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農業改革案② 農業のフランチャイズ化:日本のお米が世界を救う


はじめに.

日本の農業従事者の約7割が米農家の方々であり、毎年捻出される農林水産予算2.6兆円の約1/3が、お米に関する政策に使われており、稲作農業は、日本農業の中でも、中心的な役割を担っております。

ですが、その一方で、稲作農業については、戦後から、日本政府による大規模な規制や統制下にあり、税金による手厚い保護を受けてきました。

そのような保護政策の結果、稲作農業は、農業生産高全体の内2割しか占めないような日陰産業と化してしまいました。

つまり、今の稲作農業で起こっている問題を要約すると、"零細農家が多すぎて、農地の集約化が行えないため、お米産業の成長が停滞している"という事です。


稲作産業が保護される理由は様々なものがありますが、1000万人にも匹敵する農協組合員は、"自民党の組織票の最大の供給源になっている"事も、主な理由に挙げられます。

例えば、現在の農林水産大臣である野村哲郎氏も、農協票をバックボーンに持った典型的な族議員であると言えるでしょう。


確かに、日本の稲作農業は、日本の命運を左右するような重要な産業ですので、手厚い保護は必要です。

しかし、上手く改革を行う事で、日本の農家の7割を占めている農業従事者の労働力を、野菜・果物・穀物といった、別種目の農作物の生産に割り当てる事が出来る可能性もあり、他にも、食料自給率を上げたり、日本の農作物の輸出を伸ばしたり出来る可能性も大いにあります。


また、後述する通り、世界の食料危機は今後拡大すると思われるので、お米を輸出産業に転換する事で、外貨を稼ぐ事は勿論、重要な外交カードとして用いる事も出来ると思っております。

そして、お米産業の輸出産業への転換を図る意味でも、お米産業を拡大する必要がありますから、農地の集約化は必須であるという事です。


ですので、本noteでは、"零細農家の方々の持つ農地を集約し、お米産業を伸ばすにはどうすればいいか?"という観点について、私なりの解決策を提示させていただこうと思います。


1.農業のフランチャイズ化

現在の農業では、農地所有者と作業者が一体となっておりますが、フランチャイズ化によって、農地所有者が、農作業を行わなくとも、収益を得られるような構造が作れる可能性があります。

つまり、農地所有者は、農地を企業に賃借し、賃借料を受け取れる事は勿論、フランチャイズ企業の業績が上がれば、更なる追加収入を得られるような構造を作れるかもしれない訳です。


そして、今の農業改革に求められるのは、"農地の集約"です。

"農地の集約"については、戦後からの官僚達の農業改革の最終目標であり、「零細農家達を廃業させた方が、農地の集約が出来て、農業の規模が伸びる」と主張するような農家の方々も、一部存在します。


勿論、農業のフランチャイズ化によって、提携農家の方々は、農作業だけに集中する事ができ、その他の販売・流通などの業務は、フランチャイズ本部に任せる事が出来るというようなフランチャイズ化によって、通常得られるメリットも重要です。

しかし、農業のフランチャイズ化によって、農地の集約化が図れる可能性がある点から、国家にとっても、大きなメリットを産む可能性があるという事です。


2.日本の農業は国際競争に勝てる

多湿黒ボク土の開拓

農業を行う上で、最も必要な要素となるのが、土壌水資源です。

まず、日本は、肥沃な土壌に恵まれており、"黒ボク土"と呼ばれる土壌が、日本中に存在します。

黒ボク土は、世界一肥えた土地であるチェルノーゼムに匹敵する高品質の腐植物質を豊富に含んでおり、鉄やアルミニウムも豊富に含んでいるとされております。


そして、農業を行う上で、最も重要なのが、"水"です。

日本の年間平均降水量は1700ミリ世界平均の2倍、世界第3位の多さです。

また、大量の「森林」や「水田」の存在によって、雨水が木や土に蓄えられます。

そして、そういった蓄えられた水がいくら流出するかと言う平均流出量は、世界平均の4倍、世界第2位であり、取水量は300ミリで、世界平均の6倍、世界第1位という事です

