことで、歌の内容が一層
動かぬ現実予言となったわけです。

そもそも歌の現実化は
ウェイクの『ディパーチャー』が
原因ではないかと思うかもしれませんが、
アンダーソン兄弟は
物語に影響されないため、
彼らの創作物も後の物語による現実改変に
上書きされないと考えるのが自然です。

彼らの過去の創作物は、
後の物語改変によって変えられることが
可能だとして、アンダーソン兄弟本人達との
記憶との齟齬が必ず出てきますから、
本人達が気づいて中心人物に伝えるはずです。

つまり、ウェイクが『ディパーチャー』に
アンダーソン兄弟とその歌を
「創作」しただけでは
この現実は作られません。

したがって、やはりアンダーソン兄弟の歌は
闇の世界のキャビンに残された
ゼインの靴箱に原文全文または、ウェイクが
再現するのに充分な素材が含まれていたと
考えられます。

まとめると、
「レディ・オブ・ライト」として
生きる女性の運命のはじまりは、
ゼインによって与えられたものです。

ただし、ゼインは異変解決のため
女性の性格や人格をねじ曲げてまで
利用して話を書いたというわけではなく、
あくまでも元々現実であった、
本人達の狂信者的ポテンシャルと
闇に触れられた事実に、
武器となる設定を追加したに過ぎません。



  • 「レディ・オブ・ライト」の世帯交代の理由


交代の理由についても見ておきましょう。
第一次異変時のゼインが想定する
「レディ・オブ・ライト」は
あくまでもシンシアのことでしょう。
それを歌に残したアンダーソン兄弟も
シンシアだと思って歌詞を作ったはずです。

ただ、歌詞に実際書き込まれた名前は、
トム(トーマス・ゼインの愛称)のみです。
他の人物や場所はすべて
代名詞や二つ名的な表現で書かれています。

たとえば、
バーバラのことは「ミューズ」
「she」「愛する人(his Love)」、
シンシアは「夜闇に狂わされた
レディ・オブ・ザ・ライト」です。

それぞれ、
アリス
(→ウェイクにとって「ミューズ」
 「she」「愛する人(his Love)」に該当)
ローズ
(→闇に触れられ、鍵を持つランプレディ)

にも当てはまります。曖昧一致ですが。

でも中心人物は「トム」と書かれていて
ウェイクに該当しないから、
ウェイクありきの関係性にある
アリスとローズのことは成立しないのでは?
と一瞬思うかもしれませんが、

成立します。

アンダーソン兄弟をはじめとする
一部の異変関係者は、
「トム」と「ウェイク」を
区別していないからです。
(不気味な余談として、
 ゼインは靴箱のクリッカー原稿にこそ
 「ウェイク」を明記していますが、
 ゼインがウェイクと会話する場面で
 一度も「ウェイク」と
 名前を呼んでいません)

ウェイクとゼインの関係は
現時点同一人物と断定するには
現時点の判断材料では十分でなく、
先走りすぎていると考えます。
もうすこし続編の情報を
待ちたいのですが、

ウェイクが「二代目ゼイン」的な
側面があること自体は現時点で確実と
考えて問題ないでしょう。

トム=ウェイクと符合するため、
アリス=ミューズで
ローズ=レディ・オブ・ライト、
異変の際に各自の身に起きた出来事も
歌の内容に矛盾せず曖昧一致します。

『ディパーチャー』でウェイクが歌の全文を
書き入れたわけですから、
第二次異変にもそのまま曖昧一致した結果
第三次異変におけるレディ・オブ・ライトの
世代交代の運びになったと考えられます。

ウェイク、アリス、ローズという第二世代は
まだ年齢的に現役であるため、
しばらく交代しないでしょう。

というか第三世代が登場するほど
シリーズが引き延ばされませんように……

アリス、闇の世界へ


第二次異変後に
アリスが経験していることが、
第三次異変の真相に直結しています。

『ディパーチャー』の結末の現実化により、
アリスは2010年に助かり、
無事自宅に戻りますが、
闇の世界に囚われていた頃の
記憶は残っていません。

湖に飛び込んで闇の世界に囚われることを
選択したウェイクは、
世間では謎の失踪となり、
湖で溺死したと言われています。

6年後の2016年から、
アリスは自宅で狂暴なウェイクの声や
物音が聞こえるようになります。

第二次異変を調査するFBCに協力し、
FBC本部でインタビューを受けたことが
きっかけとなり、アリスは
闇の世界にいた頃の記憶を取り戻します。

アリスは闇の世界で
自分の悪夢の心象世界のループを
経験していました。
また、ウェイクが救出に向かってきた気配も
闇の世界にいながら感じ取っていました。

点と点がつながり、アリスは気づきます。
闇の世界に囚われた経験によって、
自分は闇の世界にいる
ウェイクとのつながりを持っていると。

つながりを通して伝わってきている、
闇の世界にいるウェイクの断片的な痕跡が
怒り狂う怪物の物音の正体だと確信します。

その後、アリスはウェイク救出のため
コールドロンレイクに飛び込み、
闇の世界に戻ります。

アリスがいる闇の世界は
ウェイクのものとは分かれていますが、

アリスはつながりを通じて、
別次元のウェイクに
自分のビジョンを送ることができます。

ここからが推測ですが、
アリスは闇の世界の構造を
正しく分析できており、
その上で多くのウェイクのループ断片を
見聞きすることで、
ウェイクが闇の存在に乗っ取られていき、
操られて書かれた作品で混乱し、
記憶が欠損していく状況を把握します。

ウェイクが脱出するためには、
闇の存在を追い出していく
必要があるという理論にたどりつき、
ループに介入し始めたと思われます。

アリスの介入の基本は、
ウェイクがある程度の正気に戻った状態で、
条件付きで受信可能な
アリスのビデオメッセージのビジョンを
通じて行われます。


パーラメントタワーのウェイク夫妻の自宅で
視聴できるアリスのドキュメンタリービデオ

ウェイクが
アリスのビデオメッセージを見る度に、
失われた重要な記憶の一部が
蘇るようになっています。

アリスのビデオメッセージは、
アリスが、スクラッチと思われる怪物に
自殺へ追い込まれるまでの
過程をねつ造して語っています。

ループの中で
混乱しているウェイクに思わせることで
怒りがトリガーになり、ループの中で
怒りと結びついた重要な記憶が蘇るように
なったでしょうか。

表面上嘘のビデオメッセージはウェイクを
精神攻撃する形になっているので、
ウェイクの中に宿る闇の存在も、
真の目的に気づかない、という狙いも
アリスにありそうです。

アリスが行ったもうひとつ重要な介入は、
ウェイクが闇の存在と戦う武器の提供です。

光の弾丸と、クリッカーの二つです。

この二つのアイテムの謎が多く、
現時点でつじつまを合わせる
推測に限界があります。

語られたことから想像して言えそうなのは、
アリスは実物を直接提供したというよりも、
闇の世界の心象世界で写真作品という形で
それらを創作したことです。

アリスは写真家で、写真は作品です。
「芸術家」による「創作」に該当するため、
何かしらの形で闇の現実化の力を利用し、
時が熟した際に実体を持つようになるよう
仕組んでいたと考えられます。

だとしたらどうやって
闇の存在に現実化させたのかまでは
今ある情報では分かりません。

無理矢理の想像ですが、
たとえば、ウェイクの中に宿る
成長途中の闇の存在の意思が
まだウェイクの精神と未分化のときに、
アリスはフェイクビデオでウェイクの
スクラッチへの憎悪を引き出すことで、
同化された闇の存在も同じ感情に影響され、
アリスの武器を具現化するように力が働く
……とか?

また、光の銃弾は、
クリッカーのように
闇への効力を持つ充分な理由が
提示されていないことの
無理矢理解釈として考えたのは

実体を持った時点で
闇に対抗する効力を
持っていないか、不十分な状態です。
それをループ終盤のウェイクが
『リターン』の結末に効力の設定を
繰り返し補完し、
クリッカーで強化するため、
実際効力を持った、とか……?

アリスの介入に
他に登場した闇の世界の住人との協力が
あったことは間違いない思われますが、
詳細は不明です。

というのも、闇の世界にいる限り
どこかでループしてしまうので、
アリス本人はウェイクのループ世界とは
別の場所にいるとは言え、
一人の力では、
ウェイクの単体ループを
ある程度超越した状態で導くことが
不可能なはずです。

セリフからアリスのことや、
闇の世界でのアリスの活動について
知っている口振りの

トーマス・ゼイン、
ミスター・ドア、アーティとの
なんらかの接触はありそうです。



第三次異変終了時、
ウェイクはループからの脱出に成功できたと
確信する言動を見せていますが、
アリスの所在や状態などは不明です。

ウェイクが最後のループの時
『リターン』の結末に書いた内容の
すべてが明かされたわけではないため、
なんとも言えませんが、
ビジョンを送ってきたため、
まだ闇の世界にいる可能性が高いです。


スクラッチの誕生


スクラッチが初登場したのは、
2010年第二次異変、
ウェイクが闇の世界のキャビンに
向かう途中です。

潜水服のゼインがウェイクに
バーバラ姿の闇の存在の倒し方を
伝授したついでに、一言のみの
さらりとした説明で
スクラッチを紹介しました。

「彼のことは気にしないで。
 ミスター・スクラッチだ。
 あなたが居なくなったあと、
 残されたお友達が(代わりに)
 彼に会えるように(用意したよ)」

Don't mind him, he's Mr. Scratch.
Your friends will meet him when you're gone.

『ALAN WAKE』トーマス・ゼインのセリフより



スクラッチの生みの親は
ゼインの創作と
湖の闇の力でしょう。

ゼインが闇の存在の力を利用しつつ、
その目を盗んで純粋にウェイクのため
スクラッチを作ったという
可能性もありますが、

その場合、ゼインの動機が
やや弱く感じられますので、
どこまでがゼインの意図なのかは
不明です。

動機が弱いと考えるのは
ウェイクがアリスを救うのに
釣り合う代償のため、
異変後闇の世界に囚われるからと言って、
ゼインがわざわざウェイクために
ウェイクの代わりを用意するという
義理と、異変対策的必然性もなければ、

ウェイクのお友達用スペアを作るくらいなら、
まだ闇の世界のウェイクのために
身代わり人形ダミーを作ったほうが
実用的な気がします。

そもそも、
ゼインは第一次異変時に自分の分身を
残す発想がなかったので、
どのように考えても、動機が不十分です。

別の角度で見ても

「スクラッチ」(Old Scratch/Mr.Scratch)は
そのまま悪魔の代名詞です。

このいかにも縁起の悪いネーミングの存在を
作った、または作るのに協力したと思うと、
ゼインの動機は疑わしいものであると
思わざるを得ません。



したがって
新たな事実が出て文脈が変われば、
このスクラッチ初登場時の
紹介セリフの意味合いが
変わる可能性があります。


このことと関連して、
気づく方は気づいていると思いますが、

この時ゼインがウェイクに言った
「あなたが居なくなったあと、
 お友達が彼に会う(Your friends will
 meet him when you're gone)」は
そのまま『イニシエーション』の
各殺害現場に飾られた
「闇の詩」の全パートで共通する
最後の一文です。

儀式の聖書の言葉は
トーマス・ゼインのものです


『イニシエーション』の闇の世界の
殺害現場で見かけると
おどろおどろしい状況と合わさって
一見するとこれがいかにも
闇の存在側から来る言葉と錯覚しますが、


もともとはゼインの言葉です。


ゼインは第三次異変では
『リターン』のことで
スクラッチに騙されたと
ウェイクに白状したことを鑑みると、
スクラッチの出生の裏にも闇の存在と、
闇の存在に騙されたゼインによる
思わぬ共謀関係があったのではないかと
想像してしまいます。

たとえば、敢えて嫌な想像をするならば、
ゼインがウェイクが囚われたあと、
自分が地上に戻れるように、
ウェイクのドッペルゲンガーを器として
用意するつもりで闇の存在の提案に合意した、
というような裏事情があったかもしれません。

ウェイクとゼインは見た目が同じですから、
ウェイクのドッペルゲンガーはすなわち
ゼインの器としても機能しそうです。

そう考えると、スクラッチの紹介時、
ゼインは「気にしないで」から入って
気乗りしないような、お茶を濁すような
微妙な説明の態度が頷けます。

ただ現時点の情報では、
すべて想像で実情は分かりません。


スクラッチの悪夢



さて、スクラッチが
ウェイクのお友達に会う条件が
「あなた(=ウェイク)が
 居なくなる」ことと定められています。


しかし2010年ウェイクが
闇の世界に囚われたものの、
死亡=居なくなってはいません。

実際、現実世界のウェイク関係者は、
誰も2010年異変後に
スクラッチに会っていません。

この最初期のスクラッチは、
まだ未熟な器で
地上にも出られない
弱い状態と思われます。

その器が闇のウェイクに成長し、
次のアクションを繰り出したのは
第二次異変から2年後の2012年です。
DLC『アメリカンナイトメア』の内容です。

ここからウェイクとスクラッチの
攻防戦が始まるため、両者の動きを
まとめて見ていくこととします。

DLCの内容はループ終盤の解決編のため、
初期の出来事が明確に語られていません。

原稿の内容と、
想像を含めた解釈で補完すると、
このようなことが起きたと思われます。

ウェイクが生きたまま
闇の世界に囚われていた最初のうちは、
スクラッチも闇の世界で待機しています。

闇の存在がウェイクの
内面にある負の側面――――
ストレス、顕示欲、暴力性、暗い欲求、
――――や、
ウェイクを取り巻く
外側の負の噂――――
異変の後人々がウェイクについて
抱いた暗い想像など――――を
糧として吸収し、成長していきます。

成長した闇の存在は
スクラッチに入り込み、
ウェイクの負の側面と融合し、
バーバラに次ぐ二代目闇の存在として
誕生します。

ウェイクの邪悪な
ドッペルゲンガーとなった
スクラッチは、
本来の闇の存在の目的である、
力を得て湖から解放され、
世の中を悪夢に塗り替えたいことを
目指す一方、

闇の増長につれて育っていた
ウェイクの負の側面に影響され
現実世界のウェイクの人生を乗っ取ることも
目的に加わります。

スクラッチはウェイクの
妻のアリスには歪んだ欲望を抱き、
親友のバリーを障害と見なし、
危害を加える意図を
繰り返しウェイクにちらつかせました。

また、自分に惚れる女性やファンを
手に掛ける連続殺人鬼として
人生を楽しみたい欲求も目立っていました。

スクラッチの力は、
闇の世界から現実世界への
ポータルを開けるほど大きくなった頃、
ウェイクは大切な人や現実世界を守るため、
闇の世界に届く、自分とつながりのある
現実の反響から着想を得て、
作戦を練り実行します。

そのとき、
現実と非現実の境目が薄く、
かつバリーとアリスが
それぞれ用事で訪れる
アリゾナ州のどこかの町を、
(一種の境界域でしょうか)
スクラッチが狙っていました。

ウェイクはスクラッチの陰謀を逆手に取り、
その町を、効力が一夜限りの、
自身が主人公の架空の物語で上書きし、
スクラッチが現実へのポータルを開ける前に
仕留めようと試みます。

ウェイクが自身の計画で利用したのは、
過去に人気オカルトテレビ番組の
『ナイトスプリングス』のために書いた回の
物語です。

その過去回の物語をベースに、
今回の作戦のための新たな物語を
仕上げました。

『ナイトスプリングス』は
エンディングのナレーションで、
劇中の出来事を夢落ち処理するため、
ウェイクは一夜限りの出来事を書き、
エンディングを迎えると効力が消えるように
しました。

また、『ナイトスプリングス
(闇の湧き上がる場所)』の設定も、
どこにでもあり得る、
夢と現実が混ざり合う場所となっており、
アリゾナ州の特定の場所を
ナイトスプリングス町に変えるのに
好相性でした。

『ナイトスプリングス』のエピソードの中で
ウェイクが光の戦士役として、
その邪悪の分身・闇の使者スクラッチとの
戦いが描かれます。

スクラッチはウェイクを妨害するため、
ウェイクを改ざんした物語の中で
ループさせます。

しかしウェイクは
すでに改ざんされた結末を
覆す方法を発見し、原稿に残しています。

物語の重要なシーンを成立させる
ディテールを再現しつつ、その他の大筋に
影響しないディテールの改変を
積み上げることで連鎖反応を引き起こし、
望まれた結末へ少しずつ近づきます。

You change the details of the scene to match those on the page.
 If you get the details right, if you achieve that critical mass, the shift will come, and the rest of your new reality overrides the existing paradigm.


ループの果てにウェイクはアリスが作った、
ウェイクとの思い出をつないだ
短編映画『サンライズ(日の出)』を入手し
上映することで、エンディングへ到達し、
本来の原稿で書かれた
スクラッチの消滅が現実として確定します。

また、ナイトスプリングスの終幕ロゴと
ナレーションが流れ、一夜限りの出来事が
現実から消え、書き換えた町は朝から
本来の現実に戻ります。

スクラッチの器は消滅しますが、
闇の存在は残滓として残されます。

ここから第三次異変が開幕します。

ところで、現実世界のアリゾナ州の
どこかの町に起きた2012年の出来事は、
果たしてウェイクの認識通りの
ものだったでしょうか。

というのも、
スクラッチが世に放たれる条件は
「ウェイクがいなくなること」です。

もしそうであれば、
闇の存在を宿したスクラッチが
現実世界に行くことも、
同じ条件で制限されているはずです。

スクラッチが現実世界に
放たれる物語が、闇の存在の支配下で
新たに書かれない限り、
スクラッチは出て行くことができません。

したがって、『アメリカンナイトメア』の
出来事は、タイトルの通りにウェイクの
「悪夢」なのではないでしょうか。

「悪夢」といっても、
ウェイクが見聞きしたすべての情報が
幻と考えるのではありません。

アリスやバリーの近況などは
実際の出来事が反響となって闇の世界に
届いたものと考えられます。

スクラッチの器が焼き払われたことも
おそらく実際に起きたと考えると
第三次異変の前提が整います。

ウェイクがアリゾナ州の現実を
書き換えたことも事実として
起きたと思います。

ただ、
スクラッチが現実世界に出る条件が
満たされていませんから、
スクラッチが
現実世界へのポータルを開けて
害悪をまき散らし、
アリスやバリーを傷つける脅威は、
ウェイクが見ている
悪夢の想像ではないかと思います。

もしかすると、
闇の存在はウェイクの悪い想像を
利用し、スクラッチ姿で悪意を見せつけ
ウェイクの怒りと恐怖を
意図的に煽り立てていたのかもしれません。

闇の存在は個別の器の喪失で
完全消滅することはないため、

闇の存在がスクラッチをうまく利用し
ウェイクの負の感情を
増幅させることで、
自身を強化する糧を
効率的に作っていたと考えると

ウェイクがループの中で悪夢の想像と
壮絶な格闘を繰り広げた夜のすべてが、
闇の存在の術中に陥った結果の
思い違いに過ぎないということが
可能性のひとつとして浮かんできます。


闇の新生:ウェイクとスクラッチ


2012年の出来事に不確かな点はあるものの、
以降、スクラッチの肉体は
表舞台から退場し、
ウェイクは闇の世界に
囚われ続けたままです。

これが第三次異変の初期状態と思われます。
ここが曖昧にされていたため、
2013年の第三次異変が複雑になりました。

スクラッチの肉体を「退場」と表現したのは、
単にそれが第三次異変に関与しないことを
意味しています。

実際スクラッチの肉体が
「消滅」したかどうか、
そもそも生まれていたかどうか、
ウェイクの主観以外の
現実世界の目撃情報や、
ゼインの明確な返答がない中、
まだなんとも言えないところです。

ただ、現時点の話の雰囲気を見るに、
もうこれからスクラッチの器が
再登場することはなさそうです。

さて、闇の存在が異変の度に
新たな器を見つけてきました。

一代目と二代目はバーバラの死体、
三代目はウェイクの複製体のスクラッチと
ウェイクは長らく思っていました。

しかし三代目の内訳はこれまでと
パターンを変えています。

闇の存在は残滓の状態で
ウェイク本人や周囲から
負を吸収することで少しずつ成長しつつ、
ウェイクの中に入り込み、
力を蓄えていきました。

ウェイクをじわじわと内部から影響し、
物語を書かせて力を取り戻した先、
ウェイクを次の器として乗っ取る作戦です。

三代目闇の存在は、
ウェイクの中に潜む副人格となりました。

ウェイクの中で
闇の存在はループを繰り返す中
段階的に成長していくにつれ、
ウェイクの正気が徐々に削られ、
闇に染まりゆく頭で物語を書き始めます。

闇の存在に操られて
邪悪な現実改変小説を書く構造は、
これまでの異変と変わりません。

つまり、作家は大切な人を救えると
騙されて話を書き始めますが、
その実、洗脳状態下で
大切な人が救われない上、
闇を世に解き放つホラー話を
書かされています。

第三次異変も同じことが起き、
ウェイクはアリスを救うために
再び物語を書き出しますが、
それが闇の存在の陰謀でした。

具体的には、
2012年以降のループで混乱する
ウェイクは次第に、
実体のあるスクラッチは止められず、
すでに現実世界に解き放たれたとの認識を
持つようになります。


スクラッチがそれまでウェイクに
彼の人生を奪い、アリスに危害を加える
意図を頻りに語ってきたことで、
ウェイクはアリスの安否への心配に
掻き立てられ、アリスを守るため
再び自分が現実へ脱出する
話を書こうともがきます。

しかしその脱出の話は、
闇の存在の操作により、
やはりいつもの、
闇の存在が世に解き放たれるホラーに
作り上げられていきます。
『イニシエーション』と
『リターン』です。

さらに
生きたウェイクの副人格となった
闇の存在は、かつてのスクラッチ同様、
ウェイクの精神の暗部と融合し、
作風も顕示欲に毒された悪趣味な様相を
呈する特徴が加わるようになります。

ところで、なぜウェイクは
2012年の出来事は失敗に終わり、
実体のあるスクラッチは
現実世界に解き放たれたと
思うようになったでしょうか。

誤解の理由はいくつか語られていますが、
決定的なきっかけは、
『リターン』原稿修正中射殺事件でしょう。

おそらく最初のうちのループでは、
アリスも介入しておらず、
ウェイクもスクラッチの脅威を
確信するほどの出来事を経験しておらず、
純粋に推測と、洗脳による妄想などで
そう考え物語を書き進めていました。

ループと洗脳が進むうち、
根拠のない確信が育ち、
怒りがひどくなった気配が
2016年のアリスに伝わり、
以降アリスが闇の世界に戻り、
介入を始めます。

アリスの介入により、
ウェイクが闇の世界で、
ループを経て「上昇」することができ、
「上昇」度合いが十分であれば、
そのとき時の上昇レベルに見合った
行くべき場所や、失われた記憶に
アクセスできるようになります。

しかしこれがくせ者です。
ウェイクが現実改変の現場である
闇の存在に封鎖された
執筆部屋突入できるようになると、

そこにいた過去のループの自分を
スクラッチだと誤解して撃ち殺します。

(超自然時空にパラドックスが
 起きてもルールが不明瞭で
 追及しづらいので
 都合がいいどすな(´ω`;))

闇の世界は時間と空間が
現実の常識では測れないとは言え、
複数のループがひとつの場に重なったのは
アリスの介入によるものと思われます。

アリスは意図的に
闇の存在に支配されていく
ウェイクの思い込みを利用し、
サーガも巻き込んで、
積極的にウェイクを、
自分殺しのループに嵌め、
「上昇」へ導きます。

結末から推測すると、
これは闇の存在を完全に
ウェイクから取り除くためだと
思われます。

この当たりのカラクリが
作為的に曖昧に語られすぎていて、
確かなことは言いづらいのですが、
個人的な現時点の解釈は、

アリスの光の銃弾を
(これは未だに正体不明な
 オブジェクトですが)
毎回のループ終了時にウェイクに
打ち込むことで、一時的に
ウェイク内部の闇の存在を追い出しますが、
結局ループを経る中で、
飛び散った残滓がこれまでのように
負を吸収して育ってウェイクに戻ります。
いたちごっこになってしまいます。

これをどのように
ループに見えたスパイラル構造の中で
解決したかは、
光の銃弾の効力について
一切の情報がないので、
想像するしかありません。

たとえば、このような
可能性が想像ができます。

光の銃弾の受け渡し方が
特殊だったと思います。
天使のランプと異なり、
ただ靴箱に入れたのではなく、
一度アリスの写真を挟んでいます。

ループ内の出来事の順番では、
一見したところ、先に写真があり、
それに何かうまいことして現実化させ
実体ある物体に変えたことに見えますが、

実際は逆なのではないかと
無理矢理考えてみることができます。

フェイクとは言え、
アリスがドキュメンタリーで
語っていた試みは、
いわば
「闇の存在を写真に封印する術の開発」
です。

フェイクのドキュメンタリーは
偽装自殺で終わるため、
写真で対抗したことを
「失敗した」と語っていましたが、

実のところ、
それは前後をつなげるための嘘で
写真の力は部分的に
機能していたのではないかと思います。
または、クリッカーの増幅機能があれば
機能するという形です。

ループする度にウェイクは
光の銃弾に撃たれ、
体内の闇を吸われます。

闇を吸った銃弾は、次のループで
写真に戻ります。写真に収まった銃弾は、
吸収済みの闇を閉じ込めたままにできます。

またその銃弾が実体化して撃つことになり、
新しいループでウェイクが新たに貯めてきた
体内の闇を吸い出します。

ループが再開すると外の残滓が戻って
ウェイクの中で再培養されますが、
総量に限りがあると想定する場合、
いずれすべて銃弾に吸い切られて、
ウェイクをエンディング条件を満たした
闇なし状態に戻します。

一説と読み流してください。
光の銃弾についての情報が出てこない限り、
分からないことです。

まとめると、
第三次異変の闇の存在との戦いは、
ウェイクが、ループの中で
闇の残滓から無限再生する
副人格のスクラッチとの戦いです。

ループの果てに、
闇の残滓がウェイクから完全に取り除かれ、
2023年の現実世界を守る
『リターン』の結末が無事
書き上げられました。

闇の書:第三次異変のウェイク作品


前項で見てきた通り、
第三次異変は、
闇の世界に囚われたウェイクが、
闇の存在に入り込まれ、
ループの中で混乱し、
もがく過程の中で
書かれた小説に引き起こされたものです。

