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リリー

なあ、リリー。俺帰ろうかな。どこだかわからないけど帰りたいよ。俺はずっとそこにいたんだ。暖かくて何も考えなくて良い場所なんだ。なあ、リリー。俺はいつの間にこんなところに来ちまったんだろう。ここは寒いよ。寒くて一人ぼっちだ。どこにも行けないんだ。遠くから笑い声が聞こえるよ。きっとあいつらだ。あいつらが笑っているんだ。あいつらは俺のこと何にも知らないんだ。俺が寒くて震えていることを知らないんだ。あの子だって知らないんだ。知らないけれど幸せそうなんだ。リリー、聞いているかい。俺の話を聞いてくれよ。あんなこと言うつもりじゃなかったんだ。なあ、あの子は気にも留めていないだろうし、覚えてもいないだろうけど、俺はずっと覚えている。俺はずっと覚えているんだ。忘れたいけど忘れることができないんだ。リリー俺を突き落としてくれよ。出来るだけ眺めが良い場所がいい。リリー頼むよ。罪悪感とかじゃないんだ。辛いんだ。あいつらの笑い声が聞こえてくるんだ。幸せそうなんだ。みんなそこにいるんだ。俺は覚えているんだ。なあ覚えているんだよ。でもみんな忘れてしまったんだ。これからだってそうなんだ。俺はここにいるんだよ。帰ろうよリリー。一緒に帰ろう。あそこはいい場所だから、みんなも来てくれるよ。リリー、ここは寒いよ。なあ、聞いているかい、リリー…。

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