つまり、雨が降る量についても、世界トップレベルで高いですが、それを保水し、利用できる雨水の量も、世界トップレベルで高いという事です。


以上をまとめると、日本は、土壌や水という農業に必須の2点において、世界トップレベルで恵まれているという事です。

特に、稲作自体は、大量の水を必要とします。

例えば、1トンのトウモロコシを作るのに、1000トンの水が必要なのに対し、お米の場合は、1000トンの水で、0.7トンのお米しか作れません。

なので、世界的に見ても、お米が作れるのはアジアに限られており、世界の何処でもお米を作れるという訳では無いんです。


3.危機に瀕する世界の農業

地球・人類の存続かけて待ったなし!

まず、地球温暖化によって、アフリカオーストラリアの農業生産量が、大幅に減ると考えられております。

そして、地下水の枯渇問題によって、地下水に頼った農業を行っているインド・中国・アメリカ等の農業も危機に瀕する可能性も示唆されております。

また、ウクライナ侵攻によって、小麦輸出の27.9%を占めるウクライナやロシアが不安定化した事により、小麦価格が大幅に上がってしまい、両国の小麦に頼る国々は、既に食料の危機に瀕しております。


つまり、以上の事を考えると、"日本のお米が、世界を救う"可能性が十分にある訳です。

確かに、軍事力を強化する事は、安全保障を維持する上で、重要です。

ですが、日本のお米を世界に輸出する事により、日本が、世界の救世主になる事で、世界各国は、日本を攻撃する事が出来なくなるでしょう。

結局、"世界から必要とされる国"であり続ける事が、国を存続させる上で最も重要な事だという事です。

軍事力だけあっても、北朝鮮のように、経済制裁や兵糧攻めによって、国民は次々に餓死していく事でしょう。

ですから、そういう外交上のカードとしても、日本のお米産業は十分な可能性を秘めている訳です。


4.結局は、規制緩和が求められる

図4.農地法改正 ~農地を所有できる法人の要件が緩和されました~

農地の売買賃借については、農地法によって強い規制を受けております。

また、法人が、農地の権利を得る場合等については、更に様々な強い規制が敷かれております。(図4)

ですから、そういった強い規制の影響のせいで、フランチャイズ化等の農業関連ビジネスや、農地の集約化を図るような企業的農業が全く発達していないと考える事も出来ます。


しかし、その一方で、有識者の間では、株式会社が、農業を一事業として行う事は難しいと考えられている現実もあります。

実際、オムロンユニクロが、農業に参入し、IT技術を最大限駆使したトマトのハウス栽培にチャレンジしましたが、結局は撤退しております。

その理由としては、一般企業のように、9時から17時で1日の労働が終わり、週休2日が貰えるというような働き方が出来ないためです。

農業においては、24時間の監視が求められ、更に、大風や大雨と言ったイレギュラーに対しても、即座に対応する必要があります。


しかし、農業のフランチャイズ化のように、農作業以外の事を株式会社が行うようなサービスを提供したり農業の集約化を株式会社が担い、株式会社からの業務委託という形で、農家の方々に、より集約化された農地で農作業を行って貰ったり、改善の余地はまだまだあると思っております。

そして、お米の輸出産業化を実現するためには、豊作によるリスクを抱えられるような株式会社大規模農家国営企業の存在が必須であり、現状の大量の零細農家が、稲作農業を担っている状況においては、100%お米の輸出産業化を実現する事は難しい訳です。


5.各企業に対するより強い行政執行(事後的な規制)のための法整備が必要

最近で言えば、ビッグモータージャニーズのような、コンプライアンスを守らないような企業が問題となっております。

しかし、戦後の日本においては、企業に対して、実効力を伴うような行政罰行政執行を行う法整備が無いため、そういった問題のある企業に対して、行政が制裁を加える事が出来ません