本項では、
それらの作品の執筆順番や、
現実世界への影響を
整理してみたいと思います。


ウェイクがこれまでの
異変の中で書いた小説は以下です。

・第二次異変:『ディパーチャー』
 執筆期間は現実世界の一週間に相当する

・第三次異変:
『イニシエーション』&『リターン』
 執筆期間は現実世界の
 10年~13年に相当する


ウェイクの記憶の断片(テレビ)では
執筆の流れについて
このような認識を語っています。

最初のうちは
脱出するため『リターン』を
書いていましたが、うまく行かず、
『イニシエーション』を真ん中に
入れるべきだ、と気づいたとのことです。


『イニシエーション』と『リターン』は
最初からここまで互いに呼応し、影響する
複雑なループ連関ではないと想像します。

ただ執筆の過程の中で、
ウェイクの中の闇の存在が徐々に成長し、
小説の内容もコントロールから
徐々に逸脱して行きます。

ゼインとウェイクの証言を総合すると、
この頃のウェイクは書けない苦しみや
闇に利用され実在の人間に危害を加える
危険性への気づきなどから、
書くことを辞めていました。

おそらくその頃から、
スクラッチの副人格が表に出て、
『イニシエーション』や
『リターン』を書き、
同時にゼインに脱出できると騙って
協力させました。

ゼインの協力内容が完全に不明ですが、
極めて単純に考えると、
『リターン』のため
『白夜の夜』の歌と映画を
提供したのではないかと思います。

『白夜の夜』の内容は
スクラッチの召喚儀式を示唆するもので、
違和感はありません。


また、ゼインは「脱出できると騙した」と
訴えていますが、
第一次異変時にゼイン本人によって
「非存在化」されたはずのゼインの痕跡は
『リターン』によって、2013年では
再びブライトフォールズの各地に
現実化されています。

ゼインについての現実改変が多すぎたか、
それともスクラッチがゼインを騙すために
最低限のポーズしか取らなかったか、

ゼインについての新たな現実化に
奇妙な不整合が目立ちます。

ゼインは1970年に失踪したことになっているのに
それより前で作られたはずの映画作品が

当時生まれたか生まれていないかの年の
アラン・ウェイク原作とされています。

内容は第一次異変の出来事です。


ゼインは1970年に失踪したとされており、

ウェイクとシンシアが認識している
詩人&ダイバーの肩書きが
映画監督に書き換えられています


トーマス・ゼインについては
別項で考えていくとして、
ここでは深く追及せず
ウェイクの執筆に戻ります。

スクラッチ人格が
『イニシエーション』と
『リターン』を書く過程は
順風満帆でもないと思われます。

ウェイクが正気に戻る間に、
絶えずに『リターン』の修正を試み、
『イニシエーション』の

その後ウェイクは
二つの物語を呼応させる策を思いついて、
二つで一つの連作として
二作の並行作業を始めます。


他タイトル出典の用語:FBC/AWE/OOP(『Control』ネタバレあり)


2023年の第三次異変で出現頻度が
増えますので、ここで一度
他タイトル出典の
簡単な用語説明を挟みます。



  • FBC


FBCのロゴ


FBC(FEDERAL BUREAU OF CONTROL、
  連邦操作局)は、

アラン・ウェイクシリーズと
同じ開発元のRemedy社のゲーム
『Control』初出の架空の組織です。



FBCは超自然存在や、超自然的力が
人々の集合無意識に侵入し現実を改変する
変貌世界イベント
 (Altered World Event/AWE」の
調査、鎮圧、研究、管理および
AWEで生成される
現実変貌アイテムの回収などを
任務としています。


ブライトフォールズで起きた異変は、
FBCではAWEと考えられ、
第二次異変以降、
「ブライト・フォールズAWE」として
調査が進められていました。

「ブライト・フォールズAWE」調査途中に
コールドロンレイクに飛び込み、
怪物と化したハートマンの討伐も
FBCによって行われています。

2013年にブライトフォールズに
やってきたFBC捜査官キラン・エステベス
この案件の担当です。

他にも2013年に、
FBCの調査活動の痕跡が確認されます。

「レイクハウス」という現地調査機関や、
コールドロンレイクの
レンタルキャンプ場の封鎖、
湖をモニターしアラートを発信する基地
(チュートリアルで通る道の所)などです。

誤訳というわけではないものの、
惜しいと思わせる点として、
『ALAN WAKE2』日本語訳でセリフが
「政府(FEDERAL/Government)が~」と
なっている場所は、
高確率で話者はFBCのことを言っています。

普通ならば「政府」か「FBI」のことで
間違いなさそうですが、
Remedy作品群にFBCという架空組織が
登場する上にFBIも普通に登場するため、
文脈を慎重に見る必要があります。



  • AWE


AWE((Altered World Event)


変貌世界イベント
 (Altered World Event/AWE)」。
FBCの調査対象である
超自然的力が人々の集団無意識に
侵入することで現実改変を引き起こす
事象のことです。

コールドロンレイクの異変を
FBCはAWEとして
捜査を進めています。




  • OOP

パワーオブジェクト(Objects of Power)」
変貌世界から超自然的能力を
付与されたモノです。

FBCはOOPの回収と調査を
任務としています。

何かしら人間心理や文化の原型に
合致するものがパワーオブジェクトに
選ばれるとされています。

現実改変の増幅効果を持つ
クリッカー
FBCではOOPと考えられています。

現実を変貌させる
パワーオブジェクトのクリッカー

回収したOOPは、
FBCのニューヨーク本部の
建物「オールデスト・ハウス」に
保管されます。
「オールデスト・ハウス」の建物自体も
巨大なOOPであり、
中が異次元とつながっています。

その下のニューヨークの街全体が
超自然的存在の力の影響を受けている
「パワーオブプレイス」であるそうです。


闇の世界:湖じゃない。海だ。


闇の世界の真相がもたらす
2023年の現実世界への影響を
整理していくこととします。

そのため、
まずは全体を貫く重要概念を
ひとつずつ見ていきましょう。

まずは、『ディパーチャー』を締めくくる
迷文「湖じゃない。海だ」です。


パフォーマンスで聞いている
ドアですが、闇の仕組みについて
本当は詳しいはずです

2010年の異変の際はまだ情報が少なく、
解釈に困り果てていたものですが、
ここまでくるともうかなり情報が出て、
意味が明確になってきます。

コールドロンレイクの湖は
闇の世界へ通ずる大きな
ポータルのひとつですが、
湖だけが闇の領域ではありません。

闇の世界は無辺の異次元で、
現実世界の特定の場所に閉ざされておらず、
全体でつながっている「大洋」です。

作中、闇の力が成長していくにつれて、
闇が侵入できる水場が増え
(豪雨による冠水)、
すでにある水場が闇のポータルとして
活性化していくことがあるように、

現実へ侵入するポータルは
湖の他にも作られます。

井戸、湖、池、浴槽、道の冠水、
モップ絞り機から漏れた水たまりなどが、
闇の世界という大洋につながっています。

コールドロンレイクの闇の存在は
ひとつの個体で、
アート作品の現実化の力を持ち
湖から解き放たれたいという
個体目標を持っているように見えます。

それ以外の超自然存在もいるでしょう。

実際、すでに闇の存在以外の
複数の超自然存在(アーティ、ドア)が
闇の存在の領域に出入りし干渉する
痕跡が認められました。

また、闇の世界以外の、
別の存在が支配する
異次元空間もあるでしょう。

続編で話の規模感が大きくなるならば、
他の異次元空間や異次元存在の主が
登場してきて異界超能力代理バトルが
繰り広げられていくのでしょうか。

マーベルじゃん


境界域:定義と構造

2023年の第三次異変で
頻出概念として登場する境界域について
見ていきたいと思います。

原文の
「Overlap(重なり合う場所)」の通りに
境界域とは、現実世界と闇の世界が
重なり合う場所です。

互いに親和性を持つ
現実世界の領域と闇の世界の領域が
部分的に引き合って重なるイメージです。

さらにその具体的な定義について
見ていきましょう。

まず、2012年のウェイクが書いた原稿に、
境界域についてイメージが分かりやすい
説明がありました。

この原稿は、
ナイトスプリングス町という架空のものを
どうやって一夜限りに現実化できたかの
説明ですが、

太字部分が境界域の説明です。

やや意訳のある粗訳↓
「夢と現実が一カ所に
 混ざり合うことで、すり減らされ、
(境界が)薄くなった場所」

Now Night Springs is in Arizona, although not for long. It's in Arizona because whatever the town that has become Night Springs is really called is located near one of the thin, worn places in the world -- where dreams and reality flow together and life is always a little strange. A perfect analogy for Night Springs.
I can't return to the real world. I've tried. But I'm operating on dream logic, forcing the door open a crack so I can slip through. I can enter the strange little town of Night Springs.
All I did was put it in Arizona for one night.

『アメリカンナイトメア』で見つかる原稿のひとつ

2012年のアリゾナ州
ナイトスプリングス町は
2013年のブライトフォールズの境界域とは
別物に感じるかもしれませんが、

本質的は同じで、
ただ戦略として採用された物語や
効果時間などが異なるため、
雰囲気が大きく
変わったのだと思います。

夢と現実が混ざりやすい場所が、
闇の世界との親和性が高くなり、
境界域になりうるという基本的な点を
抑えたところで、
『リターン』の原稿で登場する
第三次異変の境界域定義を
振り返ってみましょう。

第三次異変の境界域を作り出す原稿その一『サーガ、ナイチンゲールを追う』
第三次異変の境界域を作り出す原稿その二『境界域』
第三次異変の境界域を作り出す原稿その三『殺害現場』

ポイントをまとめると、
1.コールドロンレイク周辺に
 自然形成の境界域があり、
 そこに暗い伝承が
 根付いているため、
 闇の世界との境目が薄い

2.境界域を起動する
 闇の物語の特徴は、
 恐怖、悲劇、暴力

 3.闇の世界で書かれる
 ホラー小説の内容を
 現実世界側の境界域の
 出来事に呼応させることで
 両サイドの出来事が
 境界域を通してつながる★

の3点です。

すべての原稿において
ウェイクの修正箇所と
未修正OKの箇所を見比べ、
修正意図をある程度まで
見いだすことは可能ですが、
そこまで神経質になる必要は
ありません。

ただし★をつけた
境界域の設定は、
特にウェイクが意図的に
ねじ込んだものだと思います。

境界域は本来現実が脆弱な場所で、
闇の存在が独りでこじ開けられます。

ウェイクが双方向性
強調、追加したことで、
2023年の第三次異変の
特殊な連動とループ構造が
可能になったと思われます。

境界域:目的と用途

定義と比較して
境界域の目的と用途は、
それに関わる者それぞれの目線で考えると
やや不明瞭です。

仮説程度の推察と思って
ご覧ください。



  • 闇の存在にとっての境界域

これだけは
明確に答えが示されています。

境界域は、闇の存在にとって
現実を浸食し始める場所です。

現実側に形成された境界域は
入り口が活性化される前から、
怪談じみた恐怖の伝承があったりと
虚実が交わり、
闇の世界との親和性が高く、
闇に抵抗する力が弱いです。

そこから闇が湧き出るイメージです。
ナイトがスプリングスするわけです。

境界域は、闇の存在が
現実を侵略するポータルとして
明確に意図して作り出すものです。

また、
ハッキリと明言されていませんが、
闇の存在にとって
境界域は「出口」の機能を
果たしています。

これは境界域の構造について、
2012年の出来事と、原稿の文脈から
読み取れる重要前提でもあると思います。

現実の薄皮である境界域から
闇の軍勢が攻めてきて現実への通路を
完全に突き破った暁には、
もうそこから闇の軍勢が世に放たれ、
闇の軍勢を押し戻すことや、
境界域を閉じることができないと
思われます。

「水が流れるように」と原稿で
説明されたように、
本来は不可逆な動きです。

それが何を意味するかというと、
サーガが流れに反して
現実サイドからしたことは、
境界域に入る」ことであり、
「境界域を闇のポータルとして
 開放する」ことではありません。

後に続く項目の内容は
この理解に基づいています。



  • 境界域ボスと境界域の関係

可哀想な呼び名ですが、
仮に2023年サーガが
開いた境界域に鎮座する三組の
闇に支配された者を
「境界域ボス」と呼びます。

境界域ボスにとって
境界域は何をする場所で、
なぜ向かうのでしょうか。

もちろんそれは『リターン』で
ウェイクがそう書いて
『イニシエーション』と
呼応させるためですが、

それも本来の法則や、あるべき構造に
沿って書いたという暗黙の了解を
踏まえたはずですから、

境界域ボスらにも
ウェイクの都合を抜きにしても
それぞれ境界域に行く理由が
あります。

シンプルに、
境界域ボスは境界域の
闇の力を増幅するために
取り込まれた部品です。

闇の存在が境界域の皮を効率的に
突き破るために、
曰く付きの地でわざわざ狙った
力増幅効果の高い犠牲者です。

効果が高いのは、
歴史上の闇の伝承に
なぞらえる形で事件が発生するためです。

この設定はウェイクが書いたのですが、
闇に侵されて書いたのですから、
もともとそのようなカラクリが
闇と現実の間に存在していたと考えます。

大雑把に言い換えると、
境界域ボスは、境界域の地縛霊です。

境界域ボスのそれぞれの個人ミッションは
追って別項でそれぞれ詳しく見ていきます。




  • サーガにとっての境界域

サーガは単に原稿に導かれ
真相解明のために原稿通りに
境界域に行く以外選択肢がないため、
本質的に理由があるわけではありませんので、
深く関わる人物ですが、省くことができます。



  • ウェイクにとっての境界域

さて、
問題のウェイクさんの思惑を
整理してみます。

ウェイクの目的は、
闇の世界から
現実世界へ脱出することです。

ただ、その理由はアリスの安否確認のため
早い段階でゼインのアドバイスにより、
ウェイクは自宅における闇の世界の投影を
より優先すべき目的地に変更しました。

2012年の出来事と
似た想定をウェイクがしていたとして、
アリスがいる現実世界の自宅周辺にある
境界域を破り出た実体のあるスクラッチが
アリスに危害を加えることを
危惧していたと思われます。

その想定なら、ウェイクは
境界域が完全に開かれ、
闇が現実に流出される前に
早急にスクラッチを消滅させ、
境界域を閉じてアリスを守りたいと
考え、行動していたはずです。

間違っても
境界域を強化することや、
境界域から出ることではないはずです。

ウェイクが境界域を作り上げる度、
闇の存在が激怒してウェイクを
追い出そうとするのも
殺人現場は現実への境界域を開くのに
寄与する行動ではない説明になるでしょう。

まとめますと、
記憶欠損状態のウェイクが
『イニシエーション』殺人儀式の
草稿を書くのは、現実サイドと
対応する境界域のためではなく、
闇の迷宮からパーラメントタワーに
移動するためです。

実際には現実世界の
パーラメントタワーに
アリスがおらず、
さらに実体あるスクラッチも
いないため、
パーラメントタワーが境界域であっても
スクラッチとウェイクのどちらにとっても
優先度が下がります。

さらに実際の闇の世界の
パーラメントタワーは
アリスが闇の世界で作り上げた
ウェイクを嘘でミスリードすることで
導くための特殊空間であり、
境界域かどうかは不明です。

では、ウェイクは境界域に目的を
持っていなかったでしょうか。

それも違います。

境界域についての記述は
ほとんど『リターン』の序盤にあり、
ウェイクの修正済み範囲にあります。

記憶欠損状態がひどくない
原稿修正時のウェイクは間違いなく
境界域を利用する計画を立てて、
小説に反映しました。

この計画を、記憶欠損状態の
ウェイクは覚えていないため
パーラメントタワーに向かうための
行動をする中で、無意識に
計画を達成する形になります。

ウェイクの境界域づくりについての
筆者の仮説は以下です。

サーガがウェイク召喚を成功できるよう
ウェイクが失敗に終える(=無害化される)
境界域の儀式を闇の世界で
繰り返し行いながら、
サーガに現実サイドの条件を整えていく、
という方向性のものです。

現実サイドの条件とは、
根本的には
サーガが召喚儀式の法則を学び
正しく応用することと思われます。

境界域が失敗に終える無害化設計とは、
ウェイクが、サーガを原稿で導いて、
境界域に押し入ってボスを
倒してもらうことで境界域の力を奪い、
無効化するということです。

境界域が消えると、
闇の力に比例して増える
水が引いたのも
現実側の境界域の失効が原因です。

関連するディテールとして
サーガが現実世界の境界域を開く鍵は、
常に闇の世界の殺人事件の草稿で
ウェイクが「脱出の鍵」と直感するものの、
僅差で目の前から消えるアイテム
(心臓、鹿の頭蓋骨、レコード)です。

記憶欠損状態のウェイクの主観は
おそらくパーラメントタワーに
行くための鍵だと誤解して
「間に合わなかった」失敗と捉えますが、

実際それらの「鍵」が現実サイドに
届けられた
のは、
闇の世界のウェイクが殺人現場に
たどり着いた結果に他なりません。

すなわち、正気のある状態のウェイクの
修正段階では想定された
境界域の「正解」です。

闇の存在が境界域を作り出すには
現実世界の「恐怖、悲劇、暴力」の
三拍子が揃った曰く付きの場所の
曰くになぞらえた惨劇で成立させるだけで、
十分にこじ開ける力を得ることができます。

闇の存在にとって、現実サイドのサーガに、
境界域が完全に開放される前に
押し入られて閉じられるメリットは全くなく、
邪魔以外のものでしかありません。

ウェイクが
境界域を利用して現実世界を侵略する
闇の存在の計略を逆手にとり、
サーガが事前に境界域に
忍び込む「鍵」として、
元の話にすでに書かれた象徴的な
アイテムに、さらに鍵の機能を
持たせ、殺人現場にたどり着くことで
得られる力で、現実サイドに届けたのです。


サーガが
境界域がポータルとして開け放たれる前に
無事儀式のアイテムを発見することに
間に合い」、境界域に進入し、
さらに境界域を閉じることにも
間に合った」ため

二つの世界が物語を通して
つながった瞬間に、
境界域の「鍵」が消滅したと
捉えてみるのはいかがでしょうか。

「鍵」が消失するタイミングの前後に
ウェイクがサーガとの
不安定な精神世界コンタクト
叶うことも、この仮説に
合致するディテールです。

サーガとウェイクの
コンタクトの条件は
前述のように
境界域がつながったことと、

サーガが持つ
アンダーソン一族の特殊能力
――――対象についての
事実や痕跡、印象を足がかりに
精神を読み取り、つながる能力――――が
合わさった結果です。

境界域の会話が
受信不良で途切れ途切れなのは、
境界域自体が崩れる寸前で
つながる力が失われていく最中に
発生するためではないでしょうか。


以上が、ウェイクが境界域に抱く
目的の仮説となります。

ウェイクはこの
「無害化境界域でつながりたい」作戦を
時間が足りなかった『リターン』の修正中に
咄嗟に考えついたと思われます。

しかし、
『リターン』がどこからどこまでが
ウェイクの意思で、どこからどこまでが
闇の存在の意思なのか、
分割が極めて難しいという問題があります。

スクラッチ人格の闇の存在が
書いたと明示された
最終章「ディアフェスト」では、
本になった『リターン』が
1冊丸ごと現実化されたため
最終章より前の出来事である
ウェイク召喚の内容は、
闇の存在了承の上
考えざるを得ません。


『リターン』終盤に近い内容のため
ウェイクが修正しているかどうかは
不明ですが、(ウェイク召喚の
内容が書かれた原稿は見つかりません)

召喚が想定外の結果をもたらしたことを
考えると
ウェイクの修正が間に合っていないか、
闇の存在が自分と
一緒に現実に出られてしまうと
気づかずに、有効な脱出戦略としてOKを
出した、のどちらかだと思っています。

第一の境界域事件:ナイチンゲール/カルデラ


ここから、3つの境界域事件を
詳しく解説していきたいと思います。



  • 境界域の伝承

第一の境界域の伝承は
「魔女のひしゃく」と呼ばれる
巨木にまつわる伝承です。

魔女の柄杓の伝承は、
魔女の復讐についての怪談です。

伝承の魔女を描いた看板の絵



昔、ある女性への告白が受け入れられなかった
地元の保安官が激高し、女性を魔女と罵り、
魔術を弄して自分の心を弄んだとして、
湖で溺れさせて殺害します。

殺害された際に、女性が手に持っていた
柄杓を落とした場所に生えてきた木が
やがて今日の巨木「魔女のひしゃく」に
成長します。

無実の罪で殺害された女性は
死後本物の魔女となり、
保安官に復讐します。

魔女は保安官を湖に溺れさせ、
復讐の代理人として永久に支配します。

魔女は保安官の召喚道具として
彼の心臓を奪い、
鍵のかかった箱にいれて保管します。

その後、
魔女が何者かに復讐したい度に、
心臓を箱から取り出して
保安官を湖から召喚し、自分の代わりに
復讐を実行させている言われています。



  • ナイチンゲールが選ばれた理由

闇の世界が犠牲者に選ぶ理由は
伝承になぞらえた事件を引き起こし、
境界域を闇が流出する通路とするためです。

伝承とナイチンゲール共通点として

・伝承の登場人物と同じように警察関係者
・心臓が女性(姿の闇の存在)に奪われる
・無実の罪で人(=ウェイク)を糾弾する
・魔女(=闇の存在)に支配されて復讐する
・湖で溺死し、湖から出てくる
・心臓が箱に保管される

などが確認されています。



  • 境界域の場の呼応

両サイドの境界域の場所としての共通点は、
カルデラです。

コールドロンレイクは
火山の噴火活動後の陥没よって
出来た凹地に水が溜まって形成された
カルデラ湖であり、

闇の世界のニューヨークでは
地下鉄のカルデラ駅が
コールドロンレイクと
呼応しています。



  • ナイチンゲールの悲劇の軌跡


ナイチンゲールが辿った悲劇の全容を
時間順に整理していきます。

闇に支配された
ロバート・ナイチンゲール

他の境界域に対応する
支配された者と異なる点として、
前作の2010年時点で
すでに闇に飲まれたことが挙げられます。

2010年の第二次異変では、
ウェイクがバーバラ姿の闇の存在を
クリッカーで大打撃を与え、
バーバラという器を消滅させました。

器を失い弱体化した闇の存在は、
自身の力を回復させるためか、
湖周辺の森で彷徨っていた
闇に支配された者や、
闇に触れられた者たちを
湖に引き戻していきました。

ナイチンゲールは一度闇にさらわれ、
現実に戻りましたが、
ディアフェスト後に再び
闇の存在の回収作業により
湖から闇の世界に飲まれます。

『リターン』の原稿では、
ナイチンゲールの心臓が
「バーバラ姿の闇の存在に盗まれた」と
書かれていますが、

ナイチンゲールの心臓は、
2023年の樹木の教団に発見された際に
初めて抉り出されたと思われるため、
ここの記載を、闇に触れられたことの
比喩表現と考えます。

ナイチンゲールが実際に
死亡した時期についてですが、

2010年の闇の回収作業後、
闇の世界で彷徨う時期か、

2023年湖から出て
樹木の教団に殺害された時か
の二択だと考えています。

個人的には、ナイチンゲールは
2023年に本当に殺されたという解釈を
採用しています。

……というのも、
チュートリアルで
操作させられたのは、
まだ哀れな状態でギリギリ生かされていた
ということのホラー表現ではないかと
思ったためです。
なんという可哀想なことをするんだ…… 

余談ですが、
そのときに凶刃を振りかぶり、
ナイチンゲールを殺害した教団員は
老人ホーム従業員のウラジミールです。

老人ホームで拾う情報を総合すると、
ナイチンゲールの殺害は、おそらく
ウラジミールが教団に加入した直後の時期に
与えられた任務です。

この任務も失敗に終えた上、
その後まもなくして
ウラジミールは
老人ホームの地下室で
死体として発見されます。

さて、ナイチンゲールに戻ります。

2010年、闇の世界に
飲まれたナイチンゲールは
しばらくは混乱し彷徨い、
脱出したいと願っていました。

その願いは、反響(エコー)となり、
実際闇の世界のウェイクに届きます。

ただ、不幸なことに、
ナイチンゲールの願いをキャッチした
ウェイクは、内なるスクラッチ人格に
侵された状態にあり、
スクラッチの趣味と意向をフルに
反映する筋書きにナイチンゲールを
取り込みます。

その後、比較的正気が戻ったウェイクが
各原稿に全体的な修正を試みてもいますが、
さまざまな制限や目的の都合が絡み合い、
ナイチンゲールの悲劇が覆されることは
ありませんでした。


ナイチンゲールはスクラッチ状態の
ウェイクによって、
境界域から現実世界に送り出すため、

『イニシエーション』では
カルデラ駅の地下鉄のカルト殺人事件の
被害者として、
『リターン』では、
樹木の教団の儀式によって
シンクロする形で二度殺害されます。

そのときのナイチンゲールの精神状態は
闇の世界に影響、歪曲され、
生前ウェイクへ抱いて執念に
取り憑かれた形となり、
現実に出てウェイクを懲らしめるために、
不死を自覚し、喜んで二度の殺害を
甘んじて受け入れ、クリッカーを
探し求めることを使命と思っているような
精神状態になります。

二度の殺害の内訳についてですが、

ナイチンゲールまず、
『イニシエーション』によって
闇の世界のニューヨークに引きずり込まれ、
そこで登場する、
スクラッチを信奉する「言葉の教団」に
捉えられます。

その後、
カルデラ駅の深部で執り行われた
「言葉の教団」のカルト儀式で、
心臓を抉られ、サーガを導く原稿を
胸部に埋め込まれます。

儀式によってナイチンゲールは
2023年の現実世界の湖岸に
打ち上げられ、

クリッカーを探すこと、
ウェイクへ復讐することに
取り憑かれながら、
原稿に支配されて行動します。

森の中で、コスケラ兄弟が率いる
樹木の教団員が、湖からやってくる
ナイチンゲールを発見し、教団の
闇に支配された者退治マニュアルに
従い、退治のため儀式を行います。

