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five realities 〜統合〜 (3)

2017年秋

来春には結婚30周年を迎える
若くして結婚した私たちは
結婚式も新婚旅行もせず
夫婦として過ごしてきた

これを機にセカンドハウスの購入を提案した
最初は渋っていた夫も
子供や孫と過ごせる場所ということで
承諾した

物件探し
久しぶりに
夫婦で過ごす楽しい時間

候補地は子供の頃から
家族や親せきと旅行に行き
結婚してからも家族と毎年訪れていた地
そして
緑の中に立つ白亜の家に出会った

あっという間に話は進んでいく

その頃の私達は
大きな物事に挑む時には
霊媒師に相談してから
行動するようになっていた

当日
夫は仕事で出向くことが出来ず
物件の資料を持って
一人で霊媒師の元を訪れた

いつもは歯に衣着せぬ人が
言葉を選んでいる
 ここはやめた方がいい

 なぜですか
明確な回答ではなく
 もう少し近くで探したらどう
それが彼女の言葉だった

家に帰り夫にそのことを伝えた
霊媒師がそう言うのだから
何時ものように
指示に従うものと思っていた

しかし夫の口からは
 すでに決めたことだから

珍しく意思を表現する夫に驚いた

そして 
白亜の家を購入

リフォームを済ませ
調度品を選び
初めてのガーデニング
思い通りに出来上がっていく
週末だけの限られた時間
やすらぎの場所を手に入れた

日常生活も活気づき
今までの活動が認められ
必要とされる場が増えていく

脚光を浴びる機会が増えると
ずっと持ち続けていた
無価値観が頭をもたげる

自分の存在って…

認められるためには
もっと頑張らなければと
自分を追い込んでいく

女だてらにと馬鹿にする男たちを
有無も言わさず負かしていく
知恵と人脈を育て
ますます強くなっていった

そんな生活には揺さぶりがおきる

自分は間違っていない

これしか方法はなかったんだ

自分を正当化する反動で
心が悲鳴をあげる

緑の中の白亜の家は
いつしか私の逃げ場所になっていた

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