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第16回 ロッキー4/炎の友情 (1985 米)

 ハリウッド映画と米ソ関係の相関性は前回の『レッドオクトーバーを追え!』で説明したとおりですが、80年代後半、いわゆるトロイカ体制のこの時期はソ連絡みの映画はちょっとした流行でした。

 そしてそれは映画に限らず、スポーツの世界でもオリンピックでしかお目にかかれなかったソ連の選手が西側でプレーできる道が開かれました。

 と首バスケットボールやアイスホッケーで顕著でしたが、ボクシングも例外ではありませんでした。アントニオ猪木が連れてきた謎のロシア人ボクサーがバブル期の後楽園ホールにはよく見られたものです。

 そんな時期に作られたのが今回紹介する『ロッキー4/炎の友情』です。ソ連から鳴り物入りでやって来たアマチュア最強のボクサー、ドラゴ(ドルフ・ラングレン)にアメリカの威信をかけてアポロが現役復帰して挑み…という筋書きです。

 90分映画になり、やたらとPV的に音楽にのせてのトレーニングシーンが多く、スタローンの反共思想が随所に覗く作りになっています。要はあんまり面白くないのです。今作はラジー賞を総なめにし、以後スタローンはラジー賞の申し子となります。

 今作を機にロッキーシリーズは停滞期に突入するのですが、BL的観点、スタローンというBLスターの人生においては非常に大きな意味を持つ作品です。つまらない映画も楽しく観れる、それがBL的映画鑑賞の売りなのです。

ロッキー4/炎の友情を観よう!

執筆時点でAmazonで有料配信、U-NEXTでも配信があります。

真面目に解説

ソ連という国

 今のロシアは事実上のツァーリが支配するおっかない国というイメージですが、当時はもっと不気味なイメージを世間が持っていましたし、また明確な敵国と考えられ、過大評価されていました

 実際のところソ連はとんでもないハリボテだったのは今では知られた事ですが、何かあれば核戦争が始まるとアメリカはソ連を恐れ、お互いいがみ合っていました。

 もっとも、核ミサイルは安売りできないので、実際のところ両国は他の部分で張り合いました。それは宇宙開発競争であったり、スポーツであったりです。

 オリンピックは言うなれば代理戦争でした。ソ連にはプロスポーツも人権もないので有利です。ステートアマと言って、公務員として一流選手をアマチュア扱いで送り出し、選手同士を強制結婚させて生まれた子供に英才教育を施し、もちろんドーピングしまくりで西側の選手を負かすことで国威発揚と国民のガス抜きをする。そういう仕組みの国だったのです。

 それにも限界が来てソ連は崩壊するわけですが、その途上にあったというのに今作はソ連への敵意がありありと覗きます。というのも、スタローンはガチガチの保守派で反共なのです。

 ドラゴは冷酷無比なボクシングマシーンであり、取り巻きもまた保身と党の利益しか考えない外道であり、アメリカ人もまたそんなドラゴ一行を徹底的に悪者扱いします。

 言うなれば、今作はシュワちゃんの『レッドブル』のさわやかなホモ臭さとは対極に位置する映画です。スタローンも根はお人好しなので最後は一応ソ連にもフォローを入れますが、ソ連側はこの映画に怒り狂ったそうです。当たり前の事です。

キミィ、極真空手をやりなさい

 ドラゴ役に抜擢されたドルフ・ラングレンはスウェーデン人で、元軍人であり、MITで学んだ科学者であり、極真空手のスター選手でもあるというやたらにハイスペックな人物です。

 おまけにいい男なのでアルバイトでミュージシャンのグレイス・ジョーンズのボディーガードをしていたらデキてしまい、その縁で『007 美しき獲物たち』で映画デビューを果たします。

