[連載短編小説]『ドァーター』第十七章
※この小説は第十六章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひ読んでください!『ドァーター』のマガジンのリンクはこちらです↓((一章ずつが短く、読みやすくしてあります。
_________登場人物紹介_________
一葉……自称、二十二の遠い親戚。
_________本編_________
第十七章 いないいないばー
「初めまして、カズハ」
真っ暗の部屋で機械的な声が聞こえた。すると、3畳ぐらいの大きいモニターが光り、一面の壁を覆い尽くした。
「一葉にはこれから、国を納める者の後継を産むために生きてもらう。なので、生活の全てを私が管理します」
「後継?結婚?なあにそれ?」私は突然四角い部屋に連れてこられた。当時10歳という歳でもあって、好奇心が恐怖を消してくれていた。しかし、モニターから聞こえるその声は、凍てつくほど冷たくて、すぐに心の隅々の温度を奪っていった。
「……これからお前は私たちの子だ」
その日、当時10歳の私に地獄のような人生が始まった。
幼き頃の私、一葉は好奇心が強く、初めて見るものには夢中になって睨めっこをした。
一葉は監視カメラを覗く。レンズが小さくなったり大きくなったりしている。
扉につけられているポストに、毎朝手紙が届いた。1日のルーティーンが書かれた手紙だ。私はその手紙を震えた声で読む。
「昨日のノルマ達成率……87%『この役立たず』今日の食事は苦味、辛味、酸味のどれかを十倍、にします……」
紙にシワがよる。手の甲が小刻みに揺れていた。
「うう、辛いよ……」一葉はその1日の食事の全てを涙で水浸しにすることとなる。
「暑いよぉ」一葉は唇をパンパンに膨れ上がらせ、監視カメラに視線を送る。が、反応はまるでない。「……」
「お水……お水が欲しい」すると、たった1センチほどの水の入ったコップが届いた。「辛いよぉ」少量の水を飲んだことで、口の中に辛味が広がり、一葉は口を抑え、うずくまった。
食事が終わると、すぐに勉強時間が始まる。
「残り26秒」
「わからないよぉ」カウントダウンが近づく焦りで一葉の鉛筆の先は、なかなか定まらないでいた。「18秒」冷たい声が聞こえる。「いやああ!」私はついに極度のストレスに耐えられなくなって、涙が溢れる。「3秒」しかし、何の躊躇もなくカウントダウンは減り続ける。
そして、ピピーという音が聞こえると、背筋がビクッと動いた。一葉はそうっと監視カメラに視線を送った。
次の日。また手紙で今日のルーティーンが伝えられる。折り畳まれた紙を広げるとすぐに、大きく目立つように書かれた「ノルマ達成率」が目に入る。そしてまた一葉はそれを読み上げた。
「昨日のノルマ達成率63%『お前には失望した』罰として、ぬいぐるみの処分……いや、いやあ!」
一葉は収納ボックスを急いで開けた。すると、ビリビリに破られ、わたが抜き取られたぬいぐるみが無惨な姿で現れた。一葉はひきつった息をして、尻から倒れた。
「あはは、どうして?あはは」
そこに本当の私は存在しなかった。
「ごめんなさい、ごめん、なさい」
そして私は、勉強机に向かった。私の親はとんでもない野郎たちだ。私が鏡花という母親から生まれさえしなければ、こんなことにはならなかった。
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最後まで読んでくれてありがとう!!
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