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物語創作に役立つ書評:「アルゴリズム フェアネス もっと自由に生きるために、ぼくたちが知るべきこと」

ご覧いただきありがとうございます。この書評は以下のnoteで示したフォーマットで書かれています。詳しく知りたい方は是非、参考にしていただけると幸いです。

物語創作に必要な3つの要素(コンセプト・人物・テーマ)を「アルゴリズム フェアネス もっと自由に生きるために、ぼくたちが知るべきこと」から抜き出します。

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コンセプト→(ストーリーの土台となるアイデア。「もし~だとしたら?(what if ?)」という問いで表すとはっきりわかる。)

もし、自由を増やすためのアルゴリズムが自由を奪っていたら?

GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれるIT企業は、我々に自由と機会を与えてきたといえます。

しかし、フォロワーを増やすために、「インスタ映えとされている写真を撮りに行く」など、
企業が提供するアルゴリズムに振り回されている側面もあります。

何か自由を得るということは、何かを不自由にすることでもある…..
「アルゴリズム・フェアネス」という言葉は2つの意味の言葉から成り立っていて、本書のキーワードです。

「アルゴリズム」:優劣を決めるもの。個人のデータをもとにおススメの選択肢を探してきて提示してくれたりする。自由を提供する仕組み。
「フェアネス」:公平・公正。頑張った人が頑張った分だけ報酬を得られること。分け隔てなく全員に均等に振り分けること。など考え方は様々ある。

「アルゴリズム」が、我々に恩恵を与えてくれる一方で、その恩恵を受けられる人が特定の一部に偏っていないかなど「フェアネス」が満たされているかどうか。を考え続けることが重要であると主張されています。

本書では、アルゴリズムがもたらす自由への期待も持ちつつも、それによって侵害される恐れのあるフェアネスにも言及し、今後どのように「アルゴリズム・フェアネス」に向き合えばよいかが記されています。

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人物の世界観→(人の世界観は社会の価値観や政治、好み、信条などに培われ、その人の態度や習慣に表れる。)

「卑怯」や「自己中」だと思われたくない….フェアでいたい

本書のキーワードである「フェアネス」。公平・公正という意味があります。
自由を与える仕組みであるアルゴリズムには、フェアネスが重要であることは言うまでもありません。特定の人だけに自由が集まるように仕組みを作ってしまえば当然反感を買います。

しかし、公平・公正であることは一筋縄ではいきません。物事を公平・公正に見て、公平・公正な判断を下すことが難しいということは、日々の生活のレベルでも実感があるのではないでしょうか。

フェアの反対語は「卑怯」や「自己中」ですから、だれもそんな人間になろうとは思わないはずです。しかし、自分で公平・公正な判断を心掛けても、何かからのコントロールを受け、判断を歪ませられているとしたら…..

本書では、人間の行動を誘導する「アーキテクチャ」(便器に張られたハエのシールのように、なぜかそこを狙ってしまう、行動を誘導されてしまうもの)に注目し、本当に自分で意思決定していたのかどうか、そこに自由はあったのかを常に問いかける大切さが記されています。

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人物のアーク→(ストーリーの中で体験する学びや成長。自分にとって最も厄介な問題をいかに克服するか。)

AIによる人間支配・雇用破壊への恐怖 → AIによる個々人の働き方の最適化への期待

アルゴリズムの裏で動いているAIは、すでに人間の働き方に深くかかわってきているようです。
日本にいると実感しづらいようですが、すでに時間や働き方、収入などのコントロールを自由にするために、AIが使われています。

本書では、AIが人間の働き方を変えている例として、シンガポールの企業「グラブタクシー」が挙げられています。


各ドライバーには、それぞれ収入の目標が設定されます。それを達成すると、本業やプライベートな時間を大事にするという前提はそのままに、次の目標とその具体的な方法が自動的に提案されます。あるいは目標が未達だった場合も同じように、グラブのコンシェルジュから連絡が来て、「一度、会って相談しましょう」という話になる。たとえば、自家用車を4シートから6シートに乗り換えれば料金の単価が二倍になるとか、車内に広告を掲示、もしくは車外に広告をラッピングするとか、車内で何かを販売するとか、オプションはいろいろあるようです。ドライバーがこのうちのいくつかを選択すると、その後の収入の見込みが即座に明らかになります。それに業務の履歴も参照されるので、仮に無事故・無違反でお客さまからの評判も上々であれば、クルマを買い換える場合のローンも優遇されます。

AIを活用すること、各々の目標に応じた最適な提案がなされ、収入をこれくらいにしたい。といった人生設計を可能にしています。確かにAIの奴隷のように見える部分がありますが、選択は人間の意志で行われているといえます。

本書では、アルゴリズム(AI)が与えてくれる自由の具体的な例をいくつかの実際の事例を通して学ぶことができます。

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人物の内面の悪魔との葛藤→(心のネガティブな側面。認識や思考、選択、行動を左右する。「知らない人と話すのが怖い」といった欠点は内面の悪魔の影響で表れる。)

正体がわからないと不安。不安なのは嫌なので攻撃して止めさせる。

GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)は何故ここまで巨大になったのか、
それは個人データという資産を大量に持っているためです。個人のデータをどのようなことに使っているのか、企業は具体的なアルゴリズムを公開していません。

自分の情報がよく分からないシステムで使われていることへの不安は大きいため、企業はなるべく「邪悪にならない」ことが求められています。しかし、いくら企業に悪事を働く動機がなかったとしても、間違った道へ進む可能性がある。そういった場合には、不安を解消する意味も含め批判して止めさせるという手段も必要だと考えられます。

なぜ、企業は個人のデータを使ってビジネスをするのかといえば、それはデータが資産となるから、と言えます。データが資産となる例として、Google検索がわかりやすいと思います。

例えばGoogleの場合は、だれが何を検索したか。を知っているため、ユーザーの興味の対象をよく知っています。インターネット広告を出したい企業は、より自分たちの製品に興味のあるユーザーに広告を提示したいため、Googleと契約を結ぶ。ということになります。

そして資金を使ってGoogle検索をより使いやすいものへとアップデートし、さらにユーザーに使ってもらえるようにする。すると、広告を出したい企業がさらに集まってきて、Googleの収入が増える。といったサイクルがGoogleのデータの資産としての使い方なのです。

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テーマ→(簡単に言えば、テーマとは「ストーリーが意味すること」だ。世の中や人生との関わりだ。)

「どれだけフェアか」という視点で「アルゴリズム」を監視しよう

GAFAなどのプラットフォームが誰かに不当に不利益を与えていないか。監視をする方法が本書では2つ紹介されています。

・不満や疑問を言葉にして、企業に直接、または国家やマスコミを使って間接的に訴えかけること。
・そのプラットフォームを離脱すること。

ユーザーの一人一人の力は弱くても、きっかけを作ることはいくらでもできるのです。

本書では、日々何となくお世話になっている「アルゴリズム」が「フェア」であるかという答えのない問題を考えるきっかけをくれる本となっています。

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本書は以下の本です。


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