わたた

好みにブッ刺さった映画、心にずどーんとのしかかってしまった映画、忘れられない映画の感想…

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好みにブッ刺さった映画、心にずどーんとのしかかってしまった映画、忘れられない映画の感想と、たまに旅行体験を書き記すnoteです。 読んでくれるみなさんの「好き」が守られていくきっかけになりますように。

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コブラヴェルデの圧力

ちょっとしたご縁で目黒シネマの招待券をもらい、現在ヴェルナーヘルツォークなる監督の特集をやっていることを知り、香ばしそうな作品群が並んでいたので見に行ってみた。 コブラヴェルデを見た後、ありえない角度で心に刺さってぬけなくなってしまった。 美しい映画だ、シネマティックだ。 一番印象的だったのが最後のシーン、奴隷の少女たちがこちらを試すような目つきで、しかし口元には笑みを浮かべながら歌い踊っている。大きな展開はなくただ同じ流れを繰り返す彼女たちの歌。そのシーンが、見ている

    • アイアンクローの開祖・フリッツ

      人間には見えなかった。 大きな鉄の塊に手と足が生えて、おぞましい力を振るっているように見えた。 サディスティックな嗜虐性や、快楽が滲み出ていたようには感じなかった。ただ彼が「そういう生き物」として生きてきたから、相手を前に力いっぱい踏んづけることしか知らないから、そうしているように見えた。 それが「呪われた」プロレス一家の父、フリッツ・フォン・エリックが最初にスクリーンに現れた時に感じたことだった。 この物語は長男(実際は次男)であるケビンを軸に展開していく。フォン・エリ

      • 落下の解剖学を大解剖!(?)

        落下の解剖学、ビジュアルポスターとタイトルでずっと気になってた+オスカーで賞も取ったということで見に行った。 雪が積もった自宅の外で転落死している夫が発見され、その嫌疑がかけられたのは彼の妻。法廷では事件の解明が連日行われる。 というストーリー。 率直な感想 また、やってしまった 私は、また同じことを繰り返してしまった 去年の夏に「怪物」を見た時と同じことを繰り返してしまったと思った。「怪物」では、ある事件について複数の人物の視点から語られるという形式で、私は映画を見

        • コックと泥棒、その妻と愛人とその感想

          ※以下、ネタバレを含みます 赤と白と緑と、部屋が変わるたびに照明も服の色も一緒に変わるのおしゃれ〜!!と思っていた冒頭 、、、、ヘレンミレン!?!? そしてマイケルガンボン!?!?!!?!?!! あのダンブルドア先生がこんな最低最悪おじさんに!?!?!!!?泣 と軽くショックを受けた物語中盤 そして何よりも物語が急展開を迎えるクライマックス ジョージーナと愛人の関係に気づいたアルバートはなんとも惨たらしい方法で妻の愛人である学者を殺害してしまう。 愛した人の死体を見つ

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        コブラヴェルデの圧力

          哀れなるものたちが向かう先は

          見終わった後に苦しくて重たい気持ちが残った。 すぐさまララランドのサントラを聴いて帰路に着いてキラキラしたエマで上書きしようとした。 でも、美しくて汚い物語に胸の高なりをずっと感じていた。ヨルゴスランティモスの力量に唸らされた2時間だった。 私が感じたのは女性の自立やフェミニズム的な文脈よりも科学技術の使い方、そして人の成長と倫理観だった。 この物語は、周りの大人によってベラの倫理観が形成されていく過程を描いていた。一般的にもこの過程は正しい気がして、家庭環境などが代表され

          哀れなるものたちが向かう先は

          歌いかける8人の女たち

          大雪の翌朝、女性だらけの一家の中で唯一の男性だった主人が殺されて発見される。淡々と進みながらも時々女性たちがする暴露に心を掴まれる映画だった 劇中歌のなかで、映画好きとして否応にも刺さってしまった歌詞があった 「孤独は悲しいから映画のような夢を見よう」 こんなに綺麗に美しく、でも核心をつくように心情を歌われたのは初めてだった 劇的な幕引きから、祖母から孫に歌いかけるラストシーン 「幸せを掴もうとして押し潰してしまう」 「人の一生は涙をこらえるだけ この世に幸せはない」 「

          歌いかける8人の女たち

          それでもゴジラは助演だと思う

          轟音シアターでゴジラを見てきた 揺れた 映画館が揺れた 見つめられて襲われた おまけに船酔いまでした 久しぶりに凄まじい映画体験をした 舞台は戦争を通して家族や友人などの身近な人の死を経験した人々が、生きることと死ぬことに自らの意味を見出して行く戦後の日本 そんな時代にゴジラはやってきた 国のために死ぬことが美しく、そのために多くの犠牲者を出したのになお敗れた国にやってきた そんな時代に、そんな国に襲来した奴は圧倒的だった。そして圧倒的だからこそ人々に変化をもたらした。

          それでもゴジラは助演だと思う

          眠れない夜に見た戦場のピアニスト

          寝る前にベッドの中で見る映画って寝落ち前提だから途中で明日に持ち越してもしょうがないか〜と思って見るんだけど、 止まらなかった、絶対に見続けなきゃいけないと思った 物語の舞台は戦時中のポーランドのワルシャワ。 ナチスドイツが優位な戦況の欧州で、ポーランド国内でもユダヤ人に対する迫害と隔離が日々酷さを増していく。 そんな中、自身もユダヤ人であることから家族と共にわが家を離れることを余儀なくされ、戦禍の中生き延びようとする一人のピアニストのお話。 戦争映画はこの世に限りなく

