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寝る直前の記憶

寝る瞬間に1人でひひひと笑っていることがある。結構な頻度である。
意識を失う直前に笑っている自分を自覚しているわけである。
何かすごく面白いことを思い出して、思わず笑ってしまったみたいな感じだ。こう言うことをなんて言うんだっけ。そう、思い出し笑いだ。
んで、私は律儀にその度にがばっと起き上がり、せっかく眠りに落ちようとした瞬間を台無しにする。
いやだって怖いだろ。なんで笑ってんだ私。
大体何が面白かったかまったく思い出せないし、思い出したとしても次の日には忘れているので書けることはない。
ただ何となく覚えているのは「あれ?こんなことあったっけ?」みたいな記憶を完全に自分のものだと信じて疑っておらず、そしてその記憶がどうやらずいぶん面白いらしいのだ。
ちなみにこれは夢ではない。
「こんなことあったよなあ」という記憶を思い出している感じなのである。
そこで私は勇者的な主人公で、ひょうきんもので、思わず笑ってしまうくらい面白い毎日を過ごしていた、らしい。覚えてないけど。
というわけで、私は結構な頻度でニヤニヤしながら気持ちよく眠りに落ちようとするわけである。
何がというわけなのかまったくわからない。
なぜ寝る瞬間に存在しない記憶を捏造しているのか不明であれば、そんな自分の精神状態も甚だ不安で不明である。

ちょっと面白いのが、これで私は結構な記憶を捏造しているんじゃないかと思うことだ。
例えば、昔こんなことあったよなあと思っていることも実は寝る直前に捏造した記憶を勘違いしているだけかもしれない。
子供の頃、スーパーで転んで頭を打ったことがあって、私は自分の歯並びが悪かったのはそのせいだと思っていたことがある。
それを中学生になってから親に聞いたら、そもそもスーパーで頭を打って転んだことはないと言われた。
ただの夢だったのである。
こういうことが、自分が気づいていないだけでよくあるのかもしれない。
人間の記憶など自分の都合の良いように改ざんされていくものだし、
記憶なんてそもそも主観的なものだ。
テッド・チャンの短編に似たような話があった気がする。
記憶を捏造してでも、幸せに生きて行こうとする力が人間にはあるのだろうか。ひひひ。


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