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行きたかった場所に行って放電する

 このところちょっとした不安定さを持て余していて、自分でどうしようもできないあたりがイヤだった。外は気候が穏やかだし、どこか気分を変えられるような場所に行きたいな、などと考えていた。
 天草はどうか。
 2日前の寝床でそんなことをおもって、いくつか考えを巡らせながらねむりに落ちた。

 翌朝いくつかキーボードを叩いて調べるなどして、次の日に日帰りで行くことに決めた。

*

 天草は4年ぶりだった。
 日帰りで船を使うルートなので足を運ぶ場所はコンパクトにまとめた。今回は南島原市の口之津港から天草市鬼池港をむすぶフェリーを使う。早朝に自宅を出て、8時半に鬼池港に着いた。まずは港から1時間ほどの﨑津集落に向かった。
 2度目の﨑津教会をあとにして、海上のマリア像をみて、歩いていたらヒルコさんがいたので手を合わせる。蛭子ヒルコ神には以前からどこか惹かれるものがある。

 﨑津諏訪神社の参道は海と垂直になっている。木々の影になっている参道の階段を上り、お宮の中と裏詣りをしていたら、後ろに階段のあるのに気づいた。金比羅宮と書いてあった。
 前回来たときには気づかなかった。もっとも気づいたとしても8月のとてつもなく暑い日だったから、素通りしていたかもしれないけれど。ついこの間、地元の古い金刀比羅神社の話を聞いて話題にしていたところだったから気になって、もうお昼を過ぎて気温も高かったけど、上まで行ってみることにした。
 上りはじめてしばらくは、ただ足を動かすことしか考えていなかったけど、終りが見えなくて息があがってきた。森に囲まれているとはいえ、汗が出てくる。気を散らすためにも途中から階段を数えながら、ひたすら上っていく。
 やっと頂上かとおもわれるところまで見えてきて、途中から数えた階段から見当をつけると、おそらく全部で500段くらいだっただろうか。そこは展望台になっていて、視線を巡らせると奥に金比羅宮の鳥居が見えたから、お詣りをした。小さな祠があるのみだった。

金比羅宮の祠

 展望台のほうへ行って見渡すと、眼下に﨑津集落が見える。からだを冷やすのにしばらく写真を撮ったりした。展望台の中央には鐘があって、というかこの展望台には「教会の見えるチャペルの鐘展望公園」と名がついている。上ってくる人を眺めていたら、金比羅宮にお詣りをしているわけでもなさそうだったから、みんなこの公園を目指して来ているのかもしれないとおもった。鐘は自由に鳴らしていいみたいで、どうりでさっきからおかしな時間に鐘の音がしていたのだ。

 﨑津の集落は以前も訪れているからさっと済ませるつもりだったのに、長い時間を過ごしてしまった。次はド・ロ版画のある大江教会に向かった。ここは初めてだった。
 大江教会は賑わっていた。聖堂に入って探すと正面入り口の上に額装されたド・ロ版画を見つけた。すごく高い位置にあって、もっとじっくり眺めたかったのだけど、首が痛くなったからほどほどにしておいた。

大江教会パンフレットより(ド・ロ版画は左上)

 大江教会をあとにして、次は妙見ヶ浦を目指した。雲仙の妙見岳を訪れたとき、熊本にもいくつか「妙見」の名のつく土地があるのが気になっていた。
 海沿いの道をしばらく行って、妙見ヶ浦の道路公園らしきものが見えた。奥のほうに、さらに下に降りていく道があって、そこを降って駐車場に着いたらとても賑わっていた。観光客ではなく地元のダイバーたちで、ぜんぜん知らなかったけど妙見ヶ浦はダイビングスポットとして有名だったのだ。ちょっと気が引けたけど、わいわいやってるグループの横を平気なふりをして(小心者)通り過ぎ、海のほうへ歩いた。
 波の音がきもちいい。海の向こうには野母半島の影が見えた。
 干上がったクラゲを避けながら岩場を歩いて、静かな場所で立ち止まって靴を脱いだ。海に足をつけて、しばらくぼおっと海の向こうを眺めているのはきもちがよかった。

 他にも興味深い場所はあったんだけど、余裕を持って港に戻ることにした。船は大型連休の増便になっているんだけど、予約制じゃなくて先着順だから早めに港に着いておきたかったのだ。口之津の港から自宅までの道が混むだろうことを想定してのことだった。

 港に着いたら、予定していた1本前の便に乗れそうだった。乗船まで10分、急いで乗船券を買っていたら、土産物の中に天草石の砥石が並んでいるのが見えた。ほ、欲しい、、でもどう考えても時間が足りなかった。次回はゆっくり見て購入したいとおもった。

 口之津港から自宅まではあんのじょう渋滞もあって、普段より30分以上余計にかかった。いつもの私なら仕事とはいえ連休中にどこか(今回は天草)に行こうなどと考えないのだけど、行ってよかった。天草の土地がやさしかった。


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