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夜の街を避けよ 2023年3月【5】

本編

夜の街に行くと、自分が感じやすい人間であることに気付かされます。小さな刺激に強く反応します。大きな音、強い光、大勢の人々といったものに圧倒されてしまいます。

3月のある土曜日の夜、ふと駅前のコンビニに行こうと思いました。本当は昼間がいいのですが、思い出した用は早く済ませたほうがいいと考えて、行くことに決めました。

私の家は静かな住宅街にあります。そこから駅に向かって歩くと、だんだん騒がしくなっていきます。商業エリアに入ると、さっそく酔った若者たちが騒いでいます。

私はいつも不思議に思うのですが、一部の酔った若い男性は、なぜ裏声で笑うのでしょうか。中高年男性もせず、女性もせず、ただ若い男性だけがします。

黒スーツの男性がポツポツと立っているのが見えてきました。夜の店の客引きです。100m手前から見てもわかります。姿勢が独特なのです。猫背で、ガニ股で、片方の脚に体重をかけて立っています。

彼らは静止することができません。常に落ち着きなく体を動かしています。数メートルの範囲を、ダラダラとかかとを引きずって、行ったり来たりします。ガードレールに腰掛け、路上でタバコを吸い、ポイ捨てします。

目当てのコンビニに着きました。またどこかの店の客引きが立っています。タバコを吸っています。喫煙コーナーではなくコンビニの扉の前です。副流煙は絶対に避けたいので、一瞬ひるみましたが、意を決して横から滑り込むように入店しました。もちろん顔を背け、息を止めています。

レジで図書館の本を受け取りに来たと伝え、利用券を渡します(私の住む市にはこのようなサービスがあります)。店員は奥に入っていきました。なかなか出てきません。

私の後ろに人が並び始めました。慌てて他の店員がもうひとつのレジを開け「お待ちの方はこちらへどうぞ」と叫びます。自分のせいでレジに列ができた時、いたたまれない気持ちになります。

店を出て路地に入ったところで、また路上喫煙者がいました(今度は客引きではありません)。息を止め、顔を背けて通ったのですが、目に何か入ったような感じがしました。タバコのカスだったらどうしようかと不安になりました。

普段は人通りが少なく、自然の多い場所を歩いています。今回は「たまには繁華街もいいかな」と考えてこのコースにしました。そしてこんな目に遭いました。

実際には何事も起きていないのです。騒がしい酔っぱらいも、路上喫煙者も、私と無関係に行動しているだけです。客引きや路上喫煙は条例違反ですが、私に向けて行われたわけではありません。私が感じやすいばかりに、彼らとすれ違うことが災難になってしまうのです。

夜の街は刺激が強すぎます。小さなことに頓着せず、人を恐れず、大声で話す人たちの世界です。私はなるべく避けて生きていきたい。

静かな住宅街に入り、街灯がつくり出した自分の影を見た時、ああようやく帰ってきた、と思いました。

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307字
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著者は1985年生まれの男性。 不登校、社会不適応、人付き合いが苦手。 内向型人間。HSP。エニアグラムタイプ4。 宗教・哲学(生き方)…

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