「100年後に誰かが映写機をかければあなたは蘇る」 『バビロン』(2022)


映画「バビロン」をU-NEXTで鑑賞しました。
公開当初の評判はとにかく「とにかく汚い、ララランドを期待するな」の二つが大半だったように思いますが、個人的には前者が紛れもなく真であったのに対して後者に関しては必ずしもそうとは言い切れないと思ったのが素直な感想です。
ですが見ている途中から「あ、これはスクリーンで観るべきやつだった…」と感じ始め、めまぐるしく豪華絢爛な世界に吸い寄せられるという体験はバズラーマン作品で感じるものと似ていた気がします。同監督によるレオ様主演「華麗なるギャツビー」も同年代のハリウッドを舞台にしていたし、バズラーマンは儚いものを美しさでゴリゴリに飾り立てて描くのにとても長けた監督であることも関係しているのでしょうか。少し話が逸れましたが汚物パレードを乗り越えながらお気に入りの作品との関連を感じつつ私はこの作品にとても魅了されてしまったのです。

上記の理由の大きな部分を占めるのが「スクリーンの中で生き続ける」という命題が語られていたことです。共感してもらえるかはわかりませんが、私は映画を観終わった後にキャストについてググりその人のwikiで経歴や生い立ちという部分を見るのが好きです。それは映画という一つの虚像(フィクションに限って言えば)を作り上げる人が現実世界ではどのように振る舞い、他人との関係を築き、どのような立場に立脚しているのかが気になるからです。そうすることでスクリーンの中の世界との差異が強調され、非現実的な映画の世界に陶酔したり夢を見たり勇気をもらったり、ひいては映画毎に個人的な思い出を付加する可能性だって秘めていると思うからです。

時には、亡くなっている俳優が出演している作品を見ることで悲しみや漠然とした悔しさを感じてしまうことがあると思います。ですがこの映画はそうした感情に寄り添い、必ずしも観賞行為が悲しい行為ではないということを教えてくれます。スクリーンやパソコンの画面を見るたびに彼らに出会えるのですから。そう考えると映画を見る行為は「再会」なのかもしれないとぼんやりと考えたりしていました。


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