見出し画像

カヌレ、カヌレ

 長崎という土地においては長崎街道をシュガーロードと呼び、貿易港として早くから海外にひらけていたことから、砂糖との関りが深いのだそう。以前にも書いたように、饅頭屋の類が多いし、料理に使う砂糖の量も半端ではありません(特に年配者であればあるほど)。スーパーなどでの砂糖の特売日なんか、アリを凌ぐ勢いのたかりようです。一体何に砂糖をそんなに使うんだろうと、家に砂糖を置かない私なんかは首をひねってしまいます。

 それで、お菓子屋さんも多いんですけど、偏りがあります。昔からのものが根強いため、話題のものでも入ってくるのが遅いか、あるいは入ってきても気がついたら見かけなくなることがしょっちゅうある。
 そういったことは甘いものに限らず、例えば私はタイ料理が好きなのですが、生活圏内にタイ料理屋さんはありません。ちょっとだけ住んでいた宮崎には、おいしいタイ料理屋さんが何件かあって、私はそのエキゾチックなおいしさの虜になりました。長崎にはないのです。何と言ってもちゃんぽん、皿うどんが強い。ちゃんぽんと皿うどんさえあれば誰も文句なんか言わないみたいです。せつない。

 甘いもので言うと、カステラ方面の和菓子屋も洋菓子屋さんも豊富にありますが、そこで扱うお菓子類がほとんど似通っています。もちろん、お店によって特徴があり、好みは分かれるわけですが、わくわく感みたいなものが物足りない。
 何も最新のものに限った話ではないのです。例えば、たい焼き屋さんもありません。あっても、スーパーマーケットなどに定期的に出店する、生地がふかふかであんこが申し訳程度しか入っていないような、やる気が伺えないお店くらい。『天然もの』のたい焼き屋さんは、ここ長崎には必要とされてないようです。あつあつ、かりかり生地でこだわりあんこの詰まったたい焼き屋が食べたいなあ。あ、あんみつ屋さんもない(しつこい)。
 地方すぎて、またこのように他所のものが浸透しにくいという土地柄のおかげで、こういうことが多いみたいです。やっぱりせつない。

 それで、カヌレのことですけれど、このお菓子も長くここらあたりではみかけませんでした。ガレッド・デ・ロワの記事のときにちょっと触れましたが、同じくフランスのお菓子です。小さくて、見た目はこんがりしていて、中身はどんな食感なんだろう、どんな風味がするんだろうと、ずっと気になっていました。身近にカヌレのないとおもっていた私の周辺に、ちょっとした変化が起きたのは、このお菓子屋さんを訪問してからでした。

画像1

HONNETE パティスリーオネット(長崎市興善町)/タルトシトロン

 2019年の12月にオープンしたこのお店は、フランス菓子店ということでした。開店直後は行列しているというのを聞いていて(長崎の人は行列しないと言われます)足が向きませんでした。そうしたら昨年3月のホワイトデイに、職場の男の子が並んで買ったと言って、このお店のお菓子をお返しにくれました。生菓子じゃなくて焼き菓子の詰合せで、8種類くらいのどれもがおいしかった。その後、初めてお店の扉を自分で開けたのは9月になってからでした。
 生菓子を目当てに行きましたが、冷蔵ケースの隣のブースにカヌレがあったのを見逃しません。カヌレとファーブルトンも買いました。これが私にとって初めましてのカヌレ。

 その次に見たのは、ガレッド・デ・ロワを目当てに行ったこのお店でした。

画像2

Baretpain バレパン(長崎市江戸町のワインバー)/カンパーニュ

 ワインバーですが、営業時間を変更しテイクアウトでの対応をしていたのです。ワインに合うパンや総菜、お菓子のテイクアウトの中にガレッド・デ・ロワやカヌレがラインナップされていました。
 ガレッド・デ・ロワは季節のお菓子なので、今は販売していません。写真のカンパーニュ、とってもおいしいです。ここのれもんケーキもおすすめ。

 次はゴルゴンゾーラのチーズケーキを目当てに行ったこちらのお店。ここのものは、食感がかなり違っていました。このお店は何と言ってもやはり、ゴルゴンゾーラのケーキが好みの味。

 もう1件、近所なのにその存在を知ったのはごく最近、というお菓子屋さんがあり、先日行ってきました。存在を知ってからもずいぶん経ちますが、ケーキって私には記念日感みたいな感覚があって、なかなか行かないのです(チョコ優先)。

画像3

BERGE ケーキショップベルジュ(長崎市滑石)/ミルフィーユ

 私が選んだのはミルフィーユ。だいたいのお菓子屋さん(私の生活圏内の話)で見るものは、イチゴを使ったミルフィーユですが、カスタード好きとしてはこのタイプのものがうれしい。イチゴから出る水分に影響されない、さくさくのパイ生地と品の良いカスタードのおいしさが堪能できます。
 SNSで見たところ、フランス菓子を多く作っているようだったので、もしかしたらカヌレがあるかもしれないと思っていました。探すまでもなくショーケースの中に並んでいて、買います。こちらのは、オレンジが香る、甘さが絶妙のおいしいカヌレでした。

 思いがけずこの1年足らずで4つのお店のカヌレを食べることになりました。今のところ、バレパンとベルジュのカヌレが甘さの具合や食感において、私の好みです。オネットのは甘さが強めに感じました。タケムラのものはラム酒がたっぷり。こちらのお店のコンセプトとして、ワイン向けということがあるのかもしれません(勝手な想像です)。

 ケーキショップベルジュはお菓子がおいしい上に、お店の接客がとても素敵で、また行きたいとおもわせるお店でした。ミルフィーユ、カヌレの他、その日の連れがエクレールとモンブランを選びました(トップ画像)。日を開けても食べられるからと選んだ焼き菓子も、おいしかった。

 カヌレが特別に好き! ってことでもないんですが(なんだそれ)、気になるお菓子。これからもどこかで見つけたら試してみるかもしれません。

 昔むかし、うちの店のケーキセットで絶大な人気を集めていたのはモンブランでした。うちでは近くのケーキショップからとった数種類の中から、注文ごとにガラスドームの中から選んでもらっていたので、早い者勝ちです。おばさま方が競い合って選び取るモンブランを、自分で選んで買ったことはありません。モンブランより栗そのものがいい。

 ケーキショップで必ず買うっていうお菓子はありますか? この質問に近いものをあるところで受けて、私は気分屋なのですぐにこれというのが出てきませんでした。こういうことはたまにあって、自分の「好き」がすぐに出てこない。時間がかかる。それで定番の好きをもっている人なんかをみると何となく羨ましいような、嫉妬を感じるような気になります。

画像4

ベルジュのカヌレ

この記事が参加している募集

至福のスイーツ

おいしいお店

サポートを頂戴しましたら、チョコレートか機材か旅の資金にさせていただきます。