 これを足掛かりに今作に出演が決まり、ラングレンは世界的に名の知れたスターとなりました。スタローンが彼を選んだ決め手はズバリ空手でした。

 空手の突きは一撃必殺を旨とするので、回転力を重視するボクシングのパンチとは違った迫力があります。これがスタローンに気に入られたのです。無駄が多いですが実に痛そうです

 しかし、今作を機にラングレンは売れましたが、最終的に「エクスペンダブル」な事になったのはご存知の通りです。

 極真空手の祖、大山倍達はあらゆる人生相談に「キミィ、極真空手をやりなさい」と答えていたのは有名ですが、空手は時にその人の人生を狂わすのです。ラングレンこそ本物の空手バカ一代であったのかもしれません。

ロッキー・バルボア一家

 ロッキーは今作でも相変わらず金持ちで、豪邸に住んでセレブな日々を送っています。そしてポーリーが住み着いています。

 そしてポーリーは作中冒頭で誕生日を迎え、ペッパーのご先祖様みたいな謎の家事手伝いロボットを贈られます。

 当時の金持ちの間ではこの手のロボットが流行していたのです。今見れば陳腐ですが、当時としては驚異的なテクノロジーです。段々とポーリーの好みを覚え、タバコの吸い過ぎはダメだのと余計な気づかいまでするようになります。

 そしてポーリーはポーリーでロボットの事が妙に気に入り、「俺の女」なんて言っちゃって満足げです。セクサロイドは2020年の今でも実用化されていないはずですが、これ以上は恐いので想像しない事にします。

老ボクサーの憂鬱

 ドラゴ一行がチャンピオンとエキシビションをしたいと言ってアメリカを訪れるところから映画が動きます。当然本命はロッキーだったわけですが、ここに割って入るのがロッキー一家とセレブな家族ぐるみの付き合いをして第二の人生をエンジョイしていたはずのアポロでした。

 アメリカを馬鹿にするのが許せない、所詮自分の居場所はリングしかないというのがアポロの主張です。ロッキーもエイドリアンも止めますが、アポロは自分を変えることはできないと言って結局ドラゴとのエキシビションに臨みます。

 これはリアリティのある話です。スポットライトを浴びた人間は身を引くことができないのです。古くは古代ローマの剣闘士も、勝ち残って自由を得ても、多くは結局闘技場の大歓声を忘れることができずに戦い続けたと言われています。

 また、ボクシング界隈では「おやじファイト」という30歳以上を対象としたアマチュアボクシングが盛り上がりを見せていますが、多くの元プロが参加しているのはこの心理と無関係とは思えません。

 しかしドラゴは恐ろしく強く、ゴングも聞かずに殴りかかって来るので手に負えません。ロッキーは棄権を勧めますが、何があっても止めるなと強く釘を刺し、アポロは2Rで殴り殺されてしまいます。ドラゴときたら「死んだ者が生き返るか」と冷たい態度です。

 そしてロッキーはアポロの墓前にチャンピオンベルトを供え、ドラゴとクリスマスにモスクワで対戦することを決意し、デュークとポーリーを連れてロシアでの合宿に入るのです。

PV映画

 今作の音楽はお馴染みのビル・コンティではなく、ヴィンス・ディコーラが手掛けています。ラジー賞最低作曲賞を獲得しました。

 だからか知りませんが、PVの繋ぎ合わせという評価があるくらい、前作『ロッキー3』で世界的ヒットを果たしたサバイバーの「Eye of the Tiger」以下、楽曲がやたらと前面に押し出されています。

 何かというと曲が流れ、特訓や回想のシーンが続く様はまさにPVです。私は決してこの演出が嫌いではありませんが、手抜きと言われても仕方がないとも思います。

 また、今回の有名人枠はドンと豪華にジェームス・ブラウンが起用されます。ベガスでのアポロとドラゴの試合に先駆けて「Living in America」というこの映画の為に作られた曲をベガスらしく派手な演出で歌います。この一曲で落ち目だった天下のJBは息を吹き返しました。

