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【無料公開】中国越境EC「Tmall Global」への出店方法

D2Cマーケターの福知です。

2週間前に終了した2020年の"独身の日/Double Eleven"セール。
今年はなんと中国全体で1日 12兆円以上の取引が…
恐るべし人口14億人の巨大市場…😲

中国というと、以前までは事業進出するためには中国資本の会社とJVで法人設立をし、その法人を通してでないと実店舗・オンラインストア出店できないという条件があったため、未だに事業進出のハードルが高い。
しかし、中国に法人を設立することなく、日本から越境で商売できる方法がある。
それが「Tmall Global」
今回はtoC ECサイトとして50%以上のシェアを持つTmall系列の越境ECサイト「Tmall Global」の出店方法について解説します。
※中国のECプラットフォームシェアはTmall・JD.com(京東)で8割超、という寡占状態。Winner takes all…

このnoteは、
「なぜ出店するのか?(Why)」にフォーカスするのではなく、
「どうやって出店できるのか?(How to)」に焦点を当てて話します。

Tmall Global(天猫国際)とは?

Tmall Global(中国語で天猫国际)とは、Alibabaグループ傘下にある中国市場向けの「越境ECプラットフォーム」です。Alibabaグループは、
▶Taobao(淘宝) →CtoC
▶Tmall(天猫)  →BtoC
▶Tmall Global(天猫国际) →BtoC越境EC
という3つの、toC向けECプラットフォームを事業展開していて、Tmall Globalはこの中で一番新しいECモールになります。

これらの事業規模は、11月11日に約7兆円の取引額となっており、世界最大のECプラットフォームと呼んでも過言ではない。
マジ最強です。

Tmall Globalは、中国国内に法人を持つことなく中国市場でビジネスできるのが特徴で、概ね以下の条件に当てはまる企業・ブランドだと出店検討ができます。

・外資企業である(つまり日系企業)
・自社所有ブランドがある
・自社で取得した日本の商標がある
・企業規模が大きいこと(明確な条件額があるわけではない)
・日本国内で認知度が高いこと

ざっくり言うと、日本国内で年商億単位のブランドなら対象となるイメージです。
条件や費用の詳細はAlibabaに直接聞くのが一番ですし、出店交渉をスタートするにはAlibaba Japanの担当者へコンタクトしなければならないので、希望の場合は連絡してみてください。日本法人があります。

TPとの契約

中国国内に法人を持つことなく中国市場でビジネスできるのが特徴、と説明しましたが、
これにはある条件があります。
それが、TP(Tmall Partner/Trade Partner)と呼ばれるTmall Globalの出店サポート・運営代行を行う会社と取引契約を結ぶことです。
大手企業でTP機能を内部で持ち合わせていない限りAlibabaから契約を義務付けられます。ただ、このTPがいないと出店はほぼ不可能に近いです。審査・契約書類が膨大にあり(後述)、その申請はAlibaba Japanを介すことなく直接中国のAlibaba社と行うため、TPが取り次いでコミュニケーションを取らないと話が進みません。
出店交渉だけでなく売上を作るストア運営も担うため、このTP選定というのは非常に大事です。

TPはAlibaba側から認定される事業者のことを指しますが、その規模は個人事業主~大企業レベルまで様々で、中には非認定でもTPと謳う事業者がいます。中国の企業もありますし、日系の企業も存在します。
自社の事業規模・商材を考慮した上でAlibaba JapanからTP候補を推薦してもらうことは可能ですが、最終的に契約を取り交わすのは自社となるので、候補TPを自責で調査・検討・決定することが大事です。
(合計5社ほど商談したが、本当に千差万別という印象)

見極めのポイントとしては、
1)TP評価制度
2)委託業務内容の要件定義
3)取引企業事例
4)コミュニケーション言語

以下、順に説明します。

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1)TP評価制度
TPは点数方式(満点 12点)で評価され、点数に応じて最大5までの星評価をAlibabaから獲得します。
11~12点 = 5つ星
9~10点 = 4つ星
7~8点 = 3つ星
運営実績がある場合には、Tmall・Tmall Globalそれぞれの星評価が見れるようになっていますので、まずそれを確認しましょう。
もちろんTmall Globalで5つ星評価のTPが優秀である可能性は高いので、評価の高いからTPから商談を進めるのが得策です。
厳密に正確ではありませんが、以下のような条件に対して得点を獲得できる仕組みだそうです。

【運営力・売上実績】
① 運営店舗数
② 店舗の月平均売上
③ キャンペーン売上(独身の日など)
減点対象
・一定期間で店舗の売上目標を達成できなかった
・キャンペーンにおけるTPの対応遅れや申請遅れ
・TP側の問題で大きなキャンペーンに不参加できなかった
【顧客対応力】
商品とページ記載内容の整合性
店舗サービス
物流サービス
【天猫国際規定の順守】
①店舗側が天猫国際から撤退
②店舗の売上が芳しくなく、天猫国際の契約更新ができない
⑤ 規定に対する違反により、店舗を閉店

