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画面の向こう側

「かんぱーい!」
グラスとグラスがぶつかる小気味好い音が響く。

5、6人の若い女性がテーブルを囲んでいた。
右手にはビールやカクテルなど思い思いのお酒と、左手にはスマートフォン。

不思議な光景だった。
彼女たちは確かに顔を付き合わているのに、声を揃えて乾杯を交わしているのに、皆スマホの画面を見つめている。
正しくは、"スマホの画面を通して"、その光景を見ているのだった。
動画か何かを撮っているのだろう。恐らく、SNSにアップするための。
確かにその場所に居ながらも、彼女たちは本当はスマホを通してさえもその景色を見ていないように思えた。目の前にいる誰かではなく、画面の向こうにいる、不特定多数の誰かを見つめているようだった。

#今日は飲み会 #久しぶりに集まれた#話が尽きない#ありがとう

ハッシュタグでぶつ切りにされたそんな言葉たちと共に、電波に乗って動画は流れていく。

いまや投稿についた「いいね」の数で充実度が決まる世の中なのだ。
たとえ、意図的に切り取られた瞬間のその裏に、どんな奇妙な世界が広がっていたとしても。