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育てるということは

新人だった私には教育係がいて、困っていることやわからないことをマンツーマンで教えてくれていた。看護業界の中では教育する人を”プリセプター”、新人を”プリセプティー”という。当時はまだ、教育制度が整っていなくて覚える項目をToDoリストにして担当の人が教えるようなスタイルだった。技術をひとしきり教えてしまったら終了というもので「教えたからできるでしょ」という考えがあった時代。1回じゃ覚えきれなくこっそり先輩の技術を目に焼き付けて必死で自分のものにしていた。時には手伝ってもらう口実で教えてもらったりと。

今は、どこの企業も教育に力を入れている。新人をどうやって一人前に育てていくのか?どこも必死になって考える。しっかり覚えられるように何度も練習をさせたり、研修期間も1か月みっちりある。現場に入っても正しい技術が身につくように注がれる尽力は昔とえらい差がある。それは能力の高い社員を増やすことで会社に利益をもたらすためと大きな目的があるけど、教育する側はきっと仕事量を少なくするためにしていると私は思う。自分のためにならないことはしたくないということはだれもが考えること。なのでプリセプターをしたがる人は少ない。時間がかかることと、自分の仕事+新人教育と負担が多い、新人を育て上げるというプレッシャーが何よりかかる。私もプリセプターを経験して、きついと思ったことや悩んだことが多かった。それだけ人を育てるということは難しいと感じている。


去年、3ヶ月にわたって看護協会で行われた新人教育の研修に参加した。その時に感じたことと、学んだことを書き残しておこうと思って今回投稿した。看護師に特化している内容もあるかもしれないけど、働くうえでは共通する事もあるので参考にしていただければ幸いです。



看護協会って

まずは耳なじみがない看護協会について説明します。

看護師は一般的に看護協会というものに登録している。入会は自由だけど半強制的に会員になっている組織が大半。私も看護師の免許を取って働きだしてからずっと会員を継続している。知っている人も多いと思いますが、看護協会は何をしている団体かと言うと、

主たる活動として、看護職の専門技能の研修、雇用、労働条件の推進、訪問看護や在宅看護の推進から、火災時の救援活動、国際的な協力、支援活動などの看護職の地位向上、活動領域の拡大とPRなどの活動を行っているまた看護師資格を有しながら、結婚、出産、育児などで離職した有資格者のための再就職の支援や専門技能の向上、認定看護師、専門看護師の育成、認定看護管理者の養成および認定の活動も行っている。   Wikipediaから抜粋 

上記のような活動をしている。特に力を入れているものはやはり教育の部分で定期的に勉強会や研修が開催され参加したいものエントリーする仕組みになっている。今回の研修はガイドラインに沿った研修がどこの施設にも浸透するようにということがねらいで行われている。県内の各病院施設から代表したものが集まった。



研修の中で学んだこと

教育を行っていくことで悩むのはそれぞれに合わせた指導をしなくてはいけないこと。学校の勉強とは違い、1人が学びやすい場を作るのが最も難しい。新人の中でも自己肯定感が低い人に通り一遍の教え方をしても吸収できない。指導されても自分にはできないと感じているから。厳しい教育で育ったた看護師はどうしてもほめるよりも悪いところを指摘してしまう習慣になっている。新人に対しても厳しくすることが教育ととらえており、指導されたほうはさらに自分にはできないのだと劣等感を持ってしまう。最悪、離職してしまうケースや精神的に追い詰める結果に。そうならないように日ごろからコミュニケーションをとりながら相手の性格を知り、こまめなメンタルケアもしつつ指導していく必要がある。


1、成人学習者の特徴を踏まえた教育方法
「おとな」と「こども」では学びのスタイルが違う。効果的な教育を行っていくためには、成人学習者の特徴を踏まえた教育方法を意図的に用いることが重要になる。

ペダゴジー(pedagogy)は、教育学→「子ども(paid)」を「導く、指導する(agogus)」という意味。
アンドラゴジー(andragogy)は、成人教育学→「大人(andraus)」を「導く、指導する(agogus)」という意味。
自己主導権を尊重し、相手が自分で考えるようにどう関わるか、一方的指導するのではなく一緒に考えるスタイルが効果的になってくる。つまり本人が主体性をもって動機づけのできる指導、本人が意欲的に学べるようにサポートする事が大事ということ。そのためにはティーチングではなくコーチングを主体とした教育をしないといけない。

2、teachingとcoaching

ティーチング(指示的な教育)とコーチング(答えを引き出す教育)をシーンや相手によって意図的に使い分けることが大事と学んだ。

コーチングは3つのスキル「聴く」「伝える」「質問する」がある

①聴く
ゼロポジション(相手の話をしっかりと受け止める)で聞く。何かを正したくなる衝動を抑える、何かアドバイスしたくなる衝動を抑える、相手をわかったつもりにならないように聴く
②伝える
・承認・・・相手の存在を認める、相手を受け入れる具体的行為
・フィードバック・・・「耳に痛いことを告げる」だけでなく「立て直す」ことを含む成長を支援する行為
・チャンク(かたまり)をほぐす・・・漠然とした言葉の塊をほぐし具体的なレベルまで落とし込むと、行動を起こすことにつながる。
・言いにくい事を伝える・・・注意するときには個人を責めない。問題となっている物事や事実に焦点をあて、iメッセージで伝える。
・提案する・・・決定権は相手にある。
③質問する
相手が考える、相手が気づく、相手のための質問をする。

教育が成功したということは
新人看護卒後研修の成功とは「看護技術習得できた」で判断するものではない。看護を続けたい、もっと看護をしたい、看護職として未来に夢がもてるようになったということだ。


研修を終えて気づいたこと

濃度が高くて学んだことが大量になってしまいました。ここまで読んだ人はたいくつになったかもしれません。あくまで自分が研修で感じたこと、学んだことを忘れないようにするためのNOTEなので参考にできるものだけ取っていってください。長い期間の研修で思ったことは指導される側はもちろんのこと指導する側も新人教育に関わるっことで新たに自分の身になっていくものはある。技術1つにしても、教えるならば正しい知識を提供しなければと復習をする。自分がいかに間違っていたことに気づく。そして、新人と同じ目線(初心)に立って物事を考えられるようになる。今までは普通にしていたこともなぜそうするのかという着目で見れるようになる。本当はプリセプティーよりもプリセプターのほうが成長するのかもしれない。また、何もできなかった新人が成長し、1人前に働いている姿を見ると感慨深いものがある。自分が成長するよりも嬉しいし、自信につながる。成長するまでは時間がかかる、負担が増える、プレッシャーを感じる。大変な苦労がある分喜びは大きい。「人を育てる」とは「自分自信と向き合うこと」なのかもしれない。そう思うと新人教育はだれもが通らないといけない道になっている気がする。社会人として働く時間は限られている。だから、自分にとって価値のある時間にしていきたい。




最後まで記事を読んでくれてありがとうございました!