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山尾悠子『飛ぶ孔雀』を読んだ


山、川、橋、街、人、犬、蛇、孔雀
見覚えのあるものたちなのに、山尾悠子の世界の中だと不思議と現実離れして見える。

叔母に追われるおかっぱの少女、宴と日を運ぶ女子高生と禁忌、山奥のラボに地下温水プール...

各所で各々が存在していて、小さな事件とも言えるような出来事が起こるのを断片的に垣間見ている心地良さと、自らの想像力が追いつかず頭の中で景色を構築できないときの心地悪さがたのしい。小鳥にでもなって生活を覗き見しているようだった。小鳥たちに出てくるような儚く美しい小鳥ではなく、ただの小さい鳥。

現実に則し、張り巡らされた伏線をきれいに回収して一つの場所に収束するお話は作り物としか思えないのに、山尾悠子の小説を読んでいると、どれだけ現実には有り得ないことが起こっていても作り物には思えない。

繋がってたり繋がっていなかったり、あの子はどうなったんだろうと思う余白があったり、考えても分からないこともたくさんあって、だからこそ手元において、再読の機会までうちでのんびりしてほしいと思う。次お目にかかるまでに私ももっと見聞を広めて、今よりもっと深く世界に潜り込めるよう精進しますと約束を込めて。

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