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睡眠指針も改訂スタート。新しい知見は、どう表現されるのか

7月31日開催の「第1回健康づくりのための睡眠指針の改訂に関する検討会」を傍聴しました。身体活動指針の改訂に引き続き、睡眠指針も改訂が始まりました。
資料 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34483.html

前回策定の「健康づくりのための睡眠指針 2014」から9年経過し、新たな科学的知見に基づく見直し、 また、健康日本 21(第三次)における睡眠分野の取組推進を目的とし、検討会がスタートしました。
第1回と言うこともあり、事務局より【資料2】「睡眠に関するこれまでの取組について」の説明、次に睡眠指針の改訂の元となる厚労科研の研究班の成果【資料3】指針改訂に向けた研究班のとりまとめを代表研究者の栗山先生より報告、【資料4】改訂に向けた論点についてを事務局から4つの論点として説明がありました。その後、構成員からそれぞれの論点について、意見をもらうという構成でした。

●睡眠に関するこれまでの取組について

事務局から説明があった睡眠に関するこれまでの取組について、箇条書きでまとめてみました。

○「健康づくりのための睡眠指針2014年」が前回改訂した指針。
○スマートライフプロジェクトの取組の一環として、睡眠に関するイベント等による啓発活動。
○健康日本21(第二次)の最終評価は、「睡眠による休養を十分にとれていない者の減少の割合」においては、「D 悪化している」。
○令和元年の国民健康・栄養調査では「 6時間未満の者の割合は、男性37.5%、女性40.6%、性・年齢階級別にみると、男性の30〜50歳代、女性の40〜50歳代では4割以上」。
○健康日本21(第三次)の目標は、「睡眠による休養を十分にとれていない者」に加え、「睡眠時間」に関する目標を設定。
○睡眠分野に係る厚生労働科学研究として、栗山健一先生を代表に研究(R3〜5年度)
「適切な睡眠・休養促進に寄与する「新・健康づくりのための睡眠指針」と連動した行動・習慣改善ツール開発及び環境整備」
➢「睡眠の質」評価指標の明確化
➢「睡眠の質」評価指標と他の睡眠指標(睡眠時間等)との関連の評価
➢「睡眠の質」改善に資する介入法の検討https://www.ncnp.go.jp/topics/2022/20220224p.html

●栗山先生から研究班の報告

 研究班では、前指針策定以降の睡眠健康に関する新知見として、睡眠時間と健康との関連、睡眠環境(光・騒音・温度) との関連、嗜好品(飲酒・カフェイン・喫煙) との関連を挙げています。

【資料3】指針改訂に向けた研究班のとりまとめ 

新知見の一つである「睡眠時間と健康との関連」では、睡眠時間/床上時間と起床時の休養感を用いた総死亡リスク評価について、中年群では、睡眠時間が短くかつ休養感がないと総死亡リスクが増加し、高年群では、床上時間が長くかつ休養感がないと総死亡リスクが増加することが報告されました。
報告の中で、睡眠時間と床上時間(寝床で過ごした時間)は、しばしば混同し、明確に区別できません(特に高齢期)。これが長時間睡眠を健康リスクとする一因になっている可能性があり、「主観的な睡眠時間」を評価指標とするのは限界があるのではということでした。
また、朝の目覚めの時に生じる休まった感覚=「睡眠休養感」がないと、死亡リスクが高まること、また「睡眠休養感」は、嗜好品、食習慣、身体活動などの生活習慣が関係しており、成人の健康維持において重要であることを明らかにしました。

●改訂に向けた論点についての議論

改訂に向けての論点として以下の4点が挙げられています。

【論点1】 属性等を踏まえた構成について
【論点2】 「良質な睡眠のための環境づくり」について
【論点3】 「睡眠と嗜好品」について
【論点4】 「就業形態と睡眠の課題」について

【資料4】改訂に向けた論点についてP4

論点についての構成員の意見や議論をざっくりでまとめると、

【論点1】 属性等を踏まえた構成について
属性として今までの成人、高齢者に加えて、子ども、そして子育て世代を考えているようです。母子健康手帳に、子どもの睡眠と、親の睡眠という項目が新たに加わったとのこと(←少し調べてみます)。

【論点2】 「良質な睡眠のための環境づくり」について
コンビニなど短時間の高照度の有害性は? スマホの利用とストレスとの関係、ブルーライトなどの記載の可能性?

【論点3】 「睡眠と嗜好品」について
カフェインの量やタイミング、エネジードリンクの摂取の仕方、電子たばこ(←加熱式たばこ?)についての記載。食習慣に栄養バランスの内容を入れるか(←研究班ではエビデンスの蓄積が必要という意見。今回はタイミングなど規則正しい食習慣になりそうです)

【論点4】 「就業形態と睡眠の課題」について
交代勤務は生理的には健康にはよくないことは明らかだが、社会生活の維持に必要であり、どのように記載するのかは注意が必要。上手な仮眠のとり方など、対処法としての記載になるのか。勤務時間が長時間になるといった在宅ワークなど新しい働き方について記載するか (←運用の成熟を待つべき、が研究班意見)

検討会を拝聴すると、研究班からの報告の新しい知見をもとに改訂となるようですが、前回指針から大きく変わるというよりプラスαとなる感じかなあと。新しい知見は具体的にどんな内容か、またどのような見せ方の工夫をするのかなど、次回を待ちたいと思います。

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