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ミールスについて少しまじめに考える1-2

前回、本やウェブサイトで定義されたミールスとは南インドの食事ということがわかりました。今回は、ミールスをどうやって食べるかに焦点を当てて考えていきたいと思います。

ミールスの食べ方


『南インド料理とミールス』柴田書店
前回に引き続き、『南インド料理とミールス』を読んでいきましょう。

ミールスは食べ方も自由です。日本では、まずそれぞれの料理を味を確かめてから、少しずつごはんにかけていく人が大半ですが、向こうでは、いきなりカレーもおかずもごはんにバーッとかけて混ぜながら食べ進め、飽きてきたら後半はピクルスやヨーグルトを加え味に変化をつけたり、最後にバターミルクを飲んでさっぱりさせるのが定番です。

『南インド料理とミールス』:26


『作ろう!南インドのミールス』ブックウォーカー
こちらも前回のとりあげた本です。

ライスにおかずを少しずつかけて、必ずよく混ぜて食べる。ラッサムみたいなスープ状のものも、必ずライスにかけて食べます。複数のおかずが混ざっても問題なし。組み合わさることで味が複雑になっておいしくなるくらいです。

『作ろう!南インドのミールス』:13


『作ろう!南インドのミールス』「ミールスのコツ」
こちらは上の本と同じですが、インド食堂チャラカラの方が寄稿したミールスの食べ方です。

また日本ではミールスは「全部混ぜて食べる」とよく言われますが、南インドでそういう食べ方をしている人を見たことはありません。聞いた話では、インドで全部混ぜるのは、ネガティブな意味合いが多いように感じました。
正解が一つではないのがインドなので断言はできませんが、ミールスはそれぞれの料理に味があり、役割があります。最初から全部混ぜるのではなく、プレートやバナナリーフの上でそれぞれを味わってみてください。

『作ろう!南インドのミールス』「ミールスのコツ」:89


『カレーライス進化論』イーストプレス
スパイス&カレー専門家水野仁輔さんの本にもミールスをとりあげた文章がありました。

ミールスやターリーと呼ばれるインドの定食は、丸い大型のおぼんやバナナの葉の上に複数種類のスパイス料理やカレーがひしめき合うように盛られている。それらをランダムに混ぜながらたべていくのが特徴的なスタイルだ。

「インド料理の魅力は"共創"」『カレーライス進化論』:214


カレーとミールスの楽しい食べ方〜エリックサウスの場合〜
日本でミールスが知られるきっかけをつくったともいえる南インド料理店エリックサウスも食べ方をウェブに掲載していました。

[ミールスの混ぜ方]
(・・・)「ミールス」はカレープレートとは少し違い、適度に混ぜる事で楽しさが増します。(・・・)最初は(・・・)1種類ずつをライスにかけて楽しみます。
その次の展開として(・・・)「サンバル」と「何か」を組み合わせていきます。具体的に言うと、まずある程度の量のライスとサンバルを先にしっかり混ぜてしまい、そこに何か他のものを順次加えていくという事です。(・・・)そうこうしているうちにお皿の上はだいぶ混沌としてくるはずです。そうなったらいよいよ最後は全混ぜタイムです。カトリに残ったあらゆるアイテムを総動員して複雑な味わいを作り出す、言うなればクライマックスです。(・・・)
[ヨーグルトの扱いとミールスの締め方]
ミールスにおいてヨーグルトは最重要アイテムのひとつです。(・・・)最もその真価を発揮するのがヨーグルトとライスを単独で混ぜたヨーグルトライスです。(・・・)ヨーグルトライスにウールガイをちょこっと乗せた物でミールスの最後を綺麗に締めるのは最高です。更にそこに砕いたパパドをトッピングしたりラッサムを少し垂らしたりすると素敵なアクセントに。いわば豪華な食事の最後をお茶漬けでサラっと締めるような感覚です。

カレーとミールスの楽しい食べ方〜エリックサウスの場合〜


「インドカレーの食べ方にマナーはあるの?インド流の食べ方をチェック!」

こちらも前回に引き続き『NISHIKIYA KITCHEN』の記事です。
「なお、ご紹介するインド流の食べ方はあくまで一例であり(・・・)マナーにとらわれ過ぎず、ご自身の食べやすい方法を選んで構いません。」と前置きして以下のように食べ方が紹介されています。

インド料理の「ターリー」とは(・・・)定食のようなスタイルの食事です。南インドでは「ミールス」と呼ばれています。
ターリーの形式は、大きな平たいお皿の上に小さな器が複数のせられ、中心にご飯やパパド(豆を使ったせんべい)などが盛られているのが一般的です。小さな器に入ったカレーやスープは、ご飯やほかの料理と混ぜて食べると味のバランスが取れるようになっています。現地の食べ方にならってターリーを食べる際は、以下の手順でこれらを混ぜながら食べてみましょう。
初めに、大きなお皿の上に置かれた小さな器を、すべてお皿の外へ出してください。次に、大きなお皿の中心にライスを広げたら、そこへ小さな器の中身をかけていきます。この状態で数種類のカレーを混ぜ、さらにヨーグルトと混ぜながらいただきましょう。

【インド流】定食・ターリーの食べ方


結果

本やウェブに書かれたミールスの食べ方をおおまかに書き出してみました。

1 ミールスは食べ方も自由、現地では最後にバターミルクでしめる。
2 ライスに混ぜて食べる。おかずが組み合わさることで味が複雑になりおいしくなる。
3 日本で「全部混ぜて食べる」とよく言われるが、南インドでは見たことがない。それぞれの料理を味わってみてください。
4 ランダムに混ぜながらたべていくのが特徴的なスタイルだ。
5 適度に混ぜる。全混ぜタイムがある。
6 数種類のカレーを混ぜ、さらにヨーグルトと混ぜながらいただきましょう。

こうして食べ方を書き出してみると、共通していたミールスの定義とは異なり、さまざまな食べ方が紹介されていることに気付きます。

これら食べ方の特徴を料理を複数混ぜる/混ぜない、自由/規則性があることに注目して、以下3つに分類してみました。
①消費者が自由に食べるといった主張の自由派(ここにはランダムに混ぜる・数種類混ぜる・混ぜてもよいといった言説も含まれます。)
②料理を全部混ぜて食べる全混ぜ派
③それぞれの料理を味わう単独料理派

まとめ
1部では、ミールスの定義と食べ方をまとめました。前回、ミールスとは南インドの食事という点で、すべての本やウェブの言説は共通していました。今回、食べ方をみると複数の方法が紹介されていて、共通性ではなく食べ方の違いが際立つ結果となりました。
南インドの食事として定義されているものに、なぜさまざまな食べ方があるのでしょうか。この問いについては、3部の考察で私の考えを書いてみたいと思います。

次回から2部に移っていきます。2部ではインドで食べたミールスの定義と食べ方をまとめていきます。

読んでいただきありがとうございました。


参考文献
玉置標本 2021『作ろう!南インドの定食ミールス』ブックウォーカー
ナイル善己 2017『南インド料理とミールス』柴田書店
水野仁輔2017『カレーライス進化論』イーストプレス
"インドカレーの食べ方にマナーはあるの?インド流の食べ方をチェック!". NISHIKIYA KITCHEN. 入手先 <https://nishikiya-shop.com/column/170> (参照2023-2-20)
"カレーとミールスの楽しい食べ方 改訂版". 入手先 <http://blog.livedoor.jp/inadashunsuke/archives/33274532.html> (参照2023-2-20)


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