そして、その事が、日本の規制緩和が進められない大きな要因になっているのではないかと思っております。


例えば、一度規制緩和を行ったとすると、大量の企業が参入しますから、その中には、ルールを守らない企業も、当然発生するでしょう。

しかし、現状の法整備のままでは、そういった問題企業に対し、行政が制裁を加える事が出来ない、つまり、"事後的な規制"が行えません。

そして、"事後的な規制"が行えない以上、そもそも、そういった問題企業を発生させない事に重点を置く必要があるため、事前的である、厳しい規制が必要となる訳です。


現存する法律の中で、そういった企業に制裁を課せる法律としては、独占禁止法金融商品取引法が挙げられます。

しかし、それ以外の分野の不祥事を起こす企業については、野放しになっていると言っても過言では無いでしょう。

ですから、規制緩和を進めるためにも、事後的な規制を行えるようにするため、ルールを守らない企業に対し、より強い行政罰や行政執行を行えるような法整備が必要である訳です。


6.農地バンク法について

農地中間管理事業

2013年に、通称農地バンク法(農地中間管理事業の推進に関する法律)なるものが制定されました。

その背景としては、農地の集約化を図る事は勿論、耕作放棄地を有効利用するという政府の意図があります。

しかし、現実問題として、農地所有者が、農地中間管理機構に、一度預けてしまうと、10年間農地が返って来なかったり賃料自体が安い事もあり、農地所有者から倦厭されております。

さらに、農地を賃借する法人等についても、その要件について、厳しい規制が敷かれておりますから、農地バンクを利用する企業も少ないです。

つまり、借り手や貸し手から嫌われる制度となってしまっており、その利用は進んでおりません。


農地所有者が、農地を手放さない主な理由として、"農地を宅地に転用した場合、莫大な利益が出る"事が挙げられております。

「日本農業は世界に勝てる」という著書において、市街化調整区域内で、10アールの農地を転用した場合、2315万円の利益が生じ、1ヘクタールを転用すれば、2億3000万円の利益が出るとのことで、その額は、農地を2000年貸し出した場合の賃借料に匹敵するそうです。

ですから、農地所有者が得する制度なくして、農地の集約化は実現できないという事でしょう。


まとめ.

やはり、農地所有者達が、賃借という形で、農地を手放すためには、農地を持ち続けたり、普通に農業を行うより、法人や大規模農家に課した方が儲かるという構造を作る事が必要だと言えるでしょう。

そして、そのためには、農業の輸出産業化が必須であると考えます。


また、稲作の企業農業化が進むことで、お米産業に対する農林水産予算も節約する事が出来ますから、その分農業従事者である高齢者の方々に、より手厚い社会保障を給付する事も出来る訳です。

以上をまとめると、零細米農家の方々が、農地の賃借による高い手数料収入が得られたり、より手厚い社会保障を受けられたりする事によって、"農地を手放す方がメリットがある"仕組みを作る事により、農地の集約化が図れるだけでなく、零細米農家の方々に、別品目の作物を作っていただいたり、その他の活動に専念していただく事が可能となる訳です。


そして、最後に、世界の農業情勢や食料危機の観点から、日本のお米農業は、新たな輸出産業に成長する可能性があり、また国際的な地位を向上させるための外交カードとして使える可能性も大いにあるという事です。

確かに、稲作を行い過ぎてしまうと、土壌が荒廃してしまうようなリスクも考えられるので、限度はあります。

しかし、国際社会は、各国の助け合いで成り立ってますから、他国が存続の危機に瀕する時は、多少のリスクを背負ってでも、助ける必要があると思います。

ですから、食料危機によって、世界中の人々が餓死するような事態が現実化しそうな場合には、日本のお米を輸出し、世界中の人々を餓死や飢餓の危険から守るべきです。

そうする事により、日本の国際社会における影響力が増えますので、長期的には、大きな国益を産む訳です。


参考文献.

・日本農業は世界に勝てる

・農政改革の原点 政策は反省の上に成り立つ

・図解即戦力 農業のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書

・世界食料危機 (日経プレミアシリーズ)

・地図とデータで見る農業の世界ハンドブック


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