ウラジミールは
ナイチンゲールをナイフで刺し
無力化させた後、
心臓を抉り出すことに
成功しますが、

闇に支配された者を蘇らなくする
クリッカーを用いた処置の前に、

観光客のブッカー夫妻が
現場に乱入してきたため、
教団員らは儀式の途中で
慌てて撤収します。

その後が本編の内容につながります。
FBI捜査官のサーガとケイシーが、
現地保安官ティムの報告を受け、
儀式現場にうち捨てられた
ナイチンゲールの「死体」を調査しに
ブライトフォールズにやってきます。

現場の遺体検分が終了し、
ブライトフォールズの保安官事務局地下の
検死室で、サーガがナイチンゲールを
解剖している最中、
ナイチンゲールが
闇に支配された者として蘇り、
暴れたのち、その場から脱出し、
心臓を持って境界域に戻ります。

サーガ主観ではナイチンゲールを
撃ったら消えたように見えましたが、

おそらくこれは
現実改変による競合した現実の上書きの
瞬間に立ち会った結果だと思われます。

非常におぼろげながらですが、
原稿の修正合戦が繰り返された結果、
最後に現実として定着した
経緯が下記のように解読してみます。

ゲーム中の説明がほぼないため
納得のいく説明を組み立てるのは
ほとんど不可能ですが、
後述の理由により、
あまり神経質になっても
仕方がないかもしれません。

ナイチンゲールが
保安官事務局から脱出し
殺害現場を通って湖の境界域に戻る途中、

儀式の前に教団員が
現場のすぐ隣の雑貨店で
ポーカーゲームをしながら
待機していたと描写した
原稿の断片や伝承に影響されてしまい、
雑貨店に引き寄せられます。

ナイチンゲールの時もそうですが、
すべての境界域の儀式の鍵アイテムは、
ウェイクが作った複雑な仕組みによって
時空の狭間をねじあけて作り上げた性質を
持っているため、
(詳しくは「境界域:目的と用途」を参照)

もともとの現実に沿った自然な因果展開が
無視してもよいという雰囲気の
処理がされています。

だからか、他のモノやコトは、
原稿や現実で見つかる情報で
明示されることがあるのに対し、
境界域の鍵の在処の情報は、
100%サーガが精神世界で
読み取っています。

その後はもうストーリー展開の通りです。

境界域に戻ったナイチンゲールを追って、
サーガは原稿を手がかりに
境界域の儀式を行い、
境界域の中に入り込んで
ナイチンゲールを倒し、
境界域を閉じます。


第二の境界域未遂:コスケラ兄弟/フオタリの井戸


2023年の現実世界で
サーガが経験した第二の境界域事件の
境界域ボスは、
保安官代理のマリガンとソーントンですが、

本来闇の存在に狙われた標的は
マリガンとソーントンではなく、
コスケラ兄弟でした。

このあたりの経緯は、
ウォータリーの灯台で
見つかる原稿で明かされています。

見出しで「未遂」と書きましたが、
「未遂」というのは、
闇の存在が、境界域を作るために
コスケラ兄弟を犠牲者にすることに
失敗したことを意味するにすぎません。

コスケラ兄弟は、悲しいことに
第三次異変によってもたらされる
悲劇的な運命から逃れることが
できませんでした。

本項では、
コスケラ兄弟の身に降りかかった
呪いを整理していきます。



  • 境界域の伝承

井戸の怪談は、
悪霊に呪われた兄弟が、
次々と悪事に手を染め、
やがて不幸になる話です。

フオタリの井戸の伝承


フオタリ井戸は、
ウォータリーの歴史初期、
イルマリ・フオタリという人物が
人々を次々と殺害し、
死体を隠す場所でした。

イルマリが手に掛けた死体を
井戸に投げ込んで隠蔽工作を行う仕事は、
イルマリの兄弟であるヤコピに
任されていました。

やがて殺人の罪が暴かれ、
イルマリは
協力してくれていた兄弟のヤコピも
殺害してしまいます。

イルマリは、すべての殺害は
自らの意思による犯行ではなく、
井戸に棲まう邪悪の水の霊ナッキに
取り憑かれた結果だと訴えていました。



  • コスケラ兄弟が選ばれた理由


コスケラ兄弟
――――イルマ・コスケラと
    ヤッコ・コスケラ――――が
フオタリの井戸の伝承の完璧な
嵌り役であるためです。

伝承とコスケラ兄弟との共通点は以下です。

・一方がもう一方に協力する双子の兄弟
・ウォータリーの住民
・名前の類似性が極めて高い
 →伝承:     イルマリ(Ilmari)&
          ヤコピ(Jaakoppi)
   コスケラ兄弟:  イルマ(Ilmo)&
          ヤッコ(Jaakko

闇の存在が伝承になぞらえて
作り出そうと計画していたが
挫折した共通点は下記のものです。

・イルマリがナッキに取り憑かれたように
 イルマが闇の存在に支配され、
 大切に思っている人々を殺害する
・良識を持ち出してイルマの説得を試みる
 ヤッコもイルマに殺害される
・殺害された死体はフオタリの井戸に
 投棄される

ほかに好都合だった点として、
・樹木の教団リーダーのイルモが
 クリッカーを所有し、管理しているため
 奪いやすい

・樹木の教団本部がフオタリの井戸の
 すぐ近くの作業場にあり、
 クリッカーもそこに保管されている

闇の存在とウェイクの利害が一致し、
結果的に伝承になぞらえて作られた
共通点もあります。

・フオタリのフロート

です。
あまりに不吉なので、
お祭りで使うアイディアとして
いくら奇抜な発想を持つイルモでも
正気の沙汰とは思えません。

原稿で描かれた
イルモがスタッフに向けて
フオタリのフロートの制作コンセプトを
発表した場面で放った言動も
残虐さと殺人趣味への行き過ぎた傾倒が
にじみ出ており、異常そのものでした。

したがってフロート制作は
闇の存在の影響を受け
フオタリ兄弟の精神への同調が
ある段階まで発生した影響と思われます。



  • 境界域の場の呼応

現実世界と闇の世界の
両サイドで境界域を呼応させる場所は、
フオタリの井戸です。

現実世界ではそのまま、
フオタリの井戸の中です。

闇の世界でそれと対応するのは、
ポエットシネマで上映された
短編映画『白夜の夜』の
クライマックスシーンの場所です。

そのシーンでケイシーが
森の井戸の横でカルトの殺人儀式に
遭っていました。




  • コスケラ兄弟の悲劇の軌跡

コスケラ兄弟は、
ウォータリー出身の
双子の共同経営者兼実業家です。

彼らは地元への愛情から
地域振興のための幅広い
ビジネスと地元ブランドを展開しています。
(絶妙なご当地テイストが素晴らしい)

また、秘密裏で樹木の教団という
人々の安全を守る自警団の組織と運営も
行っています。

コスケラ兄弟
左:イルモ  右:ヤッコ


ゲーム内マップとして探索できる
コスケラ兄弟が経営権、所有権を
持つ場所は下記です。

・トレーラーパーク(住宅地)
・コーヒーワールド(遊園地)
・カレバラ・ナイツの作業場(遊具整備、ほか)

ゲーム内に登場する
コスケラ兄弟プロデュースの
商品、サービスは下記です。

・アフマ・ビール(缶ビール)
・ブレンドコーヒー(コーヒー)
・ツアーガイド(自然体験ツアーガイド)
・オーダーメイドフロート(飾り付けボード)
・ブッククラブ(書誌情報メディア?)

プライベートでは、
『リターン』の世界線の
サーガや娘のローガン、アンダーソン兄弟を
始めとする町の住民と暖かで仲の良い関係を
築いている様子が認められます。

また、知っていると得するよりは
悲しさが増す小ネタとして、
コーヒーポットの着ぐるみの
宣伝バイトこの二人は、
ヤッコの息子と娘です。

会話を聞くと彼らは父世代のように
地元愛に縛られておらず、
むしろ脱出して憧れの大都会に行きたいと
願っていると分かります。

コーヒーポット着ぐるみの二人は
ヤッコの子供たち



さて、闇の存在はフオタリの井戸の
境界域を作り出すため
コスケラ兄弟を絶好の標的として
狙いを定めていました。

しかしイルモは
自分が友達や兄弟を殺害する悪夢を
見ていた段階で、すでに異状に気づき、
強い拒否感情と揺るがない意思で
持ちこたえ、自己を保ちました。

(闇の支配のプロセスを早期に感じ取り、
 根性だけで打ち勝った例外は
 イルモだけです)

その上で、闇の悪夢に抵抗しようと、
イルモは樹木の教団の活動に本腰を入れ、
闇に支配された者を退治することに
奮起するようになり、
実際退治成功の成果を
次々と挙げていきます。

闇の存在はコスケラ兄弟を断念し、
支配が簡単なマリガンとソーントンに
標的を変えますが、
本来の計画に抵抗できたコスケラ兄弟を
憎々しく思っており、復讐のチャンスを
伺っていたに違いありません。

闇の存在は復讐に成功します。

コスケラ兄弟が
樹木の教団のリーダーであると
正体が知られて監房に拘束されたとき、
不幸なことに、その横の監房に収監された
ウェイクの身体に、
ウェイクを乗っ取れるほど力が成長した
闇の存在が潜んでいました。

闇の存在がウェイクを
完全に乗っ取った後行った
一番最初の行動が、隣の監房のヤッコを、
イルモの目の前で握りつぶすように
あっけなく殺害することでした。

イルモは伝承のように
邪悪なものに支配された殺人鬼に
成り果てる運命を逃れたものの、

闇の存在の復讐により、
伝承のように
一番の理解者であり協力者の
兄弟を失ってしまいます。



コスケラ兄弟の悲劇を思い出す度
気持ちがどんよりするため、
本項を気を紛らわす余談で
終わらせます。

フオタリの井戸の伝承に登場する
人を湖に誘い込む悪霊ナッキの原型は、

北欧やヨーロッパで人に害をなす
河童的妖怪としてよく知られている
ナッキ(Näkki)ですが、

ナッキの民話や伝承のバリエーションに、
馬の姿で湖付近で人々をいざない、
湖に溺れさせるというものがあります。

馬形態のナッキは、
漁の守護神にして
深海の王アーティ/アハティ(Ahti)から
派生されたという説があるそうです。
(出典不明です)

『ALAN WAKE』シリーズの
アーティと闇の存在は、
さすがに同源であると描かれることは
ないと思いますが、
神話における関連性を思い浮かべると、
どのような関係性の設定が今後
明かされたとしても
興味深く感じられます。


第二の境界域事件:マリガンとソーントン/フオタリの井戸


マリガンとソーントンは、
2023年サーガらがブライトフォールズに
訪れてはじめて会話をする現地住民です。

2010年の第二次異変では、
名前と声のみの登場でしたが、
彼らはれっきとした
第二次異変の当事者であり
13年後に姿と表情込みでの
再会はプレイヤーにとって
非常に安堵と嬉しさを覚える出来事でした。


序盤で元気に漫才している
マリガンとソーントンの姿を見ているとき、
誰もまさか中盤で彼らが
倒せざるを得ない闇の軍勢に
変貌してしまうなどと想像するはずもなく
第二の境界域事件で青天の霹靂のような
傷心と衝撃に見舞われます。
(ボス戦の難易度も随一です……)

マリガンとソーントンが
境界域ボスに選ばれた背景に、
前項で見てきた通り、
闇の存在がコスケラ兄弟を
狙うことに失敗し、ターゲット変更を
せざるを得ない事情がありました。

詳しく見ていきましょう。



  • 境界域事件の動機について

伝承との共通点を見ていく際に
マリガンとソーントンの犯行の動機周りで
留意されたい点があります。

思い出してみてください。
ナイチンゲールの境界域事件は
すでに彼は闇の者と成り果てて
闇の支配下にあったことと、

コスケラ兄弟は抵抗ができたものの、
自ら殺人の罪を重ねたくなるように
闇の存在による精神汚染があったこと。

この2つが共通して示していることは
すべての境界域事件の発生は、
闇の存在が『リターン』確定稿による
積極的な操作によって
原因が作られていることです。

言い換えれば、
現実の何も歪まされていなければ、
絶対に起こらなかったはずの
悲劇的な偶然が、
むしろ必然の運命に収束する
筋書きが各事件を引き起こす
原因であり本質だと思っています。

したがって、
第二の境界域事件の
マリガンとソーントンや、
第三の境界域のシンシアなど、

境界域のボス格の犠牲者の罪は、
具体的な犯行動機というより、

悪につけ込まれるする危うさを
あらかじめ持っており、
それに打ち勝てなかったことです。

闇の存在に狙われた対象が、
脆弱な精神につけ込まれて
闇が増殖していき、

やがて自己を失い、
闇に歪まされた動機で
犯行を代理している
スケープゴートである側面を
持っていることを意識してみると
面白いかと思います。
(リアリティと悲劇性が
 かえって増すとも言えますが……)



  • 境界域の伝承


ここはコスケラ兄弟の項目と重複します。
前項を読んできた方は少し飛ばして、
「・マリガンとソーントンが選ばれた理由」
からお読みください。

フオタリの井戸の伝承


フオタリの井戸の怪談は、
悪霊に呪われた兄弟が、
次々と悪事に手を染め、
やがて不幸になる話です。

フオタリ井戸は、
ウォータリーの歴史初期、
イルマリ・フオタリという人物が
人々を次々と殺害し、
死体を隠す場所でした。

イルマリが手に掛けた死体を
井戸に投げ込んで隠蔽工作を行う仕事は、
イルマリの兄弟であるヤコピに
任されていました。

やがて殺人の罪が暴かれ、
イルマリは
協力してくれていた兄弟のヤコピも
殺害してしまいます。

イルマリは、すべての殺害は
自らの意思による犯行ではなく、
井戸に棲まう邪悪の水の霊ナッキに
取り憑かれた結果だと訴えていました。



  • マリガンとソーントンが選ばれた理由

他の境界域事件と同様、
境界域の伝承をなぞらえた
事件の「役者」に適任な者が選ばれます。

マリガンとソーントンは、
闇の存在の妥協の結果ではあるものの、
次点当選と言えるほどには、
フオタリの井戸の伝承に相応しい
犠牲者でした。

伝承とマリガンとソーントンとの
共通点
は以下です。

・兄弟ではないが、
 協力し合う相棒コンビの関係性
(肩書きにつけて呼ばれている
 「マリガン」「ソーントン」は苗字です)

・毎度井戸に投げ入れるわけではないものの
 他人のせいで死体処理の
 汚れ仕事を請け負ってきた
 →その結果積もった怨恨や苛立ちが
  闇がつけ込む弱さの土壌を作った
 
 └1:ヘラジカのモカの死体処理
 (=ステーキとマスク用頭蓋骨に加工)
  →イルモの過失の結果による後片付け

 └2:ナイチンゲールが検死室で暴れた結果
   殺害された警官同僚の死体処理
  →サーガのせいではないが、
   マリガンとソーントンは、
   サーガを恨むことで
   不可解な状況を理解しようとした

・過失殺人の死体隠蔽を行い、
 死体を井戸に投げ入れた
 →闇の完全支配を招く決定的なトリガー

ほかに好都合だった点は、
コスケラ兄弟を狙ったときと近い形に
達成できました。

・クリッカーを所有し、管理している
 樹木の教団リーダーのイルモは
 狙えない代わりに、
 
 マリガンとソーントンは
 樹木の教団の教団員で
 クリッカーに触れやすい立場にある

・樹木の教団本部がフオタリの井戸の
 すぐ近くの作業場にあり、
 クリッカーもそこに保管されている



  • 境界域の場の呼応

コスケラ兄弟の項目と重複します。
前項を読んできた方は
ここを読み飛ばしていただいて
次の
「・マリガンとソーントンの悲劇の軌跡」へ
お進みください。

両サイドの境界域のつながりは、
フオタリの井戸です。

現実世界ではフオタリの井戸の場所が
そのまま境界域です。

闇の世界でそれと対応するのは、
ポエットシネマで上映された
短編映画『白夜の夜』の
クライマックスシーンの場所です。

そのシーンでケイシーが
森の井戸の横でカルトの殺人儀式に
遭っていました。



  • マリガンとソーントンの悲劇の軌跡

マリガンとソーントンは、
ブライトフォールズの
保安官代理です。

2010年の第二次異変当時から
保安官代理として活動しており、
その際は主に『ディパーチャー』の
原稿の断片で二人の活動について
知ることができます。

2010年のウェイクが
闇に支配されたスタッキーと
戦った後の材木所を調査したり、

ナイチンゲールの指図を受けて
ウェイク探しに協力したり、

ローズのトレーラーで
昏睡状態に陥ったバリーとローズを
保護したりしていました。

13年後、マリガンとソーントンは、
保安官代理の仕事の傍らに、
コスケラ兄弟が率いる
闇の脅威から町を守る樹木の教団という
民間自警団にも所属し、指示にしたがい
夜警や退治儀式などこなしたと思われます。


左:マリガン   右:ソーントン


マリガンとソーントンの事件の全容は
比較的に明瞭に原稿で書かれています。

決定的なきっかけは、
マリガンとソーントンが
樹木の教団の任務として夜の巡回中に、
物陰から出てくる遊園地スタッフを
暗がりの中で闇に支配された者と誤認し、
勢い任せに射殺してしまったことです。

マリガンとソーントンは
過失殺人の罪を受け入れられず、
罪をなかったことにするため、
フオタリの井戸に投げ込んで
死体を隠します。

過失殺人のことは
完璧に隠し通せていましたが、
マリガンとソーントンは徐々に
膨らみゆく罪の意識に蝕まれ、
やがて闇の存在に支配された者となります。

闇に支配された
状態でクリッカーを盗み出し、
境界域に戻り、やってくるサーガに
逆恨みの感情から攻撃を浴びせます。

(逆恨みとは、ナイチンゲールの件で
 不可解な状況で死体処理を請け負った時に
 彼らが受けた心理的ストレスを
 階級の高いFBI捜査官のサーガに
 恨みとして転移した結果です)



  • 二つの死体

フオタリの井戸の境界域事件の
特殊な点として、ベースとなっている伝承が
連続殺人であることが挙げられます。

複数の死体が井戸に投棄された
伝承内容になぞらえられ、
第二の境界域事件は二つの死体を
生んでいます。

ひとつ目の死体は既に見てきた
マリガンとソーントンが夜の見回り中に
見間違いで撃ち殺してしまった
遊園地スタッフです。

もうひとつの死体は、
境界域の鍵にもなっている、
遊園地マスコットキャラの
ヘラジカのモカです。

ここではヘラジカのモカの事件を
整理します。

ヘラジカのモカは、ウォータリーの
テーマパーク「コーヒーワールド」の
マスコットキャラのモデルにもなっている
ヘラジカです。


園内にある
コーヒーを飲む姿のモカ像


コーヒーワールド園内の随所に
モカの飾りが見られます。
パーク中央の巨大モカ像、顔出し看板、
ギフトショップの商品である
モカのぬいぐるみ……などです。


モカのぬいぐるみ


テーマパーク内の看板で
モカの逸話が読めます。

要約すると、
偶然にコーヒー好きのヘラジカが
怪我した状態で当時建設中の
園内に迷い込み、

コーヒーのおかげで逃げずに
怪我を治療ができた、という
エピソードです。

以降、ヘラジカは「モカ」と名付けられ、
ヘラジカが飲んだというブレンドコーヒーが
シグネチャー商品として売り出され、
ヘラジカが淹れたてのコーヒーを試飲する
パフォーマンスも定番になったようです。

看板の豆知識欄に
ヘラジカの平均寿命が35年であるに対し
モカが現在6歳であることや、

コーヒー好きのヘラジカは世の中
たったの一匹、モカしかいないことが
書かれています。

モカの逸話が書かれた看板


ギフトショップのイルモの手紙を読むと、
逸話が嘘である真実を突きつけられます。

イルモの手紙

どうやらヘラジカにとって
カフェインはやはり毒で、
モカだけが奇跡的な例外、
というわけではありません。

今回の「モカ」は獣医から
健康体と診断されたヘラジカでしたが、
コーヒーを飲むうち
心臓発作を起こして死亡します。
長続きしませんでした。

イルモは毎回ヘラジカが死亡すると、
次のモカ役のヘラジカを
手紙の宛先のジェフという人物から
取り寄せて補充することで、
コーヒー試飲パフォーマンスを
続けてきたようです。

「この話を続けるために」
「ストックにまだ残ってるやつはあるか?」
「子供たちにはモカは少しの間
 休暇中と言ってごまかしている」

と、子供の夢クラッシャーの中でも
破壊力がエグめの内情が赤裸々に
綴られています。
サンタさんはお父さんだった、では
比べものにもなりません。

ヘラジカの死体処理については
原稿で書かれています。

イルモは関係者のみが
参加する小さな葬式を開き、
自作した弔辞を読み上げ、
ヘラジカの処理を命じます。

ヘラジカの頭蓋骨を
マスクに加工する作業は
マリガンとソーントンに任され、
ヘラジカの肉はステーキにして
食べられます。

モカの頭蓋骨はコスケラ兄弟が
ディアフェスト用のフロートにも
使用する予定となっており、
境界域の儀式で一足先に
サーガがそれを代行する形になります。

サーガがモカの頭蓋骨を見つけた場所が
フオタリの井戸端だったため、
闇に支配されたマリガンとソーントンが
完全に闇に支配され、境界域に引きずり込まれて
失踪したタイミングが、ちょうど
マスク加工作業の完了時かもしれません。

モカの遺骸が境界域の鍵になりました

第三の境界域事件:シンシア/オーシャンビューホテル


シンシアのこれまでは、
別項「闇の休眠:第一次異変の当事者たちの
   その後(1970s~2010)」と
「『レディ・オブ・ライト』の世帯交代」で
既に詳しく見てきたため、
ここでは割愛します。

一言で言えば彼女は、
2回の異変を生き抜き、
一代目レディ・オブ・ライトとして
闇との戦いへ多大な貢献を
長年与え続けた功労者です。

第三次異変の闇の世界に
シンシアの功績の上手いまとめが
ありましたので、
紹介しておきます。

闇の世界カルデラ駅内で
見かけることがある

シンシアの功績まとめ
(雑訳恐れ入ります……)


  • 境界域の伝承


第三の境界域事件の伝承

(記事に「老人ホーム・ヴァルハラ」とありますが、
老人ホームは2014年に設立されたため、
1991年の新聞記事に書かれたのは
開発元のミスと思われます)


第三の境界域事件の伝承は
1991年に水死した女性の幽霊の怪談です。

他の二つの歴史ある伝承と比較すると、
境界域ボスの年齢より
日が浅いですが、見ていきましょう。

老人ホーム・ヴァルハラの建物は
歴史あるビクトリア調の古屋敷です。
建築された時期は不明です。

戦時中、その古屋敷の近くに、
バンカー(戦時中避難用の掩体壕)が
掘られていましたが、
戦後に封鎖されました。

60年代にゼインが
ブライトフォールズに移住し、
古屋敷を購入したとき、

ゼインは古屋敷を
オーシャンビューホテル」と名付けた
芸術家コミューン(芸術家公社、
芸術家の共同生活拠点)にする構想を
発表しています。

ゼインは1970年代に失踪し、
古屋敷は再び持ち主なしの
廃屋となりますが、

ゼインが残した構想が影響してか、
いつからか古屋敷近くの廃バンカーが
若者から
「オーシャンビューモーテル&スパ」と
呼ばれる人気のたまり場になります。

1991年、地元の15歳の少女ノラが
廃バンカーの若者の集まりに
参加している最中に溺死するという
事故が起きます。

彼女には音楽のセンスがあり、
歌が集まりの中で評価されており、
(芸術家コミューン要素)
その不慮の死が惜しまれていたそうですが、

真相は事故ではなく、
他殺か、過失殺人です。

というのも、彼女の死亡は多くの目がある
集まりの最中にあったはずにも関わらず、
ノラは失踪した翌日に
親が警察に連絡するまで、
居るはずの当事者からの通報や目撃証言は
一切ありません。

さらに、警察の捜査開始後に、
いかにも心当たりある当事者と思われる
ノラの知人から警察に
バンカーを調べるようにと匿名情報が届き、
それが死体発見につながったため、
事件性は確実にあったと思われます。

それ以来、
古屋敷は少女ノラの怨霊の歌声が
聞こえてくるという
曰く付きの建物になります。

2014年にバリーが老人ホームを設立するため
古屋敷を買い取る時には、古屋敷はすでに
有名な幽霊物件になっており
安価に入手できたそうです。



  • シンシアが選ばれた理由

他の境界域ボスと同様、
シンシアは境界域の
伝承をなぞらえることが可能でしたが、

これまでの境界域事件と比較すると、
伝承との結びつきがかなり弱いです。

選ばれた理由はどちらかというと、
獲物としてシンシアが好都合であることと、
闇の存在の障害になり得る
トールを片付けたいためだと思われます。

伝承とシンシアの共通点
下記のこのあたりでしょうか。

・溺死(浴槽で)
・未練(ゼインへ)
・歌(トールに要求)


シンシアを狙う際に好都合だった点のほうが
数多く思い当たります。

・伝承の場所に住んでいる
・一度闇に触れられた生還者
・高齢により精神と肉体が弱い
・防御(電球替えなど)が崩れた
・トールに接触できる
・ゼインへの未練が心の闇に転じやすい



  • 境界域の場の呼応

オーシャンビューホテルです。

現実世界では、
「オーシャンビューホテル」が
伝承の溺死事件が起きた場所の
呼び名になっています。

闇の世界には
「オーシャンビューホテル」という
ホテルが事件現場になっていました。


場ではないのですが、
現実世界と闇の世界の両方において
トーマス・ゼインは
「オーシャンビューホテル」に
住んでいた/住んでいることも、
境界域のつながりの強化に
かなりの影響を与えたと思われます。




