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ディグ・モードvol.110「デュラン ランティンク(DURAN LANTINK)」

デュラン ランティンク(DURAN LANTINK)はオランダ出身デザイナーのデュラン・ランティンク(Duran Lantink)が設立したパリ拠点のファッション ブランド。小さい頃から衣服を解体することに惹かれてきたデザイナーは、サステナビリティをブランドの中核に据えながらも、2024年春夏コレクションではクリエイティブなビジョンの変化を示した。


服が新しいものに変化する可能性に目覚めて

2023年秋コレクション(Photography by Brianna Capozzi)

オランダのデン・ハーグで育ったデュランは、ファッションの面で母親のスタイリング センスに大きな影響を受けている。彼女が持っていたジャン ポール ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)とメゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)のコレクションを見たとき、初めてファッションに興味を持ち、母がドレスアップしている姿をいつも眺めていた。

「素材よりもその服に夢中でした。私にとって、それはまさにスタイリングの観点からファッションを捉えることであり、それらを切り取って組み合わせ、そこから自分の世界を作り出すのは論理的でした」と彼は『W Magazine』のインタビューで語っている。

(Photography via METAL Magazine

物心ついたときから、デュランの趣味はデザイナーズブランドの衣服を解体してつなぎ合わせたり、既存の作品をまったく新しいものに作り直したりすることだった。12歳のときには、祖母のテーブルクロスと父のディーゼル(DIESEL)のジーンズを組み合わせてミニスカートを作った。

「いつも衣服を解体することに惹かれていました。小さい頃からそうしてきました。平らな素材を扱うことにあまり興味を持ったことがなく、スカートをジャケットに変えるなど、服が何か新しいものに変化する可能性を常に感じていました」と彼は『1GRANARY』で語っている。

ディオールやプラダを切って融合させるのが最高

2019年4月12日開催のコーチェラでデュランのパンツを着用したジャネール・モネイ(Courtesy of Getty Images)

デュランは最初、米国の歌手・女優ジャネール・モネイ(Janelle Monáe)のシングル「ピンク(Pynk)」のMVで彼女が着用した衣装(女性器をイメージした大きなフリル付きパンツ)を担当したデザイナーとして有名になった。それ以来、リサイクル素材の革新的な利用法や、既存の服を大胆にカットして融合させた作品などで知られている。

デュランは、ラグジュアリーなデザイナーズブランドであっても大胆にカットする。衣服を切るにはかなりの勇気がいるが、後悔したことはないと彼は説明する。

(Photography via METAL Magazine

「私にとってディオール(DIOR)を切り開いたり、プラダ(PRADA)を切ってそれらを組み合わせたりするのは、とても気持ち良いです。それは支配力にも関係していると思います。非常に支配的なブランドを融合させるのはとても良い気分です」と彼は『1GRANARY』で語っている。

彼のデザインプロセスは、非常に直感的で遊んでみることから始まる。まずは在庫を確認し、そこからどの素材をおもしろく組み合わせることができるのかを考え、頭の中でパズルが展開される。コンセプトに関してはいつも一貫しているが、常に既存の服を再利用するため、服の美学と必ずしも関係がある必要はないとデザイナーは説明する。

「持続可能か、環境に配慮されているか、再利用されているか、とかではなく、ただ美学に注目してほしいと願っています」と彼は『DAZED』で語っている。

パリに移転、クリエイティブなビジョンに変化

2024年春コレクション(Photography via VOGUE RUNWAY)

デザイナーはオランダからパリに拠点を移し、2023年3月、2023年秋コレクションでパリデビューを果たした。コレクションをシーズン制に移行し、サステナビリティを中核に置きながらも、それがブランドの唯一の魅力ではないことを示そうとしている。

パレ・ド・トーキョー(Palais de Tokyo)でショーを開催した2024年春コレクションは、95%アップサイクル素材が使用され、新たにウールで手編みされたパーツが追加された。伝統的な衣服との関係を問うこともデザイナーの重要な作品テーマとして浮上しており、このコレクションでは形について、そして人体が形とどのように相互作用するか探求をおこなった。

デュラン・ランティンク(Photography via SHOWSTUDIO

2024年春夏コレクションの中核には「実験」があり、ウェアラブルなアイテムとアート作品に似たアイテムとの間のバランスを見つけることを目的としていた。これは、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館とアムステルダム市立美術館が彼の作品の一部を常設コレクションとして獲得したことで、さらに確立されている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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