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気分はサプライズプレゼント

社会人になって数年たった頃、
地元の電車に乗っていると、
向かいの席に
懐かしい顔を見つけた。

平日のお昼時、
各駅停車は空いている。

7人掛けの椅子に一人、
すやすやと眠る彼女は、
大学時代の友人だった。

懐かしさに心躍るが、
彼女は今、夢の世界だ。

その眠りを邪魔しないように、
そっと隣に腰かける。

数駅過ぎた頃だろうか。
ついに彼女が傾いた首をあげた。


「おはよう」


「・・・あれっ?あっ、おはよう!?
びっくりした!・・・えっ?なんで!?」


友人との再会と
その笑顔に嬉しくなって
彩りある1日になった。



はたまた、昨年末のこと。
夫の両親と温泉旅館に泊った。

朝ごはんのビュッフェでは、
シェフがその場で焼いてくれる
オムレツの列に吸い込まれる。

2種類ある味のうち、
どちらにしようか悩んでいると、
目の前にある顔にピントがあった。

プレーン味に並ぶその人は、
前の会社の上司だった。


思わず二度見する。


瞬時に声をかけるか
かけまいかを逡巡し、


「Kさん。」声をかけた。


「えっ!なんで!?びっくりした!!」


私よりもうんと高い背丈だが、
腰と膝を曲げて驚かれた。
プライベートに
お邪魔をしたら悪いかな、
と迷ったけれど会話に花が咲く。

思い切って声をかけてよかった。


もう一つ思い出した、
実家で暮らしていた頃のこと。
気分転換に1人、公園に散歩に出た。

芝生に足を伸ばして座る。
いい天気だなぁと
カメラを構えると
遥か前方に目を引く米粒大の顔が2つ。


父と兄が、サイクリングをしていた。


あまりに奇跡的な偶然に、
迷わずシャッターを切る。

帰ってから、父と兄に
「公園にいたでしょ!ほら!」
意気揚々と写真を見せると、
母が言った。


「あら?
のっぽ達も公園に行ってたの?
お母さんも花壇ボランティアで
行ってたけど、気づかなかったわ。」


どうやら同じ時間帯に
家族全員、同じ公園にいたらしい。

その写真は、
今も待ち受け画面だ。

世間は狭いというけれど、
思わぬプレゼントをもらった気分だった。


記事を見つけて下さり、最後まで読んでいただきありがとうございます。 少しでもなにか心に残るものを届けられていましたら、こんなにも嬉しいことはありません。