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多様性とものづくりについて考える

ご縁があり「わたしとコートと■展」に行ってきました。

きっかけや展示内容の紹介をはじめ、私が想ったことや考えたことについて書き記していきます。

きっかけ

私は昨年のTESフェス アイデアオリンピックにおいて、ファッションとコネクトするモビリティ「WearRide」を学生達と共に開発してきました。

せっかく頑張って作ってきたのに、アイデアオリンピックだけで終わるのは寂しいものです。作品の発展及び転用可能性や、ものづくりの振り返りを兼ね、私は例年、他のイベントにも積極的に展示するようにしています。それは例えば、MakerFaireやヒーローズリーグ等といった、ものづくり(Maker)系統のものです。

その中の1つとして昨年、ヒーローズリーグ内のMAIDリーグへWearRideを出展してきました。

本リーグはオープンコラボレーションスペースのYahoo!LODGEで開催。LODGEを活用されている方々も、気軽に展示品を見に来れる形となるように工夫されたイベントとなっていました。そこでたまたま、LODGEを訪れていたコオフク代表の西村さんと知り合い、WearRideに興味を示していただき、コオフクの活動を知るきっかけを得たというわけです。

コオフク / Co-FUKU

任意団体「コオフク」は障がい者の衣生活を改善すべく、身体的にも精神的にも心地よい服の提供や、関連する啓発活動を行っています。私らしく。あなたらしく。「誰でもおしゃれを楽しめる社会」を目指すアパレル出身の有志で立ち上げた活動体。団体名の「コオフク」とは、「考服」「CO(=共同、相互)服 」「幸福」を意味しています。

まずもって、私はこの活動の”直感的な分かりやすさ”のようなものに惹かれました。本団体はファッションを通じてダイバーシティやインクルージョンの実現を目指しています。そもそもファッションは多様性があって然るべきですよね。そこに障がいや働き方の多様性が紐付くことで、大きな発展性のが見出せてきます。

コオフクの活動は多岐にわたって行われているようです。詳細は上記リンク先をご覧ください。

WearRideが持つ多様性

話は戻りますが、WearRideのコンセプトは、モビリティにもっと「個性」を持たせる為、ファッションとコネクトすることで多様性を見出す事を目的としています。メカニカルで硬いイメージではなく、布状の外装で日常生活に溶け込ませることが主題です。

しかし、本作を様々な場面で紹介していると、「車椅子ユーザーの外装もオシャレにできないか?」という声も多くいただきました。これは当初我々が考えきれていなかった活用方法で、他イベントへの展示で得られた大きな知見の1つでもあります。※当初は学生等が日常生活で使うイメージ  

コオフクさんがWearRideに感じた印象というのも、きっとそちら側への魅力が強いのだと思います。

しかしながら現状のWearRideで既存の車椅子への活用は難しい為、ファッションとコネクトするモビリティというコンセプトを活かしつつ、そういった意見を取り入れながら、今後さらに改良・発展させていくつもりです。あるいはWearRideに拘らずとも、我々とコオフクさんの活動が上手く繋げられないか、現在色々と模索しています。

わたしとコートと■展

ここからは展示会の話。本イベントは2/1〜2/6まで、ワールド北青山ビル 1Fで開催されています。

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本イベントは2019年9月~12月に行われた「みなとコオフク塾」の成果発表の場となっています。「みなとコオフク塾」は、港区にゆかりのある多様な人々が集い、衣服、服を着ることを通して、障がいと生きる人が抱えるおしゃれの悩み・課題を理解し、成果発表まで行う、コオフク主催のワークショッププログラムです。新しい価値観のオシャレ、「インクルーシブファッション」の先駆けですね。

また、「わたしとコートと■展 」の■は「しかく」ではなく、曖昧性を持った「なになに」と呼称しています。不完全なタイトルに来場者が参画することで言葉を埋め、誰もが社会の一員として多様性を受け入れる精神的な素地をつくりだしています。

会期中は各チームの作品が展示してあります。2/1は成果発表会やトークセッション、2/2はダイバーシティワークショップも開催されるとのこと。私は2/1の成果発表会に参加してきました。

展示作品
作品は下記写真のような形で展示されていました。

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作品と共にキャッチコピー、悩み事、解決法がとてもシンプルに分かりやすく書いてありました。

そもそも、車椅子ユーザーの方がコートを着るのが難しいという話(よく考えれば分かることではあるのだけれど)、恥ずかしながら、私はこれまで意識した事がありませんでした。本展示では、コート製作の工夫以上に、皆さんの困り事に対する私自身の意識や知識のなさが浮き彫りになりました。

