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4. 鍵を失くし、同時に拾った恋の予感。2年目の春。

ひと冬チャレンジしたセパタクローから
サーフィンに軸を戻した頃の話。

“私にはやっぱり海が必要だ”
そう感じて、春先には
毎週末サーフィンをする生活に戻っていた。

春といえば、新歓。
それは、大学生にとっての一大イベント。

私も例に及ばず
かなり意気込んでいた。

大会についての記事でも少し触れたが
1年生の間、わたしはサークルで
唯一の女メンバーだったから。

別にだからどうってことはないのだけど、
やっぱり男と女の違いはあって。

女子もいた方がいろいろと共感が生まれて
私的により楽しくなると感じていた。

なんとしてもこの新歓を機に
新メンバーとして女子を入れたかったのだ。

メンズも、
可愛い子が入ってくれたらラッキー!
と実に協力的。

チラシ配りやサーフィン体験会を企画して、
せっせと集客をかける私。

一方、半分本気のナンパ口調で
次々と新入生をグループLINEに
誘い込んでいくメンズたちは
なかなかのものだ。

結局、50人以上をグループに招待し、
体験会の具体的な呼びかけを行う。

50人集まったとはいえ、
勢いに押されてグループに入った人や
かなり真剣にサーフィンを愛するメンバーに
若干引いた人たちからは反応なし。

結局、実際に体験会に来るのは
20名程になった。

(設立3年目、活動日も未定で
自由極まりないサークルにしては
十分頑張った方だと今でも思っている。)

体験会は参加者をグループに分けて、
午前、午後の2部開催を
2日間実施することに。

私は、日程の都合で
2日目のみの参加となった。

場所は江ノ島、鵠沼海岸。
その日は非常に風が強い、
海面の荒れた日だった。

メンバーの1人がお世話になっている
ショップでソフトボードを2本レンタルし、
体験会スタート。

海の中で教えるのは他のメンバーに任せて、
私は砂浜待機組の新入生と
おしゃべりをして楽しんでいた。

午前の部が無事に終わり、
近くのマックで昼休憩。
一息ついた後に、
午後の部の子たちと駅で落ち合う。

相乗りしてきた友達の車の鍵を預かり、
変わらず私は浜辺で見学。
午後は参加人数が少なかったので、
全員海に入りっぱなしだった。

初めて立てたところを動画に収めたり、
ふらふら散歩をしたり、昼寝をしたり。
自由気ままに海辺での時間を潰す。

ふと、手に持っていたビニール袋から
水を取り出して気づく。

あれ、車の鍵がない、、
やばい!!!

なんでビニール袋なんかに
突っ込んだのかと激しく後悔したが、
もう遅い。

海からみんなが上がってくるまでに
なんとしてでも見つけなきゃ、、

必死になって車を停めた駐車場から
記憶を頼りに海辺のコンクリートを探す。

ここで寝てて、それから
失くしたことに気づいたけど、
その前は確か砂浜をぶらぶらしてて、、

うわぁ、やっちまったよ
鍵の存在忘れて
ビニール袋振り回してだよ
絶対あの時じゃん、、

鵠沼海岸はとにかく横に広い
相模湾の一角。

だからこそ、いつも
どこかの地形は決まっていて
サーフィンしやすいのだが、
いまはその広さに、絶望しか感じない。

砂浜を暗い気持ちで探していると
海からみんなが上がってきた。

おわった。。

“みんなごめん。
そしてケイ、本当にごめん。
車の鍵を無くしちゃった。。”

半べその私に、ケイは優しく声をかけた。
“まじかぁ、、まぁ、大丈夫っしょ!
とりあえず一緒に探すか。”

朝から風邪気味、と鼻を啜り
2ラウンドひたすら海の中で
新入生のボードを押し続けて
ヘトヘトになって上がってきたはずなのに。

何度も探した道をもう一度、
彼と並んで探し歩く。
ウェットスーツのままの彼は
いつになく饒舌に話し続けていた。

やっぱり、鍵は見つからなかった。

もしかしたら誰かが拾って
届けてくれているかも、とサーフビレッジの
事務員さんに声をかけるが、
”鍵の落とし物は届いていない”とのこと。

スペアキーを取りに帰るから
車を今晩停めて置かせて欲しい、と
事務員さんに許可を取り、
一旦車に戻る。

幸いにも、着替えは他の場所にあったので
ケイは一度着替えてくることに。

その間に、もう一度私は
元来た道を辿っていく。
そして、砂浜へ。

なんで無いんだよ、もう、、!
半ば、やけくそになって
砂浜を蹴っていると、
足元でキラリと何かが光った。

私は叫び出したい気持ちを
必死で堪え、車の近くで待機している
ケイ目掛けて一直線に走り出す。

早く、早く言わなきゃ!

近づいてくる私の顔を見て
察した様子のケイに、私は
調整をミスった声量で伝えた。
“見つけた!!!!”

体から喜びが溢れ
思わず、全力でハグ。

違う意味で泣きそうな私を
しっかりと受け止めてくれた彼の体は
見た目よりもしっかりしていて
温かかった。

今ではもう曖昧な記憶だが、
きっと鍵とともに拾ったのだと思う。
温かくて、優しい気持ちにしてくれる
恋の欠片を。

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ここまで読んでくださり、
本当にありがとうございました。
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