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2)委託業務内容の要件定義
どの企業でも業務委託するであろう、基本の
企業審査~ストアのアカウントID/ドメイン取得~商品SKU設定
などの出店サポート・ストア構築は大体どのTPでも質は一緒ですが、開店後のストア運営委託業務はTPによって管掌領域が様々ですし、得意/不得意があります。

・商品/ブランドTOPページのデザイン制作
・商品仕様の中国語翻訳とコピーライティング
・カスタマーサポート機能をTPに持たせるか
・日本→中国への個人輸入物流の開発構築
・日次注文の倉庫への出荷指示をTPに委託するか
・Tmallプラットフォーム内のマーケティング有料施策(SEO・SEM・キャンペーン企画など)
・プラットフォーム外のデジタルマーケティング施策(SNS・ライブコマース・Ad)
・オンラインストアだけでなく、オフライン店舗の出店サポート

自社のビジネスモデル・サプライチェーンを考えながら、委託業務内容の要件定義を事前に策定しておくと、いいTPとマッチできるはずです。
もちろん全てをTPに任せることはできますが、事前に要件定義をしておくと非認定TPから騙されないなどのトラブル防止にも効きます。

3)取引企業事例
大体の4~5つ星TPは、既に運営実績のある外資系ブランドがあります。自社の大切な商品を取扱い、直接お客様と接する運営代行会社なので、業態が似ているストア運営実績があるTPだとコミュニケーションがスムーズに進みます。
例えば、酒類の取扱いをしたことあるTPだと、中国現地の法規制や貿易規制に詳しい場合が多いので話がしやすい、というような。
TPに聞けば教えてくれます。コンタクトを取るときに聞いておきましょう。

4)コミュニケーション言語
周知のことではありますが、運営している身としてひしひし感じる場面が多いため最後に挙げさせてもらいました。
中国企業のTPは大体日本語が喋れませんし、全員が英語対応できるわけでもありません。コミュニケーションが円滑でないとと生産効率姓とスピードが格段に落ちますし、ミスを誘発するリスクがつきまといます。
日本語でのサポートが欲しい場合には、日系企業をTPの条件とするのがよいでしょう。
※出店審査のための書類が英語しかない場合もあるので、自社⇆中国TP間では英語でコミュニケーションする手段を持ち合わせておきましょう。

▶最後にコストは…?
大小様々なTPが存在するため一概には言えないです。
パフォーマンスが高いTPにはパフォーマンス相当の値付けがされますので、自社内の予算次第で決めていきましょう。
以下はどのTPも条件に出す基本的な費用項目です。
・運営固定費(要員確保がほとんど)
・セールスコミッション(歩合制)
・売上目標達成インセンティブ(年間目標)

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続きでは、具体的な出店に向けてのHow Toに関して説明します。

残念ながら取引書類は全て中国語もしくは英語で表記されているため、ほぼ確実に日本語への翻訳は必須です。出店タスクの中で、この「翻訳業務」に最も時間を割いていました…
もし多言語対応できるスタッフがいない場合には、DeepLを使用して精度7割ほどの日本語訳を参照してレビューするのがおすすめです。

オンラインストアの開設契約

AlibabaとのTmall Globalに関する契約です。

1)決済サービス契約
2)Alipay決済契約
3)オンライン請求サービス契約
4)Tmall Global マーチャントサービス契約
5)Tmall Globalのトレーサビリティ(物流)サービスに関する協力合意書
6)Tmall Global利用者特権 商品特進の協力合意書
7)統一B2C物流サービス契約

上記書類への同意・サインが必要。
もちろんプラットフォーム側との合意書なので、出店者側からの修正依頼は受け付けてくれません。出店者側を毀損する条項は基本的にありませんが、出店者に対して一部不利な契約内容があるため、内容の確認をおすすめします。
出店における各手数料に関する条件交渉が可能かどうかは、Alibabaへ直接と問い合わせるのが得策です。

登録商標の認証申請(日本・中国)

Tmall Global出店条件の1つである商品登録。
Tmall内の取引で「偽物」の流通を防止するために、出店ブランドに対しては「日本」での商標登録証の提出が求められます。この商標登録は、「提出済」「審査中」ステータスのものは認定されないため「登録完了」となっている必要があります。
特許庁から取得した「商標登録証」を社内で確認し、PDFデータなどで提出しましょう。

↓こんなの

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また注意点がもう一つ。
中国名での商標登録です。中国の主要な言語は、中国語・簡体字(Simplified Chinese)です。言うまでもありませんが、中国市場では中国語が一番適しているので、簡体字のブランド名が望ましいです。
英語名の商標は登録可能ですが、中国人が全員読めるわけではありません。由来は一緒かもしれませんが、日本語も中国で使われていない漢字があったり全部が読めるわけではありません。
本格的に中国でビジネスを成長させたいならば、中国語でのブランド名開発は先にやっておいて損はないです。Coca Colaも、Louis Vittonも中国名のブランド名があります。

