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「競争優位×因果」で考える採用広報。やってるつもりなのに成果出ていない気がする方へ

採用広報を頑張ろう話が何年か前から出て、昨年のアドベントカレンダーでは、やるべき設計をちゃんとやる採用広報が実施されていく時代になるだとうと予想されていた令和元年。

蓋を開けてみると、あるべきストーリーなしにWantedlyに記事をアップし続けるという採用広報の形がまだまだ継続しているなーと感じる場面があります。各社のコンテンツの企画の傾向やPV数の傾向から、こういう類型のものをやれば良い、という手段ベースで採用広報が未だ語られ・実施されていて、表面だけ模倣しているケースが多いように感じられます。

根底に、ブランドとして、「誰に、何を伝えて、どういう位置づけを得るのか」に関する熟考したものがないと、薄い社員インタビューをただ掲載するとか、とりあえずきれいなデザインで会社紹介資料作るとか、そういう行動を量産してくことになります。

おそらく、成果が出ていない/成果が分からない、という感じている方は量産型の罠にはまっていると思われるので、今回は改めて採用広報の初手としての思考の整理に関して、記事を書いてみようと思います


採用ブランディングの流れの中の採用広報。まずはブランドのあり方を考え抜く。

採用ブランディング

採用ブランディングとは、

採用市場の中で、「誰に」×「何を伝えて」、その結果「どういう位置づけを得るのか」

と定義しています。まずは、自社がブランドとして、どういうところを目指すのか、どういう候補者に対して、彼らの心の中でどういう位置づけを得たいのか?を定義し、そのために何を発信していくのかという思考の順序なくして、コンテンツ発信は成果をあげにくいと思っています。

[参考]はじめての採用ブランディング


このnoteでは幾度か当該スライドを貼り付けてはいますが、これをもう少し採用広報寄りにして、以下の図に流れを追記してみましたので、これに沿って説明していければと思います。
※今回、「何を?」というところを特に深掘りする形になるので、色付きになってます。

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1,誰をターゲットにするのか?

まずは、自社のターゲットは「誰なのか?」をちゃんと考え抜く必要があります。自社がターゲットとしている人たちはどういう人なのか、このターゲットの定義を解像度高く行わずに採用活動やブランディングをすることは困難ですので、まずはここを精度高くやることがとても重要だと思います。

エンジニアの例だと以下の記事のようなイメージで解像度を上げて定義していきます。

採用市場の中でどういう人達がどこにいて、何に悩んでいるのか?(ペイン)、何を目指しているのかを言語化します。

このペインに対してどう解決出来るのか?という視点が非常に重要になります。

2,何を伝えるのか?

「競争優位×因果」で考えるコンテンツ。要素には影響の程度がある。

今回のテーマとして書いている「競争優位×因果」は、「何を?」候補者に伝えていくかの優先順位を決める考え方です。

・自社の魅力は何?
・競争優位はどこ?候補者に響く要素は何?(競争優位と因果)

こういった内容を洗い出していく形になりますが、各々説明をしていきます。

自社の魅力は何?

良いプロダクト?巨大な市場規模?高い成長率?優秀な経営者や社員?フラットな組織?高い給与?などいろんな要素が考えられると思います。

弊社がご支援する場合は約70項目のヒヤリングシートを用いてこれらを洗い出していきますが、自分では当たり前だと思っていたことが他人から見るとすごく特徴的な点だったというケースはそれなりにあったりするので、人事の方が自社で洗い出していく場合も、1人だけで行わずに複数人で行う等、様々な角度からの抽出、文言化が重要なステップだと思います。また、職種の解像度が高くないと通り一遍等の特徴しか言語化出来ないので、解像度が高い人と一緒に洗い出すこともとても重要です。

競争優位はどこ?候補者に響く要素は何?(競争優位と因果)

次に、上で挙げた自社の魅力が本当に魅力と言えるのか、採用競合と比較し検討し、またどんな要素が候補者にとって応募というアクションをする上で重要な要素なのか、仮説立てをしていきます。

どのようなイメージで競争優位と因果の関係を整理出来るのか、図で見てみたいと思います。

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まず、縦軸が競合比較をしたときの自社及び他社の評価として位置づけています。上にいけば5点、下にいけば0点といった具合で5段階評価のイメージですね。この図で言うと、「市場規模・成長率は他社と比較して良さそうだ、経営者の魅力は少し他社の方が良さそう、ミドル層は自社は厚いので魅力はあると言えそう」等のような形です。マーケティングではこれをリサーチにかけたりするわけですが、HRでリサーチ費用を捻出するのは難しいと思われるので、仮説として主観で項目別の他社比較として各々の位置づけをプロットし見える化していく形です(あくまでこの図は一例で適当に入れ込んでいるので項目そのものには意味はないです)。