          眠れない夜に見た戦場のピアニスト

          バリの風で風邪を治す 〜旅行記vol.2〜

          夏服をスーツケースに詰めてるのが馬鹿らしく思えてくるほどの東京の寒さと自分の喉が激しく痛むのを感じてた今年何回目かもわからない成田空港へのバスの道すがら、こんなに予想もつかない旅は初めてだと思った 初めてのアメリカ以外の海外。初めての10年パスポートでの旅行。否応にも新しい風が勝手に吹いてくれる予感とバリ島という未知なる島への可能性とで機内は胸がいっぱいだった 空港に着いてすぐにまとわりつく空気、小汚い水回りとそこかしこにある看板のちゃっちさ。あ、キタキタ。自分が見知らぬ

          バリの風で風邪を治す 〜旅行記vol.2〜

          どうやったって勝てない、と思ったオールドボーイ

          心が何度も絶叫した。見たくないのに見たい。唯一画面に向けることのできた顔のパーツは目だけだった。顔を正面に向けて対峙することはできなかった。向き合うのが怖い、と感じさせられた、とにかく圧倒された私がいた。 特に印象に残ったのがデスの最後の表情。自分がしてしまったことに対する後悔とこれから背負う罪への怒り、そしてかろうじてミドが真実を知らないということへの安堵が混ざった、限りなく絶望に近い希望であったように感じた。これを引き出した制作陣も体現した俳優本人も物凄いことをやっての

          どうやったって勝てない、と思ったオールドボーイ

          「エンターテインメント」の街、ニューヨーク 〜旅行記vol.1〜

          エンターテインメントって何なんだろう。 ラスベガスのショーとか、スタンドアップコメディーとか、ディズニーランドとか? ニューヨークに行った時に見たブロードウェイは涙が止まらないくらい素晴らしいものだった。 それは本当 だけど、私がニューヨークへの一人旅を思い出す時の「エンターテインメント」はそれだけじゃない なんかもっと、こう、些細で地味なものである気がする。 例えば、パストラミサンド屋の店員さんがコワモテなのに丁寧な英語で喋ってくれたり、 ブルックリンの古着屋さんのレジ

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          でも浮き雲を見て寄り添うことならできる

          知人の勧めで見始めたアキ・カウリスマキ監督作品 レニングラードカウボーイズを見たあと、二つめのカウリスマキ作品として「浮き雲」を選んだ 辛い、辛い、辛い、辛すぎる。何か悪いことをしたわけでもないのに、選択肢の中で最悪のことしか起こらない様子を描いた映画。笑うことも悲しむこともなく、ただただ人生の辛辣シャワーを直に浴びる夫婦 でも無表情の理由がわかった瞬間、切なさと同時になぜか、ごめん。という気持ちになった。理由がわかるまでは辛いことはもっと感情むき出しで受け止めればいいの

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          レザボアドッグスがとても好きかもしれないと思った初鑑賞

          とにかく全編通してティムロス最高だった〜!!!ほんっとうにいい演技する!!! まだ見たい!と思ったところにやってくる、あの後半の展開。 視聴者の見たいものがわかってて、それを適切なタイミングで配置できることこそがタランティーノ脚本が素晴らしい理由なんじゃないかなと思った! そして忘れちゃいけないこの人、スティーブブシェミ。 なんだかブシェミのセクシーさは昭和〜平成の日本の俳優が纏っていたものに似てると思ったし、演技がめちゃくちゃ上手い大御所芸人さんのオーラも感じられた。 日

          レザボアドッグスがとても好きかもしれないと思った初鑑賞

          フィンチャー作品の女性たちが好きだったことに気づいた

          今まで好きな映画を聞かれたらデヴィッドフィンチャーと答えてきたが本当はフィンチャー作品に登場する女性たちが好きなのかもしれない、ということを思った 例えば、ゴーン・ガールはロザムンドパイクの怪演が光ったと思うがエイミーという人物のあれこれを置いといても彼女の狂い方は映画の根幹を成してると思うし、 あとはドラゴンタトゥーのリスベット、ファイトクラブのマーラシンガーとかフィンチャー作品には印象的な女性が数多く登場する。 この3人が特にお気に入りなのだが、共通点に「イカれた女」

          フィンチャー作品の女性たちが好きだったことに気づいた

          バービー「エロい」と口に出さないこと

          「生まれ持ったものの絶対性を否定」する映画なんじゃないかなぁと。 女だから、大統領にはなれない 男だから綺麗な日焼けをしていなきゃいけない 人形だから感情を持ってはいけない そういうものの否定 そして身体的な特徴について衝動的に思ったことがあっても口に出さない、ステイトメントにしないことで構造にはならないと気付かされた バービーも性的な視線に晒されるまで身なりに恥じらいを感じたことはなかったのだから 誰かのステイトメントがコンセンサスされることで集団の隠れた総意になる

          バービー「エロい」と口に出さないこと

          ゴーンガールのオタクが見たパーフェクトケアの感想

          愛する人がいる方のゴーン・ガールだった バリキャリなゴーン・ガールだった 途中本当にゴーン・ガールの幻影を観た気がする。パンクロックっぽい音楽だったしロザムンドパイクが復讐の作戦を実行してたし 製作陣の中にも絶対ゴーンガールに狂わされた人たちがいて、その人たちの白昼夢の一種だと思った てかマフィアのお母ちゃん、なんか只者じゃない風格の顔してた。優しさの中にある怖さ?あの女優さん絶対どこかで見たことある気がする同じ感じの役で めでたしめでたしでした、と思ったらちゃんとカル

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