Coca Cola → 可口可
Louis Vuitton → 路易威登

中国での商標の権利問題で苦い経験をした代表例は「無印良品」です。

日本およびグローバルに「無印良品」ブランドを展開する良品計画が、中国で「無印良品Natural Mill」を展開する北京棉田紡績品有限公司に対して訴訟しましたが、結果的に良品計画の訴えは退けられ、賠償金など約1000万円を支払うよう命じる判決となりました。
敗訴した決定機な理由は、北京棉田紡績品有限公司が先に商標を取得していたから。商標は、早い者勝ちです。

コストはかかりますが、長期的なブランド投資として捉えて中国での商標登録も検討しましょう。有名になってからでは遅いかもしれません。

※【補足情報】商標とストア名は一緒
Tmall Globalのストア名・ドメイン名は、取得している商標名称から命名されます。「●●海外旗舰店」となるケースが多いようで、「●●」は取得した日本の商標名若しくは中国の商標名となります。
そしてこのストア名は、一度登録すると変更不可です。将来的なブランド戦略を考え「中国名」のストア名としたい場合には、速やかに中国での商標取得をおすすめします。

オンラインバンキングの開設契約

Alipayの契約です。
オンラインストア運営用の出金・入金は全てこのAlipay上で行われます。Alibabaに支払う運営コストも、Alipayへの手数料も、このAlipayアカウントから支払います。(※TPへの支払方法は別途TPと協議)
Alipayはオンラインバンキングの口座開設のようなもので、法人銀行口座開設とほぼ同じ手続きを要します。なので必要書類の種類が多く、不備には厳しいです。(役所業務😥)

・利用規約、および関連同意書へのサイン
・会社謄本(履歴事項全部証明書)
・日本国内の法人銀行口座の通帳コピー
・会社代表の身分証明書のコピー(パスポート)
・筆頭株主情報とその身分/法人証明書
・会社代表サインがあるの申請委任状

など求められます。(一例なので、企業によっては過不足の可能性あり)

またタックスヘイブンによる課税回避やJV回避を検知するために、申請企業のグループ資本関連図・取得株割合なども要求されるケースがあります。越境ビジネスをする健全な外資系企業と見極めるための厳しいチェックです。銀行口座開設と捉えれば必要な書類とも考えられるので、各所へ確認して用意しましょう。
もちろん日本語表記の自社書類が多いため、その日英訳もしくは日中訳が必要なるので対応できるよう準備しましょう。

提出後のAlipayによる審査には3~5営業日かかるため、一度NGとなっても開店が遅れないように余裕を持った日程調整と、書類の不備には気をつけましょう。

物流サービスの契約

Tmall Global提携の物流サービス「Cainiao」(ツァイニャオ/菜鸟)との契約です。
先の”統一B2C物流サービス契約”にて、物流サービスにおいてCainiaoを利用することが条件と記されています。

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Alibabaのグループ企業であるCainiaoは中国国内向けの物流会社で、自社で運送業務を執り行うのではなく順豐速運(SF Express)通速(YTO Express)申通快(STO Express)などといった宅配会社と提携して配送サービスを提供している会社です。
11/11 “独身の日”に大量の注文が入るということは、大量の荷物を倉庫から出荷する「トラック・船・飛行機」が必要になります。注文された10億個以上の荷物を配送処理できる物流インフラの一端を支えているのがCainiaoです。これにより中国国内で万・億単位の配送処理をできるネットワークを持ち合わせているため、配送コストは一般的なB2Cクーリエより安いです。

また、Alibabaグループのため、Alibaba傘下のTaobao・Tmall GlobalといったEC受注システム(OMS)や在庫管理システム(WMS)とのシステム連携が構築できており、CMS運営~在庫管理~受注~配送といったバックエンド業務がシームレスに運営できるのも特徴です。
自社契約倉庫での物流インフラがある場合には、そちらを使う条件交渉も可能なようですが、
運営委託するTPがTmall Global(OMS) & Cainiao(WMS)に慣れていて即時にオペレーションを走らせることができるのと、中国向けの配送コストが相応抑えられるということで、Cainiaoを利用するマーチャントが多いようです。自社開発することなく"中国"のバックエンド業務を"デジタルトランスフォーメート"をできるのは、Cainiao

オンラインストア契約を締結した後、Tmall Global IDが付与されてから日本にいるCainiao担当と商談ができます。Alibaba Japanの担当者からコンタクトをもらえるので、オペレーションと契約内容を再確認しましょう。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
これからも『製造業』×『デジタルマーケティング』の発信に励みます。
Shopify・Tmall Globalに関するご相談も、お気軽にご連絡くだい。

昨年末、自社ECカートシステムを世界No.1シェアのカナダ発「Shopify」へリプレイスした話はこちらから。


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