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人生で

人が生きていく。

人生という名の果てしないようでいて、限りのある豊饒な道のり。

長いようでいて短い。
良い事もあれば悪いこともある。
今を見つめて、過去を振り返り、未来へと視線を向けていく。

人の一生というのは、少なくとも試行錯誤の連続であるという側面も持ち合わせている。

学校で、仕事で、家庭で、はたまた何か自分が熱中出来る事で…。

物事に対してだけではない。

周りの環境や人間関係などの事でも悩み考え、答えにならないような答えを見つけようと試みる時もあるのではなかろうか。

そして過ぎ去った年月の中で、日々目の前の事に追われていつしか忘れていく事もあろう。

忘れていった事に対して何か意味があるのか。

あれだけ熱中していた事を、気付いた時には心の窓際に立たせてしまっているのに、幾ばくかの心残りを感じているだけの自分で良いのか?

大切な人達との過ぎ去った時間達は果たして過ぎた時間という概念だけになってしまっているのか。

日々歩んでいけば嫌なこともあり、傷つくこともあり、逆に良いこともあったり、癒されたり勇気づけられたりすることもある。

人生…。

人それぞれ人生の歩み方は違えど、その人にとって何かきっかけを与えてくれるような出来事や思い出、そして物であったり芸術であったりとアクセントや気付きを与えてくれるような事やモノがあったりすると思う。

あの時あの人に出会ったから今の自分がある。
あの時あれがきっかけで今の自分がある。
あの出来事があったから今の自分に役立っている。
あの芸術に触れて心が覚めた。
あの音楽があったから…。

などなど、たかだか自らの42年の人生を振り返ってみても思い当たることはある。

取り立てて人に自慢のできるような人生ではないが、こうやって楽しませて頂いているのは、そういったアクセントや気付きに出会えた事も一つの要因だとも思う。

そしてそのアクセントや気付きによって、自らの人生を振り返り、忘れていった事や人との思い出に焦点を当て、答えを導き出し、更には傷つき打ちのめされても前をむき、再び前を向いて歩んでゆくきっかけを与えてくれるものになったりする。

人間本当に必要なものだけでは心は豊かにはなれない。

気がする…。

多くの芸術事にも人生を彩ってくれる様々な色彩を与えてくれる力があるのだ。

読書感想文。

好きな小説家の原田マハさんの作品

【〈あの絵〉の前で】

小説は六編からなるショート・ストーリーから成る。

どのお話も舞台は日本で、最近の事のようにも、身近な事のようにも感じて自らの事のようにも感じる。

そして親近感が湧く。

主人公達の人生の立ち位置や、抱えている事、悩んでいる事など様々だ。

過ぎ去っていった歳月の中で埋もれていった事や、忘れていった事。

苦しみ傷つき逃げるような出来事によって、目を背けてしまった自分のアイデンティティ。

人生のいわゆる決まりきったレールを歩き、潜めていた自分の情熱…。

ふと今を見つめた時に去来するものが人それぞれにあるのかもしれない。

だが、一日を過ごす事で精一杯になりいつしか「生活の糧」という人生の側面だけしか目が行かない時もあるだろう。

まあ、それも一つの歩みであり、正しいことではあると思う。

そんな中で人との出会いで、そして人との思い出を手繰った中で、見つかるものがあり、イベントや芸術に触れることによって忘れていたことや、心が光を携えて再生することもある。

素敵な瞬間だと思う。

人生に彩りを、意義を見出してくれる。

芸術には人の心を強靭にし、軽やかにし、満たしてくれる。

目には見えない力を与えてくれる。

原田マハさんの作品を読んでいると、その力を一途に信じたくなる。

そしてこの作品においてもそうだ。

作品ではそれぞれにそれぞれの画家の作品が描かれている。

ゴッホやピカソ、セザンヌにグスタフ・クリムトなど…。

画の印象を文章で鮮明に伝え、あたかも自分が美術館に向かいその画に向かっている…。

原田さんの文章には偉そうに書かせて頂きますが、そんな力があると思っている。

そして主人公達の人生にその画達はどのように絡み、どのように影響を与えるのかを愛を持って書かれている。

前を向く…。

簡単なようで難しい事であると思う。

主人公達はそれぞれの思いで、画に対峙し画と会話をする。

読んでいる自分はそのシーンに心に刻まれるものがあるし、主人公達もきっと多くの気付きや去来するものがあるのだろう。

読んでいて一番好きなシーンかもしれない。

丹念に描かれた画達との対峙場面から、次に見られる心模様や人間模様など秀逸だ。

傷付いた心は前を向き
人生の出会いを演出してくれ
忘れていた情熱を思い出させ
新たな自分を見つけ出してくれる
そしてそんなきっかけを与えてくれる

芸術にはそのような力がある。

そう信じて疑わない。

改めてそんな事を思い出させてくれる。

だから原田マハさんの小説が好きなのかもしれない。

そして前を向くきっかけを頂けるのかもしれない。

素敵な作品だ。

人それぞれ違う人生を歩む。

紆余曲折ある歩み。

全てを肯定してその一路を歩んでゆく。

何か勇気づけられる気もする。


記事を最後まで読んで頂き誠にありがとうございます!



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