  • シンシアの悲劇の軌跡

シンシアの悲劇の全容は
概ね原稿で明かされています。


老人ホーム・ヴァルハラでの暮らしは、
行動家にして戦士との自己認識を持つ
シンシアにとっては酷なものがありました。

2013年の闇に支配される
前の姿のシンシアは
残像で後ろ姿のみ確認可能

身体や認識機能の衰えにより、
シンシアがこれまで長年築いてきた
身の回りの盤石の照明防衛が
おろそかになり、心も弱くなります。

弱るシンシアに
必要な闇のリテラシーに基づく理解と
心身両面のサポートの欠如が
いくつかの決定的な場面で重なり、
やがて闇に殺害されます。


老人ホームスタッフのウラジミールが、
シンシアが要求する頻度で
電球を交換しないため、

シンシアは自分で自室の電球交換や
老人ホーム全体の照明点検をしに
地下室に通わざるを得なくなりますが、
記憶力と認知能力の低下により、
交換が間に合わず、暗さに晒され
恐怖に怯えることが増えていきます。

次にシンシアはこれまで手放さずに
抱えていたランプも
どこかに無くしてしまいます。

心の支えにしていたゼインについての
現実も、度重なる書き換えよって変化し、
シンシアは事実と自身の記憶との不整合で
不安定になります。

シンシアは2010年バージョンの認識を
持っており、ゼインを詩人&ダイバーだと
思っていますが、身の回りを調べるほど
ゼインの撮影機材や映画監督として
取り上げられた新聞記事が見つかり、
シンシアが混乱し怯えます。

シンシアが闇に堕とした決定打は
天使のランプの盗難事件です。

ローズが盗みを働く経緯については
「『レディ・オブ・ライト』の世帯交代」で
詳しく説明していますので、
ここでは部分的に割愛します。

天使のランプは、
ゼインのお気に入りのランプで、
シンシアはそれをゼインと同一視するほどに
大事にしていました。

一方、
二代目レディ・オブ・ライトのローズは
一方通行のウェイクのメッセージに従い、
天使のランプを闇の世界に送り届けるため、
シンシアの部屋から盗み出します。

天使のランプの紛失に気づいた
シンシアは、ゼインとの繋がりを
すべて失ったように感じ、
大きな喪失感と悲しみを覚え、

闇の存在が演出した
ゼインの幻聴に耳を傾けはじめます。

心と光の守りの両方が崩れた
シンシアは入浴中に
闇の存在に浴槽の水に沈められて
溺死します。

シンシアは浴槽から沈んで
闇の世界を垣間見たあと、
一定の知性が残る闇に支配された者に
変えられて現実に送り返されます。

闇に支配されたシンシアは、
闇の世界のゼインと結ばれることを夢見て、
その障害となり得るトールを
境界域に引きずり込んで殺害する
作戦を取り始めます。

トールも高齢のため、
闇への防御力が低下し、
簡単にシンシアに惑わされ、
恋心を抱き始め、
わがままを聞くうちに、
だんだんと闇を感染していきます。

シンシアに起きた異変と闇の侵食に
トールは途中で気づいて抵抗を始めますが、
すでに闇が進行し、正気と行動の
コントロールが困難な状態となったところ、
電話でサーガに助けを求めます。

サーガは闇に支配されたシンシアに
境界域に連れ込まれた危機一髪のところで
境界域を開き、シンシアを討伐して
トールを救出します。

境界域の類似領域:確認済み超時空スポット

長く続いた境界域解説の
箸休め項目です。

怪談的な伝承がないなど、
これまで見てきた3つの境界域の特徴に
当てはまらない、
異なる世界をひとつの空間でつながる
超時空スポットは作中いくつか
確認されています。

これらの領域の成立条件や、
作り出した人物などが不明です。
続出情報に期待するとして、
現時点の考察メモを載せておきます。

確認済み超時空スポットについて:

・闇の世界の
 パーラメントタワーのウェイク自宅
[作り手]アリスとその協力者?
[結ぶ次元]アリスとウェイクの闇の世界?

・ウェイクの執筆部屋
[作り手]ウェイクと闇の存在
[結ぶ次元]闇の世界の
  パーラメントタワーの執筆部屋と
  老人ホーム・ヴァルハラの屋根裏部屋

・ゼインの部屋
[作り手]ゼインと闇の存在?
[結ぶ次元]ゼインの闇の世界と
      ウェイクの闇の世界?

・ドアのトークショースタジオ
[作り手]ドア?
[結ぶ次元]すべての闇の世界?


闇の二次災害:ニューヨークの連続殺人カルト


これまで見てきた境界域事件の中で、

『リターン』で描かれたものは、
ブライトフォールズの出来事として
現実化しました。

闇の世界の『イニシエーション』の草稿で
描かれた事件がどうなったについても
見ていきたいと思います。



  • 闇の世界のニューヨークの草稿は現実になるか

業の深い話ですが、
『イニシエーション』は
全体のストーリーが完結していない
試作草稿程度のものでしかないはずなのに、

『リターン』の現実に呼応する3つの草稿で
書かれたカルト殺人事件が、
悉く現実に起きているという事実が
FBCの調査資料や、
ケイシーの口から語られています。


ニューヨークの連続殺人カルトに
関するFBCの調査資料


第三次異変開始時に、
FBIのケイシーもFBCと近い推測を
持っていました。

ケイシーは
ウェイクを信奉するというニューヨークの
カルト教団による連続殺人における
ウェイクの関与を疑っており、
個人的にウェイク失踪を追っていたと
サーガに語っていました。



  • 現実のニューヨーク連続殺人カルト

判明している現実のニューヨークの出来事は
下記の通りです。

ウェイクが失踪した3年後の
2013年に、FBIのケイシー宛てに、
ウェイクの『アレックス・ケイシー』の
既刊にあった殺人事件を描写する
文章の切り抜きが送られるようになります。

同年中に、少人数の犯罪集団が
ニューヨークでウェイク作品の
見立て殺人を複数行ったことで
逮捕されます。

犯行内容はケイシーに事前に
送られたものと一致します。

犯罪者はウェイクを予言者と崇拝し、
ウェイクの過去作品の殺人を
模倣する殺人儀式を行うことで、
失踪したウェイクを呼び戻せると
信じていると、逮捕された者が
供述していました。



  • 『イニシエーション』との関係


現実のニューヨークの殺人カルトによる
見立て殺人、殺人儀式に使用される
文章や本のページは、
ウェイクの既刊のものであるため、
『イニシエーション』の
直接の現実化ではないと分かります。

とはいえ、ウェイクは闇の世界にいる間、
見聞きした架空ケイシーの
エコーを取り入れ、脱出用草稿を
書いているとき、既刊の内容をもう一度
書いている素振りを見せていません。

さすがに既刊の記憶だけ抜けてもう一度
違和感なく書いたとなると、
都合は良くてもあまりに格好が悪いので、
可能性はないと信じたくありません(希望)

あまりすっきりしませんが、
闇の世界の『イニシエーション』草稿は
ウェイクがすでに完結した
ケイシーシリーズの設定を借りて、
も闇の世界の脱出路を
形作る事件を書いていたと
考えてみることにします。

既刊6巻のケイシーシリーズが
全部カルトの話だとは思えないので、
そのうちの1冊の設定でしょうか。

そういえば、
レベル高いガチファン・ローズの部屋にある
推し祭壇で飾られたウェイクの既刊が
やや不自然で、既刊が6巻だったのに対し、
完結編の『サドン・ストップ』(青カバー)と、
『アレックス・ケイシー』(赤カバー)の
二巻しかありません。

呼応を考えて、カルトの話は
この2巻のうちの1冊か、
2冊のブレンドである可能性があります。

「イニシエーション」は言葉として
物事の始まりのニュアンスがあるため、
1冊のみがカルトの話の場合
一作目のタイトルらしい
『アレックス・ケイシー』になりそうです。


どういうわけか、
ローズのコレクションにある
ケイシーシリーズは
2冊しかありません


あまり好きではありませんが、
他に十分にありえる可能性として、
ウェイクが書いた通りの
『イニシエーション』草稿の内容が
既刊の内容を上書きしたという説が
思い当たります。

その場合、
『イニシエーション』草稿
 =既刊内容=現実のNY事件
と、完璧一致するのですが、

ウェイクが闇の世界で
過去の自分作品を書き換えるという
ヒントもなく、前例もない話になるため、
世界観ルールの一貫性の観点において
あまり美しくありません。

ウェイク本人がいる闇の世界は、
ブライトフォールズの湖の底の存在の
領域のにもかかわらず、
闇の世界で書かれた草稿が
現実のニューヨークに影響を及ぼした
理由についてのひとまずの説明になる
現時点ある情報は、

ニューヨークの街全体が
超自然的存在の力の影響を受けている
「パワーオブプレイス」という
FBCが発見した事実と、

世界中さまざまな闇の世界があり、
相互につながっていることを示唆する
「海」「大洋」の表現あたりでしょうか。

それから、ループの回数が膨大な数に
達していることも
関係しているかもしれません。

闇の二次災害:ケイシーの災難


ニューヨークの事件と類似して、
第三次異変の3つの境界域事件とは
発生理由と性質が異なるものの、
闇の世界の影響を受け、
『イニシエーション』とシンクロしてしまう
現象が、ケイシーの身にも起きています。



  • ケイシーが巻き込まれた理由

ケイシーが巻き込まれた理由ですが、
前項で見てきたニューヨーク連続殺人カルトと
同様に、ニューヨーク全体が
闇の世界の影響を受けやすい
「パワーオブプレイス」であることに
よる部分が大きいと考えています。

ウェイクは異変以前に、
夢などで見ていたビジョンを借りて
作中の人物にリアリティを
与えようとしていたそうですが、

既刊の「アレックス・ケイシー」で
描かれる事件が過去に
現実を影響した例はありません。


ウェイクで闇の世界のニューヨークで
過去作品を再利用して草稿を
量産するようになってから、
ニューヨークの異変が
発生するようになったため、

事の性質はニューヨーク連続殺人カルトと
同じと思われます。

ウェイクがポツポツ説明したことを
まとめると、過去の
ウェイク作品の「アレックス・ケイシー」と
現実世界のFBI捜査官の
アレックス・ケイシーは
知らぬ間に作品のモデルにされてしまった
無関係の実在の人間です。

(異変の前からエコーのひな形のような
 ビジョンを見聞きできるのは
 自然ではないので、
 トーマス・ゼインに
 責任があるのかもしれません……)

改めて『イニシエーション』の草稿は
ケイシーとカルト教団の共演と
言っても過言ではない内容であるため、
カルト殺人が現実となったならば、
ケイシーもともに巻き込まれて
影響を受けるというのは、
納得感ある説明かと思います。



  • ドアのトークショーのケイシー役俳優

闇の世界のケイシーと
現実世界のケイシーは、
闇のニューヨークの影響で
シンクロしてしまう別人であるため、

本稿では分かりやすいように、
全文において闇の世界のケイシーを
「架空ケイシー」と表記し、
現実世界のケイシーを「ケイシー」と
表記することで区別しています。

闇の世界のケイシーについて見ていく前に、
第三のケイシーもさらっと
片付けておきたいと思います。

ドアのトークショーの
ケイシー役の俳優です。
(ディレクターのサム・レイクさんが
 実名出演した者です)

この人はドアの領域の中で登場し、
かつケイシーではなく、
それを演じる俳優という第三の存在ですので、
ドアが見せる特殊な幻だと思われます。

同種の幻として、
トークショーに出演する
若いときの
「オールド・ゴッズ・オブ・アスガルド」や
ミュージカルを踊るウェイクや
闇に支配された者のバックダンサーらも
該当します。

ゲームの中で登場する要素の中で、
もっともプレイヤーにとって
メタいものたちが
トークショーで出てくるようです。



  • 闇の世界の架空ケイシー


常に思い詰められた様子で、
ループの最初に姿を現わして
ウェイクを問い詰めるも、
一瞬で謎に闇に殺害される
架空ケイシーですが、

彼はウェイクの精神、特に罪悪感を
反映した闇の世界の精神攻撃の一部です。

真実に決して到達できない
カルト殺人事件で
憔悴する架空ケイシー


ウェイクの目の前で架空ケイシーが
毎度冒頭で殺されることになり、
ウェイクが殺すことになる場面も
ありました。

これはウェイクの売れっ子作家としての
地位を築いた「アレックス・ケイシー」
シリーズを、ウェイク自身が
「アレックス・ケイシー」の突然な死を
描いた最終巻を書いて完結させたことへの
罪悪感によるものです。

「アレックス・ケイシー」シリーズの
最終巻『サドン・ストップ』は
第二次異変の2年前、
2018年に発売されています。

発売宣伝に際して
ウェイクはトークショーで
「新しいテーマを書きたくなった」
「過去からの旅立ち(ディパーチャー)」だ
とケイシーの突然死の理由を語っています。

しかしご存じの通り、
ウェイクは続編を期待された
人気シリーズの主人公を死なせてまで
新しいシリーズを書くと豪語したものの、
実のところ長いスランプから抜け出せずに
苦しんでいました。

架空ケイシーの死を無駄にしたという
後悔の念に苛まれたはずです。

(第二次異変以降ウェイクはある意味
 膨大な量を書いていますが、
 全部闇の存在が絡んでいる上、
 本物の本にならずダイレクトに現実へ
 という仕組みであるため、
 「アレックス・ケイシー」シリーズ以降、
 世間的には何も新作を出していないことも鑑みると……
 本当にシリーズを打ち切らせてよかったのか、
 と考えさせるところがあります)


架空ケイシーがループの始まりに
ウェイクのせいで死亡すると、
ウェイクが彼の装備を手にして
捜査官の役を引き受けるくだりは、
(日本語訳が「探偵」になっていましたが
 「捜査官」「刑事」が適切です)

世には出ていない
『ディパーチャー』以降のウェイク作品の
メタファです。

「アレックス・ケイシー」完結後、
ウェイクは異変に巻き込まれたことを
きっかけに、自分自身が主人公になる
小説を書き続けていたので、

架空ケイシーの後釜になったわけです。

ホラー小説の中で、真実を探して戦うという
主人公が担う役割も変わりません。


死と再生の新旧交代が行われ、
『イニシエーション』の開場の一幕として、
皮肉にもよくマッチしています。



ウェイクがケイシーの死という
通過儀礼を済ますと、

ケイシーのエコーを追いかけ、
草稿に書き込むことで
闇の世界のパーラメントタワーの自宅への
通路を作り出そうと試みます。

現実世界のケイシーの災難は
このことのせいです。


ウェイクが見ているエコーは、
単に過去作品の設定や展開だけでなく、
架空の人物と似ているから引き寄せられた
現実世界のケイシーの過去や未来、
心境や状態が混ざり合ったものです。

このことによって
どこまでの現実世界のケイシーと
架空ケイシーの融合が進んだかは
不明ですが、

おそらくニューヨークの
連続殺人事件カルトを追っていたという
現実世界のケイシーが経験したことと、
当時抱いた追い詰められた心境は、
『イニシエーション』のエコーそのものと
思って問題ないでしょう。

架空ケイシーは、
ウェイク、アリス、現実世界の
ケイシーやサーガらと違い、
ウェイクの心象世界の一部であり、
いわば他の闇の世界にうじゃうじゃいる
ほかの人影と変わらない存在です。

ただ架空ケイシーがウェイクに利用され、
ループを重ねる中無数に描かれたがために、
実在の人物のようにリアリティのある
自己を持ってしまい、
決して解けないカルト殺人の捜査から
抜け出せない構造に囚われている
本来の構造に苦しみつづけることに
なりました。

救いかどうか微妙ですが、
架空ケイシーの出口は
二つほどあります。

ひとつは、ループのたびに
事件で一通り苦しめられたあと、
ウェイクのループの冒頭で
ウェイクと合流して殺されることで
事件から一度解放されることです。

もうひとつは、現実のケイシーに
架空ケイシーの苦しみは
シンクロする精神で反映されているため、
苦しみだけは本物になって
現実のケイシーに受け継がれます。

最後のひとつは、
ウェイクに
ケイシーの苦しみの代償を
払っていることです。

というのも、闇の世界のウェイクは
多くの場面において架空ケイシーに
境遇と心境を
代弁されていたことと、

ポエット・シネマで
ウェイクと架空ケイシーの関係が
ゼインとウェイクの関係になぞえられたと
思えなくもない教団員のセリフを考えると、

ウェイクは常に
架空ケイシーの苦しみを味わっているし、
まだ味わっていない部分も
何らかの形で今後跳ね返ることが
十分ありえることです。

……とはいえ、散々に苦しめられた
架空ケイシーに途方もない量の負の感情が
あったはずですから、現実世界のケイシーが
闇の存在に狙われ、
一時的に取り憑かれることになりました。




  • 現実世界のケイシー


闇の世界の架空ケイシーと比較すると
現実世界のケイシーは
かなり余裕がある穏やかな
ダンディーおじさんに見えるので
安心します。

陰鬱の事件調査の中も
余裕をなくさず、
軽妙な冗談を挟むなどして、
心強い存在のケイシーです


現実世界のケイシーが経験することは、
架空ケイシーと比較するとシンプルです。


最初に
ウェイクに同姓同名の主人公が登場する
ベストセラー小説を出されたことで
ケイシーは職場でからかわれます。

次に、2013年の
ニューヨーク連続殺人事件カルトを追って
架空ケイシーに近い経験と
フラストレーションを味わうことになり、
ウェイクの失踪を調査し始めます。

最後に、2023年に
ウェイクとの関連性が疑われる
「樹木の教団」に興味を持ち、
コールドロンレイクの殺人事件の
捜査に参加し、
第三次異変に巻き込まれます。

ケイシーは『リターン』に
一度も名前が登場しておらず、
ウェイクが言うように、
小説に書かれていない実在の人間です。

ただ、闇の世界の架空ケイシーとの
つながりに影響され、
ケイシーは『イニシエーション』草稿と
同じような苦しみを味わっており、
負の感情を大量に持っており、
一時的に闇の存在の取り憑き先に
されてしまいます。

闇の存在の1代目の依代がバーバラ、
2代目の依代がスクラッチ(身体あり)、
3代目の依代がウェイクならば、
短い間ですが、ケイシーは4代目依代に
選ばれていたとなるでしょうか。

不幸中の幸いにして、
ケイシーは『リターン』の
物語の外部にいるため、
物語を通して現実を支配する闇の存在の
依代として完全に適合せず、

途中のループでも、終盤のウェイクらの
作戦で闇の存在を引き剥がされて
正気に戻ります。




  • ケイシーの余談

ケイシーはもともと実在の人物で
小説の人物とたまたま
同名同姓、とのことでしたが、

「Alex Casey」はいかにも
架空の人物に相応しい
ふざけた名前であるため、
ケイシーの親がどういう思いで
これをつけたのか
解しがたいものがあります……

※Casey=Case(事件)のかなり
 ストレートなもじりです

 警察機関で働いていたら、
 確実に
「ミスター・事件だらけ」
「事件を呼び寄せる刑事」
 というニュアンスを帯びて
 からかわれます

愛するキャラクターほど
作者はそれをいじめ、
読者はいじめられることで
愛が深まると言われているように、

ケイシーが可哀想になる場面が多いのも、
キャラ愛ゆえのものでしょうか。

ディレクター兼シナリオライターの
サム・レイクさんが直々
ケイシーのモデルアクターを務め、
実写出演パートも長尺なものばかりですから
そうなのでしょう。

ドアのトークショーでは
実名出演で「アレックス・ケイシー」の
映像化俳優役として登場しています。
(ゲームの外と中両方で
 ケイシーのアクターを務めるという、
 ゲームのメタフィクションテーマによく
 マッチするが非常にややこしいことを
 したわけです)

超絶小ネタを投下しますが、
サム・レイクさんのRemedy実写出演歴は
低予算制作を強いられた背景から生まれた
伝統的なものらしいですが、

ウェイクシリーズでの出演も、
実は『ALAN WAKE2』が初めてではありません。

『ALAN WAKE』のときにも
実名出演されていました。

サム・レイクさんは、
現実世界の2018年の
ウェイクが『サドン・ストップ』の宣伝で
出演したトークショーのゲスト役として
登場しています(若い)

同じくトークショーのシーンで、
同じく「ケイシーの気難しい顔」を
していました。

細かいことを言うと、
ウェイクは映画化をやらない主義という
設定があるため
一作目のサム・レイクさんの
ゲスト出演の顔パフォーマンスは
ケイシーとは無関係ということになりますが、
ルーツがここなのでしょう。


境界域の事件:対応関係一覧表


これまで見てきた通り
境界域は現実と闇の世界が
重なる領域です。

多くの点において
二つの世界の境界域が
互いが互いに類似し、
引き寄せ、映し合い、
鏡像となってシンクロする形に、
複数の人物の思惑の絡み合いによって
作り上げられました。

こちらは、各境界域で確認された
対応関係をまとめた
簡易一覧表です。

―――――――――――――――――――――――――――――――――
伝承      | 魔女の復讐 | 井戸の悪霊 | 水死者の未練
―――――――――――――――――――――――――――――――――
行動      |  代理復讐 |  死体投棄  |   溺死
入口(現)   |   巨木  |   井戸   |     池
入口(闇)   |   駅   |   映画   |   ホテル
場       |  カルデラ |   井戸   | オーシャンビューホテル
怪異      |   魔女  |     水妖      |   地縛霊
利用された罪  |   復讐  |   罪隠し  |    未練 
加害者役(現) | 樹木の教団 | マリガン&ソーントン    |  シンシア 
加害者役(闇)   | 言葉の教団 | 言葉の教団  | 教団リーダー
被害者役(現) | ナイチンゲール  | 店員モニカ    |    シンシア
被害者役(闇)    | FBI捜査官   | NY市警2名   |         女優 
鍵       |  心臓   | 鹿の頭蓋骨 |   レコード
儀式/芸術(現)|  呪文   | フロート  |  歌
儀式/芸術(闇)|  供物   | 入信式   |  演劇

境界域対応関係簡易まとめ


境界域の儀式:闇の詩


闇の詩の断章は
ウェイクの過去作品
「アレックス・ケイシー」シリーズから
切り抜いた言葉でできています。

『イニシエーション』の3つの
儀式の殺人現場で
飾られています。

1つの断章は
3つの段落で構成されており、
闇の世界と現実世界の仕組みを
暗示する内容となっており、
最後の一文が
スクラッチの召喚条件で
固定されています。

3つの境界域の対応関係の詳細は
すでにこれまで見てきた通りです。

本項では境界域の詳細を踏まえて
改めて闇の詩の全文読解に挑戦してみます。

とんでもない手強さでしたが、
こういう部分が考察の楽しいところですね。

あくまでもひとつの解釈として
お読みください。

※闇の詩を1→3→2の並び順になっているのは
 単に現実世界の境界域事件の順番に
 合わせただけで、解釈に影響しません



  • 闇の詩1

闇の詩1


闇の詩1が書かれた
カルデラ駅の殺人現場となった
駅深部とつながっている
峡谷の岩壁


最初の言葉の作家       The writer of the first word
最後の言葉の作家ではない   Not the writer of the last
光の恐怖とともに       With the terror of the light
そして影が差す        And the shadow cast

・最初の言葉の作家
 =ループ開始時のウェイク

・最後の言葉の作家
 =最終ループの終わりに
  到達するウェイク

・光の脅威(the terror of the light)
 =天使のランプ
  
・影の役者(the shadow cast)
 =架空ケイシー

【解説】
ループに囚われている
今のウェイクは脱出できません。
(結末の言葉に到達しません)

ウェイクは脅威と言える
天使のランプを携え、
架空ケイシーの
残像と共にいます。

第三の目が開く     The third eye now open
闇を投射するために   To project the night
その時が来た      This is the moment
書くために       To write

・第三の目
=副人格として
 ウェイクの中で潜むスクラッチ

・闇を投射
=悪夢の小説を現実に映し出す 

・書くときが来た
=今がウェイクを操って書くときだ

【解説】

副人格のスクラッチが
ウェイクの中で目覚めました。 

今がスクラッチの目的である、
悪夢の現実創造を行う好機です。

ウェイクは無意識に悪夢の世界創造に
協力しているとはつゆにも思っておらず、
書けば書くほど悪夢が現実になります。

これはお前を導くための This is the ritual
儀式だ         To lead you on
お前がいなくなれば   Your friends will meet him
お前の仲間が彼に会う  When you're gone

※最終段落は各断章共通のため、
 これ以降は省略します

・お前
 =ウェイク

・仲間
 =現実世界の人々

・儀式
 =『イニシエーション』と
  『リターン』

・いなくなる
 =ウェイクが現実に召喚されて
  闇の世界からいなくなる
  &
  ウェイクが完全にスクラッチに
  乗っ取られていなくなる

・彼に会う
 =スクラッチがウェイクの身体を
  乗っ取って現実世界に解放される

・後半の二行
 =ゼインが初めてウェイクに
  スクラッチを紹介した際のセリフ

Don't mind him, he's Mr. Scratch.
Your friends will meet him when you're gone.

