手塚治虫の宮崎駿監督『カリオストロの城』(79)評 『一億人の手塚治虫』より
初出誌は『奇想天外別冊』(1980年5月)の小野耕世(1939-)氏がホストの対談
《手塚 アニメに何を求めているかということはね、僕たちとテレビアニメで育ってきた連中とはちがうんじゃないですか。
小野 僕もそう思いますけど、日本でいわれているアニメブームというのは日本独自の現象ですね。つまり、そういう一つのストーリーを追う、アニメというか、カットのリズムとセリフが絵物語。そういうものを世界がならっていくということがありうるのかどうか。ちょっと松本さん(※松本零士?)ともお話したんだけど、逆にそういう日本の作り方が、動きは動いてないけれども、世界のアニメに影響を与えるということが起りうるかどうかということです。
手塚 これは観客のね、アニメ感覚とか、漫画に対する感覚次第だと思うんですよ。つまり、あくまでも、基本的な受けとり方として、漫画に笑いを求める大衆が多ければ、それは永久に影響されないんじゃないですか。日本の場合は、漫画というものを、笑うものだという感覚を、今の若い人はもってない。
小野 なるほどね。僕なんか、だから、日本的なアニメにはユーモアがないのがちょっとがっかりしちゃうんですね。
手塚 本当にないものね。
小野 まじめすぎちゃって。
手塚 「999」(※『銀河鉄道999』(79)?)だってないでしょ。逆に「ルパン」なんか、まあ、ユーモアというか、非常にすぐれたリズム感覚はある。リズムのユーモアですね。ところが、こんどの「ルパン」(※『ルパン三世 カリオストロの城』(79)?)というのはそれほど大ヒットもしてない。
小野 「カリオストロの城」は僕はあまりおもしろいとは思わなかったなあ。手塚先生はおもしろいと思われました?
手塚 僕はおもしろいと思った。うちの連中(※アシスタント?)もみなおもしろがって見ていた。》
◆対談掲載の初出誌は、おそらく『SFアニメ大全集』(1980年/奇想天外社)
◆『一億人の手塚治虫』(1989年/JICC出版局)
伝記『一億人の手塚治虫』は、私は名著だと思います。1950年代前半に爆発的人気だったらしい柔道漫画『イガグリくん』の作者で、早逝した福井英一(1921-1954)氏と、自尊心の強い手塚との、手塚の思い込みによる一方的?なライバル関係を、私は本書で初めて知りましたが、まるで「ジョー(矢吹 丈)と力石 徹」みたいな終わりを迎えてしまうので、初読時は少しだけ泣いた。
◆「帯付きの書影」と「目次」と「編集スタッフ」
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