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詩:『ケルベロスⅡ』

辺り一面を分厚く白く修正し
生命を手厚く葬らんと雪が

降り続ける真冬の東京に
白い野犬が紛れ込んだ

サクサクと闇に溶け往くよう
積もった雪の重みを踏みしめ

夜の都市に擬態する野犬
その生物多様性に死の咆哮ほうこう

精神神経科の夜勤病棟然とした
更生施設に野犬の叙事詩は漂着し

フィレンツェの憑依霊能者然とした
構成作家が野犬の抒情詩を漂白する

あまねく正当に評価せず/
                      /あまねく罪を罪とせず】

地獄に擬態する多様性
それは社会という狂気

煉獄に意味を付する虚構性
それは詩人という病気

丸々太った溝鼠ドブネズミが横切り
嬉々として野犬は飛び掛る

野犬は鼠の詩をしたため
詩人としての門に至る

「あんたはインチキだ
他の奴らと同じだ」

やめろやめろ道化師よ
詩人を冒涜するな

察しろ察しろ市井しせいの人よ
構成作家を評価するな

【死→地獄→煉獄→天国→詩】

冬の野犬に白い都市の夜景を
豪雪の天国ただなかに詩の咆哮ほうこう

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