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「ハハヌケ」04:自分を育てる

こんにちは、八壁ゆかりです。「ハハヌケ」第4回です。
今日は、「母トンネル」をヌケるために、母親に働きかけるのではなく、自分ができることを、私の知る範囲で書いていこうと思います。

上京する前に数年間お世話になった精神科医は、彼女とも何度も話したことがあって、

「お母さんからの分離・独立が、あなたの最終ゴールかもね」

と言いました。
そして、夫と出会って私が本当に彼と一緒になりたいと相談した時も、

「すぐにどうこうできる問題ではないと思う。
 何しろ約三十年、あなたはお母さんと同一化してきてるから。
 恋人さんへの想いを以てしても、難しいかもしれない」

と、かなりシビアな意見をくれました。これは重い言葉でした。
いくら夫のことを愛していても、まだ彼は私の中ではご新規さん。一方彼女は生まれてからずっと私に強く作用する存在でしたから。

「同一化」という言葉を先に使いましたが、そうなんです、彼女が私を「自分の一部」と思っていたように、私は私で彼女の顔色をうかがい、全てのアクションには彼女の許可が必要だという考えに囚われていたのです。

さらに、その医者はこんなことも言いました。

「親っていうのは、『自分より先に老いていく人』なんだよ。
 そんな人たちを変えるより、あなた自身が変わった方がいい」

これは、悲しいけれど本当のことです。
彼女は物忘れが増えたとごち、父親の癇癪の頻度が上がっているのも事実でした。

こんな私でも、変わりたいと希求してきました。今現在で言えば、以前書いた鼻毛先生の言葉「無反応を貫く」を頑張っているつもりです。


つい先日、私は夫の目の前で家事について思い詰めてしまいました。
最近体調がいまいち優れず、部屋は散らかり放題、料理も夫にやってもらうことが増えています。

そんな時、私の中で声がするのです。

「旦那のためにも家事はしないとダメでしょ!」
「またお皿洗いためてるんじゃないの?」
「どんなにしんどくても最低限の生活はしないと!」

彼女の声です。もちろん、幻聴です。分かっていても、私の中には小さな彼女がいて、ずっと私をしかりつけるのです。
それを泣きながら夫に言うと、

「お母さんは、いないよ」

と言いました。

「ゆかりさんの中に、僕はいないの?」

……いませんでした。

「じゃあ僕を登場させてよ」

ベッドに俯せの状態で、私は必死に夫をイメージしました。とはいえ脳内の話、あまりにも抽象的な話なので、上手くいっているかなかなか分かりません。

「今日は家事しなくていい、って僕が言うから。声に出して繰り返して」

夫の言う通り、家事しなくていい・家事しなくていい、と口に出してみると、少しずつではありますが、頭の中の彼女の声が遠ざかり、夫の声がクリアに聞こえるようになった気がしました。

結果的に、この日は家事を夫に丸投げしてしまいましたが、心身は楽になりました。それからまた彼女の声が聞こえるような気がしたら、夫の言葉を思い出すようにしています。

こんな風に、自分の力や信頼できる他者の力を借りて、変わっていくことは可能だと思います。私もまだほとんど変われていませんが、予感はしています。
この小さな変化を積み重ねていけば、私はきっと変われる。そう信じています。



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