「彼のことは気にしないで。
 彼はスクラッチ。
 あなたが居なくなっても、
 残されたお友達は彼に会える」

『ALAN WAKE』トーマス・ゼインのセリフより

【解説】
  闇の存在・スクラッチが
  現実に降臨する条件は
  ウェイクの消滅です。
  
  これらはスクラッチのため
  ウェイクを消滅に導く儀式です。



  • 闇の詩3

闇の詩3


闇の詩3が書かれた、
映画館の殺人現場となった
映写室の壁

空に淡い色の風船浮いて       A pale balloon in the sky
さらに深く沈む                        Float and sink deeper
陽が落ちると夜が始まる         Night springs when bright falls
眠る者のために                        For this sleeper


・風船
=闇の世界でウェイクが拾うエコーのこと
 (見た目が淡い青色の球で、空中にある)

・日が落ちる
=「ブライトフォールズ」と書く。
 『リターン』にもたらされる
  町の悲劇を暗示する

・夜が始まる
=「ナイトスプリングス」と書く。
  闇の影響力の増大を意味する

・for~
=「のために」ではなく
 「~が原因で」と解く

・眠る者
=ウェイク

【解説】

闇の世界でエコーを作品に取り入れるほど
リンクする現実も影響されます。
作家が深みにはまり、
闇が広がっていきます。

光の時間が終わりを告げる時が、
闇が湧き上がる時を意味します。

すなわち、
ブライトフォールズの現実が
悪夢の筋書きに書き換わった時が、
闇の存在が湖から解き放たれる時です。

エコーを拾い上げて
闇の筋書きを現実に変えていくのは
闇の悪夢を見る眠り人のウェイクです。


表面が歪む                               The surface disturbed
鏡像が裏切り者になった         The reflection now a traitor
頭蓋骨の空洞の中                    In the cavity of the skull
穴に変わった                           Turned to a crater

・surface
=「表面」ではなく
 「見かけ」「表面上」と解く。
 ゼインは見かけでは協力者である。

・disturbed
=「歪む」ではなく
 「邪魔した/騒がせた/乱した」と解く
 (beがないためsurfaceは主語になる)

・裏切り者の鏡像
=容姿がウェイクとそっくりのゼインが
 ウェイクを裏切って
 スクラッチに協力したこと
 と考えてみる

・skull
=「頭蓋骨」ではなく
 「頭」と解く

・cavity
=「空洞」ではなく
 「空間」と解く

・crater
=ここの「クレーター」は
 「穴」ではなく
 「大窪地」と解く。

 カルデラ湖も
 火山噴火で形成する
 円形陥没(=大きな窪み)が原型です。

 したがって、「クレーター」は
 「大窪地」、すなわち
 カルデラ湖である
 コールドロンレイク(=大釜湖)
 の比喩表現と捉える
 
【解説】

ウェイクが、
ゼインに抱いた協力者の印象が邪魔して、
長らく気づきませんでしたが、

ウェイクと姿がそっくりのゼインは
スクラッチに騙され協力していた
裏切り者の側面を隠し持っています。

ウェイクは、自身が書く作品であり、
脱出の作戦でもある『イニシエーション』の
ループの中、繰り返し裏切られる
体験を重ねる中、ウェイクの頭の中が
湖の闇の存在と同化し、融合していきます。

これはお前を導くための      This is the ritual
儀式だ              To lead you on
お前がいなくなれば        Your friends will meet him
お前の仲間が彼に会う       When you're gone

※共通のため省略



  • 闇の詩2

闇の詩2
闇の詩2が飾られた
ホテルの殺人現場になった
個室の壁


岸辺に消える                           Lost on the shore
森と海の間で                           Between the forest and the ocean
フクロウと鹿                           The owl and the deer
動きに反射する                       Reflected in motion

・岸辺
=岸辺は波打ち「際」のことであり、
 陸と海を隔てる境界線である。

 闇の世界とつながる
 コールドロンレイクの湖岸は 
 ブライトフォールズの森にあり、
 現実と闇の世界の
 境界線になっている

・森
=ブライトフォールズの森、
 現実世界

・海
=闇の世界

・ロスト
=「消える」ではなく
 「迷子になる、自分を失う」と解く。
 
 ウェイクが湖岸に召喚されたときの
 状態を指している

・間
=境界域の意味を持つ上、
 ループの中で
 現実がまだ確定していない間の出来事、
 すなわち『イニシエーション』
 『リターン』の出来事とも取れる

・フクロウ
=ウェイクの象徴動物
(執筆部屋の壁にフクロウの剥製)

・鹿
=サーガの象徴動物
 (精神世界の壁に鹿の剥製)

・Reflected in motion
=「動きに反射」ではなく
  リアルタイムに互いの行動を
  反映しあっている、映し合っている意、
  鏡の中の自分の像、映し鏡のイメージ 
  と解く。


【解説】
コールドロンレイクの境界域は、
湖岸が森と湖の境界線を成すように
闇の領域とブライトフォールズ現実を
隔てる場所であり結ぶ場所です。

また、現実が未確定の状態で右往左往する
ループの中の状態もまた、境界線=岸辺で
迷っている状態に当てはまります。

『イニシエーション』と『リターン』の
ループの中でウェイクは
記憶が欠損し、自己を失い、
自身がどちら側が混乱に陥っています。

それに伴って現実側で動く主人公に
選ばれたサーガもつられて混乱します。

なぜなら二人は
互いの映し鏡のように
行動がリンクするような
ループ構造の中にいるためです。

彼は部屋で彼女を狩る             In his room he will hurt her
彼は彼女の部屋に捕まった      In hers he is caught
彼の物語が終わる                    His story ends
彼女の物語は終わらない         Her story does not

・彼の部屋
=執筆部屋

・彼女の部屋
=闇の世界の
 パーラメントタワーの
 ウェイク自宅

・hurt
=「狩る」よりは、
 「傷つける」と解く

・is caught
=「捕まった」よりは
 「囚われている」と解く

・彼の物語
=ループ一回分の
 ウェイク目線の出来事

・彼女の物語
=多くのループを通して
 ウェイクを見守る
 アリス目線の出来事
 
【解説】

スクラッチ入りのウェイクが
執筆部屋で書いたり怒ったりしていることで
アリスを傷つけています。

一方、アリスは闇の世界で
パーラメントタワーの自宅という特殊空間を
作り上げ、スクラッチ入りのウェイクを
欺いてループに導きます。

アリスがそうするのは、
ループを正しく重ねることで、
ウェイクをスパイラル上昇へ導くためです。

ウェイクはループする度に
先のループの自分に殺されて
パラドックスの中でリセットしてますが、

アリスはウェイクの各ループを
横断して導いています。

※この段落に対する今の理解に
 妥協があります。

 代名詞が指し示す内容が
 前後の段落との一貫性が
 綺麗に保たれていません

 他の考え方もいくつか検証中ですが、
 どれも今の理解ほど筋を通せません。
 より完璧な説明が思いつくまで、
 今の説を暫定的に採用しています。

これはお前を導くための      This is the ritual
儀式だ              To lead you on
お前がいなくなれば        Your friends will meet him
お前の仲間が彼に会う       When you're gone

※共通のため省略

ミスリードの主力:樹木の教団


樹木の教団の真相は、
これまでの各項目で触れてきましたが、
改めて通して整理しておきます。

樹木の教団は、
コスケラ兄弟がリーダーを務める
ブライトフォールズ地方の秘密組織です。

組織の目的はブライトフォールズ一帯を、
コールドロンレイクからやってくる
闇の脅威から守ることです。

組織のルーツは古い時代まで辿れます。
湖の邪悪な力に気づいた者たちが
集団を結成し、人々の暮らしの安全を
守るため活動します。その経験と知識も
代々受け継がれていきます。

コスケラ兄弟が受け継ぐ前、
組織は「トーチベアラー(先導者)」と
名乗っていました。

アイディアマンのイルモは
組織の次世代リーダーを任された時、
組織のコンセプトや名前を合わせて
リニューアルしようと考えました。

イルモが思いついたアイディアで、
組織が「教団」と名乗ることに
なりました。

組織の本質は、
秘密裏に動く民間人の自警組織と
変わらないままですが、

子供に聞かせる森の怖い話や、
任務中に正体を隠すために着用する
鹿のマスクやマントの装いが醸し出す
不気味なイメージなどが影響して、

恐ろしい教団の噂が広まり、
森が怖れられるようになりました。

コスケラ兄弟は当初
教団と名乗ることで
効果的に人々を森から遠ざけられるとは
予想しませんでしたが、

人々が森に入ってこなければ、
被害も抑えられるため、
彼らは恐怖のイメージを意識的に取り入れ、
教団のフリを続けた。

カルト教団ではまったくないため、
教義や信仰があるはずもなく、
カルトらしきものは、
どれも蓋を開ければ、お遊びのように
お粗末なものばかりでした。

鹿のマスクは、
鹿を愛する地元で簡単に入手できる
お祭りのお面です。

ディアフェストに参加する
人々が被る平和な鹿マスク



三角ふたつの教団シンブルは、
盗んだFBC資料に落書きしていくうちに、
FBCのマークにある三角に
さらに三角を足してみたら
ちょうど木のマークに見えたことで、
樹木の教団のシンボルに採用されました。


FBCの書類に落書きするうちに
生まれた樹木の教団のシンボル

この落書きのノリからして、
「樹木の教団」という組織名と
「再び森を怖れさせよ!」という
組織のコンセプトも、
この時に思いついた可能性が高いです。


樹木の教団の活動内容は
主に2つの軸で展開されます。

闇に支配されたもの(the taken)を
討伐することと
恐怖のイメージを強化して
人々を湖の森から遠ざけることです。

闇についての知識や討伐方法は、
代々受け継がれた気づきや知識、
素朴な知見や観察から得た予想に加え、
盗んだFBCの資料からも多くの
裏付けや事例を吸収しています。

これらのものが体系化された結果、
湖からやってくる闇に支配された者の
退治マニュアルが整備されています。

闇に支配された者の心臓を抉り出し
胸の穴にクリッカーを入れて押すという
退治儀式のコア部分が依拠するのは、
FBCが過去にハートマンに
インタビューした際の記録です。

ハートマンは当時、
ウェイクが第二次異変の最後に
バーバラ(姿の闇の存在)に行った行動を
報告したようです。

この退治法の有効性は実証されています。
樹木の教団は複数の闇に支配された者の
退治に成功しています。

ナイチンゲールの退治が失敗したのも、
クリッカーでトドメを刺すところにいく前に
儀式が中断されたためです。


ウェイクの襲撃事件の動機は、
樹木の教団がこれまでの経験に基づいた
推論から生まれています。

湖からやってくる者は、
もれなく邪悪な力に侵された者であり、
2010年のウェイク失踪後、
ウェイクの原稿も湖から
浮かんでくるようになり、

樹木の教団はFBCと同様に
ウェイクと闇の関係性を疑いました。

樹木の教団は
ウェイクが闇の異変の主犯であるに
違わず、ウェイクを倒せば異変も終わると
結論を急ぎ、ウェイクの帰還後に
襲撃を実行しました。



余談ですが、
樹木の教団の組織体制は未熟なもので、
管理も杜撰、統制も取れておらず
穴だらけです。

FBCの調査報告では、
樹木の教団の組織レベルが低いと見なされ、
しばらく泳がしておく判断が下されいます。

その資料を盗んだイルモたちは
不服の言葉の殴り書きを残していますが、

教団の掲示板を見ても
パソコンのメールを見ても、
荒れた公立学校のような状況が
目に浮かびます。

弁護するわけではありませんが、
ブライトフォールズの保安官事務局の
パソコンを覗き見ると、地元の保安局も
内部の荒れようが樹木の教団と
どっこいどっこいで、
公立学校の教務主任のような
頭痛を覚えるほどです。

どこもかしこも組織レベルが
ご当地クオリティだということです。
闇の存在にとっては
付け入る隙が豊富にある絶好の環境です。


闇の交錯:2023年、第三次異変


第三次異変をもたらす創作や
境界域の構造などについて
詳しく解説してきたところで、

第三次異変の全体像も自ずと
クリアになったのではないでしょうか。

これまでの内容を踏まえて
図式で整理してみたいと思います。

【異変開始】
『リターン』の現実化が始まる

(※2023年以前の出来事の詳細は項目
 「闇の懐胎」~「闇の新生」を参照)

 ↓
サーガとケイシーが
ブライトフォールズに訪れる


 ↓
第一の境界域事件
(※詳細は項目「第一の境界域事件」を参照)
 ↓
未来にウェイクを召喚した結果が発生する。

スクラッチ入りウェイクが闇の世界から脱出し
サーガらと現実世界で合流する

 ↓
第二の境界域事件
(※詳細は項目「第二の境界域事件」を参照)
 ↓
FBCが明確な介入を開始
 
 ↓
第三の境界域事件
(※詳細は項目「第三の境界域事件」を参照)
 ↓
スクラッチ人格がウェイクを完全に乗っ取る
 ↓
ウェイクの召喚の原因が成立する。

ウェイクの召喚結果は第一の境界域事件後に
遡って発生する
 ↓
スクラッチがウェイク召喚の過程で
ウェイクの体内から追い出され、
ケイシーに乗り移る。

サーガがスクラッチによって
闇の世界に沈められる

 ↓
スクラッチの支配から逃れた
ウェイクは、『リターン』によって
現実化された、新たな結末を書き足せる
現実世界の執筆部屋を見つけ、
真結末を執筆する

 ↓
ウェイク、闇の世界のサーガと
精神のつながりを通して
真エンドについて協議し、
結末と作戦を固める

 ↓
サーガ、闇の世界から脱出し、
ウェイクと合流する
 
 ↓
サーガとウェイクが
真結末をクリッカーで
現実化させ、結末の行動を実行する

 ↓
スクラッチはケイシーから
ウェイクに引き戻される

スクラッチ入りのウェイクを
サーガがアリスの光の銃弾で撃つ

 ↓
ケイシーが正常に戻る。

 ↓
【異変終了】
分岐条件:
ウェイク体内の
闇成分が完全除去されたか

・いいえ→分岐1
・はい→分岐2

分岐1:
ウェイクは『イニシエーション』と
『リターン』が作り出されるループの
始まりに引き戻される。

これまでの出来事がリセットされる

分岐2:
ウェイクが『リターン』の結末後の
現実世界の執筆部屋に目覚める。

現実は真結末に書き換わり(内訳不明)、
ウェイクの中に闇の残滓が完全除去される

2023年の第三次異変まとめ

謎の点:競合する現実と靴箱


作中説明が十分に提示されていない
謎は数多くありますが、

中でも靴箱と現実の競合が謎です。

第二次異変の際にすでに一度
現実の競合において靴箱の中身が
不整合を起こしてまで優先されたことが
前例としてありました。
(※項目「創造の円環」の後半部分でも
  触れています)

第二次異変の競合は、
ウェイクがクリッカーを
シンシアのところの靴箱から入手するまで、

クリッカーは同時にアリスの持ち物として
アリスに保管された場所にありながら
ブライトフォールズのダムの靴箱にあります。

アリスがどこに
クリッカーを保管したかは不明ですが、
肌身離さずに持ち歩くなら異変の最中は
闇の世界にあるはずで、
家に置いてきたなら
ニューヨークにあるはずで、

ブライトフォールズにあるわけがなく、
靴箱の中にある現実と競合しています。

しかし靴箱からウェイクが
クリッカーを入手できたため、
靴箱を開けた時点で、
靴箱にクリッカーがある現実が
適用されました。

第三次異変もそれに類する現象が
確認されています。

第三次異変における
クリッカーの流れを見ると、
はじめは靴箱なしの状態で単体で
闇の世界から湖岸に打ち上げられ、
樹木の教団に拾われます。

以降クリッカーは現実世界にあり、
樹木の教団が保管、運用していました。

第二の境界域事件の際に
闇に支配されたマリガンとソーントンが
クリッカーを盗み出し、
境界域に持ち込みます。

サーガがマリガンとソーントンを倒すと、
クリッカーの持ち主がサーガに移行します。

サーガがウェイク召喚を行った後、
クリッカーはケイシーに乗り移った
スクラッチに奪われます。

ここまでクリッカーはずっと
現実世界にありました。

その後サーガが闇の世界に
投げ込まれ、闇の世界に靴箱に入っている
クリッカーを見つけ、
現実世界に持ち帰ります。

スクラッチに乗っ取られた
現実世界のケイシーの手元にある
クリッカーと

闇の世界の靴箱にあるクリッカーが

サーガがクリッカーを入手するまで
競合していました。

闇の世界のクリッカーは、
アリスの写真作品から実体化したものです。

実体化の理屈は明かされていませんが、
サーガがそれを現実に持ち帰ることが
できた時点で、
スクラッチが持っている現実と
同時に現実に存在し、競合した末に
サーガがクリッカー持っている
現実に収束されたことになります。

天使のランプは、
ローズがわざわざ盗んで
現実から闇の世界に送り込まないと、
向こうに届かないということも踏まえて、

靴箱を経由することで在処の現実が
不整合を起こしてまで上書きされるのは、
クリッカーだけでしょうか。

さまざまにある、未解明の謎の中で、
これが一番気になりました。


人物の謎

この項目では、2023年の第三次異変の
表舞台に立たないものの、
水面下の動きが気になる人物たちの
謎について整理していきます。

サラ・ブレーカー

サラ・ブレーカーは
2010年の第二次異変当時の
ブライトフォールズの保安官で、
ウェイクに協力した
心強い仲間キャラクターの一人です。

サラの出番は多く、
正義感と判断力に優れ、
行動力と戦闘力も頼もしい彼女は
プレイヤーにとって
非常に印象に残る、
好感度の高いキャラクターです。

ゲームにおいても頼りになっていました。
物語の終盤で、
サラがAIパートナーキャラクターになって
戦闘に参加してくれるときがありますが、

彼女の援護射撃の火力の強さは
ウェイクの存在価値が霞むほどのもので、
ウェイクで敵を誘導して
極力サラに撃ってもらおうとする
情けないプレイイングを、
誰しもがするだろうと思っています。

が、しかし、
サラは2013年のブライトフォールズから
姿を消しています。

彼女はどこにいて何をしているのか、
と気になると思います。

(開発陣がサラを完全に消した理由は
 分かりません。頼もしい女性刑事役が
 他に居ると、サーガの活躍を描く上で
 邪魔になるからかもしれません)

サラについての情報は、
闇の世界の書くマップに隠れている
ティム・ブレーカー保安官との会話からのみ
ほんの少しだけ得ることができます。

ティムとサラが同じ苗字を持つ理由は、
ティムとサラとはいとこであるためです。

ティムによれば、
サラはその後ブライトフォールズから
FBIかFBCに移籍したそうです。
理由や詳細については語られていません。

※サラの移籍先に言及するセリフの
 日本語訳がFBIになっていますが、
 原文は「the Feds(連邦政府の者)」で、
 FBIとFBCのどちらとも取れる言い方です。
 
 サラの父フランク・ブレーカーが定年まで
 ニューヨークで刑事として
 務めていた期間があり、
 且つ2010年第二次異変時に応援を呼ぶため
 FBCの捜査部部長に連絡したことがあり、
 FBCとのつながりが深いと考えられます。

 とはいえ、
 サラの移籍先が同じになるとは限らず、
 FBIとFBCのどちらにいるかが謎です。

ウェイクをゼインと同一視する人物

ウェイクをゼインと同一視する人物が
何人かいます。

これらの人物が誰であり、
どのような共通点があるかを考えることで
ゼインとウェイクの関係を解き明かす際に
助けになります。

とはいえ、現時点の情報が
非常に限られており、出来ることは、
ウェイクとゼインを同一視する
人物を洗い出すことくらいだと思います。


ウェイクを「トム」と呼び、
ゼインの過去をウェイクのものとして
語る人物は以下です。

・アンダーソン兄弟、
・アーティ
・バーバラ姿の闇の存在、
(ベッドに戻ってトム、
 と闇の世界で呼びかけた)

逆に、上記の人物と多少の共通点があり、
しかしウェイクとゼインを
同一視しない人物もいます。

・ゼイン
・シンシア
・ドア

です。

バーバラのときは、
ゼインの精神世界とウェイクのものが
闇の世界で融合したと考えれば
スルーできます。

ゼインは、
ウェイクの出生や、運命の一部を
決定づけた存在であるほか、
ウェイクが同じ場にいられます。
特殊性が際立ち、
混ぜずに考えたほうがよさそうです。


ではアンダーソン兄弟、アーティにあって、
シンシア、ドアにないものは
何でしょう。

シンシアはウェイクをゼインと
同一視しないため、「ゼインと友人で且つ
第一次異変の生還者である」だけでは、
同一視の理由にならないと分かります。

「高齢により認知症気味」
「特殊能力持ちで認知症気味」は
どうでしょう。
条件に入りそうですが、

アーティはいざ知らず、
アンダーソン兄弟がボケたから同一視する、
というのは非常に怪しいです。

第一に彼らが間違えるのは
ウェイクだけです。
第二に、アンダーソン一族は、
物語に影響されません。

ウェイクは部分的に
物語に書かれているため、
物語による改変抜きに、
混同されていることになります。

一方、物語に書かれたサーガは、
アンダーソン兄弟から
誤解されたことはありません。

第三に、アンダーソン兄弟の
「認知症」と見なされた言動は、
認知症ではなく、湖水の密造酒を
飲むことで狂気に犯された結果です。

現時点で個人的に考えられる中で
明らかに矛盾を生まない説は、
「北欧のにつながっている/である
 狂気を引き受けた存在にとって、
 ゼインとウェイクは同じものである」と
いうものです。

作中明示されているのは、
アンダーソン兄弟と
同名の神々とのつながりのみで、

アーティも同格の存在であり、
ドアは別種の存在である、
とは明言されていませんが、

アーティが特殊能力持ちで名前が神、
言動が奇妙であるのに対し、
ドアは特殊能力持ちであるものの
言動が正常で、名前が北欧の神でないため
可能性はあります。

どのような理屈で
神と狂気が共存したら
ゼインとウェイクが同一のものとして
認識するかは分かりません。


トーマス・ゼイン


これまでも
多くの関連項目で見てきましたが、
まだ多くの謎が残されています。

まずは、
現時点解答が明らかに示されていない
謎と気になる点を洗い出してみましょう。

トーマス・ゼイン


  • トーマス・ゼインの謎

<ウェイクとの関係性>
 ・なぜウェイクと同じ容姿であるか
 ・なぜ『リターン』では
  第一次異変の出来事を描く
  ゼインの映画『詩人トム』が
  当時生まれていないウェイクの
  原作の映画化になっているか
 ・なぜ一部の人物から混同されるか
 ・ウェイクのどこまでがゼインの創作か
 ・なぜウェイクの小説の
  主人公架空ケイシーが
  ウェイクが生まれる前の
  ゼイン映画『白夜の夜』に登場するか
 ・なぜ『白夜の夜』のウェイク役は
  ゼインなのか
 ・なぜ『白夜の夜』の原作は
  ウェイクになっているか
 ・完全にウェイクの味方と言えるか

<物語に改変される前の人生>
 ・詩人&ダイバーか、映画監督か、
  或いはそれ以外か
 ・ゼインは元より実在する人間だったか

<闇の存在/スクラッチとの関係>
 ・なぜスクラッチを作り出したか
 ・なぜスクラッチに協力したか
 ・なぜスクラッチがリーダーの
  言葉の教団の闇の詩の最後に
  ゼインの言葉が引用されたか
 ・なぜゼインの映画『白夜の夜』が
  スクラッチがリーダーの
  言葉の教団の崇拝対象か
 ・なぜゼインの映画『白夜の夜』の
  挿入歌の歌詞がスクラッチを讃える
  内容か

<隠している次元犯罪行為>
・ティムを誰だと思ったか
 (ティムの別次元の姿を知っていて
  ティムの保安官制服を仮装と誤解したか)
・なぜ『ナイトスプリングス』を介して
 闇の世界を調査している様子のFBCの者
 (ジェシー、キャスパー)に
 ウェイクがいることを隠したいのか
(「奴らか、君がここにいたことは秘密だぞ」)

<アリスとの関わり>
・なぜ闇の世界の
 パーラメントタワーを知っているか
・なぜアリスが闇の世界にいることを
 知っているか
・アリスの計画にどこまで
 知っている/関与しているか



  • ウェイク関係についての仮説


もし第三次異変の『リターン』で
見ているゼインに関する事実は、
今回新たに改変を加えた結果ではなく、
元々の真実で、再び書き入れただけであると
考える場合、

現時点で筆者が思いついている仮説は、
「アラン・ウェイク」は、
トーマス・ゼインの別名義のペンネーム

というものです。


「アラン・ウェイク」が
ゼインのペンネームならば、

このことを知っている一部の人間が
ウェイクをゼインそのものと見なすことや、
ウェイク出生前にあるとされた
「アラン・ウェイク原作」の
説明がつきます。

同一人物ならば、
容姿が同じなのも当然です。

性格や行動が違うのは、
芸術家がそれまでの立場や作風に囚われずに
新しい挑戦をするときにペンネームを
使い分けることを考えると、
自然なことです。

ゼインが
過去に使用していた別名義のペンネームと、
そのペンネーム名義における創作の
作風や思想を、実体ある一人の人間として
第一次異変時に現実化しました。
それが、「アラン・ウェイク」の
出生の秘密ではないでしょうか。

第一次異変を引き起こしたゼインが、
ある種自分の分身であるウェイクを
作り出し、第二次異変に備えたと
考えても、
自分が引き起こした災厄を、
自分が片付けたいと思うのが人情ですから
理に叶いますし、

闇の世界の言葉の教団の
グランドマスターがウェイクに
「あなたもまた架空の人物ではないか」と
問いかけたことも意味が通ります。

ゼインの部屋の会話で
ウェイクとのコラボに対して
大いに興奮したのも、
本来はひとりの人間の異なる側面が
それぞれ別の個体になって
夢の合作ができるようになったから
と説明できます。



  • スクラッチの関係性について

ただし上の仮説は
ウェイクとの関係についての説明にすぎず、
スクラッチはそっくりそのままの理屈に
当てはまりません。

ゼインの言動や性格が
第二次異変と第三次異変で
別人のように豹変しているように
見える理由は
単に囚われ続けて狂気に犯された、
ということ以上の理由と背景が
あるはずで、

その変化と、
ゼインとスクラッチの
垣間見える親密さ共犯関係
大きな関連性があるように
感じます。

ゼインの部屋の665号室が、
三番目の殺人事件の中で
スクラッチが泊まっていた
悪魔の数字の666号室とは
数字的に隣にいる関係です。

それほどの関係の近さならば
ウェイク目線で見えている部分では
到底ゼインとスクラッチの協力の背景と
行動の全体像を想像しきれません。

ゼインはスクラッチとの
共謀関係だけで動いておらず、
ウェイクとの相互影響もあり、
さらにゼイン自身の思惑も入り込んで
複雑に絡み合っていることでしょう。

スクラッチが脱出の当てにならないと
分かってから、ゼインは闇の世界との通信に
成功した元FBC研究者のキャスパー博士への
アプローチを始めており、
脱出を諦めていない様子を見せています。