因果を考慮しないと給与を訴求してしまう

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こういった他社比較はもしかしたら各社様されていることかもしれません。今回の図で言うと「市場規模・成長率」「ミドル層の魅力」「給与」は自社の評価は高く、競争優位性がありそうなので、この3項目を盛大にアピールしたいと思われるかもしません。

少しその思いを踏みとどまっていただくために、次に説明するのが因果の話です。

図の横軸を見ていただくと「応募意向への影響度合い」と記載していますが、これは「因果の関係」を示しており、見方として、左側にその要素があればあるほど因果関係が強い要素であり、右側のものは応募意志と因果関係が薄い要素であることを示しています(重ねてですが、あくまでこの図は一例で適当に入れ込んでいるので項目そのものには意味はないです)。

因果関係が強いという表現は、つまり当該要素(原因)を自社が持っていればいるほど、候補者の応募意志(結果)が右肩上がりに上がる関係性を強く持っているという意味です。この図で言うと、あくまで例えばですが、候補者にとって市場規模や成長率は極めて強い要因として応募意志に働いており、例えば市場規模が大きいビジネスを取り組んでいればいるほど応募意志がどんどん上がりますよと。一方で、給与は大した要因にはなっていない、という図になっています。

つまり、給与を上げれば上げるほど応募意志が上がるという関係ではないので、給与がどれだけ他社比較で高かろうが、それをアピールしても候補者には響かないのでコスパが悪いので筋が悪い、辞めた方が良さそう、ということが図から言えるということになります。

今回極端な例として給与という項目を作ってはいるので、そりゃそうだろうという思いがあるかもしれませんが、これがもう少し微妙な項目だと判断がしにくいかもしれません。

例えば、その横にある、「フルフラット、透明性のある組織」という要素が、仮にですが、他社よりもその自己評価が高ければ、今の世の中だと声高にアピールしてしまうかもしれない要素ですよね。仮に、応募意志との因果関係が薄い場合であっても、因果関係を意識していなければ。。

何が言いたいかと言うと、因果関係を意識せずして、他社と違う強み・特徴だからと、それをノールックでコンテンツとして、例えばインタビュー記事として、世の中に(採用市場に)発信しても、もしかしたらものすごく徒労に終わってるかもしれない、ということなのです。

因果関係が強いと仮説立てられ、かつ自社が他社よりも強い領域をしっかり訴求することがまず始まり

じゃあどうすればよいのか?ということですが、競争優位があってかつ因果が強いコンテンツをまず出す、ということを意識しましょう、ということです。平たく言うと、候補者から強く求められていて、かつ自社ならではのもので戦いましょう、という言い方になるかもしれません。

以下に、また違った図を用意してみました。縦軸が因果関係、横軸が競争優位で、各要素を散布図の形でプロットしています。

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これの4象限の意味を各々考えてみると以下のように考えられるかもしれません。

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右上の象限が最も期待すべき象限になります。広報としてしっかり注力すべき領域、因果関係が強いので広報する意味があり、かつ自社が強い要素なのでまず最初に行いたい領域ですねと。特に、実態として他社よりも強そうだけど、情報発信不足で市場には全然知られていない、という要素は、優先度高く置いて訴求すべき項目だと思われます。

左上の象限は底上げ注力、その後広報候補と書いてますが、因果関係は強いのに、自社が負けている領域になるので、他社に負けないように整えられるなら整えてから広報しましょう、という領域です。今回の例で言うと働き方という要素が当該象限に該当しているので、副業OKにする、フルリモートOKにする、週3日からでも正社員採用可能にする(他社でも並行で社員になっていいよ)、とか色々底上げ施策は考えられるかもしれませんので、実施してからだと広報施策の効果高そうですね、といった領域になるわけです(実際は働き方がこの象限かどうかは分からないのであくまで例です)。

次に右下の象限は、最低限アピール領域としていますが、因果関係が薄いのでそこまでアピールしなくて良さそう、でも自社としては競争優位がある、という領域で劣後してアピールする対称群かもしれません。今回は詳しく書きませんが、転職は極めて高い関与(ちゃんと考える)の元、複合的な要因で複雑な意思決定していると思われるテーマなので、例えば因果関係としては薄いけど、該当要素が無かったら応募しないよね、という要素もあると思われますので、そういった項目は積極的に出して置く必要があります(給与も、もしかしたらそうかもしれません。少なくとも一定以上ないと転職しないが、一旦そのラインを超えると、極端な上昇は別にして、金額が上がれば上がるほど応募意志が上がるという関係ではなくなったりする等)。

