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[連載短編小説]『ドァーター』第十三章

※この小説は第十三章です。第一章からご一読されますと、よりこの作品を楽しむことができます。ぜひお読みください!『ドァーター』のマガジンのリンクはこちらです↓((一章ずつが短く、読みやすいのでぜひ!

第十三章 毒の日

 後に人々は「毒の日」そう呼ぶようになった。
 僕は3日後に予告された、1300万人の毒殺を阻止するため、準備を着々と済ませている。薄暗いLEDの下でこめかみを捻り引っ張った。
 解毒薬の培養は、町長と協力し、すぐに量産することができた。しかし、1300万人分の解毒薬が用意できたとしても、到底僕が全員に渡しに行くのは不可能だ。だから、街の警察にも協力してもらうことになっている。
「あー疲れたな。少し休むべきだろうか」腕を大きく広げ、背筋を伸ばした、その時だった。背後から頭を強く打たれ、体がふらつく、すぐに椅子から立ち上がり、人影を見据えた。そしてもう一撃再び背後から頭部を打たれた。視界が次第に虚ろになる。人影は陰湿に笑ったように見えた。

 おそらく3日後。熱気球によって毒は町中にばら撒かれているのがすぐに目に入った。僕は大道路の真ん中で目が覚め、今立ち上がった。気球はもくもくと異質な色の煙が天から襲って来ていた。
 すると気球から耳の鼓膜を破るような、ひび割れた音が聞こえた。
「やあやあ、二十二!目が覚めたようだね」
「一葉?!」彼女の声で確信がつく、本当に始まってしまったようだ。
「二十二には特別に、解毒薬を飲ませてあるよ。なので抗体ができており、絶対に私の毒で病気にはかかりません。ちなみに、解毒薬の効果が出始めるのは約1時間後でーす」一葉はハキハキとした声で言っていた。どこか楽しんでいるようにも聞こえる。そして僕は一葉のその言葉を聞いて、背筋がひやっとした。
「1時間……増援は間に合うだろうか」そして再び、一葉の声が聞こえた。
「それと、警察や、二十二に関わったと思われる人物には特別な毒を使用しているから、解毒薬を使用した場合、毒が完全に消えるまで約一週間は必要だよ」僕はその言葉を聞いて絶望した。嘘だろ。僕一人で1300万人に解毒薬を配れと?無理だ。不可能だ。こんなの無謀に決まってる。
 いや、まだだ。まだ諦められない。誰一人死なせたくない。今はできることをしろ、時間は少ないんだ。目が覚めた場所から一番近い建物に入り、インターホンを押した、これだけで3分経過。
すると、熱気球から一葉の声が再び聞こえてきた。
「さらに、毒が完全に体に周りきり、死に至るまでの時間は、個人差はあるけど、約3日だよ」と、一葉は言うと、声色が黒く染まったように言った「それじゃあみんなの信用を得るために頑張ってね」
「たった3日?!待て、こんなのどうしろって言うんだよ!」僕は崩れるように膝をついた。
 僕は街の人たちを守れるのだろうか。そして、あの日の血の肉の地獄が再び始まろうとしていた。

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