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嫉妬の香り

「六条御息所」とオリエンタル
嫉妬深い香りを創るとしたら、どういうものだろう。
過去を辿れば源氏物語の作中人物の香りで「六条御息所」を創った。
嫉妬から生霊となってしまう人だ。嫉妬の背景には不安と惨めさがあったと私は感じている。
この時は思い切りオリエンタルにした。動物性の香料をメインにして濃厚で官能的な香り。
これは定石に過ぎたと、今は思う。
嫉妬ということを香りで表現するならば、もっと他愛もなく、もっと幼い感じが面白いかもしれない。

ミケランジェロとダヴィンチ
唐突だけれど、どちらも大天才のミケランジェロとダヴィンチにおいて、軍配をダヴィンチに上げた人がいた。根拠は何かの記録に残る「ミケランジェロがダヴィンチ嫉妬していた」という記述。嫉妬される方が勝る、ということらしい。かなわないから嫉妬する、のだと。
そすると嫉妬は、せつない感情だなと思う。それが募って惨めさをかみしめて・・・ますます、せつない。

可憐な嫉妬の香り
だから、そのせつなさを抱きしめてあげるような愛らしく可憐な香りにしてそこに「嫉妬」と名前を付けてあげたらどうだろう。
スズランヤヒヤシンスのような清々しいグリーン感のある香りに、グレープフルーツ、ジャスミンの中の柔らかい部分、その中にちょっと気になる程度の果実の甘い香りと木の根のようなビターな香り。
綺麗な音色なのにどこかもの悲しく、それでいてどこかパワーもあるヴァイオリンソナタのような香り。

私にとっての嫉妬
私が嫉妬したのはどんな時だろう?小学生の時は運動のできる同級生を見て「私もある日突然、このくらい速く走れるように変異しないかな」とこっそり思ったけれど、嫉妬とは違う。頭の回転が速くてたくさんの話題をふりまける人といると、めちゃくちゃ気後れするけれど、嫉妬とは違う。
調香の世界で成功をおさめた元の同僚や先輩、羨ましいけれど嫉妬はしていない。私が嫉妬をするのは正体のわからない何かに対してかもしれない。恋愛をしている時、彼が私の知らない誰かを実はとても大事にしているのではないかと確証がつかめないし、正体も知れない中で、具体性がないのに妙に信ぴょう性のある見知らぬ相手に嫉妬、ということがあったかもしれない。
それは不安であり大事に思われない(あくまで自己認識)自分を惨めに思ったから、なのかもしれない。

不安と惨めさを育てたら嫉妬になったので
私にとっての嫉妬は不安と惨めさが育った結果なのかもしれない。
だから、「嫉妬」という香りを創るなら、不安を包む優しいホワイトフローラル、惨めさを払拭する落ち着いて強いウッディ、が調和していく香りがいいのだ。
adamsfragrancefamilyの香料ラインアップに「嫉妬」が加わる。


adamsfragrancefamily調合ベース「嫉妬」の
ラベルはこんな感じ。
charlyがつくってくれた。

香り、思い、呼吸。

#note100日
#コルクラボ
#adams

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