スタッフみんなで会社を運営する、ということ。【係制度】

執筆・編集 山村光春(BOOKLUCK
撮影 松村 隆史

戦略やコンセプト開発、グラフィック、プロダクトなど幅広いデザイン活動を行うデザイン会社「株式会社エイトブランディングデザイン」。彼らの経営のかたちは一風変わっているようで、その実、これからの当たり前となる予感大大大。ライターのヤマムラが、そこんとこあれこれレポート。今回のテーマは総務部がなく、スタッフみんなが雑務を分担しあう「係制度」について。では、どうぞ!


総務部がない会社。

むべなるかな、会社が人が集まる「場」である以上、そこで日々営むための仕事はあまたある。
掃除やゴミの収集はもちろん、来客にお茶を出す、植物があれば世話をする、文具などの備品を管理をする、それも足りなくなったら発注する、ネットが繋がらなくなったら業者を呼ぶ……うんぬんかんぬん。

それらは空気中にただよう「ちり」よろしく、ふだんはフワッとして見えないけれど、たまればみるみる秩序と清潔感が失われていく。
こういうもろもろを一手に請け負うのは、企業の場合、ふつう総務部だろう。あるいはパートさんか、新人社員か。いずれにせよイメージは「やらされる」「押し付けられる」という雑用風情が、ほんのり漂う。

「エイトブランディングデザイン」の場合、そもそも総務部ってのが存在しない。そのためのアルバイトもいない。16名いるスタッフは、みなデザイナーなどのプレイヤーであり、みーんなネコの手を借りたくなるほど忙しい。
にもかかわらず、スタッフ全員が雑用的な仕事も面倒がらず、むしろ前のめりに(←ここ大事)分担し、請け負っているのだという。それってどうして?どうやって?素直に、知りたいと思った。


みんなで同じ釜の飯を食う「ご飯部」。


お昼になると、それまでミーティングに使っていた場所がとたん、ホカホカ〜としたいい匂いと空気に包まれる。今日のご飯担当である佐竹さんが、カレー(しかもなんだか本格的!)の準備を着々とし、階下からゾロゾロと集まってきたスタッフたちは、そのようすを楽しげに覗き込んだり、配膳を手伝ったり。場はするすると和んでいく。

「このピンクペッパーどこに売ってるの?」「カレーにヨーグルトかぁ」とあれやこれやと質問や感想が飛び交ったり。

別のとこでは「あ、これできたんだ〜!」と言いながら、写真やデザインをみんなでチェックしたり。

そんなこんな準備オッケー。参拝か!ってほどしっかり手を合わせ、声を合わせて「いただきま〜す!」。

もっと、会社を活性化させたくて。

こうして週に二度、持ち回り制でスタッフが食事を作り、みんなでテーブルを囲んで食べる「ご飯部」。担当の橘さんは言う。

「もともとは、会社をもっと活性化させたい!というスタッフの声から始まって。そのための案として、みんなでご飯食べた方が、仲良くなれるんじゃないかと。周りに相談したら『それなら、部としてやったらいいんじゃない?』となったんです」
そうするうち、橘さんは「もっとキッチンをよくしたい」「もっとおしゃれな食器を使いたい」と思うようになり、キッチンまわりの備品を整える「キッチン係」なるものもつくった。「ただやりたい、だけじゃなくて。係がいることで、どういうメリットがあるのかを考えて、提案書をつくりました」

さながらそれは、ふだんクライアント相手にやっている企画提案そのもの。スキルがここで、いい感じで発揮されているのだった。


仕事と同じくらい、モチベーションが上がるんです。

「非常に、心豊かな仕事だなと思って」

おっとり、でもしっかり語る服部さんは植物係。
「植物が好きなので、植物の成長が見れるのは楽しいですし、育てる喜びもある。またデザイン会社ですし、アイデアが生まれる場所として、殺風景よりはフレッシュな空間の方がいいんじゃないか、と思いながらやっています」


