どこかへ行って誰かに会うときや、県外から友人が来るときなどのたのしみのひとつに手みやげがある。私にとってのおいしいものや、好きなもの、まだその人が食べたことない（かもしれない）ものを喜んでもらえたらとてもうれしい。

　このお菓子は、ずっと前の習いごとの集まりで、メンバーの一人が持ってきたもので、その時まで私はこのお菓子を知らなかった。長崎ではよく見かける中華菓子の「よりより」で有名な福建というお店の商品で、「ごまパン（糖餅）」という。

　手のひらよりもひと回り大きいくらいなのだけど、中身が詰まったものではなく、空洞になっている。中は片方に黒砂糖が塗ってあって、外の皮には白ごまがたっぷりまぶしてある。

　このお菓子は、以前4つ入りの大きな袋で売っていて、シンプルな原材料のわりに賞味期限がすごく短かった。1週間もなかったとおもう。かさばるし、賞味期限が短いのでお土産にしたくてもむずかしかった。それから、「よりより」は県内のあらゆるところで売っているけれど、「ごまパン」を扱っているのは直営店のみだったので、例えば空港などでパッと買うなどができなかったのだ。
　昨年だったか、久しぶりに直営店をのぞいたら、ごまパンが５個入りになっていた。あれっとおもって手に取ると、袋のなかのごまパンが真空の個包装になっているのが見えた。賞味期限が伸びている。

　コロナ禍で観光客が減った影響がこんなところにも及んでいるとは。個包装になったことでお土産にしやすい（送ることもできる）けれどプラスチックごみが増えるなあとか、でも売れなくて商品がなくなってしまうのはあまりにも惜しいなあとか、色んなおもいで心が乱れた（おおげさ）。

　さて、このお菓子は袋から出してそのまま食べられるけれど、表面をちょっと焼いたらとてもおいしい。まぶしてあるごまと小麦粉が香ばしくなり、中の黒砂糖が溶けて風味が増す。食べるときは必ず焼いてほしい。

「よりより」や「月餅」を作るメーカーはいくつかあるけれど、「ごまパン」は福建でしか作っていない。これを気に入ってくれた友人が言うにはビールやワインにも合うらしい（私は下戸なもので）。

　次は何をもっていこうかな？　と考えるのはたのしい。地元であっても知らないおいしいがあるかもしれないと探すのもとてもたのしい。自分がよそに出かけるときも、その土地のおいしいものリサーチは欠かさない（そしてお土産を買う財布の紐はゆるゆるだ）。まあ、ただの食いしん坊です。