【掌編小説】 酒と涙とアタシ
泣くのが苦手だった。
赤ん坊の頃のことは知らない。記憶にない。
たぶん、きっと、その頃は泣いてたんだろう、人並みに。
そんな生存本能からの「泣く」ではなく、
哀しいとか、寂しいとか、感動したとか、
感情に紐付けられた「泣く」が、苦手だった。
仲の良い子が転校しちゃうとか、
失恋したとか、飼っていたペットが死んじゃったとか、
試合に負けたとか、先輩に酷く叱られたとか、
あとは卒業式や結婚式やお葬式などのセレモニー、
そんな時に人前で泣ける子たちが、不思議だった。
アタシは