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【大好評!】アンソロジー小説『マテリアル・ゴシック』とそのインパクト

2月12日に発売した『マテリアル・ゴシック』は、発売直後から御参加していただいた作家様がたのファンの間で大盛況となり、非常に幸先の良いスタートを切りました。
『マテリアル・ゴシック』へのSNS上での賑やかな御声は、トゥギャザーで記事になっておりますので以下リンク先もあわせて御覧ください。

今回の参加メンバー陣はそれぞれ熱心なファンの多い作家、詩人、女優、イラストレーター、ミュージシャン、怪談師とバラエティに富んだ多彩な顔ぶれとなり、彼女たちの文学への情熱が一冊の本へと結晶化した奇跡的な企画となりました。

【『マテリアル・ゴシック』とは何か?】


・文学における「非人間的なもの」

『マテリアル・ゴシック』は近年、現代思想上の重要テーマとして盛んに議論され始めている「ノン・ヒューマン(non-human)」と、伝統的な「ゴシック」を融合させた日本で最初のアンソロジー小説集です。
ノン・ヒューマン
とは、chatGPTに代表される生成系AIの進化、および「人新世」以後の環境意識や動物保護意識の高まりなどに伴い、現代社会においてますます注目度が高まっている極めてラディカルな概念です。
このテーマは本来、20世紀後半における哲学的文脈――リオタールの『非人間的なもの』、後期デリダの『動物を追う、ゆえに私は〈動物で〉ある』、ハラウェイの『猿と女とサイボーグ』、ペルニオーラの『無機的なもののセックス・アピール』など――において問題視され始めた「人間中心主義」への反省を契機に、欧米圏の思想的文脈で様々な議論を呼び、概念化が推し進められてきました。
21世紀に入ると、主に「思弁的唯物論」や「ニューマテリアリズム」の文脈において、人類の「絶滅以後」(レイ・ブラシエの「事後性」)が新たに問われ、目には見えない怪奇的な感覚的対象の存在論的なステータスに焦点があてられる(グレアム・ハーマンの怪奇実在論)など、非人間的なものの射程圏はさらなる広がりを見せ始めています。
「ノン・ヒューマン」、「ポスト・ヒューマン」、「非人間的なもの」とは何かを問う現代思想の問題系を受け、CAL編集部ではこれらの文学的可能性を拡張するために、「目に見えない存在」、「人間以外の存在」、「人間以後の存在」などをテーマにした小説を広く募集致しました。
例えばエマヌエーレ・コッチャの『メタモルフォーゼの哲学』は、「植物」に定位しつつあらゆる生命をキメラ的な相互浸透の結節点として規定しています。
植物の側から人間はどのように捉えられるのか、このテーマは『マテリアル・ゴシック』収録の速見沙弥様の「愛するあなた」に描かれた、植物そのものを主体に設定した物語に活かされています。
また、近未来社会においてAIがもたらす人間関係の変容、あるいはAIとの「心」の触れ合いは可能なのかをテーマにした優月朔雨様の「再構築」には、本書のタイトルである物質的(material)な非人間性が加速主義的な技術文明に対する警鐘として先鋭的に描かれています。
他にも、普段私たちが着ている衣服そのものの物質性に焦点を当てた水木なぎ様の「White Shirt」、鳥類の視点から人間社会を捉えた鈴川愛夏様の「インコ、北極へ」、昆虫の視点で家族観の人間ドラマを鋭く描いた物部木絹子様の「鏡に映るは」など、ノン・ヒューマン的な問題系の本質を掴んだ斬新奇抜な小説が多数収録されています。

・ゴシック文学が持つラディカルな現代的可能性

このようなテーマと並行して、本書にはタイトル「ゴシック」(Gothic)が示唆するように、幻想怪奇を主題としたゴシック小説もラインナップされています。
ゴシック文学には幽霊、変身、分身、異形、怪物、人工生命、恐怖、官能、夢幻、迷宮など様々なカテゴリーが存在しますが、本書はこういった伝統的テーマにあらためて焦点を当てています。
秋杏樹様の「透明であるな、有色であれよ」は人間的なものと動物的なものの「はざま」に苛まれる自己意識の葛藤を、浜名藤子様の「孔雀奇譚」はゴシック的な洋館を舞台にした美少年の悪魔的な心理を、Ito.N.Noel様の「アルストロメリア」はある日突然友人の口から別の存在の声が届いてきたことで掘り起こされていく過去を、それぞれ独自のスタイリッシュな文体で描いています。
共通するのは、私たちが普段生きているこの日常生活に夢幻的なアレンジメントが加えられることで、それぞれの作家様がたが固有に持っておられるテーマ性が深化した作品が集結している点です。

