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ソツギョウといふ始まりの歌

あと3日

遂に
卒業までのカウントダウンは
ひと桁になった

あと3日

数字が重くのしかかる

晴天とはうらはらに
窓に打ちつける風は
春の嵐みたい

卒業という扉を開けたら
いったい何が待っているのだろうか
私はどうなっていくのだろう

思えば3年前
私は小学校卒業という扉を開けた
希望に胸を膨らませて
叩いた中学校の門は
入学式だけ開かれて
すぐに閉じてしまった

感染拡大による休校
ぽつりぽつり始まった分散登校
やっと教室での授業ができたのは
6月だった

新しい扉は
今度は
ちゃんと開くのだろうか

運動場では
嵐のような風が砂埃を巻き上げて
吹き荒れている


1  1   2  3  5  8  13  21  34  55どんな規則で並んでいるかわかるかい?
担任の数学教師は聞いた

これは
フィボナッチ数列というんだ

求めたい数があったら
その番目の2つ前と1つ前の数を足す
その規則によって成り立つ法則
つまり
55のつぎは34+55=89

初まりを
どの2つの数字にするかで
変化の割合が決まる
もし初めの数字が負の数字だとすると
結果は負の数字にしかならないよ

卒業まで
あと3日

どんな数字から始める?
数学教師はにっこり笑った


数学教師なりの
ちょっと不器用なエールに
思わず笑ってしまった

それでも
気持ちは届く

理科の先生は
未来を宇宙に例えて
身振り手振りで
限りない可能性を語った

君たちは新しい歴史を作るんだ!
そう声を張り上げたのは
いつもは静かな社会科の先生
これもベタすぎて
吹き出してしまう

それでも
その人なりの
それぞれの応援はじんわりと
心を温かくしてくれる

心は見えない
感じるものだ

終わりは始まり

ああ
卒業は始まりなんだ

正の数字で始めたいな
小さな数字でもいい
自分なりの変化や増え方をすればいい

窓の外を見る
相変わらずの強風

春一番なのかもしれない
冬の終わりを告げる
春一番

見えない先への旅立ち前は
怖さも不安もあるけれど

卒業式の日は
笑って扉を開けよう
その先に
きっと
光射す場所が待っていることを信じて


いたづらに
過ごせし日々に陽を集め
ソツギョウといふ始まりの歌








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