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「普通って何だろう」の答えはここにある

普通って何だろう
普通って何だろう
普通って何だろう

少女は空を見上げる

秋の空
雲の塊を
ほんのりピンクに染めて
暮れなずんでゆく
季節に乗り遅れた金木犀の花が
少女の鼻をかすめる

普通って何だろう

その答えを探しつづけている

公園のベンチに風が通り抜ける
さっきまでボール遊びをしていた
子どもたちは
もう家路に着いたのだろうか

足元に寄ってきた鳩たちに混じって
カラスが一羽

まるで
自分のようだと少女は思う

普通
まだ夏服じゃない?

昼間クラスメートは
そう笑った
昨日
学校に冬服を着ていったのは
自分1人だった
白い制服の中に
ぽつんと黒い制服は立ちすくんだ

普通でいることは
安全な居場所を作ること
普通でいることは
仲間でいることへの免罪符
普通でいることは
生きていく術のひとつ

普通ってなに?
誰が「普通」を決めるの?

ナナフシギは
擬態することで
敵から身を守っているんだ

理科の先生は
写真を指さしながら
こう言った

彼女たちもこうやって
見えない何かから
身を守っているのだろうか

普通でないことは
危険なこと?
人に合わせていればいいの?

今朝は気温が低かった

彼女たちは次々と冬服に変身する
これは擬態?
周りが変わることで
私も「普通」に見えてくる

周りが変わることで
見かけの「普通」を手に入れた
私は何も変わってないのに

普通って何だろう
普通って何だろう

答えはまだ見つからない
でも
答えはきっとここにある
私の中にきっとある
私の「普通」は
きっと私を居心地よくしてくれる

空気が冷たい
公園には夜の帳が降り始めた
いつの間にか
見慣れた風景は静寂に包まれていた

明日には
周りのクラスメートのほとんどが
冬服に変わり
少女はすっかり「普通」になり
白い制服の子が
「普通」でなくなる

ナナフシギ誰がためのまほろばか
一人ひとりの「普通」の扉




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