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ディグ・モードvol.107「フィップス(PHIPPS)」

フィップス(PHIPPS)は、2018年に米国出身デザイナーのスペンサー・フィップス(Spencer Phipps)がパリで設立したメンズウェア ブランド。マーク ジェイコブスやドリス ヴァン ノッテンで経験を培った彼は、「超機能的」を美学とするレーベルに「より少なく、より良いものを購入する」という精神を注入している。


ドリスと直接仕事した初のアメリカ人デザイナー

2023年スプリング コレクション(Courtesy of PHIPPS)

北カリフォルニアで育ったフィップスにとって、青春時代のユニフォームはセブン フォー オール マンカインド(7 FOR ALL MANKIND)のジーンズ、ビーチサンダル、ノースフェイス(NORTH FACE)のフリースだった。彼はLAのラフなスタイルを好んでいたが、同時にハイ ファッションへの執着も抱いていた。

それが彼をニューヨーク市のパーソンズ美術大学に導き、最終年のコレクションでデザイナー・オブ・ザ・イヤーの最終候補者に選ばれた。卒業後、フィップスはマーク ジェイコブス(MARC JACOBS)のメンズウェア チームに加わり、7年間デザインを担当した後、ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)初の専属メンズウェア デザイナーとしてアントワープに移った。

2023年スプリング コレクション(Courtesy of PHIPPS)

そこで彼はドリスと良い関係を築いていたが、彼をとても怖がらせたとフィップスは当時を振り返る。「私は彼のリファレンスから少し外れたリサーチ内容を持ち込んでいました。『このSMハーネスを見てください』って言ったら、彼は『わかった…』って感じでした。私はそのオフィスでは本当に普通の人間ではありませんでした」と彼は『Highsnobiety』で語っている。

フィップスはドリスと直接仕事をした最初のアメリカ人だが、彼は現地に着くまで自分がそれほどアメリカ人であるとは思っていなかったと説明する。「そこには古風で保守的な服装をした、いかにもヨーロッパっぽい人たちが集まっていて、私は汚れたパーカーを着てヘルズ・エンジェルズのことを話していました」とフィップスは『Interview Magazine』で語っている。

フィップスの美学は超機能的

2023年フォール コレクション(Courtesy of PHIPPS)

2018年、フィップスはアメリカ西部への愛をパリに持ち込み、そこで自身の名を冠したブランドを設立した。最初の3つのコレクション『Origins』、『Nature Loves Courage』、『A Method of Reaching Extreme Altitudes』は、デザイナーが魅力を感じている自然科学に根ざしたものだ。そして2020年春夏コレクション『Like a Rock』で再びこのテーマに立ち返った。

デザイナーが「超機能的」と呼ぶフィップスの美学は、ひねりを加えて、アメリカンな雰囲気とクラシックなワークウェアの定番アイテムとの間にあるギャップを埋めることにある。「私たちは製品をユニークでありながら完全に着用できるものにすることを望んでいます」と彼は『Matches Fashion』のインタビューで語っている。

より少なく、より良いものを購入する

スペンサー・フィップス(Photography via GQ

パーソンズ美術大学で持続可能な素材を研究したデザイナーは、自身のレーベルに「より少なく購入し、より良いものを購入する」という精神を注入している。それを実現するために、フィップスはミレニアル世代のワードローブを支配している低コストのファストファッションに代わるものを提供しようとしている。

サステナブルなファッションが必ずしも最もアクセスしやすいものではないことは理解しているとデザイナーは説明する。フィップスのTシャツは約95ユーロ、最も高価なものはダウンジャケットで約1,000ユーロだ。

「私たちの顧客が何も考えずに12個のアイテムを買いに来るわけではありませんが、若い人がお金を貯めて、必要に応じて何かを購入できるのが気に入っています。ただし、私たちはすべての年齢層にフィップスを購入してもらいたいとも考えています」と彼は『Another Man』で語っている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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