まだまだひと波乱ふた波乱ありそうです。



  • 小ネタ(その二が『Control』の内容)


その一:
ゼインの部屋のレースカーテン色は
ウェイク作品の表紙色と対応しています

ウェイクの小説の主人公
架空ケイシーが
どういうわけかゼインの映画
『白夜の夜』に登場します。

画像はゼインの部屋の
レースカーテンです。
色に注目してください
ゼインの部屋のレースカーテンの色は
「アレックス・ケイシー」シリーズの
第一巻『アレックス・ケイシー』と
最終巻『サドン・ストップ』と
それぞれ対応しています


その二:
ウェイクの最終ループの最後の言葉であり、
『リターン』の最後でもある一文に、
ゼインの詩作の表現との類似性が
見られています。

属人性あるほどにオリジナリティある
表現でもなく、きれいに呼応するわけ
でもないのですが、
ウェイクがなんだかんだでゼインの
影響を受けているな、という
小ネタ程度のものとして置いておきます。

『リターン』の最後の一文:

「そして俺の手には知識の松明がある。
 その光が照らし出された奇跡だ
(With me I bear the torch of knowledge,
 the light, the miracle illuminated.)
 二つの世界の主、
 いや、数多の世界の主だ」

ゼインの詩から引用された一文:

「受け入れた影が過ぎた先には、
 照らし出された奇跡がある
 (Beyond the shadow you settle for,
      there's a miracle illuminated.)」


この詩は現実改変で歴史から消されていますが、
FBC局長のジェシーは覚えているようです



ティム・ブレーカー(『Quantum Break』『Control』ネタバレあり)


『ALAN WAKE2』ではティムが
探求している謎について
ほとんど明かされることなく
終わりますが、
『Quantum Break』『Control』の
出来事を踏まえれば
おぼろげに意味が見えてきます。

まずはブライトフォールズの
ティムについて
振り返ってみましょう。

誠実で親切、
突然闇の世界に投げ込まれても
明るい態度を崩さない働き者のティム


彼が作る探索マップや支援物資などは
闇の世界の探索における心強い味方です


  • ブライトフォールズのティム・ブレーカー(他作品ネタバレなし)

ティムは2023年のブライトフォールズの
現役保安官であり、2010年に保安官を
していたサラ・ブレーカーとは
いとこの関係です。

第三次異変開幕時にティムは
ナイチンゲールの事件の担当として、
サーガとケイシーが
ブライトフォールズに訪れてから、
マリガンとソーントン保安官代理の次に
知り合う現地の人物となります。

しかしティムは登場して間もないうちに
検死室のナイチンゲールの異変が
始まるとともに闇の世界に連れていかれ、
以降闇の世界の住人になり、
最終ループの時にも現実世界に
戻ってきていません。

ティムを謎の力と不明な方法で
闇の世界に移動させたのは、
ワーリン・ドアという人物です。

ティムにとってワーリン・ドアは
面識のない男であると同時に、
長年追いかけてきた謎でもありました。

ティムが言うには、
2010年のウェイク失踪事件の発生後、
当時はまだ保安官ではないティムは
ワーリン・ドアが登場する夢を
よく見るようになり、男の正体が
気になっていたそうです。


夢を見始めた当時、
ティムはワーリン・ドアの名前を含める
彼のプロフィールを一切知らないため、
唯一の手がかりである、夢の中の容姿を
似顔絵に描いて、当時ブライトフォールズで
保安官をしていた、いとこのサラに
見せることにしました。

サラは似顔絵と一致する
人物と関連する過去の事件資料を
発見し、ティムに共有しました。

ティムの夢に出てくる男の名は
ワーリン・ドア。実在の人物ですが、
記録で分かるのは、
彼が1988年にコールドロンレイク付近で
稲妻に撃たれ、そのまま消えたという
目撃証言程度のものでした。

ワーリン・ドアについてさらに調べるため
ティムはブライトフォールズに移り住み、
後に保安官の職につきました。

サーガが調査にやってくる少し前から、
ティムもウェイクの『リターン』原稿を
発見するようになります。

ティムが
ワーリン・ドアについての原稿を
サーガに手渡そうとしたとき、
ワーリン・ドアが次元を超えた力で
強行介入し、
原稿とティムをまとめて攫い、
ウェイクの闇の世界に移動させました。

ティムは闇の世界で
ウェイクと出会い、
ワーリン・ドアについての
情報収集と分析調査を行いつつ
探索マップづくりや支援物資準備などで
ウェイクをサポートしていきます。

ティムはニューヨークに行ったことがないと
話しているので、彼が連れて行かれたのは
自身の精神や、闇からの支配とは無関係の、
ウェイクが見ている闇の世界です。

ウェイクがループを回す際の
記憶の状態とティムのそれとは
異なる周期を辿っており
完全にリンクしているわけでは
なさそうです。

ティムは『リターン』終盤
闇の世界に投げ込まれてきた
サーガと再会し、渡し損ねた原稿を
手渡します。
原稿の内容はそのときサーガが
闇の世界から脱出するヒントに
なる内容が書かれていました。

ティムがふと気づきます。
自分があの時ドアに攫われたのは、
サーガにその原稿を読まれないように
するためであると。
彼はこれからも闇の世界で
ワーリン・ドアを探すため
サーガと別れます。



  • ティムの調査ボード解説(『Quantum Break』『Control』ネタバレあり)

ティムの調査ボードや会話で得られる情報を
『Quantum Break』『Control』の出来事を
踏まえて解説します。

世界観が世界観でしかたがないのですが、
警察関係者とは思えないような
オカルトまっしぐらの内容で
ティム自身も「俺のクレイジーボード」と
自嘲しているほどです。
論理や根拠が通用しない次元ですが、
めげずに考察していきます。


ワーリン・ドアについての部分のみ、
ティムの項目ではなく、
別項「ワーリン・ドア」で
まとめて考察します。

<ティム・ブレーカーの別バージョン>

ティムは、
2016年の時間崩壊異変に
巻き込まれたことにより目覚めた
時間操作系の超能力や
タイムトラベルを駆使して
時間修復のために戦う
『Quantum Break』の主人公
ジャック・ジョイスの別世界線の存在です。


多元宇宙における
別宇宙の自分同士の関係です。



2016年のジャック・ジョイス


ティムは
別宇宙のジャックの経験を
夢を通して見ているようです。

ジャックの次元以外の
自分の夢も見ています。

ティム曰く
「(現実のようにリアルな夢の中で、
 自分は)別の名前の別人で、別の世界で
 別の人生を送っている

「ただドアの登場をはじめとする
 一部の特定の事実だけ
 次元問わず共通
している」

だそうです。

ティムの苗字のBreakerにタイトルの
Breakが回収されており、
ファーストネームのTimは「e」を足すと
「タイム(time)」です。

つまり
「ティム・ブレーカー」=「時間破断者」
ジャックの時間操作能力を
象徴する名前になっています。
(かっこよすぎやろ……)

ジャックは最終的に
タイムマシンを開発した科学者の兄とともに
異変を止めることに成功し、
世界を終焉から救います。

しかし異変解消の因果を成立させるため
過去にすでに起きている多くの犠牲を
取り消すことはできず、
ジャックらは大切な仲間の
ベス・ワイルダーを永遠に失い、
ジャック自身も死と狂気へ至らせる
クロノン・シンドロームを発症します。






<赤毛の女とその別バージョン>


ティム本人の正体が、
複数の宇宙における
同一存在の別バージョンと同じように、

ティムの夢で登場する人物もまた、
宇宙を超えた複数の存在です。

分かりやすく説明するため、
以降、ティム・ブレーカーや
アラン・ウェイクが生きる宇宙を
物語現実改変宇宙」とし、
ジャック・ジョイスとベス・ワイルダーが
生きる宇宙を
時間崩壊異変宇宙」とします。

赤毛の女について
ティムがまとめた情報

ティムが赤毛の女について知っていること、
感じていることは以下です。

「ドアとつながっている?」
「彼女を知っている。しかしどこで?」
「もうひとり別人の彼女がいる。
 彼女は複数のバージョンの間で
 切り替わる?」
「六面体につながっていて、
 自分のところにくるのか?」

これらの記述に当てはまる人物について、
下記のように解釈しています。

「赤毛の女」という容姿に当てはまるのは
『Control』の主人公、FBCの現役局長
ジェシー・フェイデンです。

ジェシーは2019年のヒス襲撃事件に
巻き込まれた際に、
身に宿している超自然存在ポラリスの力と、
パワーオブジェクトの超能力を
駆使して、別次元から侵攻してきた
敵性生命体ヒスと戦い、
FBCを窮地から救った人物です。

彼女は「物語現実改変宇宙」の人物であり、
ティムとウェイクと同じ世界を
共有していますが、
ティムともウェイクとも面識がありません。

2019年のジェシー・フェイデン


ティムが言う、もうひとりの彼女とは、
ジェシーと別宇宙バージョンの
同一存在に該当する「時間崩壊異変宇宙」の
ベス・ワイルダーです。
髪色は栗色ですが。

ベスは、ティムとは別宇宙バージョンの
同一存在であるジャック・ジョイスと
深い関わりがある人物です。

これがティムと「赤毛の女」である
ジェシーとは面識と関わりがないものの、
彼女をどこかで知っていると
感じる理由です。

別宇宙のティム(ジャック)と
別宇宙のジェシー(ベス)との
関係性の投影を、
ティムが夢で感じ取っている
ということでしょうか。

2016年のベス・ワイルダー


ベス・ワイルダーとの関係性ですが、
ベスは2016年の時間崩壊異変の中で
ジャックと共に戦っていた大切な仲間です。

ベスは8歳の時に、タイムトラベルで
過去に戻った未来の自分から
未来の出来事の詳細記録を手渡されたことを
きっかけに、2016年の時間崩壊異変の対処を
使命と受け止め戦いの準備を始めています。

時間崩壊異変発生後、
異変解決を目指すジョイスの味方となり、
時間修復の手段を奪い返すため、
共に強大な敵に立ち向かいます。

ベスは戦いの中、敵の陰謀に嵌められ、
数度タイムトラベルに翻弄され
「時間の終焉」と言われる
異変の最終ステージ・無時間状態や、
過去を繰り返し生き直すなどの
過酷な体験に抗い、時間崩壊の
唯一の対抗手段である道具が生まれる
原因を作り出します。

しかし尽力の末、
戦闘中に敵に引き起こされた
CFRによる大規模クロノン粒子爆発を
止めた隙に敵に撃ち殺されてしまいます。

ベスの死は時間の修復が可能にした
必要因果の一部となっているため

ジャックは苦悩の末、
ベスを救うための過去改変行動を
思いとどまりますが、
「必ず助けに戻るよ」と
誓いを残しています。



  • 赤毛の女の今後の動き


ここまで抑えれば、
ティムの調査ボードにある
赤毛の女についてのメモの
大部分の意味が分かります。

残ったふたつ
「ドアとつながっている?」
「多面体につながっていて、
 自分のところにくるのか?」

ですが、
どちらもジェシーのこれからの動きを
示唆していると思われます。

ベスは故人であり、
ティムと別次元の存在です。


ティムの所にやってくるとすれば
FBCで変貌世界を研究し対処しており、
多面体(ヘドロン)とのつながりを持つ
ジェシーのほうと考えるべきでしょう。

ドアとのつながりも
ジェシーならあり得る話です。

超次元存在であるドアの対処なのか、
共通の目的のため協力しているのか、
その関係性までは読めません。

ティムに接触する目的は不明ですが、
ドアに選ばれた理由や、
ティムが夢で他宇宙の自分とつながる
特殊性と関係すると思われます。




<多面体>


多面体について、ティムは
赤毛の女とのつながりを感じているほか、
特徴や用途についてもメモを
ボードに書き残しています。

ティムが夢で見た多面体
多面体の特徴や用途についてのメモ


「純粋な幾何学的形状」
「エネルギーの容器」
「入れ物?」
「武器?」
「絶大なパワーを持つ物体?」
「か、頭がおかしくなってボードゲームの
 多面ダイスを夢に見ただけ……」


基本的には
ヘドロンに当てはまる特徴です。

FBC本部地下に設置されたヘドロン

ヘドロンは、
超自然存在ポラリスにつながる
有機体的オブジェクトです。
見た目はティムが形容した通りの
「幾何学的形状の多面体」です。

ほかのメモ内容についても
該当しています。

2002年、11歳のジェシーがヘドロンに
接触したことをきっかけに、
超自然存在ポラリスを身に宿しています。

ヘドロンはポラリスの力の触媒であり、
ポラリスの力が蓄えられている
容器でもあり、ポラリスの力が
流れ出るパイプでもあります。

ポラリスの力の主なる効果は、
ヒスの汚染への浄化効果です。
ヒスに対抗する「武器」と言えます。

ただ、ジェシーとのつながりを除けば、
もう一つこれらの特徴に
該当するものがあります。

ジャックとベスがいた
「時間崩壊異変宇宙」のCFR
(クロノン・フィールド・レギュレーター/
 線形時間粒子場調節器)です。

CFR(クロノン・フィールド・レギュレーター/線形時間粒子場調節器)

個人的な理解でいうと、
両方該当していると思っています。

これまで見てきた
ティム=ジャック、
ジェシー=ベス
とのように異なる宇宙で
対応関係を持つ人物と同じように、

ヘドロンとCFRは、
「物語現実改変宇宙」
「時間崩壊異変宇宙」
にそれぞれ存在する、
同一存在の別バージョンではないかと
思います。

そう考える理由ですが、
まず、ティムが夢見る他なる現実は、
他宇宙の自分を介しているようで、
ならば直接知り得ないヘドロンを見たのを、
「時間崩壊宇宙」のジャックと
CFRとのつながりを介してだと
考えると自然です。

また、ヘドロンとCFRのシンクロと
言える出来事として、
CFRとヘドロンはそれぞれ
2016年の異変と2019年の異変終了時に
壊れたことが挙げられます。

さらに、CFRとヘドロンのいずれも
エネルギーの発生源ではなく、
エネルギーのを調節させるものである
点も一致しています。
(現実改変増幅器としての
 クリッカーも同じ性質のものと言えます)




<ティムの夢の正体>


これまで見てきた通り、
ティムの夢は別宇宙の別バージョンの
ティムを取り巻く
出来事、人間関係、モノなどです。

また、別宇宙の自分を介していれば、
異なる宇宙間で対応関係を持つ
物事についても
ティムは感知できるようです。


ティムの夢の特徴についてのメモ


残ったティムのボードで
羅列された関連内容を見てみましょう。

「夢を通して平行世界や多元宇宙の
 自分がつながったのは、
 他のどこかで何かが起きたためか?」

「衝撃が複数の宇宙次元を超えて
 反響し、それでつながった?」

「もしひとつの自分が死亡した場合、
 別宇宙で別バージョンの自分として
 再び目覚めるだろうか?」

「ドアは俺の別バージョンを
 殺していないか?」

衝撃に何が該当するかが鍵です。

衝撃で連想するのは、
まずは2016年ジャックが
時間崩壊を修復した際に
CFRから発した衝撃波です。

2019年ヘドロンが壊れたとき、
ジェシーの内なるポラリスの覚醒のときや
ヒスが湧き出るポータルになった
映写機を閉じる際に、
出来事から想像するに
衝撃が発生しても違和感がありません。

上記ふたつ以外、
絶大な超自然エネルギーの爆発として
思い浮かぶのは
2010年ウェイクがバーバラ姿の闇の存在を
吹き飛ばしたクリッカー使用時の衝撃です。

ただCFR以外、衝撃波についての
直接的表現がありません。

さらに、発生場所もCFRの衝撃は現実世界、
ヘドロンのときとクリッカーのときは
異次元(アストラルプレーンと闇の世界)で
状況の特徴が一致しません。
関連させるにはやや無理があります。

当事者も微妙で、
CFRの当事者はジャック=ティムで
まだティムとの関連性が強く、
ヘドロンも強いて言えば
ベス=ジェシーのつながりで
ティムとの関係性がありますが、
クリッカーの当事者がウェイクで、
ティムとは同じ世界の住民であることのみが
つながりと言えて、遠すぎます。

にもかかわらず、
ティムが夢を見始めた時期は
本人曰く2010年ウェイクが失踪してから、
となっており、
自然なつながりとは到底思えず、
筋を無理矢理通すために、
ドアが何かした、という風に
片付けざるをえない気がします。

2010年のクリッカー使用時の衝撃が
別宇宙の2016年のCFR使用時の衝撃が
次元を超えた何かしらのつながりを
作り出したとして、
それに対してドアがティムに
つながりを通して別宇宙の自分の
経験を覗き見る能力を、
自分の目的のために与えたかもしれません。

ティム目線では、
ドアは悪意を持って自分を苦しめる存在と
見ており、ドアが本当にティムの別次元存在を
殺害しているとすれば、
たとえば、
どの宇宙の「ティム」が、全部の宇宙の
「ティム」とつながっているのかを
特定するためにそうしている、
などの可能性が考えられます。



<謎のシンボルについての推論>


シンボルについてのメモと思われます

「複数の平行世界の現実を特定し
 体系化するための形だろうか?
 二重三角もそう」

これは何についてのコメントかについて
しばらく考えましたが、
当てはまるものと言えば、
超次元空間を象徴するシンボルです。

たとえば、これらの記号のことです。


さまざまなシンボル


FBC本部の内部からアクセスできる
複数の異次元への扉を持つパワープレースの
「オーシャンビューモーテル」の中の
(オーシャンビューホテルの
 別次元バージョンと思われます)
部屋の扉にもこれらと同じ類いと思われる
シンボルが描かれています。

シンボルつきの扉が
オーシャンビューモーテルで
見つかります

2019年時点で合計6つ確認されています。

2019年のジェシーは
FBC内の異空間を行き来するために
オーシャンビューモーテルを経由したため
FBCを象徴する黒逆三角シンボル
(FBCの中核となる超自然知性体の姿)
の扉の部屋のみ通り抜けていましたが、

執筆部屋へ通じるであろう螺旋シンボルの
扉も6つの中にありました。
(アリスがFBCに訪れたのが2016年で、
 辻褄が合っています)

樹木の教団の二重三角は
2019年のオーシャンビューモーテルに
ありません。

樹木の教団のシンボルは
超次元空間/異次元空間の象徴ではない上、
創設時期も2019以降であるため、
ないのが当然であり、
あった方が場違いと言えますが、

ティムが言う「double triangle」が
樹木の教団のシンボルのことと
考えるのは間違いでなければ
(他に三角ふたつの記号が
 思い当たりません……)
それが2023年の闇の存在第三次異変で
民間自警団のお手製シンボル以上の意味を
帯び出した可能性が高くなります。

……適当な思いつきの仮説をいうと、
たとえば、二重三角形が
ブライトフォールズの
森の複数の境界域へつながる
アクセス戸口などのシンボルとして
異次元管理者なる人物に
採用されており、
同時期に活動をしていた樹木の教団は
別の理由でそれを組織のシンボルとして
思いつきましたが、それもまた水面下では
集合的無意識的の影響を受けての話だ、
などがあり得そうです。



<消えた記憶と時間>

このあたりのメモは、
ウェイクのループのことと思いきや、
この部分を補足する会話を聞くと、
そうでもないようでややこしいです。


記憶がないまま
時間が飛ぶことについてのメモ

ティムが別宇宙の自分の夢を見るとき、
目覚めると時間が丸一日分飛んでいたり、
居場所も最後の記憶とまるで違う
場所になっていたりするそうで、
その間の記憶もありません。

気づいたら
予想しない場所に自分がいるため
闇の世界のマップ作りが大変だとも
語っています。

調査ボードでは
結果的に闇の世界に戻ってしまうため
闇の世界を出たらここでの
記憶も消えるかもしれない可能性について
考えていることが分かります。


ウェイクの闇の世界のループの影響も
ありつつも、それだけではないようです。

ウェイクのループ周期の
リセットもかかっている上、
それとは別で、ドアによる場所と
関係するリセットもかかっている
雰囲気を感じます。


ウェイクが初めて闇の世界で
ティムと会うとき、
ティムにとってウェイクが
既に知り合いで共に探索してきた仲間と
認識しており、両者の記憶が
食い違っている件については、

それ以降ウェイクが同じループ内で
ティムに会うたび、ティムの
調査ボードが埋まっていき、
両者は似たような時間の流れを
共有しているように見えることを
考えると、

こちらはそこまで神経質にならず、
純粋にウェイクの体内スクラッチ成長に伴う
記憶欠損と考えてよさそうと
雰囲気からそう思いました。

それといった根拠はなく、
完全なるフィーリングですが……




<闇の世界のニューヨーク>

ウェイクがいた闇のニューヨークについて、
ティムは
「どこにもない、どこにもある場所、
 すべての場所、
 どこにでも当てはまる場所」
「他の様々な場所を結びつける中心?」
などと感想を記しています。


闇の世界についてのティムのコメント


もちろんここは、現実世界の
コールドロンレイクの底から通じる
闇の世界のウェイクバージョンですが、

ティムのコメントを踏まえると、
ウェイクの闇の世界はそれ以上の領域に
なっていることになります。

ウェイクの闇の世界は閉じた世界ではなく、
複数の次元、
複数の宇宙へ通ずる出入り口を集約させた
「多元宇宙ポータルセンター」の性質を
持っている、という風に聞こえます。

また、
「どこにもない、どこにもある場所」
という表現は、『ナイトスプリングス』の
設定とも一致します。

ナイトスプリングスについてのメモ

ティムはウェイクが教えるまでに
『ナイトスプリングス』を全く知らなず、
しかし他次元の自分を経験する夢で
そのテーマ曲を聞きすぎて
常に口ずさまずに居られないことも
合わせて考えても、
闇の世界=「多元宇宙ポータルセンター」
の解釈が通ります。

複数の宇宙次元のハブとして
「どこにもない、どこにもある場所」が
都合良いでしょう。

闇の世界と、『ナイトスプリングス』に
親和性があるとして、
元よりつながっているかは不明です。

もし元より『ナイトスプリングス』と
闇の世界の結びつきがここまで
強くないならば、
2012年ウェイクが一夜限りの
『ナイトスプリングス』の闇の世界を
作り出したことが原因である
可能性が高くなります。


ワーリン・ドア(『Quantum Break』ネタバレあり)


ティムについて詳しく見てきたところで、
いよいよ『ALAN WAKE2』謎の人物
ランキングトップ3には余裕で食い込める
ワーリン・ドアについて見ていく準備が
できたと言えます。

ウェイクの闇の世界で
楽しそうにトークショーの司会を演じていた
ワーリン・ドア

まずは、ブライトフォールズおよび
闇の世界のワーリン・ドアについて
振り返ってみましょう。



  • ブライトフォールズと闇の世界のワーリン・ドア(他作品ネタバレなし)

<1988年の失踪事件:アンダーソン兄弟との対立>

ワーリン・ドアの身元に関する最初の情報が
ティムの似顔絵を元にサラ・ブレーカーが
探し当てたブライトフォールズ
保安官事務局の過去事件記録です。

記録では
ワーリン・ドアと見られる男が
1988年にコールドロンレイク付近で
稲妻に撃たれ、そのまま行方不明になった
との目撃情報が記されています。

しかし次元を超えた別宇宙の
自分の経験を夢に見るティムは、
どの宇宙の自分の夢の中でも、
1988年と同じ容姿の
ワーリン・ドアが登場しています。

さらに2023年にワーリン・ドアに
ウェイクの闇の世界に
転送されたときに、
目に見えたワーリン・ドアの姿の
ビジョンも同じでした。

歳を取らないのか、それとも。


稲妻に撃たれて失踪云々とは
本当はどういうことだったのでしょうか。

ウェイクの『リターン』原稿から、
それがアンダーソン兄弟との戦いだったと
判明します。

ヒントは「1988年」です。
ワーリン・ドアが失踪した年です


1988年に、コールドロンレイクで
対立するアンダーソン兄弟と
ワーリン・ドアとの争いがありました。

アンダーソン兄弟は名前が
明記されているので分かりやすいのですが、
「the dark one」はワーリン・ドアを
指す表現となります。

the dark one who yearned to stand in-between, who had always stood in-between, who would soon stand in-between.