他に、茶菓子など備品の発注係、コンペ出品係も担当し、どれもやりがいを持って、心をのせてやっていると目を細める。
「とにかく、みんな反応がいいので。『あれ良かったよ』とか、『これにした方がいいんじゃない』とか、いろいろ言ってきてくれるんです。あとお客様からお茶出しを褒められることもありますし、仕事と同じくらいモチベーション上げてやれてます


自分の欲求を叶えてるだけ。


さらにみんなより係の数がぐーんと多いのが佐竹さんだ。「IT係、サンプル係、採用係、ファイリング係、自転車係、あと筋トレ部も!」と、自分でもだんだん半笑いになりながら教えてくれた。
「今までやっていたことを、名称付けてやるようになっただけで。筋トレ部も、休憩時間に希望者を集めてストレッチをしたり。やっていることは変わりないんですけど、ただ係や部ごとに責任者という担当がつくので、責任感はより芽生えたかもしれません

係になることによって「自分の欲求を叶えている」という佐竹さん。
「たとえばIT係だと、自分の意思でシステムが構築できるっていう喜び。いろいろ調べて、こういうのあったら仕事楽しいだろうなぁという願望を、働く場で取り入れてもらえるのは本当にうれしい」


共通するのは「自分ごと」という感覚

そう、みんなに共通するのは「自分ごと」という感覚。
「もし総務部がいたら、自分ごとになれない。『あの人たちがやってくれているからいいでしょ』みたいな気持ちになってたかもしれない。それが全員責任持ってやってるということは、会社の全体を見ることができる、その差は大きいと思いますね」(佐竹さん)
「自分の責任、管理で植物を保つとか、きちんとコンペに出品するとか。ひとりひとりがやることによって、自分たちで会社をつくっているという感覚。そういうところが、エイトブランディングデザインらしいなと思います」(服部さん)
「担当を持ったそれぞれが、いい意味で自分がやりたいようにやっている。だからみんな責任を持ってやっているんだなって」(橘さん)

最後に代表の西澤さんにも、分担制にした理由を聞いてみた。
基本は自立。大きい会社はすさまじい分業の中で、すごく一部のことをやっている。でもエイトブランディングデザインではみんなで助けあいながら、一部を担っている。僕にとっては掃除もお茶出しも、途切れなく全部デザインに繋がっている。すべて自分ごととしてとらえて、お客様と向きあわないと、本当の意味でのスペシャリストではないと思っているので」
同じことをするのだって「会社にやらされてる」と「会社を使って自分のやりたいようにできる」は、限りなく表裏一体。その「意識のオセロ」のひっくり返し方が、エイトブランディングデザインのスタッフはほんとに上手!と舌をくるくる巻くばかりなのだった。

執筆・編集

山村光春

1970年東京生まれ。雑誌「オリーブ」のライターを経て、2000年に雑誌や書籍、広告の編集・執筆を手がけるBOOKLUCK設立。暮らしまわりや旅まわりのジャンルをおもに活動中。編著書に「眺めのいいカフェ」(アスペクト)「おうちで作れるカフェの朝食」(世界文化社)など。現在、東京と福岡との二拠点生活中。http://bookluck.jp/

撮影

松村 隆史

写真家

1975年富山生まれ。大学中退後に上京。スタジオフォボスに勤務。2000年、フリーランスとして独立。自然物、暮し、料理、ポートレイトなどの撮影を中心に活動。http://www.matsumuratakafumi.com/

「STAFF INTERVIEW」をまとめて見るには、こちら(外部サイト)


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エイトブランディングデザイン

企業のブランディングを専門に行うデザイン会社「エイトブランディングデザイン」の公式アカウントです。ブランド開発ストーリーやデザイナーの日々の仕事などを綴ります。エイトブランディングデザイン → http://www.8brandingdesign.com/

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