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礼儀正しい好青年サンローランの反骨


反骨の香水、セーヌ左岸
独立から数年後(1966年)に、イヴ・サンローランはプレタポルテ(高級既製服)に進出。今では当たり前のようになったオートクチュールのハウスがプレタポルテをやるというのは、当時は画期的なこと。オートクチュールの権威を貶めるとか、利益重視とか批判にも晒されましたが、彼の反骨心は屈することがなく、そして時代を変えていった。
当時はセーヌ右岸にオートクチュールのメゾンが集中していたため、プレタポルテのメゾンを対岸である左岸に構えたサンローラン。
その彼の粋を表現した香水がリブゴーシュ(左岸の意味)。
これはプレタポルテのブランドネーミングでもある。

ニュールックで時代を逆行させたディオールには心底腹を立てたというシャネルも、サンローランについては礼儀正しさを高評価をしていたという話もある。朋友ベティカトルーの回想ではシャネルとサンローランの対面は一度だけで、サンローランが丁寧に挨拶してシャネルもそれに応じた。話が盛り上がることはなかったけれど、当然、バチバチという間柄でもなかった。
サンローランの中にある上流階級出身にふさわしい穏やかさと、鋭敏な感性からくる既成概念への反骨。

リブゴーシュというデザインを見直せば確かにセーヌの青がモチーフだけれどロイヤルブルーにも通じる格調高い色使い、それを使いながら、ポップカルチャーの空気感を取り込んだようなボーダー柄とメタル素材。
ポルジェによる香りも素晴らしいし、パッケージとボトルデザインも素晴らしい。
反骨が、猥雑にならず、ロックにならず、エリックサティのようになるところが、
彼らしさ。
この香りは大切に扱わなくては。
おそらく復刻があっても、完全な再現は難しいだろう。

カバーのイラストはサンローラン自身の描いたもの

1970年のリリース/調香師はなんとジャックポルジェ
のちにシャネルの専属調香師となり、
一時代を築いたポルジェのシャネル以外の貴重な香水でもある。


サンローラン美術館のデザイナーのアトリエ。
たくさんのアート本で埋め尽くされていた

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