 ドラゴがドン引くなかで始まったアメリカ万歳を唱えるJBのショー。どう考えても親善の意思はゼロです。全力で喧嘩を売りにかかっています。

 ロシアでの特訓シーンで流れる「トレーニングモンタージュ」も有名です。高田延彦が現役時代に入場局に使っていました。

 高田延彦と言われても、若い人には褌で太鼓を叩くおっさんでしかないでしょうが、当時はこの人がこの世で一番強いと信じている人が万単位で居たのです。

 その実際の強さは赤井英和とどっこいというのはプロレスに明るい人には知られた話ですが、ケンドーコバヤシが世に出るまで、二丁目における人気は絶対王者でもありました。

 とにかく、以前も説明したとおりロッキーシリーズは実に安上りにできているのですが、今作は3600万ドルもかかっています。数割はJBのギャラだったのではないでしょうか。

 そして、今作はこれだけ音楽に凝っていながら、モスクワでの試合で流れるソ連国歌は1977年に変更される前の旧バージョンの歌詞でした。ソ連の人が怒るのもラジー賞に選ばれるのも当然です。

恒例謎特訓

 アポロの死で一人遺されたデュークがロッキーを勝たせるべく尽力してくれます。ロシアで一行が合宿場所に選んだのは雪原の小屋。テレビもねえ、ラジオはかろうじてある、たまに来るのはKGBという糞田舎です。

 ドラコサイドが無駄にコンピューターを多用した化学的っぽいトレーニングとステロイドをキメる一方、ロッキーは木を切ったりそりを引っ張ったり山登りをして叫んだりと、『網走番外地』入ったトレーニングに明け暮れます。どっちがソ連だかわかりやしません。

 それに、ドラゴはステロイドを使っているから悪役という体でストーリーが進みますが、スタローンだって使っているのは公然の秘密です。

 自分の事を棚に上げるのは男として恥ずべき行為だと思うのですが、目的は手段を正当化するという事なのでしょう。ソ連と仲間割れして殺された革命家の言葉なのは内緒です。

 そして、そんな中でアメリカに置いてきたはずのエイドリアンがひょっこり現れます。最初は散々止めていたくせにです、エイドリアンは最後は押しに負けてしまうのです。ダメ男について行っちゃうタイプの典型です。そもそも、そんな気やすくソ連に来れるんでしょうか?

エクスペンダブル!

 奥さんと言うと、ドラゴはいかにも高慢そうなルドミラという奥さんを連れています。実に嫌な女です。ソ連の女性をアメリカのアホな白人がどう考えていたかが伺えます。日本女性=芸者みたいな悪意に満ちたステレオタイプです。

 最初はドラゴの妻ということで威張っていたくせに、ロッキーにドラゴが押されて劣勢になり、ダウンするや「見損なったわ」と最低な事を言います。こんなのと結婚したドラゴが気の毒でなりません。

 演じているのはブリジット・ニールセン。元はスーパーモデルで、シュワちゃんの相手役として売り出されました。そしてたまたまスタローンと知り合い、今作に抜擢されることになりました。そしてラジー賞女優として毒々しくキャリアを重ねるのです。

 そしてスタローンは『ロッキー』の結末をハッピーエンドに書き換えさせた素晴らしい奥さんを「エクスペンダブル」して、ニールセンと結婚してしまいます。しかしニールセンの方も私生活に問題を抱えまくった大概な女で、トニー・スコットと浮気したりして2年で離婚してしまいます。

 ちなみにスタローンの家の庭にはニールセンの銅像が建っているそうです。私には狂気の沙汰としか思えませんが、スタローンは今でもニールセンの事が好きで、先頃54歳で子供を産んだ際にもお祝いのメッセージを送っています。

