笑顔が激マブ(死語)な旦那さんと結婚して、数年が経った。

　親戚から「早く孫の顔が見たいな〜」「◯◯の◯◯ちゃん、妊娠したみたいよ。あ、結婚して何年だったっけ？」という何気ない言葉で、バスケットボールの球を取り損ねて突き指したみたいな痛みが走り、一方、母からは「子どものこともっと考えないとダメよ！」と猛スピードのドッチボールの球を顔面ストレートでキメてくる。

　バタン！と、わたしは後ろに倒れ込み、案の定、後頭部から血が流れている。しばし待たれよ、孫の時代の日本を今ちょっと憂いているところだから。◯◯ちゃんは◯◯ちゃんのタイミングでできたの。わたしはわたしのタイミングがあるの。え、なんだって？するってーと、つまりはわたしが「ダメ人間」てこと？ WHYジャパニーズピーポー！だ、ダメだ、止まらねぇ。誰か！止血してください。救急車呼んでください！

　… 救急搬送されながら思い出した。
　そういえば、結婚する前の独身時代も同じようなことがあった。

　とある飲み会の席で「◯◯歳で結婚してないと、一生独身」とか、「この歳で結婚してないとヤバくない？」とか、「っていうか、絶対わがままでしょ」とか、どの言葉もとても楽しそうに激マブ(死語)な笑顔で投げてくる。いい度胸してるじゃないか。わたしはそんな言葉で何も傷付いていませんと言わんばかりの激マブ(死語)な笑顔でラリーを打ち返す。「結婚しない人生だって楽しいですよ」「え？そう言うあなたがヤバくないですか？」「って言うそっちの方が性格悪いでしょ」そして帰宅後、枕をサンドバックし、4の字固めをキメ、気付いたら周囲に水溜りができているのはなぜだろうか。

　そんな独身時代から今。
　なんだか知らないが、デジャブのようなことが起きている。年齢的なことを言えば、３０代後半の高齢出産に当てはまる。わたしはずっと「子どもを持つべきか、持たざるべきか」という問いの直球が常に周囲を飛び交っていて、いよいよ心の救急搬送もされたので、旦那さんとちゃんと話すことにした。

　わたし「子ども…ほしい？」
　旦那　「うん、やっぱりほしい！」
　わたし「わたしはね、わからないの。欲しいのかな〜欲しくないのかな。自分のことなのに、わからないや。なんかもう、男に生まれたかった」
　旦那　「え！ゆりかが男だったら、困ります！無理せずにゆっくりでいいからね！」

　旦那さんはバツイチ。
　前の奧さんとの間に中学１年生の男の子がいる。

　わたし「息子くんがいて、わたしとの間にも子どもができたら…それについてはどう思う？」
　旦那　「複雑に思うかもしれないけど、ゆりかとの間に子どもを持つことは、自分にとってとても大事な事なんだよ。でも、プレッシャーにならずにね。出来なかったとしても、２人だけの人生も特別なものになると思うよ」
　

　わたしは真っ青な透き通る海の中でザブン！と飛び込んだ。ふと見るとラッコが海藻をベットにしてプカリと浮かんでいた。わたしもそっと隣に泳いでいって手を繋いだ。ラッコのモフモフの手が気持ちいい。リラックスして深く深呼吸をした。そして波に身を委ね、瞳を閉じてユラユラと本音が揺れ出した。

　仕事と育児の両立
　身体のタイムリミット
　母になる自信がない
　お金の心配
　旦那さんにとって、もう１人の子ども…
　

「何か悩み事？」

　わたしは閉じていた目を開いた。え？誰…？

「君はちょっと物事を考えすぎる節があるからな〜」

　どうやら声は隣から聞こえてくる。そして、チラッと見ると、案の定ラッコが話している。
「あ、あの…えーと。ラッコさん、話せるんだね。知らなかった」
「あぁ、この世界には知らないことがたくさんあるよ」
「知らないことを知るって、怖い時があるの」
「そうだよね。でも、あと少し勇気を出すだけだよ」
「うん…それでわたしが変わってしまったらどうしよう」
「でも、君はもっとその先に何があるかを知っているよ」
「あれ？さっき、知らないことがたくさんあるって言ったでしょ」

「… 君は、知らないふりをしているだけだよ」

　パチンと、夢から目を覚ました。隣で旦那さんが気持ち良さそうに寝ている。手を繋いでいたのは旦那さんだったのか。「心配ないさぁ〜！」とラッコの次に今度は大西ライオンの歌声が頭の中でリピートしている。

　いよいよ本格的に不妊治療を始めることになったので、記録として不定期でエッセイ的妊活話をしたいと思います。
　妊活ってどうしてもデリケートな話になりがちだけれど、同じことで悩み考えているnoterさんと、繋がるきっかけになれたらいいなと思っています。

ぶっちゃけ妊活日記 vol.2はこちら

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