見出し画像

赤い靴のなる木

シロクマの男の子は、
お母さんが編んでくれた
赤い靴がお気に入り。

どこへ行くにも赤い靴と一緒だ。

ある日、
森の中を散歩していると、
突然目の前に現れたリスに驚いて、
靴が脱げたのにも
気が付かず一目散。

家に着いてから、
靴が片方ないことに
気が付いて
おいおいと泣き出した。


靴は、地面に転がった。
やがて、雨が降った。


翌日、
シロクマの男の子が泣きながら
靴を探しにやってくると、
なんとびっくり。
靴の中から芽が出ている。


それも、靴のように赤い芽だ。


シロクマの男の子は、
芽が出た靴を動かさずに
翌日も訪れることにした。


次の日、
のぞくと、なんとびっくり。
芽はぐんと伸びている。

その次の日には、
もっと伸びて、
その次の日には
枝分かれをして太くなり、
その次の日には、
幹となり成長した。


「僕の靴が、木になった!」

シロクマの男の子は、
木を目の前に大興奮。


ある日、
いつものように
木を見に訪れると
いつもと様子が違う。

なにやら、
たくさんの赤いものが
ぶらさがっている。



りんごかな?


近づいてみると、
なんとそれは赤い靴だった!



シロクマの男の子は
驚いて、
手が届いた靴を一つ、
もぎ取った。

そっと白い足に
履かせてみると、
ふかふかと包み込んであたたかい。


シロクマの男の子は、大喜びだ。


今まで
見たことも聞いたこともない
木の存在は、
森の動物たちにまたたくまに広まった。


「僕の靴だよ!あたたかいんだよ!」


シロクマの男の子は、
意気揚々と
小鳥やうさぎ、ふくろう、
あのときのリスにも
赤い靴を配った。

「ほんとうだ!
とってもあたたかい、お洒落な靴だね。
ありがとう!」


動物たちも
思わぬプレゼントに大はしゃぎだ。


すっかりすべての
赤い靴をもぎ終えると、
靴のなる木は、
ただの木になった。

もう、靴がなることはなかった。


赤い靴は、
動物たちの足元を
ふかふかと包み込む。


木は、すっかり
動物たちの新しい遊び場になった。





大人だからこそ出来ること。
一度やってみたかったホールケーキの
スコップ食べ。





記事を見つけて下さり、最後まで読んでいただきありがとうございます。 少しでもなにか心に残るものを届けられていましたら、こんなにも嬉しいことはありません。