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世界最古のスキー博物館へ〜人類の歴史ここにあり!(ノルウェー)

日本各地、外を歩くには気持ち良い季節になりましたね!
ニセコも山の上は雪化粧のままですが、里は暖かく今日はホッコリしています。

さて、いきなりですが北欧・ノルウェーとくれば、何が思い浮かびますか?
やっぱりフィヨルド、ヴァイキングあたりでしょうか。
はるか何百年も前に氷河により侵食され形成された、フィヨルドの深い谷と青々とした水辺の風景は、心を奪われますよね。

よし、その時の情景を!

と言いたいところですが、今回は少し趣を変えて「世界最古のスキー博物館」のことをお話ししたいと思います。

言わずもがな、私はスキーを職業にしています。
正確言うと「スキーも」ですが、かれこれ30年以上、スキーというものに関わってきました。
それに加えて歴史がめちゃくちゃ大好きなので、スキーに対してもムクムクと歴女ぶりを発揮しまして、「いつか絶対行く!」と心に誓っていたノルウェーにある「スキー博物館」へと足を運んできた時のことをお話しします。

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2015年の夏、姉の住むスウェーデンに遊びに行っていた私は、オスロで友達と合流しノルウェーを歩く計画をしていました。
もちろんお目当てがあるので、私は早めにオスロ入りし、郊外にある「スキー博物館」へと。

オスロから電車に揺られること約30分。そこはワールドカップやノルディック競技が行われるホルメンコーレンという地区で、ひときわ大きなスキージャンプ台が目をひく場所でした。
日本人選手も数多く出場していて、中でも2013年には高梨沙羅選手が、134.0mという記録を叩き出しました。


歴代のワールドレコード
右下に高梨選手のレコードが!2015年当時です
(私が写り込んでる〜)


この文字を見た時、体が震えました!


ジャンプ台の頂上からは、オスロ市街が一望できます。
町へ向かって飛んでいく中、選手たちは何を思い感じるのでしょうか…

ジャンプ台の頂上からオスロ市街を望む


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お目当てのスキー博物館は、世界で最も古く1923年にオープンしました。

スキーを専門に扱った世界最初の博物館として、数々の貴重な資料や物品が展示されています。

フリチョフ・ナンセンがグリーンランド横断や北極探検で使用したスキーや装備、アムンゼンが南極探検で用いた衣類や犬ぞり、そしてなんと犬の剥製まで!

1988年、グリーンランド横断中、困難に見舞われたナンセンが、急遽テントから作ったキャンバスボート



1910-1912年 アムンゼンが南極探検で着用していた衣服とスキー



その時に連れて行っていた犬ぞりワンコ・オベルステン


ナンセンが出版した探検記「På ski over Grønland」も展示されていました。

あ〜〜読めないけど、読みたい!


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スキーの歴史はかなり古く、紀元前まで遡ります。
正確にはわかっていないそうですが、スカンジナビアの人々が細い板に乗って、雪上移動を始めたのは、今から1万年前とも言われています。

北欧神話にもスキーの神様が出てきますし、実際にノルウェー(北部のロドイ)では紀元前4000年頃の岩絵に、スキーを履いた人物が描かれたものが発見されています。

1994年リレハンメルオリンピックに使用されたピクトグラムのモチーフ
世界最古のスキーヤー


ここまでくるとさすがに想像を絶する世界ですが、ひとつ言えるのは、今の世の中に知られている「山を滑り降りて遊ぶため」のものではなかったということです。

そもそも狩りを目的として、雪の野原を自由に移動するためのもので、その地域の地形や雪の条件に合わせて発達してきました。
長く寒い冬、雪に閉ざされた北欧地方にとっては、重要な役割をしていたんですね。

上が西暦600年、下が西暦1200年のスキーの木片


そして時代が巡り、人々に争いごとが起こるようになると軍事目的でも使われていたようです。

左右長さの違うスキーを履いて(片方は約3M、もう片方は約2M)、長い方を進む方向へ真っ直ぐに置き、短い方のスキーの裏側にヘラジカの毛をつけ、後ろへ蹴り前へ進ませていました。

さらに驚いたのは、長さが違うスキーで斜面を滑り、キックターンという方向を変える技術までも習得していたのです。

真ん中が滑っている状況で、上と下がキックターンをしているところ


そして手に持っていたものは、今のような2本のポールではなく、1本の長いポールでした。先端に槍の穂先が付いていたり、カップ状に丸くなっています。
槍の穂先は熊狩りに使い、カップの方は牧夫が家畜(トナカイ)の餌を雪の下から探すためのシャベルとして使っていたのです。

カップ状のもの
これで雪の下をホジホジしてたんですね!



これで闘っていたとは!?


スキーをつけ、雪の野山を動き回り、獲物を狩り家畜を育てた先人たち。
雪に閉ざされた極寒の冬を生き抜くためのスキーだったのだろうと思うと、感無量です。

そんな太古のスキーが、軍事目的によりどんどん開発され、人類の冒険へと繋がり、それが今日にスポーツとして存在していることを考えると、人間の叡智と貪欲さを感じざるを得ませんでした。

厳しい環境をスキーとともに暮らした太古の人々が、タイムスリップをして現代のスキーを体験したら、一体どんな気持ちになるのでしょうか。


追記:

日本にスキーが伝わったのは1911年のこと。
オーストリア軍人・レルヒ少佐が来日し、新潟県上越市で、スキー指導をしたことが始まりでした。
しかし実際には、それより前の1902年に起きた「八甲田山雪中行軍遭難事件」の際に、あまりの悲劇に胸を痛めたノルウェーの王様が「とても悲しい出来事だ。なんでスキーを使用していなかったのか…スキーを使用していればそんな大惨事にはならなかったはずだ」と言い、日本にスキーを送ってくれました。
しかし当時まだ日本にスキー技術が伝来していなく、そこから先人たちの雪を乗り越える活動が始まり、今日の日本のスキーにつながります。
これはまたいつか〜〜






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