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俳書メモ

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俳句関連本の読書メモ
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一緒に俳句を苦しみたくなる『俳句脳』

あさって長野の諏訪に行く。 そのためのガイドブックを地元の図書室に借りに行った。 うちの市は人口8万で、図書室が6つある。 その中で一番小さい図書室に初めて行った。 目的のガイドブックを見つけて、 全く期待せずに俳句関連のコーナーも見てみた。 古い歳時記と、芭蕉関連のエッセイと、夏井先生の入門本があり、 「まあ、こんなもんかな」と思っていたら、一緒にこの本があったのだ。 黛さんと茂木さんで対談本を出していたとは…! あと黛さんの句集『B面の夏』もあって、近隣住民にファン

もっと写生したくなる虚子の俳論三部作

虚子の俳論三部作を読んだ。どれも薄いので、一気に読みやすかった。 結論、もっと早く読んでおけばよかった。 たまに話題になる「写生とは?」について、虚子がわかりやすく回答している。あと随所で「〜なのが俳句である」と、言い切ってくれるので、迷ったときに参考になりやすいと思う。さすがは大虚子! 『俳句はかく解しかく味わう』は鑑賞本に分類されるが、俳句論や実作に立ち入るポイントや、先人にダメ出ししているポイントが豊富なので、俳句論の本としても読み応えがあった。 僕なりに気づき

命のひらめきを探したくなる『俳句とは何か』

俳句論の本は20冊くらい読んだと思うが、どの本にも名前が挙がる評論家がいた。 山本健吉。 彼の「俳句は滑稽なり。俳句は挨拶なり。俳句は即興なり」を引用する文に何度出会っただろう。その度に読んでみたいと思っていたが、なかなか手を出せずにいた。 が、年末年始の時間を取れそうなタイミングで、『俳句とは何か』を鱗読書会の課題本にしてもらえたので、ついに読むことができた。 結果。 思っていたよりも熱い本だった。引用先ではテクニカルな話題が多かったけど、それよりもっと情熱のたぎ

五七五の次を考えたくなる『絶対本質の俳句論』

苗字が同じ俳人は何となく気になる。歳時記で出会うと、ちょっと余分に目を通しておこうという気になる。僕の場合は、阿部みどり女、阿部青蛙、、、そして阿部完市だ。阿部完市の が好きだ。通称あべかん、本記事でも尊敬を込めてあべかんと呼ばせて頂きます。 そんなあべかんが『絶対本質の俳句論』という、インパクト絶大のタイトルの本を遺していた。鱗読書会で教えてもらって、すぐにポチった。 「絶対本質」なんてねぇ、なかなか言えないですよ。このタイトルはどうしたって「巷で言われているのは本質

見慣れたものを見知らぬものに置き換える俳句を詠みたくなる『おいしそうな草』

詩人の蜂飼耳のエッセイ『おいしそうな草』を読んだ。俳句とは関係ない文脈でオススメされたのだけど、句作に役立ちそうなポイントがあった。 それは「詩や芸術がどうやって生まれるのか」を論じている箇所だ。 僕は句作するとき、「感動」を思い出してとっかかりにすることが多い。が、どういう「感動」をベースにすると、詩になりそうかのヒントがここにある気がする。 4点抜粋します。黒太字は僕が勝手につけました。 3行でまとめると、 習慣に従って生活していると、眠らされてしまう感性がある

絵画的な俳句を詠みたくなる『百句燦燦』

アンソロジー句集『百句燦燦』を手に入れた。 先日読んだ『愉しきかな、俳句』で、装幀家の間村俊一さんが、衝撃を受けた句集として挙げていたからだ。曰く、 歌人の塚本邦雄さんの愛誦句集 塚本さんの完璧な美意識と価値観で、選句されている 独特な活版組の本文がイカれるくらいすごい 余白も美しい。造本のすごさを味わうために持っておくといい この原体験ゆえ、今でもコンピュータじゃなくて活版にこだわってしまう テキストだけなら今でも文庫版で手に入るよ である。ここまで言われて

俳句というツールを磨きたくなる『愉しきかな、俳句』

9月に道後俳句塾に行く。西村和子先生に初めて句を見て頂く。 せっかくの機会なので、西村先生の著作を読んでおこうと思った。そうして新宿の紀伊國屋で出会ったのが『愉しきかな、俳句』である。各界の著名な俳句愛好者15名との対談集だ。 読み返したくなる言葉がたくさんあったので、抜き出してみます。 ※一部、編集しているところもあります 洋菓子店当主の山本 道子さんと 歌人の永田 和宏さんと 居酒屋探訪家の太田 和彦さんと 歌舞伎役者の坂東 三津五郎さんと 小児科医の細谷