 割れ鍋に綴じ蓋と申しますが、「エクスペンダブル」な男には「エクスペンダブル」な女が合うという事なのでしょう。その性質上長続きはしないのでしょうが。

ボクサーは悲しからずや

 思えばドラゴは本当に気の毒です。国家の英雄としてハードトレーニングと悪い薬に手を染めてきたのに、ロッキーが根性を見せるやロシア人もロッキーを応援し始めます。

 サイボーグのごとく無感情だったドラゴもそんなロッキーにビビり、最後は根性ということにようやく気付きます。逆に言えば、根性を出す必要がないくらい強かったという事でもあります。

 ファイナルラウンドに際し、ゴルバチョフ(のそっくりさん)以下共産党の偉い人の席から使い走りがドラゴの所へ走り、ドラゴを小突いて叱ります。人を使う立場としては最悪の了見と言えましょう。

 ドラゴは偉い人に掴みかかり、自分のために戦うとゴルバチョフ(のそっくりさん)に声高に宣言してファイナルラウンドに向かうのです。

 そこまでほとんど喋らなかったドラゴが急に人間性を取り戻して口数が増えて反抗的になります。少年漫画にありがちな展開ですが、こういうキャラは幸せにはなれないものです。ドラゴは敗れ、党にも奥さんにも見限られてしまうのです。

 しかし、それがシリーズの重要な伏線になるのですが、それは今後の為に大事に取っておきます。

気持ちだけフォロー

 最後はロッキーはリング上で友好を訴え、ジュニアにメリークリスマスと唱えて映画は終わります。城内総立ちでゴルバチョフもスタンディングオベーションですが、こんな取ってつけたようなメッセージに感動しちゃうほどロシアの人達は安くないでしょう。

BL的に解説

アポロ×

 2人は家族ぐるみの付き合いをするまごう事なき親友となっています。ドラゴとの対戦に際しても、アポロはまずロッキーの所へ相談に行くのです。

 エイドリアンはアポロの強さは認めつつも止めましたが、エイドリアンが止めて聞くくらいならメアリーが止めています。ポーリーはと言うと「ポルノ漫画でもどうだ?」と白紙委任の姿勢です。

 男同士の問題は結局男同士で完結するというシビリアンコントロールならぬマンコントロールの原則がBL的映画の世界にはあるのです。エイドリアンはロッキーがそれなりに彼女の意思を尊重するのでその辺が呑み込めずにいますが、ポーリーはその点よくわかっています。

 そしてロッキーも止めはしますがアポロの情熱にほだされて承諾し、セコンドに付きます。しかし、アポロは死ぬのです。ロッキーはタオルを投げるのをためらったせいで俺のアポロが死んだと後悔し、墓前にチャンピオンベルトを供えて戦いに赴くのです。

 ドラゴに殺される危険を二人の愛が上回る。この浪花節こそがBLなのです。勝てば本懐を遂げることができ、負けても蓮の葉の上でスパーリングに興じることができる。事実上ノーリスクハイリターンなのです。

 そしてロッキーは今回もアポロの遺品と思しき星条旗柄トランクスでモスクワに殴り込みます。歌舞伎や文楽の敵討ち物と構造的には全く変わりません。歌舞伎はホモなのは一般常識でありましょう。つまり敵討ちはホモなのです

ポーリー×

 ポーリーは相変わらずロッキーに飼われています。しかし、こじれがちだった今までと違って今回の2人の仲は極めて円満です。エイドリアンよりも上手く行ってます。

 そしてジュニアもポーリーにすっかり懐いています。将を射んとする者はまず馬を射よの格言通りです。イタリアの種馬が相手なので話が複雑になってしまいますが。

 アポロ戦にもセコンドとしてリングサイドに陣取り、ロッキーとドラゴの記者会見では「この国の沈黙しない大衆」などと格好いい事を言ってソ連をの体制を盛大にこき下ろしちゃいます。

 ポーリーごときにこんな見せ場を作るあたりに今作の政治的などす黒い側面を感じずにはいられませんが、ポーリーはロボットと別れを惜しみつつロッキーと一緒にロシアへと旅立ちます。

