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スペクトラムという思考へー兼本浩祐 著『普通という異常 健常発達という病』について

兼本浩祐 著『普通という異常 健常発達という病』を読了。非定型発達と名指されるADHDやASDには特有の症例がある、とするならば翻って定型(健常)発達にだってそれ特有のーとりわけ色・金・名誉に対する偏執を代表としたー症例があるのだ、という枠組みのもと議論が展開。

中でも興味深かったのは、pp.54-55の「健常発達症候群」というもので、健常発達がどのような疾病を抱えているのか、その特性を挙げながら、対象者数について「悲劇的にも、発生率は非常に高く、1万人に対して9624人と言われます。」というアイロニカルな文章。この発想は示唆に富んでいると思う。

兼本浩祐 著『普通という異常 健常発達という病』,pp.54-55,講談社,2023,

ある集団がいて、その集団の統計的な偏差が固まると、自動的に標準値と、その相対としての異常値が出現する。その異常値というものから振り返って、標準値について逆照射するというアプローチ、あるいは問いの立て方は応用が効きそう。

単純な二極の値をとり、それらを鏡像のように比較するというアプローチは、むしろバイナリ=0/1=友敵思考を補強してしまう。任意のポイントをいくつも取り出し、それらをジグザグに語ることによって、グラデーショナルな状態としてのあり方を留保づけること。


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