ここら辺がワーリン・ドアを指し示す表現です

古き神々とつながっている
アンダーソン兄弟と比較して
ワーリン・ドアは
「より邪悪であり、より闇の存在側の者」
という意味で「暗い方」であり、
見た目も「黒い方」です。

さらに、「間にいる」との表現も
ワーリン・ドアに該当します。

「間に立つことを切望し、
 これまで間に立ってきて、
 そしてまもなく間に立つでしょう」

間大好きかよ。なんなんだよ間って間男かよ

ワーリン・ドアの闇の世界の
トークショーの番組名が
In between with Mr. Door
(ミスター・ドアと共にいる
 物事のあいだ)』となっており

彼の存在の本質を表現した
番組名と言えます。

さて、このときの出来事ですが、
アンダーソン兄弟は家族を
ワーリン・ドアから守るために、
「家族に近寄るな」を条件に、
ワーリン・ドアに協力することを
承諾します。

取引を忘れないようにと言って、
ワーリン・ドアはそのとき
オーディンの片目を奪い去ります。

その際に、反射的にか、
反撃のつもりか、または兄弟を
傷つけられた怒りからか、
トールによる雷神の力で落とされた
と思われる稲妻がワーリン・ドアに
落ちた結果、ワーリン・ドアが
消えます。

アンダーソン兄弟が言う
守りたい家族とは、時代的に
サーガの母、トールの娘フレイヤのことと
思われます。

サーガがアンダーソン兄弟から
聞き出した曖昧な事実と
アンダーソン兄弟の
フレイヤへのお詫びの歌の情報が
おぼろげに語っている家族の過去は、

フレイヤの夫が「ひどいやつだから」
トールが「乱暴に追い出した」ことで
フレイヤが傷つき、トールと疎遠になった、
というものです。

仮にフレイヤの夫が
ワーリン・ドアだった場合、

アンダーソン兄弟がフレイヤの夫と
対立する背景(理由は不明)や、
フレイヤの夫が不在の事実、
ワーリン・ドアがウェイクに対して
「俺の大切な存在まで巻き込んだ」と
怒ったことなどの説明が一度につきます。

サーガのルーツと容姿の不一致も、
父の血以外で説明のしようがないこともあり、
ワーリン・ドアがサーガの父である場合、
都合がいいことが多いです。

余談ですが、
北欧神話では女神フレイヤの夫オーズは
「長旅に出ていつまでも帰ってこない」
「行く先々で様々な別の名前を名乗る」と
言われています。

前半はともかく、
後半の特徴はワーリン・ドアに
当てはまります。

余談その2は、
オーディンの片目ロストイベントの、
まだ発生していない予告済み回があるため、
1988年ワーリン・ドアに取られた目玉が、
ウェイクの最終ループにて
ワーリン・ドアとアンダーソン兄弟の和解が
確認されたときに、片目が返却されている
可能性が高いです。
(取ったり戻したりと自由すぎるので、
 義眼だということでしょうか……)

オーディンの片目ロスト歴は3回
(神話時代、1976の密造酒狂気事件、1988のドア対決)
+再び起こる予告


<闇の世界での活動:ティムとの関わり>

1988年以降、
ワーリン・ドアの活動の痕跡は
主に第二次異変以降の
ウェイクの闇の世界と関係する形で
確認されています。

ひとつは2010年第二次異変後からの
ティムとの関わりです。

2010年の異変が終了し、ウェイクが
闇の世界に囚われると同じタイミングで
ティムが、
「別の名前の別人になって、
 別の世界で別の人生を送っている」夢を
見始めていたと言います。

ティムの項目ですで見てきましたが、
ティムの夢とは、多元宇宙における別世界で
ティムと対応する存在が送る
人生の現実の出来事です。

ティムが次元を超え、さまざまな
他者なる自分の経験を見る中、
多くの事実は異なりますが、
特定の事実のみ次元を超越して
完全同一であると気づきます。

そのような超次元的事実のひとつに、
ワーリン・ドアの姿があると語っています。

(ジェシーとベス、ティムとジャックの
 出生年がそれぞれ同じであることや、
 ヘドロンとCFRが異変終了時に
 壊れることも超次元事実と思われます)

微妙なところですが、
この時期にティムが超次元能力に
目覚めた原因はワーリン・ドアではなく、
むしろ狙われる原因だと思われます。

理由はティムがワーリン・ドアから感じている
邪悪なイメージや、
ティムの捜索ボードの関連内容です。

ティムが次元を超えて
他者なる自分とつながる原因の推察


「夢を通して平行世界や多元宇宙の
 自分がつながったのは、
 他のどこかで何かが起きたためか?」

「衝撃が複数の宇宙次元を超えて
 反響し、それでつながった?」

「もしひとつの自分が死亡した場合、
 別宇宙で別バージョンの自分として
 再び目覚めるだろうか?」

「ドアは俺の別バージョンを
 殺していないか?」


このあたりの不吉な仮説です。

情報がないので、
仮にティムの読みが概ね当たっているとして
考えを進めてみます。

次元を超えた「衝撃」をきっかけに、
(衝撃の正体についての考察は、
「ティム・ブレーカー」の項目にあります)
超次元的つながりを得たティムが、

夢を通して垣間見たどの次元宇宙の
人生においても、ワーリン・ドアの登場が
認められたということは、

ワーリン・ドア目線では、どの次元でも
ティム・ブレーカーの同一存在に会う/
見られることが超次元事実となります。

このことはおそらく不自然なことです。
というのも、確認されている中で、
人間関係は通常次元を超えて
維持/再現/投影されないようです。
(たとえばティムは現実の中で、
 ジャック宇宙の登場人物の
 別バージョンの誰とも
 関わりを持っていません)

どの次元でも容姿まで同じの
ワーリン・ドアとの関わりなら
なおさらです。

次元を超えて暗躍している
ワーリン・ドアにとって、
必ず目の前でティムの差分が現れることに
不都合であると想像します。

それで、ワーリン・ドアが
各次元のティム存在を調査し始め、
どこかでハブになっている
ティム・ブレーカーに
到達したと思われます。

別バージョンを殺しているかどうかは
なんともというところです。
簡単にそのような犯行を行えた
次元もあるかもしれませんが、
ジャックやティムのように、
超能力を手に入れた差分は、
ワーリン・ドアにとっても手強いはずです。

ティムはティムで、
ワーリン・ドアに引き寄せられたかのように
調査のためにブライトフォールズに自ら
やってきたことで、
コールドロンレイクの影響範囲に入ります。

このことはワーリン・ドアにとって
好機ではないかと思います。

1988年のアンダーソン兄弟との
対決のシーンを見るに、
その時点でワーリン・ドアはすでに
湖の闇の存在より格上の超自然存在である
雰囲気を醸し出していますが、

実際にワーリン・ドアが
ティムに直接手を出したのが
異変開始後であるため、
ワーリン・ドアでもブライトフォールズに
干渉するには、何かしらの
闇の存在、闇の世界のルールと制限を
守る必要があると推測します。

ワーリン・ドアと
闇の世界の関係と事情は1988年の
アンダーソン兄弟との対決の
原因を作った背景でもある気がしますが、
現時点の情報では推測が困難です。

というのも当事者の
アンダーソン兄弟はさまざまな
異変を生き抜いて今も元気な上、
闇の世界で約束通り
ワーリン・ドアに協力したのに
全然ロクな説明をくれないからです



<闇の世界での活動:ウェイクとの関わり>

もうひとつ確認されている
闇の世界のワーリン・ドアの活動が、
ウェイクのためだけに用意した
トークショーの演出です。

にしてもこのドア、ノリノリである


ワーリン・ドアは、
闇の存在とは別の上級存在で、
自分の目的のための行動をしています。
その一環で、或いはついでにというべきか
ウェイクにトークショーを
用意したようです。

トークショーが行われた理由についての原稿

トークショーは
『イニシエーション』外部の出来事であり、
ワーリン・ドアが意図的にウェイクに
合わせた演出を凝らしていますが、
ウェイクの創作の影響や
または闇の存在の支配を受けていません。
闇の世界の事象でありながら、
闇の存在から独立性を持っている
特殊な領域です。

ワーリン・ドアが語った言葉や
原稿に反映された内容を総合すると、
トークショーに含まれる何かが
ワーリン・ドアの目的に直結しますが、
その他の演出のほとんどは
ワーリン・ドアにとって
必要な行動ではなく、お遊びで
やっているということです。

そのためか、
基本的にはトークショーは
ウェイクにとって無害なものであり、
何ならウェイクにとって
ちょっと楽しくて、しかも役に立つ
エンタメコンテンツになっています。


特に、新しいループの開始時に、
先の展開ややるべきことについて
何も覚えていないウェイクが
ワーリン・ドアの紹介で
『イニシエーション』のあらすじ、
全体像を手っ取り早く把握できたことで、
ループを回す効率が著しく向上されたと
思われます。

トークショーを通して
ワーリン・ドアが達成したいことは、
2つほど確認されています。

1つは、アンダーソン兄弟の生演奏です。

これも計画ではなく、
彼らの利害が一致することでによる
余興の可能性がないとは言い切れませんが、

1988年の取引でワーリン・ドアが
求めた協力内容でもある可能性が高いです。

アンダーソン兄弟の音楽に謎の力があるため
ワーリン・ドアの目的に
必要だったかもしれません。

もう1つは、
アリスによる超時空領域
パーラメントタワーに
アクセスするためです。

トークショーが
パーラメントタワーへのアクセスを
可能にするつながりを作ったと思われます

推測ですが、
ワーリン・ドアは闇の世界にいても、
スクラッチとウェイクが
干渉できる内容と範囲が
異なるではないかと思います。

思い返すとワーリン・ドアが登場する
トークショーのシーンは、
アリスのドキュメンタリーと
ゼインの部屋の映写機と同じ表現で、
映像の中で完結されています。

この表現を使われている場合、
本人が実際闇の世界にいながら
ウェイクとは別の場所にいることを
意味します。

したがって
ワーリン・ドア自身の力だけでは
パーラメントタワーにアクセスできないと
考えられます。
そのため、ループを繰り返す中で
それにアクセスできるようになっていく
ウェイクとの繋がりが必要となり、
それで印象づけるためのトークショーが
生まれたかもしれません。

パーラメントタワーに到達することで
ワーリン・ドアは何ができるかは
謎ですが、そこに超時空領域である
ウェイクの執筆部屋があるため、
彼がそこを目指す可能性が高いです。

(トーマス・ゼインの超時空領域では
 ダメでしょうか)

原稿の書かれ方からして、
ワーリン・ドアは異変解決に必要である
サーガの闇の世界からの脱出へ協力する
意思はさらさらないと思いますが、
目的との利害が一致したため
不本意ながら許容しています。

ウェイクが経験する
ループ内最後のトークショーで、
ワーリン・ドアが言った
「次に会うとき状況は一変するだろう」
「せめてやることやって俺の邪魔をするな」
は、第三次異変の解決という意味としても
通りますが、その過程でワーリン・ドアが
パーラメントタワーに行き
目的を達成したあとの状況も
含意されていると思われます。



<数多の世界のマスター
(MASTER OF MANY WORLDS)>

これまでの内容を踏まえ
ワーリン・ドアがウェイクに予告した
「次に会うとき状況は一変するだろう」
についての仮説を述べます。


ウェイクの最終ループの最後の言葉が

「こうして俺は戻ってきた(リターン)。
 そして俺の手には知識の松明がある。
 その光が奇跡を照らし出す。
 二つの世界の主、
 いや、数多の世界の主だ

です。

最後の一文は闇の世界のティムの
調査ボードに最後に書き込まれた
ティムの気づきでもあります。

手書きはいかにも「WORDS」にしか見えず
「世界」であっているのか
気になると思いますが、
英語のカーソルオーバーテキストが
「WORLDS」で合っていて、周囲の内容や関連情報と
合致するのも「WORLDS」で合っています。
ご安心ください。


ワーリン・ドアのこれまでの動きは
「主」というほど自由に見えないので、
「マスター」を「達人」の
意味で理解した方が楽かもしれませんが、

ただ、もし闇の世界の
ワーリン・ドアも本体ではなく
彼がつながっている
全ワーリン・ドアバージョンを統べる
さらなる高次存在が居る場合、
「主」が正しい理解になるのみならず
それが指し示す存在の意味も
面白くなってきます。
(次回作ボスになりそう……)

別項「ワーリン・ドア」でも
この点について彼の能力の考察と共に
改めて触れます。


<ワーリン・ドアの別バージョン>(『Quantum Break』ネタバレあり)


ティムが夢を通して見た他の現実に
現れる「ワーリン・ドア」姿の者の一人に
『Quantum Break』で登場する
マーティン・ハッチが含まれています。

超次元存在であるワーリン・ドアの
仮の姿のひとつと思われます。
彼はジャックと同じ宇宙を共有しており、
関わりをもっています。

モナーク社のCEOのマーティン・ハッチ

ハッチは時間崩壊異変を
タイムマシンの実験事故で
引き起こした人物であるポール・セレーンが
時間遡行して立ち上げたモナーク社の
信頼を勝ち取り、
CEOの職を手に入れています。

ワーリン・ドアに似て、
ハッチは出生から2001年に
モナーク社に雇用されるまでの間の
身元情報がありません。

モナーク社の創設者であり
実権を握るポールは、
時間遡行を繰り返す中で
時間修復の不可能性に絶望し、
修復を諦めない主人公側のジャックらと
敵対しつつ、不可避と思われた
終焉後の世界を生き延びる方舟的計画
「ライフボートプロトコル」を推進します。

一方、ポールの補佐役であるはずのハッチは
「調和の取れた世界のため」、
ポールやモナーク社の目的を
裏で確実に妨害するよう
最後まで暗躍します。

ハッチの反逆行為の
明確なきっかけは不明です。

入社前からなのか、
クロノン粒子被曝の結果超能力と共に
苦痛と狂気に犯されたためなのか、
それとも入社後親しい関係にあった
キム博士が実験事故で
クロノン被曝生命体になったことへの
復讐なのかは不明です。

ハッチがクロノン被曝で
手に入れた超能力について、
ジャックと同様、時間崩壊異変中に
発生する時間の歪み
(範囲内の時間が止まる)の中で
行動できること以外、時間操作能力に基づく
自己複製で擬似的不死身になっていることが
特徴になっています。

正直難解すぎるため全然分かりませんが、
ハッチの不死身の理屈についての
個人的なイメージは以下です。

普通の人は「今この瞬間」にのみ
存在できることに対し、
ハッチは現在過去未来のすべての瞬間の
自身とつながっています。
タイムライン上のどこかの瞬間の自分が
死亡した場合、自分のタイムライン上の
任意の過去の瞬間に複製される形で
戻れるイメージです。

ジャックがハッチの死体を見た上で
蘇って過去からやってきた新たなハッチを
見ることがあるため、
ハッチの時間移動能力が純粋に
過去の自分そのものに意識を移して
行動を変えているのではないと分かります。

となると、
ハッチが死亡する場合、
死亡へ至る過去のハッチは
因果が担保されるように元の行動を続行し、
その傍らで、未来のハッチは死亡時
新たに複製され過去の瞬間に再生される
というようなクローンシステムでしょうか。
(わからんのです)

ともあれ、ハッチはこのように
彼自身やジャックなどが存在する宇宙次元で
時間を超越した不死の存在となり、
謎の目的のため、異変終息後に
モナーク社の建て直しのため動いており、
ジャックにスカウトの話を持ちかけます。
(ジャックの返事は不明です)

ただ、この宇宙次元で発生した
2016年の時間崩壊異変時点では、
ハッチは時間を超越しているものの、
宇宙次元を跨ぐ能力は確認されていません。

ハッチに、ワーリン・ドアとは
多元宇宙における同一存在である
自覚があるかも不明です。


<ワーリン・ドアの能力や目的>

ワーリン・ドアが他宇宙次元の
別バージョンとは
どのような関係にあるかは不明ですが、

すべての宇宙次元において、
能力や目的まで共通する存在では
なさそうです。

ワーリン・ドアの能力については、
「間に立つ」という表現以外
闇の世界に飛ばされた時のサーガが
精神世界で多くの重要情報を
読み取っています。
(このときに脱出を急ぐ
 根性キャラ寄りのサーガは
 ドアの能力に対する
 興味のなさが笑えます)

この時のサーガは
それどころではなかったので、
ワーリン・ドアの能力に
ほとんど関心を払いませんでしたが

(粗訳失礼します(´ω`;)……
 shiftをどう取るかで意味がかなり変わってくるため、
 公式とは別訳になります)

A door that stands between two rooms is in both.
二つの部屋の間にあるドアは、両方の部屋のどちらにも存在する
A door that can lead anywhere is everywhere.
どこにも通じているドアは、すべての場所に通じている
That door is the center.
その「ドア」が中心だ
He governs the currents of reality.
今の現実を決定するのが彼だ

The Dark Place has many faces, and many names.
闇の世界はさまざまな顔と名前がある
It is a mirror reflecting all possible realities.
起こりうるすべての現実を映し出す鏡だ
The family of Doors have the power to shift between these realities.
ドアの者たちには起こりうる複数の現実の間を行き来できる
Here, and elsewhere.
ここにも、他のどこかにも移動できる

精神世界でサーガが読み取れたワーリン・ドア情報

これらは3つの重要事実として
要約することができます。

1.ワーリン・ドアの能力
  異なる現実間の移動

2.闇の世界は、起こりうる
  すべての現実にアクセスできる
  ポテンシャルを持っている

3.ドアの能力を持つ者は
  複数存在し、その頂点に
  すべての現実を支配する「主」がいる

ここから解釈や仮説を交えて
3つの事実を展開してみます。

1と2の「現実」の該当範囲が
ブライトフォールズの現実に留まらず、
多元宇宙間や、特殊の超時空領域まで
含意されている可能性が高いです。

そう思わせる情報に、
これまで見てきたティムの証言である
「どのバージョンの世界にも
 ワーリン・ドアがいた」ことと

ワーリン・ドアの楽屋に
ダーリング博士の多元宇宙の本が
置いてあることです。

そこまで「現実」の意味が
拡張されると、闇の世界は
ドアの能力が加わった場合、
「多元宇宙ポータルセンター」として
重要な影響力を持つよりなるでしょう。

3の事実は、
複数居るドアの能力を持つ者の中で
頂点に位置する、
または頂点に君臨する条件を満たした
ドア能力者が
「すべての現実を支配する」力を持つ
可能性を示唆しています。

闇の世界のワーリン・ドアの
これまでの行動は
頂点の「数多の世界の主」の目的のための
任務遂行だったかもしれません。

或いは、数多に存在する
ワーリン・ドアのバージョンの中で、
闇の世界という
「多元宇宙ポータルセンター」を制した者が
「数多の世界の主」として頂点に立つ
という事かもしれません。

次の超自然大戦が
「VSまたはwith数多の世界の主」に
なりそうですが、軽く想像するだけでも
スケール感が大変なことになりそうで、
三人のスパイダーマンが集結する騒ぎ
程度では収まりそうにありません。


<ドア・ファミリーについて>

ワーリン・ドアが言う
「The family of Doors」は
アンダーソン兄弟がサーガに向かって言う
「アンダーソンファミリー」と同じように
血縁関係の「一族」ではなく、
血縁関係のないマフィア的
ファミリーではないかと疑い、
「ドアの者たち」とした
理由は複数あります。

まずはサーガの存在です。
もしサーガがワーリン・ドアの
生物学的娘である場合(可能性は高い)、
一族に次元移動能力がさらにあると、
サーガにアンダーソン一族の
物語改変耐性に加えて、
次元移動能力を持ってしまいます。

これは不都合や違和感というか、
……強すぎて均衡がぶっ壊れるため、
あり得ないと思われます。

次の理由がティムの存在です。
ティムの夢は、まさに
「異なる現実を行き来する」能力の
原型ではないかと思います。

現時点ティム本人が
自覚を持って現実間を行き来する能力を
制御することができませんが、
このまま知識を蓄えた先に
何かのきっかけで目覚めそうな気配が
十分あります。

ティムが「ドアの者」である可能性を
示唆する情報として、
ワーリン・ドアがティムに対して
「不本意の弟子(unwilling disciple)」と
表現したことが挙げられます。

しかるべき時(right time)に(原稿が)読まれるよう
渡す(pass on)人物が「弟子」であるため、

実際にこの原稿をしかるべき時に
サーガへ手渡すことになった
ティムのことが「弟子」になります

<他の闇の世界登場人物との関係>

情報が少ないため、主に現状整理です。

アリスとドア
ワーリン・ドアはアリスと、
パーラメントタワーの特殊空間について
知っていますが、

アリスとワーリン・ドアの間に
交流や協力関係があるかは不明です。

ゼインとドア:
完全に不明。

ウェイクとの会話において
ゼインとドアは互いに
言及した場面がありません。

ただ、アンダーソン兄弟が間にいるのと
ワーリン・ドアは第一次異変時に
ブライトフォールズの現実世界に
いたはずですから、
全く知らないことはないと思います。

アーティとドア

アーティはドアを知っています。
ドアからアーティについての
言及がありません。

協力関係にあるわけではなさそうですが、
敵対するわけでもなさそうです。

ウェイクにとって極めて重要な、
アリスやゼインのキーアイテム入りの
靴箱は、毎回アーティから教えられて
ドアのトークショースタジオの
地下室の中で見つかっていますが、

アーティはこのことを実現するために
必ずしもドアと知り合う必要がなく、

また、ワーリン・ドアの
トークショーシーンが映像形式で、
ウェイクとは闇の世界とは別の場所に居ると
考えられるため、

ドアがアーティを
知らない可能性があります。

アーティ(『Control』微ネタバレあり)


謎の存在トップ3に余裕で食い込んで
ワーリン・ドアといい勝負になりそうな
用務員アーティについて、
分かっていることは多くありませんが、
ティム、ジェシー、ドアのように
別バージョンが登場していないため
そこまで複雑ではありません。

登場時期順に整理して行きたいと思います。




<2019年のFBCにいたアーティ>(『Control』微ネタバレあり)


アーティは、
FBC本部が襲撃される異変最中に
訪れたジェシーを導くヒントを与える
人物として登場していました。

性格、容姿、言動、歌の趣味、
用務員という立場まで
すべて2023年のブライトフォールズや、
ウェイクの闇の世界に登場するときと
同じです。

歳を取っているかはどうかは不明です。

2019年 FBCの用務員として働くアーティ


FBCにいたアーティは、
メンテナンス部に用務員室を持っており、
セキュリティー部のチーフと交流を
持っていたりと、実在する人物としての
痕跡を色濃く残しています。

その一方、
明らかに実在の人間には不可能な
超自然行動も多く確認されています。

・襲撃によりロックダウン状態になった
 FBC本部に、ジェシーだけが
 進入できるようにする

・途中から休暇に行くからといって
 ロックダウン状態のFBCの内部から
 ウォータリーへ移動し、
 居なくなった後もFBCの
 ジェシーを声やビジョンで導く

・身体のないビジョン状態で
 異空間迷路攻略に必要な
 実体あるカセットプレイヤーを
 ジェシーに渡す
 (流れる曲がアンダーソン兄弟のもの)

などです。



<ブライトフォールズのアーティ>(『Control』微ネタバレあり)

1970年代にアーティが活動した
痕跡はありませんが、

アーティのセリフ、
ゼインの映画や
アンダーソン兄弟のカセットテープなどから、

アーティはトーマス・ゼインと
アンダーソン兄弟とは昔からの
友人であると分かります。
見た目の年齢もちょうど
アンダーソン兄弟と同年代です。

ただアーティについての言及は
アンダーソン兄弟、ゼイン、シンシアなど
第一次異変の1970年代を生きた
どの人物からもないため、

アーティが一方的に知っている、
または超自然的な力の結果による
操作の可能性を疑う余地は
微かながらあります。



2019年にアーティが
FBC本部内で異変と戦うジェシーを
サポートしながら、「休暇」といって
FBC本部内から境界域を開いてか、
直接ウォータリーへ移動し、
老人ホーム・ヴァルハラに入居します。

これは2023年の第三次異変の準備のための
行動と思われます。

(ジェシーの戦いを最後まで見守ってから
 ウォータリーへ移動しても余裕で
 間に合う気がしますが、どうしても
 休暇が大事だったかもしれません……)

要介護者として入居したアーティは、
用務員であるアイデンティティを
どこにおいても維持したいためか、

老人ホームの従業員ウラジミールから
用務員着と掃除道具を盗んで
掃除するようになります。

2023年サーガが出会う
老人ホーム・ヴァルハラ入居者のアーティ


2023年のブライトフォールズでも、
アーティは異変を解決する主人公を
サポートし導きます。

2023年のブライトフォールズで、
アーティが行ったサポート内容は
主に執筆部屋の守護と、
闇の世界と現実世界を繋ぐ
臨時なポータル作りです。

サーガが正しい時が来る前に
執筆部屋に踏み込まないように見張り、
しかるべき時にサーガが闇の世界から
帰還できるように、両側を繋ぐ
臨時ポータル(バケツから漏れる
水たまり)を生成しました。


闇の世界と現実世界を繋ぐ
臨時ポータルを生成するアーティ


<闇の世界のアーティ>

アーティの姿は、2010~2023の間の
ウェイクの闇の世界にもありました。

ワーリン・ドアが
闇の世界の別の場所から
ウェイクに提供するトークショーの演出が
終わると、
アーティが無人のトークショースタジオに
スタジオ内の用務員として
姿を現わすことがあります。

ウェイクの闇の世界で、アーティは
主にウェイクに闇の世界を脱出するための
不可欠な重要アイテムへの案内役です。

後にクリッカーや光の銃弾に変わる
アリスの写真や、道を作り出す
トーマス・ゼインの天使のランプなどを
地下室の靴箱に保管し、
ウェイクが確実に受け取れるように
守っていたと思われます。



<アーティの行動の共通点から分かること>

アーティがどのような存在で、
その力に目覚めるきっかけ、
行動理念や目的、他の人物との関係など、
ほとんど謎のままですが、

アーティの行動と、
行動に見られる共通点などから
分かることもあります。
簡単な箇条書きですが、整理してみます。

・異なる次元の間を行き来できる
 →制約条件不明
 
・異なる次元をつなぐポータルを
 作り出せる
 →制約条件不明

・人間を超えた存在であるが
 敵性存在ではない

・すべての次元において
 同一存在であり続ける
 →必ず用務員
 →別バージョンの別人は
  現時点確認されていない
  (いない可能性が高い)
 →知識、人格、能力、容姿すべて同じ

・実在の人間としての痕跡を操作できる
 (自由に作り出し、なかったことにできる)
 →FBCから急に消えても
  問題ないようにしている
  (その後のアーティを知る人物の認識は
   不明ですが)
 →アンダーソン兄弟とゼインの友人だが
  第一次異変の記録や人々の記憶にいない


・超自然異変に挑む主人公をサポートする
→異変を予知している
→異変の解決を望む立場である
→戦いに直接参加せず、主人公に協力して
 間接的に異変を解決する



<他の闇の世界登場人物との関係>

アリスとアーティ:
互いが互いを知っているかは不明です。
アーティは異変解決に必要なサポート行動を
理解する理屈が常理を超えているので、

アリスと実際接触することなく、
彼女やウェイクを異変解決の主人公として
サポートすることが
可能なはずです。

アーティにとって
ゼインとは友人の馴染みであるため
靴箱ルールを知り、応用している行動も
自然に見えます。
(ゼインと友人でなかった場合、
 超越的な力で靴箱ルールを
 知り得るかが不明です)

アンダーソン兄弟とアーティ:

お互いがお互いの言及があり、
確実に互いを知っており、
互いを助け合う友人関係です。

トーマス・ゼインとアーティ:

ゼインからの言及はありませんが、
アーティがゼインの映画に出ており、
主題歌まで手がけているため、
アーティの映画についてのコメントも
総合すると、確実に友人です。

主人公とアーティ:

ジェシー、サーガ、ウェイクなど
主人公側の人間は、異変に巻き込まれて
初めてアーティと出会います。

アーティも彼らを知っているわけではなく
超越的な力で異変に巻き込まれ、解決しうる
主人公を正しく識別できているだけのように
見えます。

ウェイクだけは、
アーティ目線ではゼインと認識しているため
友人のように話しかけています。

普通の人々とアーティ:

アーティは行く先々に
自分の用務員としての存在を
実在の人間レベルに落とし込むことを
好む、または必要とするため、

自分の周りの人たちと自分らしく交流し、
よく馴染んでいることが分かります。

しかし、
ゼインやアンダーソン兄弟らと
友人であれば、第一次異変時に
いたはずのアーティの存在の痕跡が
一切残っていないことや、FBCから姿を
突如消しても支障がないことから、

アーティが自分についての記憶を
人々から消す、または不整合のない形に
しておくことはたやすいと思われます。
(次の異変はどこの用務員になるやら)

※ドアとの関係は
 別項「ワーリン・ドア」にあります



<余談>


アーティとは、フィンランド神話の神である
アハティのフィンランド語読みです。

アーティは「水の王」の意で、
穏やかな性格の漁の守護者です。

魚やアザラシなどの獲物は
アーティに創られたものと考えられ、

アーティの恵みで
獲物が漁師の網に向かってきてかかると
考えられています。


アーティが次元を歪めて
湖全体をバケツに同化させて
床に水を撒いて水たまりポータルを作る
描写の原稿があり、
用務員と言えばモップ掛けや水回り
掃除のイメージです。

作中の神話由来のキャラクターは
必ずしも全員が神話に当てはまらず、
(タピオさんは完璧に一般人)
神話を意識したキャラクターも
神話の内容を部分的に取り入れ
適度にデフォルメしていることが
多いですが、

アーティの力に関しては、
アンダーソン兄弟と同程度には
神話との関係性が
強く意識されているようです。


おまけ考察:パット・メインのラジオ・アワー


パット・メインのラジオは、
ウェイクシリーズお馴染みの
収集要素のひとつです。

2010年の時のパットは
ブライトフォールズのFMラジオ局に
務めており、番組で
ブライトフォールズ在住の
ゲストを番組に招いて
トークや音楽を電波に乗せていました。

パットはウェイクが
2010年に初めて出会う
ブライトフォールズの住民であり、
パットとの交流があり、
パットからの協力もありました。

2010年に出会ったときにすでに
初老の歳のパットですが、
13年の月日が流れてなおご健勝です。

2023年のパットは
FMラジオ局の仕事を引退し、
老人ホームの自室に設置した
ラジオ放送セットで
番組「パット・メインのラジオ・アワー」を
放送しており、
ゲストを招いてトークする代わりに
電話インタビューを行っています。


パットの姿は
老人ホーム・ヴァルハラのパットの自室で
確認できます。

老人ホーム・ヴァルハラの自室で
放送を続けるパット

今作のラジオは全部で9個あります。

単体でも聞けますが、
全体で起承転結ある
ひとつの話になっています。

ゲーム中フル尺で聞いた方が
はるかに面白いので
ぜひコンプリートを目指してみてください。

まだお元気です

ラジオ全9回の内容まとめ



※内容の省略があります


「タピオの天気予報」

ラジオの冒頭、
パットが番組のスポンサー
「デイビス・ファミリー・
 ムース・ジャーキー」を紹介する。

ディアフェストの天気を伝えるため
現役の町の天気予報士に電話をかけるも
電話に出てもらえず、

代理にウォータリー在住、
天気予報士の叔父タピオを
呼び出すことに。

フェス中はずっと雨で
晴れ間を見ることはないとの
タピオの断言を受け、
パットはディアフェストは雨天決行だと
フォローを入れて番組を終了させる。


「ドナによるビーフジャーキーのレビュー」

スポンサー商品の宣伝。

「デイビス・ファミリー・
 ビーフ・ジャーキー」のジャーキーは
(少し前のタピオさん回では
 「ムース・ジャーキー」と言っています)

3種類の新味ジャーキー
(ヒッコリー燻製味、照り焼き味、
 ヒッコリー燻製照り焼き味)の
日曜市に出店決定との速報が入り、

その宣伝にパットが
ドナに電話をかけて試食感想を聞く。

ドナは楽しみにしている
老人ホームの今日の晩御飯メニューのため
腹を空かしており、
ジャーキーを試食していないという。

パットのミスで
タピオとの電話が切れておらず
繋ぎっぱなしのタピオさんから
「照り焼き味はマズい」と
反論の声が上がる。

続けてタピオが
ビーフジャーキー新作の提供者である
スポンサーのウェンディ・デイビスは
2010年失踪し、
その後死んだと聞いているからありえないと
パットに異論を唱えた。

パットはデイビスの死について否定し、
音楽を流す。

「テリーの鳩時計」

鳩時計職人のテリーが
ゲストの放送回。

テリーが今年のディアフェスト用に
制作した鹿が飛び出す特製時計について
説明する。


鹿時計は日曜市で
販売予定と紹介する流れで、
パットがスポンサー宣伝のため
同じく日曜市で出店予定の
ウェンディの話を持ち出す。

言いにくそうにテリーが
FBIの調査でウェンディの死体が
発見されていることを根拠に
パットに認識を改めるよう説得する。

パットは1時間前に
ウェンディと会ったばかりで
その時試食用の新味ビーフジャーキー3種を
手渡されたことを根拠に、
死んだはずがないと主張する。

「ジムの町長選」

ウェンディの死は事実無根の
悪質の噂であると証明するため、
パットはウェンディ本人に
電話インタビューを行う。

しかし電話に出たのは
ウェンディではなく
俳優から政治家に転身し
選挙活動中のジムだった。

ジムは今回を
自分のゲスト回だと認識しており、
昨今町が呪われたイメージで
観光業不振の陥る現況を打ち破る
町長選に向けた決意を熱く語り、
対抗馬のセッターを無能だと罵る。
(セッター町長の正体を知ってから
  振り返ると笑えます)

「ギルの奇妙な冗談」
ウェンディの夫である
ギル・デイビスから
クレーム電話がかかる。


パットのビーフジャーキー宣伝のせいで、
ひっきりなしに問い合わせの電話がかかり、
非常に迷惑しているとのこと。


ギルによれば、
番組で言われているスポンサー名は存在せず
デイビス家はビーフジャーキーを
作ったことも売ったこともなく、
さらに言うと食べるのも嫌いである。

また、ギルも妻のウェンディが
13年前に失踪し、遺体も発見されていると
改めて言い、これ以上ウェンディが
生きているとラジオで主張するのを
やめてほしいと頼む。

しかしパットは先週も日曜市で
ウェンディ見たと反論する。

「機材トラブル」
パットが放送中に操作ボタンが
分からなくなり混乱している。

まだ繋ぎっぱなしのタピオも
一緒になってボタン探しを手伝う。


パットはドナの孫に
正しい操作を聞くため
電話をかけようと思いつくが、

パットがうまくタピオさんとの
電話を切ることができず、
ドナの孫に電話がかけられない。

電話が切れないのは
きっと最近の大雨のせいだよと
タピオがパットを励ます。

大雨のことで
前回の大雨の時にバンカーで
若い女性がひとりが溺れたことを
思い出すタピオ。

パットは溺死事故は
コールドロンレイクで起きたと
訂正する。

タピオがパットが
二つの事故を混同していると指摘する。
コーリドロンレイクで溺れ死んだのは
アンダーソンの娘で、バンカーで溺死した
女性とは別人だと。

パットが電話を切るため
「オン/オフ」と書かれたメモが
貼られたボタンを押す。

パットがボタンが押すと、
すべての音声が途切れてしまう。
放送の終了ボタンだった。


「ディアフェストのフロート」

パットはこの回のテーマは
ディアフェストのパレードの
フロートを予想することと
紹介し、「しかし本題に入る前に」
と、これまでウェンディについての議論を
振り返り、弁明を始めた。

パットは、
この街の情報通としての自負がある自分が、
どういうわけかウェンディの
失踪や死亡の噂だけ知らないのは
ありえないと主張し、
パットの頭がおかしくなったという
噂も否定する。


続けて、パットは
「誰かが何か分からない理由のために
 事実を歪曲しようとしているようだ」と
注意喚起し、明るい言葉で
町の人々を元気づける。

「きっと大丈夫
 ディアフェストは晴れる。
 ウェンディは無事だ。
 ビーフジャーキーは日曜市で買える」

「さて今回のトークテーマですが、
 ……なんだっけ??
 鹿と関係ある気がする……
 なんだっけな……?」

とトークテーマを
忘れるパット。

パットは思い出すまでの
繋ぎのトークを始めようとするが、
先ほどのウェンディについての弁明と
全く同じ話になってしまう。

パットは話の途中で
同じ話をしていると気づくが、
どうしても本題が思い出せない。

「テリーのゲストコール」
パットはジムの名前が書かれたメモで
今回がジムのゲスト出演回と考える。
既にその回を迎えたことを
忘れているらしい。

ジムからのコールを待っていると、
鳩時計職人のテリーの着信が入った。

テリーは、樹木の教団による
ウェイク襲撃事件を現場で目撃した直後に
ラジオへコールしている。
緊急事態の報告と
町民への注意喚起のためだ。

パットは真に受けず、
何かの誤解だと考えて
冗談を言って受け流してしまう。

パットは2010年に交流があった
ウェイクのことも完全に忘れているため

テリーが襲撃前に現場で
失踪したはずのウェイクを目撃したことに
驚いていることが理解できず
二人のやりとりが噛み合わない。


パットがひらめいて早合点する。
どうやら自分以外の人は皆、
ウェイクという失踪者をウェンディと
混同したから、ウェンディが
死んだと変な勘違いをするのだと。

パットがテリーに
日曜市でウェンディを見たはずだと
同意を求める。
テリーは絶句して電話を切る。

パットの終了の挨拶。
ジム・フィガモレの回をお届けしたと
結びの言葉を口にする。
何かが違うと気づくも、正しい内容が
思い出せない。

「遅れた放送」

本日のラジオ放送が
いつもより遅くなった。
そのことを詫び、理由を説明するパット。

パットが言うには、
今回のラジオの前に
考えを整理するために
山でハイキングしていた。

山の道を知り尽くしていて
迷うはずがないのに、
今回はなぜか
「途中で道が変ったたみたいで」
帰る道が分からなくなり、
ラジオの時間に遅れてしまったらしい。

遅れた理由説明のあと、
パットは本題に入り、
番組の新しいスポンサーを紹介する。

……しかし、思い出せない。
新しいスポンサー名が書かれた
メモを探し出すパット。

どのメモに書かれているのも
ウェンディの名前だ。

ウェンディが誰なのか
パットは思い出せない。

パットはやけになってしまい、
一層スポンサーを「コーヒーランド」だ
ということにしようとするが、

口に出してみるとその名前では
しっくりこないと感じるが、
正しい名称が思い出せない。
今日は本調子ではないようだと嘆くパット。

本調子でないと言った流れで
パットは今日調子が悪い理由を
説明し始める。

ハイキングの話の最初に戻り、
同じ話が繰り返される。

話の途中で、
道が分からなくなって迷った、
というオチが記憶から抜け落ちてしまい、
話を続けられなくなった

パットは仕方なくハイキングの話をやめ、
「本番組初めてのゲスト」に
電話インタビューを始める。

メモではゲスト出演の人物は
ウェンディと書かれている。

電話が応答されない。


パットはふとウェンディの
ビーフジャーキーのことを思い出す。
新しいスポンサーはきっと
「デイビス・ファミリー・
 ビーフジャーキー」だ、と合点する。

番組のスポンサーを忘れたことに
動揺し、詫びるパットは、
自身の混乱の背景を補足するため
ハイキングの話を最初から繰り返す。
話の途中で「グルグル回っている」
気持ちになったと嘆く。

パットはこんな気分になったのは
雨の湿気のせいだと分析し、
落ち着きを取り戻そうとする。

空気を明るくしようと
マイジンクスの
「私はいつも雨で頭痛になると
 すぐに晴れるですよ」を
紹介し、リスナーを励ます。

その後パットは音楽を流すために
曲紹介を始めるが、ミュージシャンの
名前が思い出せない。

どのメモに書かれた
名前も「ウェンディ」になっていて
参考にならない。

パットは完全にわけが分からなくなった。
パニックから抜け出そうと、深呼吸や、
視野に入っているものの名前を
口に出してみるエクササイズをし始める。

しばらくしゃべりつづける
パットは混乱したままで
効果はあまりなかったようだ。

突然、繋ぎっぱなしの
電話からタピオの声。
「誰かいないか? もう切るよ」

放送が終了する。


第三次異変中のパットについての考察


認知症
が少しずつ進行していくことに
苦しむパットの姿が
ラジオで描かれていますが、

パットが味わっている混乱と孤独は、
現実改変とループの中で彷徨い、
他の誰とも共有できない現実を抱えて
狂気や孤独の中で戦う
サーガやウェイクの境遇とは同種のもので、
メインストーリー呼応関係になっています。

「ちゃんとしたい」思いや
「正しくありたい」信念が強いことが
裏目に出てしまうところが
シンシアの悲劇とも彷彿させます。

パットの件が特に難しいのは、

彼の記憶力や感情認識能力の低下、
妙なこだわりに対して意地になるなど、
このあたりは認知症の症状に合致しますが、

闇の現実改変による段階的な影響
確実にあるはずです。

しかしパットについての原稿がないため、
その切り離しが簡単ではありません。

まず、作中拾った原稿が『リターン』の
すべてではないため、パットが
書かれていないかどうかは不明です。

また、ケイシーのように、
名指しで書かれていなければ
影響を受けないわけでもありません。

スクラッチ版『リターン』最終章の
ディアフェストの群衆にパットは
混ざっていますが、
これは「パット」と書いてそうなったのか、
「群衆のひとり」とでも書いて
パットがたまたまその役だったのかが
分かりません。

『アメリカンナイトメア』の内容ですが
ウェイクが2012年、
一夜限りのアリゾナ州
ナイトスプリングス町でスクラッチと
戦っているときに
口にしたコメントのひとつに

「ラジオやテレビの電波が
 世界の隔たりを突き抜けて
 闇の世界に届くことがある
 (それで現実側の一部の
  情報を知り得た)」
(うろ覚え大意)

というものがあったことを
思い出します。

ちょうど2012年の
架空の町のナイトスプリングスに
ラジオで登場したラジオパーソナリティの
エディ・ロッドマンも
ウェイクのループ回数が増えるにつれ
それまでと変わらないトークや性格を
キープしつつも、精神が崩れた言動が
徐々に増えていく雰囲気は
パットに近いものがありました。

次元を超える力を秘める
電波で発信する者は、別の人よりも
電波を介して他次元の力を
受けやすい危険性があるのでしょうか。
電波から闇が逆流してくる
イメージでしょうか(´ω`;)

あまりに足がかりがないので、
仮説と言っていいか微妙ですが、
上記の内容を踏まえた
個人的解釈のひとつは
マイナーすぎる現実差分に囚われた説
です。

パットは認知症も進行していますが、
それとは別で、ラジオの電波を介して、
闇の世界側にある、無数の可能現実の
鏡像を何らかの形で受信してしまいます。

70年代のアンダーソン兄弟の
密造酒狂気事件のように、
普通の人間が、闇の世界の複数の現実を
見過ぎると狂気に侵されます。

パットの場合受けた影響が
密造酒ほど強烈な影響ではなくても、
認知能力が衰えている中で、
じわじわと記憶が様々な別の可能性と
混線していきます。

パットが不幸なのは、
他の人にとっては動かぬ強い現実である
ウェンディの死に対して、
一人だけウェンディが生きている
可能現実の影響を
特に受けてしまったことでしょうか。

ビーフジャーキーとヘンテコな新味、
ウェイクのことを忘れたこと、
サーガの娘とバンカーの少女を
取り違えたことなど、

ウェンディのこと以外の
ブライトフォールズの現行現実との相違は、
そこまで自他を追い詰めるほどの
害になりません。
もちろんこのあたりも、
どれがどのように
認知症、妄想、闇の影響を受けているかは
辨別のしようがありません。

ウェンディの被害は、
『ディパーチャー』や『リターン』などの
筋書きにおいて、必然ではありません。

それらの現実改変の小説の筋書きにおいて
ウェンディはあくまでも
第二次異変のどこかで、
闇の存在の犠牲者になった
無記名の群衆のひとりで、

その後闇に支配された者として
彷徨いだしたところ、
樹木の教団に討伐された一人で
しかありません。

悲しい言い方になりますが、
ウェンディは
居ても居なくても変わらない、
誰であってもかまわない、
ホラー小説の世界に飲まれる
大勢の犠牲者の一人です。
その死も現実となるホラー小説の大筋に
影響しないものです。

そのため、逆に言えば
ウェンディが生きていてもかまいません。
闇の現実改変にも、闇の存在の目的にも、
ウェイクやサーガの思惑にも衝突しません。
ランダムダイスのさじ加減で
十分あり得た現実のひとつです。

ともかく、パットは
ウェンディの生存を含めた
妙な取り合わせの別の現実の要素を
受信し、自分の現実と混じり合った結果、
ブライトフォールズ全体を支配した
『リターン』の現実を共有する町民と
衝突し、老いによる心身の変化と
不自由以上に自分と他人を傷つける
日常の悲劇になった、という説です。

パットが平和な老後ライフを
エンジョイする世界線に
移行していけますように。

おまけ攻略ヒント:収集要素編

ゲーム内の収集要素攻略お助けアイテム


ゲーム内の収集用お助けアイテムを
サクッとご紹介します。


<闇の世界>
2つあります。

ティム・ブレーカー部屋内のマップ
 →未入手の重要地点がマップ上に
  マークされる

力の言葉(強化要素)>物の言葉
 >観光マップ

 近くの資源と重要地点が
 マップに表示される

ティムの部屋は闇の世界の
各マップに隠れています。

目印は警察の黄色テープ、
ティムのハミング、開かないドアです。

その近くをよく探すと部屋への
隠し通路が見つかります。


「物の言葉」は最速で
「イニシエーション3」で見つかります。


<現実世界>

サーガ側は一つのみです。

・装備品「セッター町長のチャーム」
→装備すると近くの資源と重要地点が
 マップに表示される

「セッター町長のチャーム」は
『リターン6』以降発生する
セッター町長サブイベントで入手可能です。

収集要素攻略におすすめの攻略サイト

個人的おすすめのは
「GUIDE4GAMERS.COM」さまの
攻略マップです。


フィルタリング機能付きで使いやすい
発見済みをチェックして非表示する機能も完備

闇の世界攻略マップURL

現実世界攻略マップURL


特におすすめの理由として、

全収集要素をひとつのマップ上に
表示可能という優れた一覧性と、

いかなる部分拡大にも負けない素晴らしい
画像解像度です。

他のサイトと比較し、
最も抜け漏れが少ない印象です。

※本記事執筆時点(2024/2)で
 該当サイトの闇の世界のシネマ前のところに
 漏れ抜けがあるため要注意です。
 その当たりにティム部屋や
 ケイシー看板エコーがあります。

「TXT」ボタンを押すと
各アイコンの対応要素名が表示されます。

対応要素名のボタンを操作して
表示収集要素のフィルタリングも可能。

マップ上の
アイコンをタップ/クリックすると
場所のスクショが表示され、
スクショウィンドウの「hide」ボタンを
押すと、発見済みのものとして
非表示にできます。

収集要素を片付ける推奨タイミング


ストーリーで該当マップに来ている時や、
各章の最後に任意探索目標が出ている時が
探し時と思います。

振り返って見ると
上記タイミングが各マップが
比較的に明るく、最も視野良好の時です。

最後の物語終盤前の戻り不可ポイント前に
「まとめ探索タイミング」がありますが、
全マップが容赦ない暗さになるため
非常に探索がしづらいと感じます。

二周目を予定している場合、
良いところで切り上げて
取りこぼしを二週目モード
「最後の原稿」で再チャレンジするのも
一つの選択肢です。

「セッター町長のチャーム」は
引き継ぎありのアイテムです。

ただ収集要素の取得状態は
ほとんどリセットされます。
(楽曲系のストーリーで
 100%手に入るものは
 引き継がれます)

セッター町長


数少ないハートウォーミング
収集要素の一つです。

2023年のブライトフォールズの各所に、
町長選に向けたセッター町長の宣伝ブースが
設置されています。

そこの看板を読むと、
宣伝キャッチコピーを収集できます。


セッター町長の選挙ブースは全部で6つ

収集要素を過剰に気にしても
仕方がありませんが、
サーガが政治への関心が高い人物だとしても、
住居地ではない、初めて来た田舎町の
選挙コピーをいちいち書き留めるのは
さすがに異常行動レベルではないかと、
正直プレイ中思いました(´ω`;)

というか、まさか収集していたなんて
想像もしませんでした。

 


収集済み選挙キャッチコピーは、
サーガの精神世界の武器強化台と
ラジオテーブルの間の壁の
額縁にまとめられています。
そこで進捗確認ができます。


『リターン6』以降の終盤になると、
選挙ブースの看板に
「セッター町長に会いに
 スオミホールに行こう!」の
お知らせが貼られるようになります。

セッター町長の握手会お知らせの貼り紙



お知らせの通りに
ウォータリーのスオミホールに行くと
ステージの上に黒いセッター犬が
待っています。セッター町長の正体です。

セッター町長さんを撫で撫ですると、
探索に役立つ「セッター町長のチャーム」を
入手します。


つぶらな瞳
サーガも大満足の撫で撫でイベント


セッター町長の
宣伝コピーをコンプリートすると、
直筆肉球サイン入りの写真がもらえます。

いいですね、
このはためくアメリカ国旗が醸し出す
なんとも言えない感じ(自由だ……)


鹿の剥製

サーガ捜査官の異常行動その二です。

彼女は鹿の頭の剥製を見つけては
「可哀想可哀想」などの弔いの言葉とともに
剥製を撫でずにいられない
鹿愛好家の女性です。


鹿の剥製を撫でるサーガ捜査官

選挙キャッチコピーを集められずに
いられないことより
まだ鹿の剥製を撫でる異常性が低く
感じられるのは、サーガの鹿好き情報は
わずかながら様々なところで
ちりばめられているからだと思います。


サーガが気に入って着ている
母フレイヤの手編みの北欧柄セーターも
森にいる鹿の図案が編み込まれています。
(サーガによるセーターの紹介は序盤、
 コールドロンレイクのFBC施設にいる
 イルモとの会話で聞けます)

鹿と木々のノルディックパターン


鹿の剥製は必ず屋内にあり、
多くは安全地帯の休憩部屋や町の施設の中で
見つかります。
内装が木の壁の部屋にある確率が
非常に高く、意識すると発見しやすいです。

サーガの精神世界にも剥製が一体あり、
アクセスすると収集進捗を
知らせてくれます。


\シャベッタァァッァァァアア/


コールドロンレイクの
封鎖されたキャンプ場にある剥製の部屋には
リターン5クリアで入手する
ボルトカッターで入れるようになります。

12体の剥製撫でをコンプリートすると、
精神世界の鹿の剥製から案内を聞いた後、
ロッジにある鍵がかかっていた一室が
入れるようになります。

鹿の剥製撫でを全12体コンプリートした時に、
精神世界の鹿の剥製に話しかけるとき

そこにレアアイテムはありませんが、
すこし多めに物資報酬が得られます。
鹿の贈り物です。

鹿の剥製の場所が分かりやすい
攻略サイトはこちらです


おまけ:原稿の読み上げ機能

前作同様、原稿はウェイクの
全文読み上げがついています。
原稿メニューで操作することで
再生可能です。


発売当初にUI表示がないため、
普通にプレイしていると
機能があることに気づきません。

勿体ないと思い本項目を書いたのですが、

2024年2月10時点では
アップデートで修正されました。


アップデート修正前には
読み上げ機能のUIがありませんでした
アップデートで追加されたUI

原稿画面に追加された
「ナレーションを再生✕」を実行することで
執筆部屋が背景の
読み上げモードが開始されます。

アップデートでUI対応前に
クリア済みの方オンリーに向けた
内容になってしまいましたが、
おまけとして残しておきます。

おわりに


いかがでしたでしょうか。
筆者は今なら
ローズ・マリーゴールドの
ウェイクファンクラブの扉も
堂々と叩ける気持ちです。

闇の湖のせいでスッキリしない
ファンクラブのみなさんに
「そういうことか!」「すっきりしたよ」
「よかったよ」「それナイスな説」などと
思っていただける箇所がありましたら
嬉しいです。

応援のお気持ちは
362円でお受け付けします。

ローズへのリスペクトと感謝を込めて
サ3ンクス トゥ ロ6ーズ2」です- ̗̀ (˶'ᵕ'˶) ̖́-☆


これといった特典はございませんが、
「サンクス トゥ ローズ」した方には
おまけ・オブ・ザ・おまけをつけます。

本文で使用されていない
2023年ブライトフォールズの旅の
個人的スクリーンショット集です。

ホラーに脅かされていなければ、
風光明媚でのどかな田舎町であるはずの
ブライトフォールズの本来の姿が
垣間見える風景が多めの
スクリーンショットをまとめました。

よろしければどうぞ。

15万字書いておいて
大変申し上げづらいのですが、
普段から考察記事を書く
アカウントではありませんので、
ミスマッチフォローがないよう
お気をつけください。

もし世界観の趣味の合うかもと感じた方で
考察沼におすすめのタイトルが
ありましたら、ぜひ教えてください。
喜んで飛び込みます。。・*・:≡( ε:)

ここまで長いお付き合いをいただき
本当にありがとうございました!

おまけ・オブ・ザ・おまけ:ブライトフォールズの旅写真


Thanks to Rose!

サンクス トゥ ローズ」をした方への
おまけのコーナーです。

ブライトフォールズの旅写真ということで、
本文未使用のスクリーンショット集を
紹介していきます。

20枚ほどで、
振り返りコメント付きです。

気分を変えて、
甘い物でも食べながら
わーいわーい見ていきましょう


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