 ポーリーはロシアの環境に文句を言いまくり、「テレビがないとローズボウルも観れねえ」とこぼしますが、ここにポーリのメンタルの乱れがつぶさに見て取れます。

 ローズボウルというのは元旦に行われるカレッジフットボールの大一番です。一方ロッキーの試合はクリスマス。ポーリーの言う事は矛盾しています。それ程動揺しているのです。

 何故か?デュークに加えてKGBのお目付けまで居るからです。ミッキーもアポロもこの世の人ではなく、ガッツォさんも表舞台から消えた今、ロッキー争奪戦ランキング1位に居るのはポーリーのはずだったのです。

 しかし、ロッキーが復帰してしまったことでデュークがロッキーに急接近します。これはポーリーにとっては面白くない現象です。しかも俺の物になるはずのロッキーがドラゴに殺される危険があります。ポーリーはローズボウルではなくロッキーという赤い薔薇しか眼中にないのです。

 そしてポーリーはロッキーの死を覚悟してか、試合会場の通路で普段のツンデレぶりを捨てて素直にロッキーへの愛を吐露します。

 「お前は俺をいつも一人前に扱ってくれた」「誰か他の人間になれるならお前になりてえ」と不器用な愛の告白をして、あろうことかキスをして送り出すのです。それもエイドリアンの居る前で。

ポーリー×ジュニア

 シリーズを追うごとにジュニアが当然ながら少しずつ成長していきます。今作のジュニアは一番可愛い年頃です。吹替だと声は坂本千夏、シスコに行けばホモの父親が3人居る声です。

 私の一押しはダニジェシですが、よく考えれば実の父親、叔父、父の親友がホモホモしながら家を出入りしているという構図は全く同じです。この組み合わせはフィラデルフィアでも通用するのです。エイドリアンもベッキーもパメラもコンドームでしかありません。

 ジュニアはおいたんに非常に懐いていますし、ポーリーもまたジュニアを可愛がっています。『ロッキー2』でも言いましたが、これは光源氏システムです。頃合いを観て美味しいタイミングでいただく、精肉工場や借金の取り立て人をやっていたポーリーらしい合理的発想です。

 ジュニアについては今後が凄い事になりますので、今回はこの辺にしておきます。

デューク×

 ロッキーにとってアポロの死は最愛の人の死でありましたが、デュークにとってはそれ以上の悲しすぎる出来事でした。

 「アポロは息子と同じだった」「アポロが死んだとき俺も半分死んだ」とロッキーにこぼします。ヘビー級の恋です。しかし、角砂糖のように容易に溶けてはくれません。綺麗な思い出の為に飢えて死ぬ覚悟が男同士の愛には必要なのです。現に幕末の志士達はそうしたのです。

 しかし、デュークは「お前が居ることでアポロの魂は生き続ける」とロッキーに歪んだ愛の告白をして熱い抱擁を交わし、猛トレーニングに入ります。シベリアの雪さえ溶かす資本主義者の爛れた愛にお目付けのKGBも思わず禿げ上がることでしょう。

 そしてデュークはやっぱり今回もいの一番に勝利を飾ったロッキーに抱き着くのです。そこにアポロの面影を見ながら。それを優しく受け止めるのがロッキーなのです。

ドラゴ×

 これについては多くを語りません。この二人の炎は後から燃えます。

ナマモノ注意

スタローン×ラングレン

 本noteはタブーなき映画レビューを目指しています。なればこれを見逃すわけにはいかないのです。

 ラングレンはロッキーに空手とガタイを見込まれて抜擢されたわけですが、一つ問題がありました。ラングレンは細身だったのです。

 軍人で空手家であるラングレンの筋肉の方が理屈には適っているのですが、ソ連のボクサーとしてスタローンの相手役を務める以上それでは説得力がありません。

 そこでスタローンはラングレンを恋人のグレイス・ジョーンズと引き離し、筋肉合宿を敢行してラングレンの身体を大きくします。

 果たして試みは成功し、ラングレンは50ポンドも増量して人間辞めたような身体を作ることに成功しました。その背景にはステロイドと良質のタンパク質の摂取があったのは想像に難くありません。