『証言・昭和の俳句』で解けた、道後俳句塾の小さな疑問

黒田杏子先生が逝去された。いつき組の自分にとって、組長(夏井いつき先生)の師匠である杏子先生は大師匠のような存在であるが、お目にかかったことはなかった。 ただ、『瓢箪から人生』で描かれた、 赤ワインを一緒にガンガン飲んでくれる 大柄で創作作務衣を悠々と着こなす 組長再婚時に兼光さんを紹介したときの言葉「夏井いつきは貧乏です! 再婚する以上は、心して支えてやっていただかねばなりません」 の大らかなイメージと、昨年の道後俳句塾でのコメントをお聞きして、いつかお会いできた

『俳句の射程』は、詩の有無のヒントを得られる

俳句2年生になった。 組長(夏井いつき先生)が秀句を評価するときに、わかったようでわからない言葉がある。それは、 「そこに詩があるのです」 だ。僕にとって、これが難しい。 思えば自分は、詩への苦手意識がある。学生時代、国語は得意教科だったけど、詩は駄目だった。中原中也の『汚れつちまつた悲しみに』は好きだったけど、テストはいつも自信がなかった。例え正解できても、たまたまでしかなかった。 そして今再び、詩の壁にぶつかっている。 俳句の詩性について言語化できないまま一年

『名句に学ぶ俳句の骨法』は、『20週俳句入門』の切字のモヤモヤを解消できる

バイブルと名高い『20週俳句入門』を読んで、僕がまず思ったのは、 天になる句で「や、かな、けり」入ってる句、ほとんどないやん! だった。そう思った方は他にもいるのではないだろうか。例えばNHK俳句や、夏井先生が選者の投句先において、入選句で切字の「や、かな、けり」が用いられている割合は少ない。 初心者の自分が句作する上で『20週俳句入門』の基本型はとても便利だ。便利なのだが、投句先で基本型にはまらない秀句の衝撃を浴びると「自分もそういう句を詠んでみたいなあ」という憧れを

『20週俳句入門』のつぎは『この俳句がスゴい!』がオススメ

今年の6月にバイブルと名高い『新版 20週俳句入門』を読んだ。それから俳句関連の本を読み続けている。ざっと以下な感じだ。 そしていま、20週俳句入門の直後に読みたかった本に出会った。 小林恭ニの『この俳句がスゴい!』である。 僕は20週俳句入門の暗誦句を割と頑張って覚えた。暗記アプリも駆使して、出勤途中にぶつぶつ呟きながら覚えた。久々に受験生気分になった。 中には、意味もわからぬまま覚えた句もある。流石に連呼していると自分なりの景はぼんやり出来上がるが、正直、胸を張っ

『新版 20週俳句入門』を村上春樹とかけ合わせて読む 第16-20週

第16週 あるレベルに達したX 以前の季語考察記事でも同じ言葉を引用したが、そうだよなあと思う。 X 人と違うことを詠みたければ、人と違う言葉で詠みなさい。 第17週 「俳句は切字響きけり」X 集中して糸を手繰り寄せたい。 第18週 俳句を上手に作る法X 季語「で」表現したい。 第19週 「をり」「なり」「たり」X 俳句のリズムは、あらゆる面のバランスによって生み出されるところがありそうだ。 第20週 これからの勉強法X 俳句というツールのいろんな可能性

『新版 20週俳句入門』を村上春樹とかけ合わせて読む 第11-15週

第11週 上五の切り方X 自由自在に詠まれた魅力的な句を見ると、自分も型から外れたくなる。でも、まずは型を身につけようと思う。 ※ 型・その一 = [上五が季語 + や] + [中七] + [名詞止め] 第12週 二つめの型へ進むX 抽斗として使える季語が数百もあれば、表現したいことはまず表現できるようになるのかな。 X スルメみたいな俳句を詠みたい。 第13週 「新宿の空は四角や」X リアリティの肝を鷲掴みしたい。 第14週 「眼中のもの皆俳句」X 僕も

『新版 20週俳句入門』 暗誦句の暗記アプリデータを用意してみた

『新版 20週俳句入門』の暗誦に挑んでいる。が、そらで言えるようになるのは難しい。僕の記憶力では、とっかかりになるヒントがないと厳しい。 そこで例えば、最初の虚子の句だと、 1句目「日の当たり」 → 2句目「日当たり」 2句目「一葉」→ 3句目「一つ」 みたいに連想して覚えていた。そうして20句まで覚えたが、よすがとなるものを、無理やり編み出し続けるのも本末転倒な気がしてきた。 だから、単語カードを作ろうと思った。 表面に季語、裏面に暗誦句。 ただの受験生である。