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ファッションデザインに理論はあるのか?

「賛成する人のほとんどいない、大切な真実とは?」

 この言葉を知っている人もきっと多いだろう。PayPalの共同創業者にてFacebookへの投資で莫大な成功を収めている、起業家でもあり投資家でもあるピーター・ティールの言葉だ。

 この言葉の持つ視点が、ファッションデザインでも重要と言える。ただし、表現を変える必要がある。ファッション界にフィットするよう言い変えるとすればこうだ。

「美しいと思う人のほとんどいない、大切なスタイルとは?」

 ほとんどの人にダサいと思われるけれど、自分だけがカッコいいと思えるスタイルを見つけること。この視点こそが、トレンドへのカタンターを生む重要なキー=オリジナルスタイルの発見に繋がる。

 僕がファッションデザインのブログを書き始め、2年が経過した。ブログを書く際には、時にはモード史、社会背景、娯楽のトレンドを調べたり、過去に集めた資料を参考にすることもあるが、ベースとなっているのはモードに魅了されてからの20年、その間ずっと思考してきたこと、そして僕自身がこれまで実際に経験した服作りから得た知識と感覚になる。

 ファッションデザインの価値を左右しているのはトレンドだ。トレンドをフォローするデザインをすることで得られるリターンは確かにある。しかし、一番大きいリターンが得られるのは、トレンドへのカウンターを生んだときだ。それはモード史が物語っている。

 ココ・シャネルのジャージーもそうであったし、クリスチャン・ディオールのニュールックもそうだった。そしてマルタン・マルジェラ、現在ではヴェトモンもそうだ。皆、その時代のトレンドへのカウンターを打ち込んでいる。モード史を書き換え、人々のスタイルを更新させる。それが実現できたなら、売上高の多寡だけでは得られない名声を獲得でき、市場におけるブランドの価値はこれ以上ないほど高まる。そして、人々はそのブランドへ憧れを抱く。クリスチャン・ディオールとザラ、憧れを抱くのはどちらだろうか。

 しかし、カウンターには大きなリスクが伴う。失敗する可能性が高い。失敗すれば、ビジネス的に大きなダメージを追うのも事実だ。どうしたら、失敗のリスクを小さくできるか。ファッションデザイン最大の目的は「人が欲しくなる服を作ること」。ファッションにビジネスという側面がある以上、人が購入して着たくなる服をデザインすることが一番の目的だと僕は考える。

「人が欲しくなる服を作るためには、ほとんどの人にダサいと思われるけど、自分だけがカッコいいと思うスタイルを見つける必要がある」

 この一文を読んでこう疑問を感じる人もいるはず。

「ほとんどの人がダサいと思う服なら、欲しくならないだろ?」

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