 なにしろスタローンはラングレンをジョーンズと別れさせてしまうのです。ジョーンズは当然ながら嫌がり、拳銃を持ち出して暴れたと伝わります。亭主持ちの読者各位はご想像ください。ご主人が男に盗られたら手練れの腐女子でも嫌に決まっています。

 かくして女と科学者の道を捨てて筋肉を手に入れたラングレンですが、芝居の上手い方ではないので仕事が段々なくなり、スタローンにエクスペンダブルズ』に出してもらって一発逆転するまで長く役者として苦悩することになります。

レーガン×スタローン

 タブーなき映画レビューです。ここはもっと見逃すわけにはいきません。

 時のアメリカ大統領ロナルド・レーガン。この人は元ハリウッドスター(ただし二流)であり、アカ狩りに協力する事で政界に進出してついには大統領となり、「強いアメリカ」を標榜した悪い意味でアメリカ全開の大統領で、ジョディ・フォスター(レズビアン)の気を引きたいボンクラに暗殺されかけた事もあります。

 スタローンは保守的思想の持ち主であり、先輩でもあるレーガンとはズブズブでした。この雑な作りでソ連への悪意に満ちた映画もレーガンだけは大喜びであったと伝わります。

 ここで注目したいのはスタローンではなくレーガンの方です。この人は相当に怪しいのです。

 当時を知る読者の方ならもうお察しでしょうが、レーガンは当時の我が国の総理大臣、中曾根康弘と懇意で「ロンヤス」と言われてセットで語られたものです。

 中曾根康弘と言えば元は海軍士官であり、そっちの気の人であったという疑惑が半世紀も前から囁かれるその道の大物です。

 そんな海軍士官と最もゲイが輝いていた世代のハリウッドスターのレーガン。肉体関係があったとしても何ら驚くことはない取り合わせです。

 となれば、レーガンとスタローンがそういう仲であっても何ら不思議はないのです。強いアメリカなんて言ってイキってる奴が実はゲイ。何ともリアリティに溢れています。

 股間のキノコ雲で強いアメリカを誇示する大統領。まあ、民主党は民主党でホモ臭いのでおあいこです。ホモは超党派なのです。

 かようにホモを見出す要素はあらゆる場所に隠れています。BLとは隠れたホモ要素を見つけ出し、無限に膨らませて楽しむものだと私は思っています。

お勧めの映画

 独自の統計(主観)に基づきマッチング度を調査し、本noteから関連作品並びに本作の気に入った方にお勧めの映画を5点満点にて紹介します。

火曜はロッキー

『ロッキー』
『ロッキー2』
『ロッキー3』
『ロッキー5/最後のドラマ』
『ロッキー・ザ・ファイナル』
『クリード チャンプを継ぐ男』
『クリード 炎の宿敵』

赤いBL的映画鑑賞

『レッド・オクトーバーを追え!』

『スターリンの葬送狂騒曲』
『グッバイ、レーニン!』
『T-34 レジェンド・オブ・ウォー 最強DC版』
『レッドブル』

『レイジング・ブル』(1980 米)(★★★★★)(上品なボクシング映画)
『リベンジ・マッチ』(2013 米)(★★★★)(そして悪魔合体)
『ランボー』(1982 米)(★★★★★)(根暗な側面の出たスタローン)
『エクスペンダブルズ』(2010 米)(★★★★)(ねじの外れたスタローン)
『ベスト・キッド』(1984 米)(★★★★)(空手バージョン)

今までのレビュー作品はこちら

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