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きみの後ろ姿

窓のそとを、見慣れた景色がとけていく。

空港へ、いつもの道を車で走る。夏休み、お正月、ディズニーランド。街を飛び出す冒険は、常に小さなきみと一緒だった。だけど今日、親の私は見送る役目。

お供はボストンバッグひとつ。大荷物はあとから送る。田舎の空港の搭乗ロビーはせまい。硬い椅子にふたり並んで腰かけると、飛行場がよくみえた。

あの飛行機に、きみは一人で乗る。東京で暮らすために。

ああ、時間だ。

元気でね、風邪ひかないように、ちゃんと食べるのよ。山ほどある気持ちが、何ひとつ言葉にならない。

「いってらっしゃい」

いつものように抱きしめる。このときばかりは、笑顔で送ると決めていた。きみは軽やかに手を振り、前を向いて歩いていく。いつの間に、あんなに大きくなったのかな。

どうかどうか、この新しい旅立ちに、あふれんばかりの幸せがありますように。

タラップを踏む後ろ姿は、涙で滲んで見えなかった。



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