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深堀隆介展[金魚解禁 日本橋]~8月8日@日本橋三越本店

 深堀隆介展「金魚解禁 日本橋」(〜8月8日、最終日午後6時終了@日本橋三越本店 本館7階 催物会場)に駆け込んできた。危うく行きそびれるところだった。同店本館中央ロビーには、ライブペインティングで描かれた作品も展示されている。

タイトルは「夢端」
7階催事場入口の看板

■超絶技巧-2021年の展覧会を振り返る


 「生きた金魚を樹脂で固めた?」、としか思えないリアルな金魚が、深堀隆介というアーティストが描いた「絵」だと知り、ぜひこの目で見てみたいと思いながら、何度か展覧会に行きそびれ、昨年末~に上野で開催された「金魚鉢、地球鉢」にはじめて足を運んだ。

2021年上野の森美術館で開催の「金魚鉢、地球鉢」

 「金魚鉢、地球鉢」展では、作家の代表作である、升を使った「金魚酒」3作品が撮影可能だったので、まずはそれから。

金魚酒(「金魚鉢、地球鉢」展)

金魚酒
深堀氏の代名詞であり、最も長く作り続けてきたシリーズです。
枡を使用することで、日本人としての自身のアイデンティティを表現しています。
観覧者の視線を真上から覗き込ませることに限定することで、
自身の作品の原点でもあり、金魚を最も美しく鑑賞する方法とされている“上見(うわみ)の美”を体現しています。

上記説明文は、三越伊勢丹「深堀隆介展「金魚解禁 日本橋」紹介文より
升にアクリル樹脂を流し込み、乾いたところに筆で金魚の姿を描き、樹脂を流し込んで乾くと再び描き、を繰り返して完成

 同展覧会では、「金魚酒」をはじめとしたリアルな金魚の絵が生み出されるまでの、試行錯誤の過程が追体験できる構成になっていた。

 プロフィールにもあるとおり、行き詰まったとき、大好きな金魚からインスピレーションをもらうという、作家言うところの「金魚救い」という体験があり、2年で、全く新しい画法「2.5Dペインティング」を編み出す。制作過程のビデオ上映もあった。

 また、年を追っての作品展示によって、重ねるごとに金魚の姿がどんどん立体的に、よりリアルにブラッシュアップされていくようすが見てとることができた。

 加えて、金魚の姿をひたすら段ボール箱の裏に描いたり、Tシャツなどのデザインをしたり。そんな、成功するまでの葛藤の痕跡も展示されており、すさまじいエネルギーを感じた。 

■自らの評価を塗り替えていくパワー

 到達した「超絶技巧」が強烈すぎるので、深堀隆介=アクリル樹脂のアーティスト、というイメージが離れなかった。しかし今回の個展で、深堀氏は下記のように語っている。

この「架空の金魚」というところ。昨年の展覧会での説明によると、深堀氏が実際に金魚のデッサンをするのは、金魚が死んでしまったときのみ、とあったと思う。それだけ金魚を愛し、いつも見続けているのだろう。

 アクリルの立体作品はもちろん、新しく編み出した立体的な「2.25Dペインティング」の絵画作品も展示されていた。展示作品はネットを通じて抽選販売されており、200万円程度までの作品は売約済みとなっていた(ちなみに、金魚酒は175万円ほどだったと思う)。

 描かれた金魚たちは美しかったり、ときに妖艶だったりもするのだけど、どの作品からも、「金魚が好きすぎる」という愛を持って命を吹き込まれたことが伝わってくる。

 金魚、という人生をささげられるテーマに出合い、ひとつの表現を究めた作者にはきっと、まだまだやってみたいことが数多くあるのだろう、という熱がが伝わってくる。鑑賞者の一人として、金魚をモチーフとした、また新しい表現に出合えるのかもしれない、と思うと楽しみだ。

 

 

 

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