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映画「ファッション・リイマジン」を観た話

知っているようで知らないことって多すぎる!
自分から知ろうとしない限り、知らないままで過ぎていく。

ファッション産業は最も環境に悪い産業の一つ。
80年代に比べて人々が洋服を買う量は3倍になり、その服を今までの半分の期間しか着ていない。

ファッションを楽しむことと地球環境を守ることは相反するもの。

本当にそうなのかな?

ぶれ。

この課題に挑戦する、Mother of pearlのデザイナー、エイミー・パウニーに密着したドキュメンタリー映画を観てきた。
MOPは彼女が立ち上げたブランドではないけれど、サステナブルなブランドにすべく試行錯誤していく様子を追っている。

彼女が影響を受けた本は、ナオミ クライン「ブランドなんか、いらない」

綺麗な切り花の飾ってある仕事場でデザイン画を描く彼女は、よくある奇抜なファッションデザイナーとは違ってギスギスした雰囲気が無く穏やかに見えた。でも、その心の中に持っているものは、誰にも流されることなく揺るぎないものだった。

父親は環境活動家で、自然が溢れる田舎で育ったというエピソードを聞いてなるほど、と思った。

彼女は言う。

学校ではいじめに遭った。
イケてる人だと思われたくてファッションの道に進んだけど、本当にデザインをやりたいのかわからない。

ロンドンの流行が遠いものに思えた
ファッションは先を急いで無駄な努力をするもの
ハイペースに耐えられる自信がない

通常、1枚のシャツが作られて消費者の手元に届くまでおおまかに8つのステップがあり、7つ以上の国を経由して、使われる水の量は浴槽17杯分。

コレクション発表を通常の年4回から2回に減らした。
それでも全然間に合わないぐらいのスピードで走り続けているファッション業界。

彼女が飛び込んだ世界はこんなことが日常的に行われている世界。

<エイミーが服作りをする上で掲げた目標>
・経由する国の数は出来るだけ少なくする。
・海にマイクロプラスチックが流れてしまうから合成繊維は使わない。
・天然素材の綿とウールだけを使いたい。

でも市場にある生地は、どんなところでどうやって作られたものなのかはっきりしない。

自分の納得の行く方法で服を作りたい」というだけのシンプルなことなのに、それを成し遂げるには多すぎる課題を一つずつクリアしていかなければならない。


業界では当たり前の仕組み。変えることはできない」そう言われても、諦めないエイミー。
だいたいの人はこの壁にぶち当たって、諦めてしまう。
でも諦めずに新しい道を探し続けた。
これが普通の価値観になって広がっていけばいいのに…。

たくさんの問題を解決してやっと作り上げたコレクションだけど、バイヤーに受け入れてもらえなかった。
服なんて、見た目と値段しかわからないもんね。

そんなに簡単に世界は変えられない。

でも、一人一人の意識は変えられる。

やっとやっと見つけたウルグアイの楽園みたいな牧場で飼育されている羊たちはとても幸せそうで、世界中を探せばこんなところもあるんだなあと。
牧場のご主人に出来あがった服を見せた時の彼の嬉しそうな表情。自分の育てた羊毛でできた服、嬉しいね。

エイミーは、これらの課題に向き合うことによって服や布を大切に扱うようになって、仕事への愛がより深まったと語っていた。
こんなふうに作られた服なら、私も着てみたいなあと思った。

落胆し、絶望しながらも一つ一つに真摯に向き合っていくエイミーの姿を見ていたら勇気をもらえた。

近年の気候危機で少しずつ勉強する機会も増えてきた。それでもまだまだ知らないことばかりだ。知るたびに、絶望していく。
私は十数年前に服飾の学校を卒業しているけど、そんなことは一つも教えてもらわなかった。ちょうど、日本にファストファッションというものが入って来た頃。目の前にある服がなんでそんなに安いのか、と疑問に思うことはなかった。

そのセーターは、幸せな羊の毛でできているか?

その激安なTシャツは、弱い人の犠牲の上に成り立っていないか?

知らなかったよ、もっと早く教えて欲しかった、という気持ちも芽生えたけれど、そもそもそれを知ろうとしなかった自分も悪い。

この映画が撮られた2018年から少しは世界は変わったかな?
でも地球が壊れていくスピードには全然追いつけていないんだよな。毎年夏は暑くなっているし、異常気象は止まらない。
うわべだけのエコやサステナブルという言葉に誤魔化されていないか?

サステナブルは意識改革で誰でもできる。

すっごくすっごく、勉強になった。

服を着る人、ひいては地球に生きる全ての人たちはこの映画を見てこれからどうやって生きていきたいか、ぜひ考えてほしい。

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