このように、『マテリアル・ゴシック』「ノン・ヒューマン」「ゴシック」という二つの軸に貫かれつつ、読者の皆様に今ここで暮らしている現実とは別様の視点、別様の考え方が存在しており、読む・書く行為を通してそれら別様の現実を「生きる」ことが可能なのだという力強いメッセージを発信しています。

(CAL編集長:鈴村智久)

【実力と人気を兼ね備えた豪華メンバー陣が集結】


発足してわずか二年、皆さまの熱い御支援のおかげでCALはSNS上で非常に人気の高い実力派作家様が数多く御参加してくださることに定評のある出版企画へと成長致しました。
ここでは『マテリアル・ゴシック』に素晴らしい小説を御寄稿して下さった作家陣の中から、記念に本と一緒に御写真を撮って下さったメンバー様を御紹介させていただきます。
※本記事に掲載されているすべての御写真は、各作家様の御許可を頂いた上で掲載させていただいております。

浜名藤子
作家
CALメンバー
©HAMANA Fujiko 2024
小磯カカカ
作家・イラストレーター・漫画家
CALメンバー
©KOISO Kakaka 2024
物部木絹子
作家・詩人
CALメンバー
©MONOBE Yuko 2024
祇園百
怪談師・作家
CALメンバー
©GION Momo 2024

Amazonレビューも続々と寄せられておりますので、一作品でも読み終えられた読者様はぜひ足跡を残してくださると嬉しいです。
今後も皆さまに物語を紡ぎ、味わうことの楽しさを届けるために、CALは成長を続けてまいります。何卒これからもよろしくお願い致します。

【内容紹介(Amazon掲載情報)】

SNSで話題沸騰中のアンソロジー小説企画! 
今回のテーマは「ノン・ヒューマン」(non-human)!
目に見えない存在、人間以外の存在に出会った時、人は何を感じ、どう動くのか。
思弁的実在論、ニュー・マテリアリズム以後の文脈でラディカルな議論を呼ぶこのテーマに、今を輝く華麗なる女流作家十七名が挑む!
作家・鈴村智久がプロデュースする新時代のゴシック・アンソロジー。

●TVや怪談イベントなど多数のメディアに出演する人気怪談師・祇園百が描く、ダークメルヘンな現代の魔女譚「独演」。
●ミスコンTSUKUBA COLLECTIONでも大人気の現役女子大生作家・秋杏樹が描く、人間と獣のはざまで生きる者の自由をめぐる壮絶なる闘い「透明であるな、有色であれよ」。
●AmazonPOD大賞受賞作家として高い支持を集める作家・浜名藤子が魅せる、魔性の美少年による禁断の耽美的ゴシックスリラー「孔雀奇譚」。
●アートサロンカフェ《哲学者の薔薇園》を経営する女優にしてアーティスト・由良瓏砂が映し出す、現代の魔術的ファンタスマゴリー「幽世甘露」。
●音楽バンドEpiphyllum oxypetalumのカリスマ的歌姫・Ito.N.Noelが奏でる、未知の声との交感で始まるミステリアスな音楽小説「アルストロメリア」。

他にも実力派作家陣が多数競演!
文学を愛するすべての人に捧げるゴシック文学の進化形。(総解説:鈴村智久・秋杏樹)
【収録作品】

・秋杏樹「透明であるな、有色であれよ」
・浜名藤子「孔雀奇譚」     
・小磯カカカ「柘榴喰い譚」
・夢月鏡花「幽霊慕情」
・名津乃綾「藪椿の家」
・玲瓏瑠璃「半身」       
・理久海からほ「硝子の檻」
・祇園百「独演」
・尾崎彌生「再会」         
・由良瓏砂「幽世甘露」          
・鈴川愛夏「インコ、北極へ」
・物部木絹子「鏡に映るは」
・優月朔風「再構築」
・水木なぎ「White Shirt」  
・Ito.N.Noel「アルストロメリア」
・速見沙弥「愛するあなた」
・亞辺マリア「星々の子どもたち」
・鈴村智久「主は惜しみなく与える」
・総解説(鈴村智久・秋杏樹)
・編集後記(秋杏樹)

【CALの活動実績】

・『サロメ座の華』(第2回企画)

特集記事1「【NEWS】4/10『サロメ座の華』発売開始」
特集記事2「【快挙!】『サロメ座の華』とそのインパクト」
特集記事3「声優 徳嶺瑠花によるPV映像公開」

・『蒼の悲劇』(第1回企画)

特集記事1 編集長によるnote紹介記事
特集記事2 Togetter編集部による「編集部イチオシ」記事


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