最後の左下の象限は、因果関係薄くかつ競争優位性もない要素なので、何もしなくて良い要素群と言えるかもしれません。

色々書いてきましたが、以上のような形で、自社の仮説を立てて、優先順位、ストーリーを決めて、何を候補者に伝えるべきなのかを考えていくことがまずは採用広報の初手だとわたしは思います。

その後のアクションやその他補足

・そもそもどうやって因果関係がある要素を見つけ出すのか?
マーケティングではこれを多変量解析手法を用いて明らかにしていったりしますが、HRではそこまで費用を捻出出来ないと思われるため、いくつかの方法があると思います。

1,2次データを参考にする
因果とまでは言えないものの、例えば「転職する上で重視するものは何ですか?」といったアンケートデータは各社が調査・公開しているものがあるので、一定の参考になるかもしれません。

2,対象者にヒヤリングする
シンプルですが、自社に面談に来た人に、参考として転職活動ではどういった点を重視してますか?(転職の軸という聞き方だと難しい答えを言おうとしてしまうので、応募判断に影響を与えるポイント、TOP5のイメージで聞く)と聞いてしまうのも一つ参考になりそうです

3,ターゲットの解像度が高い人が仮説設計する
冒頭に記載している、「誰に?」の解像度が高ければ「ターゲットのペインを解決できるソリューション」という観点で因果関係が強い要素を仮説立てしやすいかもしれません。
先に述べた2つの方法もターゲットの解像度をあげていく情報収集経路とも言えます。例えばエンジニアのことが分からない中で採用に取り組んで行く場合、とりあえずインタビュー記事を書いてみよう、ではなく、対象となるエンジニアの理解をする努力から始めた方が良いと思われます。社内エンジニアと対話する、先に挙げたような調査をちゃんと行う、勉強会・イベントへの参加する、無料のプログラミング動画を見てみる等から始めた方が近道かもしれません。

・「誰に?」と「何を?」は相互に依存関係にあるので両方アップデートする
誰に?を決めた後に、何を?を考えていくと、どうもターゲットにズレを感じるようになった、ということはよくあることなので、1つ決めると不変というわけではなく、お互いをバランスよく思考し、両者をアップデートしていくことになります。

・要素をコンテンツに落とし込んでいく
競争優位×因果で要素を見出して初めて、ここでようやく「どのように?」というHOWの話に移ります。発信したい内容を、コンテンツとしてどう発信していくかを考えていくフェーズです。記事の形態としてどうあるべきか、インタビューなのか企画ものなのか、WantedlyなのかPR Tableなのか、NewsPicksなのか、インタビューでも何を聞くべきなのか、単純に経歴や入社動機など通り一辺倒の項目を書き出すのではなく、見出した要素をインタビューの主軸に据えて、この要素を訴求するにはどういうサービス・経路で、誰に、どんな聞き方をすれば抽出出来るのか?を考え、「社員の見える化」以上のコンテンツとして、より積極的で思考されたコンテンツにしていけるのではないかと思います

・伝えるメッセージが、そもそもブランディングしたい方向と一致し、かつ一貫し整合性がとれているか?
ここもしっかり触れていない観点ですが、そもそもブランディングとして自社がどういった位置づけを狙いたいのかを最初に決めた方が良いと書きましたが、その目指す姿のために、競争優位×因果に加えて、どういうコンテンツ発信があるべきかの議論も同時にあるべきです。

またその情報発信も、様々な要素や経路で、統一的に、目指すべきブランドと整合性がとれているのか?という点も重要なポイントでもあります。

すごく極論ですが、「自社は情報はフラットでオープン、とても透明性が高い組織だ!」とどれだけWantedlyのフィードで発信されていても、どのSNSを見ても社員が自社のことを情報発信していない、積極的な情報公開がされていない・様子がうかがいしれない、HP見てもなにかすごく硬い雰囲気がする、となると、ちょっとオープンだ透明だ、というイメージを持ちにくいですよね。ブランドにとって、統合的で整合性あるメッセージの作り込みはとても重要なことだと思います。

候補者とのコミュニケーションの接点は、様々な角度から一貫し整合性がとれている必要があるので、ブランドの方針が決まると、本来は候補者との接点を洗い出し見直して、リブランディングに取り組んでいく必要があるものだと思います(が、そこまでスタートアップがやりだすとなかなか苦しいところだったりしますが。。)

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