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読書感想文:『海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年 下 塩野七生ルネサンス著作集5』

 ヴェネツィア共和国終焉までを見届ける海の都の物語下巻は、いつもに増して読むのに時間がかかったように感じる。いろんな困難の中、試行錯誤しながら独自の制度を考え出し共和制を守りつつ、自身の通商のためとはいえ自分と違う文化地域とも折り合いをつけながら交流し、政教一致の政治体制が一般であった時代も「まずヴェネツィア国民、次いでキリスト教者」という誇りを持つ盛者であったヴェネツィア共和国が必衰の理には抗えなかった様を追っていくのが、やはりどこか虚しかったのだ。いつか占星術の話を読んでいた時に時代は大体250年周期で大きく変わると見たことがあった。4回目の星の変化はいかに立ち回ってもそうなる運命だったのかというほどにどうしようもなかったのかもしれない。第9話の「聖地巡礼パック旅行」はサンマルコ広場でキョロキョロする旅行者に混じってVR体験しているような気分になれて楽しかった。

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