成果発表会
ファッションショーという呼び方もしていましたね。みなとコオフク塾の活動内容や展示作品を、各チームごとに発表する場です。

ここでのポイントは、障がいを持った方だけでなく、あるいは企業だけでもなく、一つのチームが多様な方々で構成されていたことでしょう。あとから募集要項を見てみましたが、障がい者、LGBTQ、中学生、高校生、学生、社会人など、いずれかにあてはまる多様な方との記載がありました。最終的には成果物を仕上げる必要がある為、チーム内には必ず専門家の方が所属しているようでしたが、多様なメンバーであるからこその創意工夫があって素晴らしかったです。

発表で印象的だったのは、「着る人と着せる人、二人が楽しい服」という言葉。障がいに寄り添った考え方に固執してしまうと「着る人」のみのことを考えがちですが、多様なチームだからこそ「着せる人」側のことまで考え抜かれていて感心しました。双方向に嬉しさがあるのは素敵ですね。

トークセッション
このトークセッション、とても面白かったです。仕事柄、ダイバーシティ系の話ってよく耳にする為、新鮮味がないかと思っていたのですが、まだまだ私自身知らない事も多いものですね。

どこに新鮮味があったかというと「商業施設目線」という点です。私はどちらかというというと「働く人」側の話をよく聞くものですから、施設環境について本音トークを聞けるのは貴重。

面白かった話をいくつかご紹介します。

観光案内所 = 多様性社会のプロトタイプ
東急不動産の若津さんのお話。アートセンターを併設した日本初の観光支援施設「shibuya-san」の紹介で使われていた言葉。

正直、観光案内所って今後必要性あるのかな?と今まで疑問に思うことがありました。この考え方はエンジニア志向が強いからなのでしょうね。SNSや然るべきサービスでもって、観光案内所というのは将来、IT側へ移行するものだと思っていました。しかし、この話で大きく印象が変わりました。

現状の観光案内所利用者TOP3は、
 1. 日本在住の外国人
 2. 日本旅行者の外国人
 3. 日本のおじいちゃんおばあちゃん

ようするに、海外の人は良く使っているとのこと。そういった場合に観光案内所そのものが、ダイバーシティを受け入れた、情報と文化の混ざり合う空間である必要がある。例えば、私自身が海外行ったとして、やはり現地の案内所に日本人いたら安心する反面、せっかく海外を訪れたのだから、現地の人と触れ合いたいという希望もあります。そういったことに対し、複合的なコミュニケーションを構築する場として、観光案内所はより大きな可能性を秘めているのでしょうね。

今後の商業施設に求められることとは?
例えば以下の問いに対して。

「スロープ完備だけど接客が悪い店と、段差はあるけど接客が良い店、どちらに行きたい?」

後者の方が行きたい人が多い、という話。環境整備をどれだけ推進しても、店員さんの接客態度や印象が大事。どれだけ障がい者に優しい施設にしたところで、販売する商品や人に魅力がなければ、集客は望めない。

「ネット販売が主流の今、商業施設の魅力ってなんだろう?」

それは人との触れ合いをはじめとした、その場所へ行きたいという、強い魅力を持った商業施設とすること。例えば、丸井グループでは車いすで利用できる試着室「みんなのフィッティングルーム」を展開しています。

ユーザーエクスペリエンスという言葉が最近よく使われますが、どんな業種においても、お客様の体験や経験をどう盛り上げていくかが大切なのですね。

私の想いや考えたこと

私は正直、これまでの人生において、障がい者を支援する、交流するといったことをあまりしてこなかったタイプの人間です。それは、身近にそういった人が少なかったり、こちらが一方的に消耗してしまう印象が強かった為という言い訳です。「他が為」とは聞こえが良いものの、実際に動く原動力が不足していたのでしょう。

ただ何事もきっかけが大切です。ものづくりだって、私は幼い頃や学生時代から好んでやっていたわけではありません。ほんの僅かなきっかけを得て、自ら道を歩んでいます。

今回の「わたしとコートと■展」や、先日訪れた「分身ロボットカフェ」等は、そういったダイバーシティ、インクルージョンの活動に触れる良いきっかけとなりました。

手を動かすと同じく、足を運ぶというのはとても大切です。ただの情報だけでは、心を動かす原動力も弱いものですから。また、今回プライベートで参加する意義も強くありました。仕事で行ってしまうと方針や義務感が強く、自身の真の想いや感覚が、どうしても鈍ってしまいがちだからです。

上記では「こちらが一方的に消耗する」という表現を使いましたが、それは私自身が持っている武器や心の余裕が少なかった為なのだろうと感じています。今は確かなものとして、「ものづくり」という武器を持ち合わせていますし、経験を重ねると余裕も生まれてきます。余裕が生まれると、少しずつ行動意欲も沸いてきます。

今後はより一層、自身が持ち合わせている技能でもって、多くの方々と一緒に課題を解決していけるよう努めていきたいものです。まずは少しでも意識することが大事。意識が醸成できてきたならば、手を動かしたり、足を運んだり、何か行動に繋げつつ…。

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