2019/4/18

不気味の谷、ではないけれど誰かのことを知れば知るほど距離を置きたくなることってあって、まあそんなことは当たり前、でなきゃ「外面」などという言葉は存在しないわけである。一対一の人間関係はダイビングに似ていて(したことないけど)、浅瀬で泳いでいた頃には戻れない、美しい魚に出会うこともあれば単に荒涼とした冷水が広がっていると気づくこともある。大切な思い出は実は消費物であって、誰かに話すとその度に貴重さが減る。薄暗いバーで隣に座る異性に、或いは町外れの居酒屋で同性に、彼らの大切な思い出がしまいこまれた海の底の宝箱の鍵を差し出され、うっかり受け取ってしまった経験は誰しもあるだろう。夏目漱石『こころ』に「要塞の地図」という表現がある。相手が心の奥に大切にしていることを知ることは弱点を知るのに似ている。もしくはルービックキューブの解法がインターネットで調べれば出てくると知って、興味を失ってしまうような。私たちがふだん算数ドリルを使って勉強しないのは足し算なんて練習せずともできることを知っているからだ。さて、人間という生き物は厄介でびっくりするほど簡単に恋をする。しかしそれより上を行く厄介者が恋をしない人間、もっというと恋をさせるくせに自分はできない人間で、しかし、しかし君、恋は罪悪ですよ。わかっていますか?つまり言いたいことはね、いや、その前に恋の定義をせねばならぬ。私の好きな恋の定義はこれです。

「好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ。お前のミロクがダメなのもそのせいだし、お前のバケモノがすばらしいのもそのためなのよ。いつも天井に蛇を吊して、いま私を殺したように立派な仕事をして……」 (坂口安吾『夜長姫と耳男』)

咒う、は呪うって読むんだよ。日記でもエッセイでもない駄文をごめんなさい。近頃まっとうな文章が書けなくなってしまったの。そうそう、それで結局言いたかったのは……あ、もう寝なくては。また今度。


#エッセイ #日記 #坂口安吾 #夏目漱石 #文学

💙