見出し画像

インド料理のこと3 THE CHANGING POPULAR CULTURE OF INDIAN FOOD/Ashis Nandyを読んで

このエッセイは、急速に形成されつつある現代インドの食文化を大きく2つの流れから説明しています。

現代インドにおける食文化の流れ
・南インドのファストフード(イドゥリ、ドーサ、ワダ、ウタパム)が、インド全体で幅広く受け入れられるようになっていること。

・過去50年の間にインド国内の都市のフォーマルな場あるいはセレモ二ーの場で提供される料理としてムガル料理やパンジャーブ料理が占めるようになったことです。

この南インドのファストフードと「フォーマルな」汎(いわゆる)インド的な料理が、インドの食を形成しつつある要因を、現代の家族観に基づく社会の変化[1]とナンディーは指摘しています。

最後に
私がインドの外からの発言でインドの料理が世界に知られる契機となったのではと思ったのが、インドをルーツにもつイギリス・スナク首相のインタビューです。
スナク首相は「妻の家族と集まる時に好んで食べるのはイドゥリ、ドーサ、サンバル、チャツネです。」と答えています[2]。このインタビューを通して南インドの料理名が世界に知られた瞬間であるとともに大きな意味でインド料理を形成していくのではないでしょうか。

以下、まとめるのが難しかった部分のメモです。

インド系のディアスポラ(移民)からインドに逆輸入されている「インド人らしさ」という民族性

・民族料理の枠組みを定義する真正性という考え方の変化[3]。
・ある料理が他の料理より優位に立つ新しいジャンルとしてのファストフードの出現。
・グローバル化され、より大きな領土と文化的範囲を与えられるようになった料理の新しいハイカルチャーとローカルチャーの漸進的な結晶化[4] 。
・また、エスニック料理を文化の指標としてではなく、文化の代表としてとらえる傾向が強まっている[5] 。


脚注
[1] 以前まで家族観の中で食事の準備は娘や義理の娘、家族の中の若い女性にとって家庭での見習いの問題でした。しかし、現代では多くの人にとって教養あるジェンダーレスな専門的な問題に変化していると指摘しています。
[2] "英史上初のアジア系首相 スナク氏の横顔". テレ朝news.  入手先 <https://news.tv-asahi.co.jp/news_international/articles/000273040.html> (参照2023-2-20)
[3] ナンディーは、イドゥリがインドネシアから伝わり南インドの料理の定番になっていることや唐辛子やジャガイモが新世界から伝わりインドの料理に大きく影響を与えていること、ムガル料理がペルシャやイスラムなど複数の文化に影響を受けて成立したことを引き合いにだし、インドの料理に真正性の考えは馴染まないという。
[4] グローバル化とコスモポリタニズム(世界平等主義)は関連しており、それに基づき、あらゆる文化に平等性が担保される。そのため、過去に用いたハイカルチャーとローカルチャーという分類はこの主義のもとでなくなる。
[5] 別のエッセイで、料理が文化の代名詞になりつつあることが詳しく述べられている。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?